マリア様はみてるだけ   作:行雲流水

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第五十三話:お見合いと高級ホテル

 無事、期末試験も終わりあとは結果を待つのみなのだが、由乃さんは試験を受けず別室で補習を受けてからテストに臨むそうだ。どうやら学園側が配慮してくれたようで、休学していた子に突然試験を受けさせるのは如何なものかと職員会議で討論された上の処置らしい。

 

 私に降って湧いてきた見合い話の日取りも決まりあとは相手方と会うだけとなったのだが、受けるんじゃあなかったなあと後悔している最中である。お見合いとはいえ学生だしリリアンの制服で行けばいいだろうと簡単に考えていたのだが、母にそれは駄目だとぴしゃりと言われてしまい、いろいろと準備に追われる日々である。

 

 「最近、放課後に顔を出さないわね貴女」

 

 ここ数日は忙しく山百合会の仕事を断ることもあったから質問は尤もであるし、聞きたいこともあるので理由を話すのはやぶさかではないけれど。この言葉を憂鬱そうな表情で発した本人は絶対に私が答えた内容に喰いつくはずである。少し遠い目になりながらどう答えるべきかとしばし悩み。

 

 「ああ、お見合いを受けることになったのでその準備に追われてます」

 

 仕事があるからと誘いを受けたものの、理由までは話さず断っていたから彼女たちにはコレが初耳である。

 

 「あら」

 

 「へえ」

 

 「ふーん」

 

 私の質問に似たり寄ったりな三者三様の言葉を返してくれた三人……もとい薔薇さまたち。蓉子さまと聖さまはさして興味はないらしくおやという顔を浮かべているだけだが、暇そうな顔をしていたというのに、明らかに目を細めた江利子さまの変わりようが若干怖い。

 

 「……」

 

 「えっ」

 

 こめかみをぴくりとさせ無言を貫く祥子さまに、驚いた顔と声を上げた令さま。

 

 「うえええっ!」

 

 「へえ」

 

 「……」

 

 大袈裟に驚く祐巳さんに、江利子さまと同じ台詞だというのに若干声のトーンが低い由乃さん。黙っているものの祥子さまとは違い口元に手を充てて驚いているであろう志摩子さん。放課後、山百合会はいつものように薔薇の館で仕事をこなしつつ、他愛のない話をこうして交わすのが最近の日課となっていた。

 

 「みなさんはお見合い受けたことありますか?」

 

 小さく首を振るみんなに珍しいこともあるものだなと苦笑する。祥子さまには柏木さんという親が決めた婚約者の存在があるので受けたことはないだろうし、ある意味柏木さんがその位置に居ることで防波堤としての役割を果たしている。防波堤が無ければ有象無象の大量の見合い写真が小笠原家へ舞い込んでいそうである。そしてそこから選別して的確な人を選ぶのも大変な作業だろう。ナマな話をすれば内定調査とか入れなきゃならないだろうし。

 

 「リリアンだと既に婚約者が居るって子は知っているけれど、お見合いをしたって聞くことはなかなかないのではないかしら?」

 

 「そうなんですか? イメージだと見合い写真とか家にたくさん届いていそうですが」

 

 「そんなもの一度も見たことはないわね。面白そうだから機会があるのなら受けてみたいのだけれど……」

 

 「まあ今のご時世、恋愛婚がほとんどなんだし珍しいっちゃ珍しいのかねえ」

 

 うんうんと薔薇さまたちの言葉に頷く一同。祥子さまだけ渋い顔をしているが、おそらく柏木さんの顔でも浮かんでいるのだろう。

 

 「で、樹さんはその話を受けるの?」

 

 隣に座っていた由乃さんが私に声を掛けると、周囲の視線が一斉に集まるのだけれども、みんな美人系か可愛い系の顔の造りの人たちである。割とその視線が痛くて仕方ないのだけれど、期待している展開のようにはなるはずもなく。

 

 「受けないよ。ただ先方が是非にってだけだし、そもそも断ることを前提で受けただけだから」

 

 「そうだったの。――でももし、樹さんの御両親がその人と結婚しなさい、なんて言われたらどうするつもりだったの?」

 

 何故かふうと由乃さんは安堵したのも束の間、表情を一瞬で変えさらに質問が飛んできた。

 

 「んー。相手が良い人ならそのまま結婚もあり得るだろうけれど、馬が合わなければ高校卒業を機に家出するかなあ……一人逃避行、なんてね」

 

 私の最後の方の言葉に蓉子さまが渋い顔をし、聖さまも珍しくこちらから視線を外して何かを考えているような。江利子さまも江利子さまでこれ以上この話題を続ける気はないようだし。他の人たちも何かに気が付いたのかだんまりを決め込み、一年組だけ目を白黒している状態なのだけれど一体なんなのか。その正体を知ることのないまま、沈黙を打ち破るべく口を開く。

 

 「でも面倒なだけだよね、お見合いなんて」

 

 「そうなの?」

 

 こてんと首を傾げた由乃さん。何故かいつも首を突っ込んでくる三年生たちがお通夜状況で私の言葉に反応してくれるのは有難い。

 

 「うん。都内の高級ホテルで会うみたいだし、そこにあったドレスコードじゃなきゃいけないみたいだしねえ」

 

 お見合いの服装は制服でも良いだろうと簡単に考えていたが、流石に母からNGが出され休みの日に家族みんなで高級ブランド街に向ったのだ。街を歩きながらいかにも高級店と言わんばかりの店構えの扉を開き、きっちりとした服装の店員さんに導かれて母と姉主導で着せ替え人形状態にさせられあれこれと試着の嵐だったし、更には学生の身分には似つかわしくない宝石類も買い込んでいたし。

 冠婚葬祭で使う事になるから大丈夫よとにっこりと微笑む母だったが、そのお金の出処は我が家の大黒柱である父で。その父へと視線を向けると『もっと質の良いものでもいいんじゃないか、母さん』なんて至極真面目な顔をして冗談なのか本気なのか分からないことを言い始め。兄も姉も足りないなら俺たちも資金を出すなんて言ってしまうものだから、今回のお見合いの為の出費はかなり高額なものとなってしまった。そうして一通り買い揃えて家に戻る頃には、かなりグロッキーな状態の私が居たのだった。母と姉は何故か楽しそうに話しているし、その様子を見ながらショッピングは女性にとって楽しいのかとしみじみ感じ。

 

 一番気の毒だったのは、荷物持ち状態で女の買い物に付き合わされる父と兄であったが。

 断る話だというのに随分と気合が入っているが、色々と体裁も必要なのだろう。

 

 そんなこんなで数日が経ちお見合いの日がやってきたのであるが、早朝から忙しいの一言に尽きた。予約していたヘアサロンへと赴き美容師さん数人に囲まれ髪をセットし、何処からともなく現れたメイクさんにも文字通り化粧を施され。

 

 「うわ、まさに化粧……化けてる」

 

 ある意味本職の人には失礼かもしれないが、私ではない私が鏡の中にいるのでこの言葉は仕方ない。それを聞き取ったメイクさんは小さく笑いながら『元の素材が良いから可能なんですよ』とフォローを入れられ。化粧をしなくても、腰が抜けそうなほどの人が当たり前のように居る環境となってしまったので、メイクさんのフォローがフォローになっているのかは疑問であるが、腕は一流だろう。完全に化けているし、顔面偏差値が随分と上がっているのだから。

 

 「随分と大人びたわねえ」

 

 「素敵じゃない」

 

 慣れないヒールに普段着ないワンピースなので違和感が凄いのだけれども。

 耳にもピアスでなくイヤリングであるし胸元にもネックレス、左腕にも嫌味にならない程度の装飾が施されているし、一体どこの誰なのかと問い詰めたいくらいである。

 

 待合室で待っていた母と姉にそんなことを言われ外で待っていた父と兄と合流し、ホテルまで送ってもらい兄と姉は家へと戻っていく。車窓からみたホテルは首を上げなければ屋上が見えないほどの高層、そしてロビーに入るなり履いているヒールが沈んでしまうほどのふかふかの絨毯が敷かれ。汚したことを怒られないかなあと小市民的な感情を抱きつつ、羽織っていたコートを脱ぎながら周囲を見回すと、何か催しがあるようでホテルの人たちや関係者らしき人たちが忙しなく行き来しているのだけれど、その動作一つは落ち着きのあるもので。

 少し忙しない雰囲気を見せつつも観光地のホテルのようなざわめきではないし、日本人以外にも西洋人も時折お客さんとして姿を見るあたり、本当に一流ホテルという感じで。ふうと息を吐きながら、予約していた日本料理店へと足を向け父が店員さんと少しばかりのやり取りを交わし、個室へと案内される。日本料理店ということから座敷席なのかなと構えていたのだが、テーブル席だった。眼前の窓には日本庭園を模した景色が広がっており、爽やかさを演出している。

 

 「――お初目にかかります」

 

 ロマンスグレーの髪色が特徴の年配の男性に穏やかな笑顔をして頭を下げる同年代の女性に、言葉を発した見合い相手は某有名海外ブランドのスーツに身を包みにっこりと笑みを浮かべ。客観的に見るのならばイケメンの類にカテゴライズされるであろう。職業は弁護士ではなく、その補佐を行うパラリーガルだそう。横文字で格好よく見えるが、ようするに法律事務員。まあ働かない無職よりも全然マシだし、職業差別はよくないだろう。

 そうしてもう一人知らない人がいるのだが、所謂仲人さんである。ちなみに仲人さんの役割は大きく三つに分かれているらしい。

 二人が知り合うきっかけを作り、お見合いのセッティングをする世話人。

 結婚の約束を公にし、儀式により結納品を取り交わす使者。

 挙式や披露宴において新郎新婦の紹介や進行、挙式の報告を行う媒酌人。

 恋愛結婚の割合が増えるに従って、世話人や使者をお願いする機会が減り、今だと挙式や披露宴の当日だけ媒酌人としての役割を行う頼まれ仲人が増えているらしいのだが。

 

 今回は古式ゆかしく二つの家を取り持つ為に仲人さんが居る、とかなんとか。断る話ではあるが、形式上必要だったのだろう。にこにこと笑う恰幅の良い中年女性は、まるで吉原や祇園にいる遣手婆のよう。失礼ではあるが、そういう雰囲気を醸し出しているのだから仕方ない。その女性が仕切り挨拶も早々に席につくと和装の制服を着こんだスタッフさんたちが料理を運び込んで、お見合いが始まるがなんてことは無い穏やかな会話が続くだけである。

 建前もあるのか、突っ込んだ質問なんて飛んでこないしいやらしい質問などもない。まあそんなものが飛んで来れば仲人の人がやんわりと止めるだろうが。食事を摂りながらの会話は色々と大変である。一応、母から割と厳しいマナーを仕込まれているものの、所詮は付け焼刃のハリボテである。しょっちゅうボロが出てやり直しを要求され、私に甘い父や兄と姉はそんなに厳しくしなくともと母を止めるが『恥をかくのは樹ちゃんなの』と言いながらきっちりとマナーを仕込もうとする。母の言葉通り有難いことだけれど、出来の悪い娘で申し訳ないと凹むこともある。それを思えば、このお見合いもある意味でマナーレッスンのようなものかと考えるようにした。

 

 「樹さんの御趣味は?」

 

 「そうですね、読書や音楽鑑賞でしょうか」

 

 当たり障りのないことを答えながらこの揚げたての海老の天ぷらすごく美味しいと笑みを浮かべると、相手男性もにこりと目を細めながら笑う。

 

 「ほう、どんなものを好んでいるのでしょうか?」

 

 「良いと感じればクラシックでもロックでもJ-POPでも何でも聞きますし、本に関しても割と乱読なのかもしれません。取り合えず手に取って、つまらないと判断すればそこで止めてしまいますので。――さんは、どのような御趣味を?」

 

 嘘は言っていない。耳障りがよければデスメタルでも聞くし、八十年代に流行った曲も聞く。本に関しても取り合えず読んでみてから判断するのだし。

 

 「趣味と言えるかどうかは分かりませんが、友人たちと海や山に繰り出してキャンプでバーベキューをしたり、海外旅行へ出かけることが楽しいですね」

 

 同年代の友人たちは結婚をして所帯をもってしまい、付き合いが悪くなってきて寂しいですがと補足しながら、海外のどこそこは素晴らしかったまた行きたいと雄弁に語る彼の言葉に、うんうんと頷きながら愛想笑いをし。話の流れが脱線しそうになれば仲人の人が、こっそりと軌道修正を計らい。上手いなあこの人と感心しながら所謂定番の『あとは若いお二人だけで』という事になり。ホテルの庭へと彼と二人で散歩に繰り出すことになったのだけれども。二十歳弱年の離れた男性と何を話せばいいのか全く見当が付かないまま、二人並んで廊下を歩み庭へと進む。

 

 「僕は度々利用しているのですが、いいホテルでしょう?」

 

 「ええ、素敵な場所です」

 

 ドヤ顔を晒しながらそう言い切る彼。値段が値段なのだから、対価に似合う質やサービスがないと成り立たないだろうと突っ込みをいれつつ、肯定して話題話題と頭をフル回転させるが何も思いつかない。ここまで悩まなくてもよさそうなものだが父や母の顔に泥を塗るわけにはいかないので、断る話とはいえ出来れば穏便に事を済ませたい。このホテルの良い所を話しながら、どこそこのテナントは美味いので次の機会に是非などと誘われるので、YESともNOともとれる言葉で返したりと。

 ゆっくり庭を散策すること一時間、良く間が持ったなと感心しながらホテルへと戻って人気の少ない廊下を進んでいると、横に並んでいた彼の手が急に私の腰へと延びてくる。不意打ちすぎて手が出そうになるのをどうにか堪えると、何を勘違いしたのか壁際へと押しやられる。一瞬のことで前後不覚に陥り『あ、人生初の壁ドンだ』などと悠長なことを考え始める私。

 

 「キス、していいかな?」

 

 いや初対面でその台詞はないし私はまだ未成年であるし、いい歳をした大人が言うべき台詞ではない。しかも自分の両親や仲人さんに迷惑が掛かるだなんて一ミリも思っちゃいないのか、随分と余裕そうな不敵な笑みを携え。

 

 「……」

 

 目の前に立ちふさがる男の余りの急な阿呆な発言に答えないままでいると、沈黙は肯定と受け取ったのか私の顎を口付けしやすいようにと右手で軽く持ち上げた。

 

 「いいかい?」

 

 「それは流石に困ります」

 

 「今のご時世、キスの一つや二つで慌てることもないだろうに」

 

 いままでさんざんお見合いを断られていたのはこのプレイボーイ気取りの悪癖かと納得しながら、距離を詰めてくる眼前の野郎。ああ、もうこれって殴って良いレベルだよねと判断し家族に心の中で謝りながら、キスされたらマジで潰すと決意して右手を開いて力を籠める。

 

 「失礼」

 

 「誰だっ!」

 

 「誰だといわれても困るけれど、こんな場所でそんなことをするのはどうだろう。それに相手の方は嫌がっているようだし」

 

 聞いたことのある低い声の方へと振り向くと、何故かスーツを着込んでいる柏木さんが。同じブランドものでも使用している生地や体格に合ってデザインされているであろうそれは、自称王子さまの柏木さんに似合っている。あんな場所であんなことに及ぼうとした柏木さんに特大のブーメランが刺さっている気もするが、一応は婚約者だしセーフになるのだろうか。取り合えず去った危機に肩をなでおろし、ここは柏木さんに任せてしまおうと黙っておく。

 

 「は? アンタが勝手に勘違いをしただけだろう。彼女は逃げようともなにもしようとしていない」

 

 「おや、流石に困ると彼女の声が聞こえたのだけれど、僕の勘違いだったかな?」

 

 こちらに視線を向けてくる柏木さんに小さく頷くと、確認が取れたのかにっこりと携えていた笑みを更に深め。

 

 「ならば貴方が及ぼうとした行為は、このホテルでは似つかわしくない」

 

 スラックスのポケットに両手を突っ込んで奇麗な立ち姿でそんなことを言い放つ柏木さん。そうしてホテルマンの人が数人やってきて『失礼します』と口々に言いながら、お見合い相手の男性の両腕を持つ。

 

 「な、おいっ! どういうつもりだっ!!」

 

 「そのままの意味だよ。この場に貴方は相応しくないのだから追い出されるのは当然だろう」

 

 騒ぎながら相手の男性は裏口へと連行され。勝手に良いのかなあと思うけれどこういうことを出来るのならば、おそらくこのホテルは小笠原関係が経営しているのだろうと察しがつく。とはいえ大事な顧客を無碍にするのはどうかと疑問が浮かんでくるのだが。

 

 「助かりました、柏木さん」

 

 見られたくないところを見られてしまったが、助けてくれたのにお礼の一つもいえないのは流石に問題があるので自分から声を掛けた。

 

 「もしかして樹くんかい? すまない、余計なことだったかな?」

 

 「いえ、本当に助かりましたありがとうございます」

 

 暴力沙汰になれば確実に迷惑が掛かるし、出来れば避けたかったからあのタイミングで助け舟を出してくれたことは本当に感謝だ。どうやら柏木さんは私だと気付いていなかったようでマジマジと私の顔を見つめたあと、くつくつと笑い始める。まあ馬子にも衣裳だし、化粧とウィッグとコンタクトで大分雰囲気が違うから分からなくても仕方ない。私の名前の呼び方については学園祭の時に役職もなくどう呼べばいいものか迷っていた柏木さんに、私が好きに呼んで貰えばいいと伝えるとこうなったのである。

 

 「声を聴くまでわからなかったよ。もしかしてお見合いだったのかい?」

 

 「ええ。断ることを前提で受けたのですが、まあ散々でした」

 

 よくお見合いだと分かったなあと感心したが、数秒後には納得してしまう。どうやら彼は少し前もやらかしていたようで、このホテルでは注意すべき客として従業員にお触れが回っていたらしい。

 

 「でもどうして柏木さんがここに?」

 

 私のようにお見合いがあるわけでもないだろうし、小笠原が経営するホテルだとしてもこの場に居るのは謎である。

 

 「夜に開かれるパーティに出席するんだよ」

 

 「はへー。パーティですか」

 

 ホテルで催されるパーティーなんて、本当に上流階級の人だと感心するし大変だなあという気持ちも沸いてくる。いろいろと柵があるだろうし、招待客の顔とか覚えないといけないだろうし。そういうことはさっぱりなのでさらりと言い切った柏木さんはもう慣れてしまっているのだろう。

 

 「そう。興味あるかい?」

 

 「興味というか覗いてみたい気持ちはありますが、堅苦しいのは苦手ですね」

 

 「ふむ」

 

 少し考える素振りをみせながらポケットに手を突っ込んだまま私の視線に合わせ、にたりと笑う。

 

 「今日のパーティは小笠原主催でね。僕もある程度口利きできるんだ。招待状を送るから来てくれないかい?」

 

 「……あの私を誘うなら祥子さまの妹である祐巳さんが適役じゃないですか?」

 

 柏木さんの言葉に少し揺れつつも、一応の反論をしてみる。私よりも祥子さまの妹として祐巳さんをお披露目する方が良いだろうし。

 

 「それもそれで面白そうだけれど、今なら君の方がきっと面白いことになる気がするんだ」

 

 なんでか逃げられる気がしない追い詰められ方にドレスコードがと言い訳がましく抵抗してみるが、その格好で十分だよそこまで格式ばったものじゃないからねと言われ。両親も一緒に来ているので戻らなければと伝えると、ならご両親も一緒に来ればいいじゃないかと道を断たれる。

 

 「さっきの顛末と夜のことを、君の御両親にも理由を話さないとね」

 

 ある意味三薔薇さまたちよりもフリーダムな柏木さんに押されてしまい、お見合いからパーティへと出席する羽目になるのだった。

 

 「しかし、さっきの君の右手を見て驚いたよ。あのまま僕が止めなければあの人はどうなっていたのか……」

 

 「喧嘩にルールなんてないですし、目潰しか金的が決まれば勝ちですよ」

 

 格闘技はルールに縛られているが、ケンカなんて階級無制限のルール無用の無法地帯である。あとはどこまでずる賢く立ち回り勝ちを拾いに行くかだし、追い詰められて咄嗟に取った行動が最善だったということもあるだろう。

 

 「君は過激だねえ。まああの男に同情する気はないけれど……」

 

 遠い目になりながら、ロビーで待機していた両親の下へと柏木さんと並んでいくと、突然相手が入れ代わっていることに両親は目を白黒させながら先程のこと話すと頭を抱え。

 柏木さんがいる手前下手なことは言えず、私がパーティに参加することを快く受け入れてくれて。これも社会経験だから行ってきなさいと、父と母に見送られるのだった。




 8040字。

 ちょっと無理矢理だったかもと思いつつ、柏木さんと祥子さまネタを書きたかったので許してください。このオリ主の巻き込まれ体質をどうにかしたいのですが、自分から動くことってないからないですし、巻き込まれ体質で困ってる方が作者は好きです、ハイ。

 あと聖さまは『逃避行』という言葉に過剰反応してそうです。
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