一人爽やかに笑う花寺学院生徒会長である柏木優というその人は、劇の役である王子の派手な格好を見事に着こなし泰然と歩いている。そんな姿にゲンナリとした顔をしてしまったのは、全て彼の所為である。
――殴りたいその笑顔。
割と本気でそう思ってしまった自分自身に驚きつつも、自分だけが銀杏臭がするから誰か巻き込んでしまえという安直な彼の考えに呆れを覚えつつ、現在の状況にも頭を抱えているのだけれども。
「聖さま、放しててください……」
「ヤダ」
「銀杏の臭い聖さまにも移りますよ」
「あれの臭いが残るよりいいじゃない」
銀杏の臭いなのか柏木さんの匂いなのか疑問ではあるけれど。高嶺の花である彼女の腕の中に居るまま体育館を目指して歩いているのだけれど、先程からリリアンの生徒やら一般客の若い女性陣から視線が刺さるのだ。
超美人と超イケメンに挟まれている芋の私が睨まれるのは当然で。
外部の人たちからの視線はまだいい。ただ単純に周囲よりも特段見目の良い二人に目が惹かれただけなのだから。問題は学園の生徒である。今にも歯ぎしりが聞こえそうなほどに強いものを感じる瞬間があるから、聖さまのその腕をせめて放して欲しいのだ。
「そういう問題じゃなくて、歩き辛いんですが……」
「我慢して」
「放してあげればいいじゃないか。君、それでも上級生なのかい?」
もっと言って下さい柏木さんと心の中で応援をしながら、犬猿の仲である二人には無理難題のようで、回された腕に力がこもるだけで。
「あーあーあー、聞こえない」
はん、と鼻を一度鳴らして柏木さんが居る方向から聖さまが顔を反らす。本当に何故柏木さんにこんな反応を示すのかは謎だし、彼も面白がってからかっているような気もするのだけれど果たして聖さまは気付いているのかどうか。聖さまを後ろに背負い、横には柏木さん。目立つことこの上ない格好で移動をしているし、先程から刺さっている視線が取れることはなく。
――っ。
取れない視線の中で一切強いものを感じて、そちらをチラ見してみると人波の中からトップの子とそのお姉さまが居た。いや、まさかなあと嫌な予感を振り切って、ようやく体育館へと辿り着いて蓉子さまの下へと行き柏木さんと念の為にと打ち合わせをはじめていた。
暫くすると、開演のブザーが鳴り響くと拍手と共にスポットライトを浴びるシンデレラ役の祥子さまがトップを切って舞台へと立つ。それと同時に祥子さまに憧れをよせる人たちが小さく黄色い声を上げ、きらきらとした瞳で見つめ。
「流石さっちゃん。人気者だ」
いつの間にか私の横へ立っていた柏木さん。どうやら蓉子さまとの打ち合わせも終わってしまい手持無沙汰のようで、喋る相手を探していた模様。同級生となる薔薇さま方とは祥子さまとの一件があってからというもの、敵対心を露に見せている――その最たるが聖さまだ――ので居心地が悪いのかも知れないが、それをおくびにも見せずに堂々とこの場にいるのは柏木さんだから出来る芸当なのだろう。薔薇さまたちが柏木さんに近づかないイコール令さまや由乃さん志摩子さんもあまり柏木さんと関わろうとしないから、消去法で私の下へと彼はやってくる訳である。
「ですね」
「君はさっちゃんの事をどう思う?」
「どうって……」
蓉子さまにも聞かれたけれど、どうして同じ質問を柏木さんからも問われるのだろう。私が怪訝な顔をしていると、それが可笑しかったのか柏木さんが片眉を上げて小さく笑う。
「深く考えなくても良いんだ。ただ君が彼女をどう見ているのか気になっただけだから」
迷惑にならないように小さく低い声色にはどんな感情が含まれているのか。リリアン生ぽくない私の意見を興味本位で聞いてみたいとでも言われれば納得もできるのだけれど。とはいえ黙っていては始まらないし、当たり障りのないことを頭の中で考えながら口にする。
「はあ。――とんでもなく美人でお嬢様、真っ直ぐでいてどこか脆そう、ですかねえ?」
以前蓉子さまに聞かれたときは先輩後輩の関係と答えてたのだけれど、今回は祥子さまも側に居ないということと、相手が柏木さんという異性だから割と正直な感想である。過ごした時間もあの時よりも長くなってきたし完璧な人というよりも、己が求める理想を体現しようと足掻く人という方が今の私が思う祥子さまである。ついさっき友人との付き合いを改めろと言われたことも含めて。なので社会に出た時に理想と現実に押し潰れないか心配なのだけれど、強い人だしその辺りは時間が解決してくれるのだろう。
「へえ」
「柏木さん……これって私よりも、祥子さまの妹候補の祐巳さんに聞いた方が良いんじゃないですかね」
「いや、一生徒である君の言葉を聞いてみたかったんだ」
「婚約者的に祥子さまが学園でどう思われているのか気になると?」
くつくつと笑う柏木さんは私の答えを聞いて何を考えているのやら。
「ああ、そんなところだよ。しかし君もはっきりと言うね」
「……柏木さんが男性だからですよ。もし女の人に同じ質問をされたら怖くて言えません」
「そのココロは?」
「裏でどう行動するのか読めませんからね」
人となりを知らない人に誰かの事をぺらぺらと喋るのは危険だ。付き合いの浅い柏木さんにこうして言えてしまうのは異性だからだし、学園祭が終われば会う機会はないだろうという打算もある。
「そういうものなのかい?」
「相手にもよると思いますが、余計なことは言わない方が良いでしょうね。特に女の人には」
「ふむ」
何か考える様子を見せながらそれ以上彼は何も言わないので、私は舞台の方を見る。シンデレラ相手に意地悪な姉を祐巳さんが演じているのだけれど、どうしてだか似合わないのはご愛敬なのだろう。祐巳さんの後ろには蓉子さまと江利子さまも継母役と意地悪な姉役で居るのだけれど、似合い過ぎている。後が怖いので決して口には出来ないが。
「また貴様はこの子に何をやってんだ」
呆れ顔で登場した聖さま。聖さまも柏木さんのことを毛嫌いしている割にこうして間に入ってくるのは、愛情の裏返しとかそんなものだったり……はしないか。肩にのしかかる彼女の重みに耐えながら、舞台袖で聖さまと柏木さんの一悶着が始まったのだった。
「別に。君たちが僕の相手を拒んでいるようだから、彼女にお願いしていただけさ」
「は? あんたが祥子にあんなことするからだろうが」
まーた始まったとゲンナリしながら、きょろきょろと客席を見渡すとウチの家族全員も中々に良い場所をキープしたようで、父はビデオカメラ片手に撮影に勤しんでいるようだ。
そして友人はウチの家族と合流した様子で、母の横でちょこんと座っていた。少し前、高校デビューを果たした姿に驚いていたけれど、彼女は私の友人としてウチの家族にきちんと認められている仲である。
「樹ちゃん、無視しないで何か言ってよ……」
聖さまと柏木さんのじゃれ合いを放置していた為か、たまらず突っ込みが入る。
「へ?」
「全然聞いてなかったのね」
はあと深い溜息を吐いて柏木さんとの罵り合いを止めた聖さまは、私が見ていた客席を見る。
「あの茶髪で目立ってる子って、樹ちゃんが連れてた人だよね?」
「良く分かりましたね。遠目だったのに」
「この学園だとああいう子って珍しいでしょ」
少し自嘲気味に笑う聖さまと、その横で黙って私たちのやり取りを聞いている柏木さん。柏木さんならば何かあればずけずけと会話に入ってくるだろう。
「確かに。中学の時の友人なんですが、高校に入ってアルバイトを始めてそのお金でお洒落してるみたいですよ」
「……そっか。どうやって友達になったの?」
「聞いても面白くもなんともないですよ」
「面白くなくてもいいよ、私が聞きたいだけだから」
本当に面白くも何もない話である。
前世の記憶なんてものを持っている所為なのか、幼稚園や小学校ではクラス内の世話役的な立ち位置で収まっていたけれど、中学生ともなればみんな自立しているからそんなものは必要はなくなる。
楽しそうに日常を謳歌している同級生の輪の中へと積極的に混ざる気はなく、自席で持参したものや図書室から借りてきた本を読み、一人過ごしていたことが多かった私を、クラスのムードメーカーだった彼女が輪の中心へ私を放り投げた。ただそれだけの事なのだけれど、嗚呼こういうのも悪くないのだなと考えを改め直せたことには感謝しているし、男女問わず友人と呼べる人が増えたのも彼女のおかげだし、私がこの学園で笑っていられるのもその時の気持ちの変化があったからだ。
「へえ。……樹ちゃんにもそういう時代があったんだねえ」
憧憬、なのだろうか。なにか遠く懐かしいものでも見るような目で客席を見つめている聖さま。何を考えているのか分からないし掴みどころのない人であるが、最近は祐巳さんがお気に入りのようでよく話している場面に遭遇するし、迷ったり悩んだりしている彼女の背をそっと後押しするように見ている。時折、祥子さまに発破をかけて怒らせてもいるから、もしかすれば玩具にしているだけなのかもしれないけれど、悪い方向へと向かってはいないので聖さまなりの応援の仕方なのかも。
「ここでこんな話をするとは思いませんでしたけどね」
「まあいいじゃない。私は聞けて楽しかったし」
「聖さまが楽しかっただけで、私は過去を暴露したっていうのに何も得るものがないんですが」
ジト目で聖さまを睨むとあははーと軽く流され肩を軽く二度叩かれたと同時、どうやら時間が随分と経っていたようでシンデレラの物語は舞踏会へと移っていた。いつの間にか柏木さんの姿はなく、どうやらこの後の出番の為にスタンバイしているのだろう。王城のホール内は豪華な衣装を身に纏ったダンス部や演劇部の生徒に囲まれたシンデレラ役の祥子さまが、ようやく王子さま役の柏木さんと運命の出会いを果たすときゃあと歓声が上がる。祥子さまと柏木さんの仲は最低気温になっているというのに、演技だけはどちらも完璧でその雰囲気を感じさせないのだから二人とも流石である。
「さて、そろそろ出番だね」
「ですねえ」
群舞で踊り切れば私の役目は即終わるので気楽なものだ。
「行こうか」
「はい」
メインである祥子さまと柏木さんが目立つように演出されているから、ゆるゆると踊るだけ。が、ステップを間違えるとダンス部部長になにを言われるか分からないので、キチンと踊り切らなければ。ズブの素人に教えるのは大変だっただろうし、いろいろと面倒を掛けたのだからせめて間違わずに踊り切りたいものだ。ふうと息を吐いて、ようやく出番となりスポットライトのあたるステージへと足を進め、ワルツの音に合わせて踊り始める。――途中、シンデレラと王子さまの姿が視界に入ると、余裕そうに踊っている柏木さんの口元が引き攣っていたのだけれど、一体なんだったのだろうか。
◇
「お疲れさま」
「お疲れ様でした」
鳴りやまぬ客席からの拍手に呑まれながら、舞台袖で学園祭の準備期間中に顔見知りとなった被服部やダンス部に演劇部の人たちと言葉を交わす。山百合会主催の劇なので生徒会役員のみんなはカーテンコールを行っている最中で、柏木さんも花寺学院側のゲストとして挨拶をしていた。
ひとりひとり、今回の役どころの話や苦労話を短く話して終えると、黄色い声と拍手が沸き起こる。みんなそれぞれ押しが居るようで、本命の人の挨拶が始まると一層キラキラとした瞳で壇上を見上げている生徒が何人も居て。正式メンバーとなっていない祐巳さんも私の横で、祥子さまの番になるとしっかりと目に焼き付けていた。憧れを抱いている人へと素直にそういう感情を見せられる姿を少し羨ましく思いながら、ウチの家族と友人が居た席へと目を向けると、どうやら会場である体育館を既に抜け出しているようで。
『また来年もよろしくお願いいたします』
スピーカーから響く蓉子さまの声が聞こえると同時、舞台へ立っていた山百合会のみんなが深々と一礼すると最大の拍手が沸き起こり幕が閉じたのだった。無事に終わったことからの安堵の顔を見せるみんなが舞台袖へとやって来る。蓉子さまをはじめとした薔薇さま方は、劇の協力者である部活動の主メンバーへねぎらいの挨拶に出向いていた。
「お疲れさま、祐巳さん、樹さん」
「お疲れ、由乃さん、志摩子さん」
「お疲れさま」
「お疲れさま」
真っ先に戻ってきた由乃さんと志摩子さんが祐巳さんと私に向かい、ようやく役目が終わったことに二人は安堵したのか上演開始前とは違い笑顔が零れている。
一年生組は保護者の方たちに顔見世的な意味合いが強いから、緊張も仕方ないのだろう。母や姉妹もリリアンだという生徒は多いようなので、山百合会がどういう所か知れ渡っているようだし。特に志摩子さんは聖さまの妹となったばかりだったから、最後の挨拶は品定め的な意味合いも含まれているかもしれないし、それに気付かない二人でもないだろう。
「さ、着替えましょう」
ようやく窮屈な衣装から解放されるのだけれど、着替えは体育館に併設されている更衣室ではなく山百合会のメンバーは薔薇の館で着替えることになっている。ダンス部や演劇部の人たちが優先で使えるようにという気遣いらしく、ロッカーへ預けた制服を回収して中庭をこの格好で突っ切らなければならないのだ。
まさか出待ちの生徒は流石に居ないよねと頭の片隅で考えながら制服を回収して外へと赴くと、ひっと声が上がりそうになったのは秘密。マジで山百合会のメンバーを出待ちしている人が居たことに驚きつつも、私は関係ないのでスルーを決め込む。由乃さんや志摩子さんは出待ちの生徒から声を掛けられていて、無難に対応しているのだから大変だろう。
「す、すごいね」
「だねえ。でも祥子さまの妹に祐巳さんが収まれば、同じように声掛けられるようになるよ」
恐らく私たちと遅れてこの場を通るであろう上級生である薔薇さまたちもこうして声を掛けられるのだろうけれども、もっと凄いことになるのだろうと安易に想像できる。感嘆の声を上げながら祐巳さんが私の隣で由乃さんと志摩子さんを見ているのだけれど、山百合会に加われば同じように見知らぬ生徒からああして声を掛けられるだろうに。
「うえっ!? 私が?」
「うん。だって祐巳さんって話しかけやすい雰囲気醸し出してるし、人気出るんじゃない?」
「ま、まさかあ。それに祥子さまの妹になるって決まった訳じゃないんだし……」
「ま、その辺りはなるようになるとして……早くこの場を逃げないと大変なことになりそう」
「へ?」
「出待ちの人が増えてるよ。大方、この機会に薔薇さまたちと接触したいんじゃないかな?」
今日は学園祭という無礼講がまかり通る日でもある。普段、薔薇さま方に喋りかける勇気がない人たちも、この現状に便乗してどうにか接点を持ちたいと考える人は一定数居そうだ。
私は山百合会の役員という訳ではないので、この場に居ても仕方ないし余計な不興を買いたくないのもあるので、さっさと衣装を着替えたいこともあり薔薇の館へと急ぐと祐巳さんも一緒について来る。出待ちの生徒に囲まれれば『どうして祥子さまをフッたのに一緒に居るの?』やら『祥子さまの妹になるの?』などと質問攻めにあってしまうだろうから賢明だ。由乃さんと志摩子さんも、言葉は悪くなってしまうけれど上級生たちを囮に抜け出せたようで、薔薇の館へとようやくたどり着くとベンチに見知った姿の男女二人。
「樹」
名を呼ばれてみんなに一応の断りを入れて兄と姉の下へと歩いていくと、ベンチからゆっくりと立ち上がる二人。双子ではあるけれど、二卵性なので全く似ていないのだけれど美男美女と言っても過言ではない。
身内の贔屓目かもしれないが私よりも確実に奇麗な顔立ちをしているので、兄と姉がきょうだいだと納得できるけれど双子と私がきょうだいだと伝えると不思議がられることが多々ある。鷹が鷹を生み、鷹からトンビが生まれたのが私なのである。
「兄さん、姉さん。なんでここに?」
「コイツが親父から一眼借りて写真撮りたいってさ。俺はその付き添い」
「ちょっと指で私を差さないでよ、まったく。――劇が終わった後に山百合会の人たちは薔薇の館で着替えること知ってたから、樹もこっちだろうってヤマを張ったのだけれど、正解だったようね」
兄が指した指を姉が叩き落として笑う。どうやら姉にとってこの学園は幼稚舎から高等部までの間通った慣れ親しんだ場所。勝手知ったるなんとやらで薔薇の館へたどり着いたようだ。高身長の兄と姉にそれなりの背丈とそれなりの顔つきの私は『似ていない』とよく言われるけれど、それを聞くと両親と兄と姉は怒るので、鵜久森家の親戚の皆々さまには禁句となっている。何故だか上機嫌の姉が微笑みながら私の結わえた髪をすき、ふと視線を別方向へと向けた。
「よければみんなも一緒に撮らない?」
姉が向けた言葉の先には、祐巳さんと由乃さんと志摩子さんが。どうやら先に薔薇の館へは行かずに待っていてくれたようだ。祐巳さんがどうしようか迷った顔を浮かべ、志摩子さんは様子見のようで他の二人を気にして、真っ先に反応を示したのが由乃さんだった。
「いいんですか?」
「ええ、もちろん。あとよければなのだけれど、私たち三人を何枚か撮ってもらえないかしら?」
家での姉とは全く違い外だと随分と確りしている。職業柄そうならざるを得ないのは重々承知であるのだけれど、家だとズボラな面を見せたり酔うととんでもない行動に出たりするのだけれども。
「はい!」
自分の家族との距離感を測りかねているけれど仲は良いはずだ。けれどもこうして誰かに仲が良い所を見られてしまうのは、少し気恥ずかしいのだけれども。それでもみんなと写真を撮ることは悪いことではないのだし、記念にもなるだろうと頭を振って姉の言葉に従うまま何枚かの写真を撮っていると、出待ちの人たちから解放された上級生組がやってくる。
「ごきげんよう。――樹さんのご家族の方ですか?」
相変わらずこういう場面で一番初めに口火を切るのは蓉子さまで。いつもの『ちゃん』付けを『さん』付けに変えて営業スマイルを張り付け、兄と姉に対面すると姉も姉で営業スマイルを引っ提げ兄は傍観者役に徹するようだ。
「ごきげんよう。妹の樹がいつもお世話になっています」
定型文のようなやり取りに苦笑を浮かべながら、蓉子さまと姉の話を聞いていると横から江利子さまと聖さまが話に加わる。どうやら二人も薔薇さまモードとなっており、営業的な言葉を幾度か交わしているうちに、あれよこれよとみんなで写真を撮る羽目になったのだ。
リリアンを熟知している姉のお陰なのかどうかは分からないけれど、紅、黄、白に別れて写真を撮ったり、入り乱れて集合写真やら私をからかって遊ぶ江利子さまと聖さまに、それを諫める蓉子さまたちを面白そうに姉がその場を写真に収めたり。随分とわちゃわちゃした薔薇の館前はいつもより賑やかで。
「すみません、沢山撮って頂いて」
「いいのよ、気にしないで。私たち三人も撮ってもらったのだし。あとで焼き増して樹からみんなに渡すわね」
「いえ、ご迷惑になるでしょうしそこまでは……」
「私はリリアンのOGなのだし、みんなは可愛い妹のようなものなの。だから姉の顔を立てて頂戴な」
あ、上手いなあと感心する。そういわれると断れなくなるのが、上下関係の厳しいリリアン故というか。蓉子さまが少し困った顔をしつつも、始終余裕の笑みを浮かべている姉が押し切る形となった。この辺りは経験とかの差だろうし、社会人だからという手前もあるのだろう。それぞれ兄と姉に礼を述べて、笑顔で帰っていく二人を山百合会のみんなで見送ることになってしまった。
「樹ちゃんのお兄さんとお姉さん、美男美女って感じだったねえ」
去っていった兄と姉の背中をしげしげと見ながら聖さまがそんな言葉を漏らすと、それぞれに兄と姉のことを口にし始める。誰かの口から家族のことを聞くのは気恥ずかしいし、どんどんと顔が赤くなっていくのが分かってしまう。それに目敏く気付いた由乃さんが『顔、赤いわよ』と小声で零すと苦笑いで誤魔化しておいた。
「さ、そろそろ着替えましょう」
蓉子さまの一声で薔薇の館へと向かい、ようやく閉場の時間となったのだった。
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シンデレラってどういう話なのかはっきり覚えていないです。シンデレラをオマージュした『あやか〇びとドラマCD「よいこのどうわ カ〇ルンデレラ」』の内容の方がはっきり覚えてるという。
柏木さんは今のところ祐巳ちゃんよりオリ主の方が喋りやすいようです。
てか柏木さん、祥子さまにカミングアウトしなくても黙っていれば夫婦生活送れそうなんですよね。バイだって公言してたはずだし。ストレートに言い過ぎたのはアレですが、祥子さまに打ち明けたのはある意味で優しさだったのでしょうかね?(異論は認める
明日(10/25)も予告通り更新予定です。……予定です。