ガリア生まれの男ウイッチが501に着任しました!   作:喜多見 健

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エクスキャリバー

――――海上――――

 

 

「失敗でしたわ」

 

 ペリーヌ・クロステルマンは苦々しい表情で呟く。管制塔からの情報によれば、ネウロイの数はたった一機、それは誤りのなかった報告であったはずだ。だが、現在ペリーヌは六機の敵に追い回されている。

 

 確かに、情報には間違いはなかったのだ。ただ、一機のネウロイは遥か遠方からペリーヌを追跡する小型のネウロイを射出している。

 

 模擬戦途中と言うことで一足早く戦場へ駆けつけ、そしてあわよくばそのまま撃墜してスコアを増やそうとしたペリーヌとシャーリーの二人は、手痛い攻撃を受けていた。

 

「キリがないぞ!」

 

 シャーリーは自らの背後に取り付くネウロイに銃弾を浴びせながら回避軌道を描くが、ネウロイの数は減るどころか、むしろ増加している。とてもではないが、手が足りない。

 

「あのネウロイ……あの空中空母を落とさないことにはどうにもならないようですわね」

 

 ペリーヌは遥か遠方の黒い影を見遣る。視界の先の芥子粒ほどの大きさの黒い点からは、砂粒のような黒い点がまるで驟雨(しゅうう)のごとく放出され、こちらに向かってきている。おそらく、あと数分もすれば完全に戦場を飲み込まれてしまうだろう。

 

「あの距離じゃ私のスピードでも追いつけるかどうか分からないな。っと」

 

 ペリーヌの背後で小型ネウロイが銃弾を食らい、黒い煙を噴いて海面に落ちてゆく。それに感謝するように、ペリーヌもシャーリーの背後のネウロイに銃弾を放った。

 

「とにかく、ここを突破されたらそのまま基地に食いつかれますわ。他の皆さんが上がるまで、なんとかここを守りぬきませんと」

 

 次第に数を増す黒い影は、まるでコバエの群れのような不快感を与える。十分な戦力がある状態ならば固有魔法である雷撃で一閃すれば良いのだが、今はたった二人。

 

 すなわち、自らの魔力が切れてしまえば敵の中に仲間を置き去りにしてしまうのだ。それだけは、ペリーヌは避けたかった。

 

 貴族として、それ以前に、人間として。

 

 

――――501基地、ハンガー――――

 

 

「整備はまだ終わらないのか?!」

 

 バルクホルンは苛立ちを隠せないように、そう叫ぶ。

 

 それもそのはず、本来ならば前回の帰投直後に行われるべき整備が度重なるネウロイの攻撃による部品発注の遅延のために出来ず、輸送機で男と共にようやく届いた部品で整備をしている最中なのだ。

 

 ちなみに、前回の出撃ではシャーリーとペリーヌ、そして夜間組は待機していたため模擬戦が出来ている。襲撃周期を見越して今日は安全だと予感したはずであったが今回はそれが仇になった。

 

 そして夜間組はたった今帰投したばかりなので、戦力には見込めないというのがミーナの考えであった。夜間哨戒明けに小戦力での戦闘をこなせるほど、彼女達は精神的に余裕は無い。そして混乱の最中にいる彼女たちには、昨日やってきた戦闘狂の男を気にかけるものはいないようだ。

 

「落ち着きなって、トゥルーデ。あの二人なら何とか持ちこたえてくれるよ」

 

 エーリカは朗らかに言うが、顔には隠しきれない不安の色が残る。それはほかの面々も同じようだ。

 

 整備兵の顔の険しさが若干緩み、それを治そうと顔の筋肉が引きつりながら、兵士は敬礼をして言葉を紡ぐ。

 

「よし! お待たせしました! 出撃できます!」

 

 どうやら他の整備兵も整備を終えたらしい。その言葉に、ストライクウィッチーズは自分の愛機へとかけだし、そして出撃の準備を始める。

 

 その瞬間、ストライクウィッチーズ全員が装着している耳の小型インカムに男の声が聞こえた。

 

<<こちらは『エクスキャリバー』、ヴァレリー・オデール。ネウロイを殲滅します>>

 

 

――――海上――――

 

 

「おい、今の声……」

 

「ヴァレリー大尉の声でしたわね。一体どういう――」

 

 シャーリーとペリーヌは背中合わせで空中にいる。敵の数は既に二十を超えているだろうか、本当にコバエの群れに突っ込んだようだ。そして、中を空にしたのか空母型のネウロイはいつの間にか空域を離脱したようだ。

 

<<殺す。ネウロイは殺す。絶対に殺す>>

 

 シャーリーとペリーヌの前方へ向けて、狂気に塗れた男の声が放たれる。

 

「オデール大尉!? 今どこにいるの!? 何をしようとしているの!?」

 

 ミーナが困惑しながらインカムに問うと、男の返事が届く。

 

<<空にいます。ネウロイを殺します。イェーガー大尉、クロステルマン中尉、6秒以内に急上昇か急降下せよ。絶対に今の高度にいるな。死ぬぞ>>

 

 状況が把握できないが、二人はその指示通りに飛び、そして、シャーリーは急降下を、ペリーヌは急上昇を行う。

 

 それからきっかり6秒後、青白い光線がまるで矢のように、先ほどまで二人をいた地点を――それに追随していた小型ネウロイを雲ごと薙ぎ払った。

 

 ネウロイ達は小さな爆発を起こしながら、白い破片となって空に溶ける。

 

 基地からは味方の発進を告げる白い飛行機雲が立ち上っている。

 

「一体何が起こったんだ?」

 

「空が切断されたみたい」

 

 バルクホルンとエーリカがネウロイに狙いを定めながら状況の整理を進める中、ミーナと坂本は険しい顔で男の方向を見つめていた。

 

 ミーナと坂本も、数の減ったネウロイの群れへと突っ込む。劣勢は一瞬にして覆された。

 

 

――――ミーナ中佐の執務室――――

 

 

 着任直後に懲罰房に送られる兵士がいるなんて考えもしなかった、とミーナは坂本に愚痴る。ネウロイを撃退した直後にミーナは男を呼び出し、軍規を含めた基礎教育を一通り男に施し、501では個人での無断出撃が絶対に許されていないこと、チームワークが何よりも大切だということを何度も何度も教え込んだ。

 

 ミーナの鬼気迫る説得に渋々といった様子で男は納得したのだが、今回の無断出撃はさすがにお咎めなしとはいかずに早速男を懲罰房送りにしたのだ。

 

「一体何があいつをあそこまで駆り立てるんだろうな」

 

「理由はどうあれ」

 

 ミーナは目元を揉むと坂本の瞳をまっすぐに見つめる。

 

「いまのあの人の状態は褒められたものではないわ。部隊のみんなともっと円滑にコミュニケーションをとって連携をしてもらう必要がありそうね」

 

 肺が無くなるんじゃないかというほど大きなため息を吐いてミーナはそう言った。

 

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