三人称視点。
では本編どうぞ。
紅魔館のメイド、十六夜咲夜と封結は弾幕ごっこをしていた。咲夜はナイフとクナイに似た弾幕を繰り出す。封結は手のひらからの弾幕を相殺させ、鞘のままの刀でも攻撃を受け流しながらローラーで滑るようにして回避していく。
お互いに、それぞれ疑問に思っていることを言い合う二人。
「ふーん……普通の弾幕とその刀が主体みたいね。それで変わった靴で行動していると……どうして鞘に入ったまま対処しているのか疑問だけど……」
「そちらとしたらどうしてそんなにナイフを持っているんだ? どこから出してくるのか、かなりの疑問何だが……?」
「乙女にはいろいろと秘密があるものなのよ。詮索するのは男のすることじゃないと思うわ」
「詮索しなければお前――咲夜を無力化できないだろ? 仕方ない事なんだ」
「よく言うわ。人を結界みたいなので閉じ込めておきながら。あなたと付き合ったら束縛が強そうね」
「さすがに自重するぞ。そもそも俺はそんな病んでいないしな」
軽口を言いながら、それぞれが持つ手段で応戦していく。そして――咲夜はスペルカードを取り出して宣言!
「攻めさせてもらうわ――幻在【クロックコープス】!」
彼女の宣言と共に、最初は小さな弾幕がまばらに繰り出されていく。封結は単純な弾幕だなと思い、軽く躱そうとしたが――
――彼が気が付いたころには、前方に多量のナイフが配置されている事に遅れて気付いた。
「!? 何っ!?」
封結は即座に対応しようと体を動かし、ナイフはなるべく刀でさばこうとするが……多少、グレイズする。彼にとっては【能力】で被害を被らないようにしているのだが……一定以上の攻撃を喰らうと強制的に解かれてしまう。
先ほどの結界については封結は嘘の内容も含まれていた。本当は一定以上の攻撃でも能力が解かれる。そのような事実を明かせてしまえば、彼女は隙あれば札に攻撃して結界を解こうとするだろう。少なくとも、封結の役目は足止め。異変解決の補佐だ。そのためにもなるべく結界が攻撃を受けるのは避けたい。
彼は必至に躱していくが、咲夜は攻撃を緩めない。
「次々と行くわよ!」
再び彼女は小さな弾幕を放った後に――またもやいつの間にか多量のナイフが展開される。彼は必至にグレイズしながら攻撃をかわしていこうとする。その際には被弾も重ねられるのだが……まだ、彼の能力は許容範囲内で発動を続けられている。
そして彼は刀に弾幕を込めて――
「【コネクトスラッシュ】!」
先ほどと同じ弾幕を彼は繰り出した。弾幕が続いて繰り出された後に、その後方の弾幕が戦闘の弾幕に追いつき、重なり合って巨大化する。咲夜はその弾幕を冷静に考察し、多少のナイフや弾幕を封結の弾幕とぶつける。威力を弱めた後は彼女は躱していく。
お互いに攻防を続け……時間制限か、咲夜のスペルカードはブレイクした。呼吸を整えながら彼は彼女に疑問を投げつけた。
「……一瞬にしてナイフが出現したぞ? どういうからくりだ?」
「教えるわけがないでしょう? 自分の能力を敵に。まぁ、ゆっくりと観察しすぎて……屈服してくれるとありがたいわ」
続けて、咲夜はスペルカードを取出し宣言。
「幻象【ルナクロック】」
彼女は小さな弾幕を繰り出した後に――またもやいつの間にか、封結の目の前にナイフが配置されている。先ほどのスペルカードと違って、はるかに量が増えていた。加え、彼女の位置がさっきととは違い、別な場所へと移動している事実を封結は確認した。
「(……一体、どういう仕組みでナイフが出現して、あいつの場所が変わっているんだ……!?)」
封結は攻撃を避けながら考える。どうやったら十六夜咲夜を止められるのか。否、止める方法は頭に浮かんでいるのだが……条件が難しい。
「(……とりあえず、一枚は仕込んでおくか……)」
彼はいつでも使用できるように、
「(あれは……スペルカード? だったら――やらせない!)」
咲夜は【能力】を使い、一瞬で封結の背後に出現する。彼女はそのままナイフを首元に突きつけようとしたが――
突きつける前に――何かの衝撃波が彼女を一瞬にして吹き飛ばした。
「なっ!?」
確実に彼女は封結への攻撃圏内に入っていたと思っていた。もし仮に移動するにしても、時間がかかる。彼が動く、回避する時間はなかったはずなのだが……咲夜はよく現状を把握してみると、
無意識のうちにスペルブレイクしてしまい、衝撃についてのダメージはなかった彼女だが、今の事に少し動揺しながら問いかける咲夜。
「! あなた……一体何をしたの!?」
「ふぅ……。仕込んだ瞬間に背後に現れるとか、かなりの驚きだぞ……。ま、今回はそれで良かったけどな……」
彼がいつの間にか持っていた紙が崩れて消えていく。その事に驚いている様子を見せる咲夜だったが……封結は丁寧に言った。
「なにが起こったのかわからないって顔だな。答えはこれだな――博麗神社っていうよりは霊夢の特製か? 今のは【霊撃札】だ」
「霊撃札……?」
「相手の距離が近い時、囲まれている時に有効な御札だ。殺傷能力は皆無だが……状況を多少変える事が出来る。特に今みたいに攻められている時はな。相手の距離を離して体勢を立て直す事が出来るアイテムだ。ま、一回の使い捨てだけどな」
霊劇札がなくなった手元を見ながら封結は言う。【使い捨て】という言葉を聞いてか、咲夜は勝ち誇るように言うが――
「【使い捨て】、ね……だったらもう見た通り、使えないわね。何回も使われていたらわからなかったけど……それがもう無くなった以上は――」
「……話をしよう。博麗の巫女、博麗霊夢はウチの商品をお金ではなく、霊撃札で購入している。本人はそれを通貨として扱っているんだ。尤も、それを受け入れた俺が悪いんだがな……」
「……それが何?」
「話はここからだ。霊夢とかは腐れ縁でな。しょっちゅう商品の代わりに霊撃札を置かれたんだ。それは有り余ってついに商品をして売っているぐらいだ。そこで――」
封結は上着のポケットから、ある紙束を取出し――扇子のように広げながら言う。
「――常に、かなりの枚数でも霊撃札を携帯しているぐらいだ」
「えっ!? 何よその枚数!?」
「積み重なった結果がこれだ。あまり使う機会は無いかと思ったが……好都合だな。これだけあれば、攻撃が断然躱しやすくなる。時間稼ぎも簡単にできるようになるしな。この優位性を生かしてお前と戦う事にしよう」
咲夜の驚愕をよそに封結はポケットに霊撃札の束を戻し、片手をポケットに入れたまま封結は挑発。
「さぁ。さっさと霊撃札を消費させてみろよ。それまでに霊夢がさっさと異変の元凶を退治している頃だろうがな」
勝ち誇るかのように、封結は言っていたが――咲夜のは少しだけ、口角が上がっていた……。
一方。霊夢とレミリアによる弾幕ごっこも同時に行われていた。レミリアはスペルカードを宣言しながら霊夢を攻撃していくが……彼女は躱し続けている。それに伴い、アミュレットを投擲してダメージを与えるのも忘れない。
現在レミリアが宣言しているスペルカード――天罰【スターオブダビデ】の光線、輪に並んだ弾幕を繰り出していたがスペルブレイクさせられて……彼女は新しいスペルカードを宣言していた。
「くっ……冥符【紅色の冥界】!」
早い速度の弾幕が真っ直ぐ放たれる事に加え、ゆっくりと交差を繰り返す弾幕を彼女は放つ。レミリアは一点だけにとどまらず、場所を移動しながら繰り出していた。
それに対して霊夢は機嫌が悪いようにしながら、【封魔針】とは違う弾幕を放とうとしていた。
「いちいち動くのはめんどくさいわね……威力には欠けるけど仕方ないか――【ホーミングアミュレット】!」
彼女は針の弾幕から、アミュレットと同じような弾幕に切り替えた。一見、彼女は常に放っている赤に近い色をしているアミュレットと色が違く、水色のアミュレットを繰り出し始めた。しかし、赤色のアミュレットとは違い――レミリアを追尾する!
「! ホーミングの弾幕……! 威力は少ないとしても、それなりに数があるわね……!」
レミリア自身もなるべく弾幕を繰り出して相殺しながら、弾幕を回避しようとする。だが、異変解決者として長年やってきたおかげか、霊夢に優位性が見える。
お互いに攻防を続け……レミリアのスペルカードがブレイクした。彼女でも優位性を理解しているのか、苦虫を噛み潰したかのように言う。
「……異変解決者って褒めておこうかしら?」
「褒めるより賽銭をよこしなさい」
「嫌よそんなの――咲夜、来るのが遅いわね……それほどのネズミなのかしら……?」
彼女は霊夢の言葉を蹴りながら、自分の従者が来ないことに疑問を覚えていた。その事に霊夢は単純に言う。
「だから言ったでしょ? あんたの従者は封結に倒されているって」
「それならば何故その【ふゆ】っていうやつはここに来ないのかしら? 咲夜が処理している可能性もあるわよ?」
「大方あいつの事だから時間稼ぎでもしているのよ。それでなるべく体力を温存しているんでしょ。私に加勢するために」
「……時間、ね……」
霊夢の言った【時間】という言葉に、レミリアは呟いた。その事に疑問を覚えた霊夢は彼女に問いかける。
「……時間がどうかしたのよ?」
「咲夜の能力は優秀なのよ。何故ならば――咲夜は時に干渉できる能力を持っている。普通の人間が咲夜に勝つことは不可能だわ。咲夜は――時間を止めた世界で、自分だけ動くという行動が許されているのだから。中々頑張っているみたいだけど……何時か咲夜はここに駆けつけるでしょう」
誇るように、自分の従者について自慢をしていたレミリアだったが――
「……ふーん――だから何?」
適当な相槌で彼女の言葉を霊夢は流した。あまりにも興味を持って無かった反応というのはレミリア自身は予想外だったのだろう。今度は彼女が霊夢に問いかける。
「……何よその反応は? 逆に通り過ごして呆れているって事かしら?」
「どうでも良いわよそんな事。どれだけ凄い能力を持っていたとしても……人間には変わりないんでしょ?」
「……咲夜はこの紅魔館の中で唯一の人間。その人間の咲夜は人外の能力を持っているのよ? それを上回る能力は数少ないはずだわ。それとも何? あなたの従者はそれを超える能力を持っているっていうの?」
「……封結の能力自体はそれなりに便利な方よ。特に自分に対してはいろいろな対策が出来るし。でも、問題はその相手。戦闘中にどうやって条件を満たすかが課題になるだろうけど――」
霊夢は言葉をそこで区切って、言葉を繋げた。
「――例え人外の能力を持っていようが、その能力が使えなくなったら――それはただの人間よね?」
次で咲夜、レミリア戦を終わりにしたいと思います。
ではまた。