三人称視点。
では本編どうぞ。
紅魔館の地下。魔理沙は地下へと進みこんでおり、ある人物と対面していた。魔理沙は必至に箒に乗って、濃い弾幕を躱し続けていた。現在、攻撃をし続けている人物こそ──
『──アハハハッ! モット楽シマセテヨ魔理沙ッ!』
「何だよこの強さ……!? 異変の元凶者でもないのに、それなり以上の実力を持ってやがる……! 案外、【強い奴】ってのは間違ってなかったみたいだな!」
──フランドール・スカーレット。彼女の外見は赤色の服装に白いナイトキャップの帽子。背中には順に七色に輝く宝石みたいな翼。紅魔館当主のレミリア・スカーレットの妹。異変解決者である霧雨魔理沙は【弾幕ごっこ】として呼べるかはわからないが、炎の剣を持って愉しそうに笑う彼女と応戦していた。
戦う事態になったのは、少し前に遡る──
彼女はパチュリーを突破し、地下を進んでいたころ。魔理沙は時折攻撃してくる妖精メイド、もしくは罠かどうかはわからないが……本から放たれる弾幕をグレイズしたり、弾幕をぶつけて相殺していた。
地下に進むにつれ、彼女はある事を不思議がる。
「……地下に進むたびになんで、敵の攻撃が激しいんだ?」
思ったことを口に出して進んでいたが──魔理沙は進むのを止めた。何故かというと……魔理沙の目の前には大きな扉が道を遮っていたからだ。
「ここの先に異変の元凶が……よし! さっさと退治して私が解決してやるぜ!」
覇気に満ちた声で、大きな扉を開ける。まず最初に彼女が確認したのは……一人のクマの人形を抱いている少女。
「……誰だお前? 異変の元凶として考えても、不自然としか考えられないが……?」
その少女は背を後ろにしていたが……誰かの来訪に気付き、振り向く少女。そして、口を開いた。
「……? だぁれ? あなた? 人に名前を聞かれた時は、喋った人から話すってパチュリーが言ってたけど……」
「あぁ、私? そうだな──博麗霊夢、巫女だぜ」
「……いくらなんでも巫女は無理があると思うわ。何かこの幻想郷っていうの? 巫女は紅白って聞いたことあるけど……あなた、白黒じゃない。言っちゃうけど……フランドールよ、私は。みんなにフランって呼ばれているの」
「バレてちゃしゃあない。私は霧雨魔理沙だぜ。それよりあんた、なにもん?(看護婦の方が良かったか?)」
彼女の嘘を看破し、改めてお互いの情報を交換し合う二人。選択肢を間違ったのか別の答え方をすれば良かったと思った魔理沙だが、フランドールは話を始める。
「何者と言われても……吸血鬼。それで……私はずっと家に居たわ。あなたがこの家に入って来た以前にね」
「まだ変わった住民がいたのか……。お前さっきまでどうしていたんだ?」
「ずっと地下で休んでいたわ──495年くらいね」
「いいねぇ、私は週休二日だぜ」
種族での寿命の差だと魔理沙は割り切っているのかわからないが、返事をするように言葉を返す。そして地下とはいえど、フランドールも気になる点があったのだろう。その情報を魔理沙に求めた。
「生きた人間で咲夜以外初めて見たけど……何しに来たの?」
「それか? 私は異変解決者であってな。幻想郷の外で広がっている紅い霧を出している奴を退治しに来たんだぜ。ちなみに私以外にも人間が来ているぞ。さっき言った紅白の巫女に、長い髪の毛を纏めている眼鏡の男がな。それで念のために聞きたいんだが……この紅い霧を出したのはお前か?」
「(……私を仲間外れにして何かやっているんだ、アイツ……)」
「……? どうしたんだぜ?」
急に顔を俯けて表情が見えにくくなったフランドールに魔理沙は声をかけ、返答を求める。すると彼女は少しだけ顔を上げて、否定。
「……私じゃないよ。多分、魔理沙が言っているのは私のお姉様である、レミリアお姉様よ。多分、アイツがその紅い霧を出しているんだと思う」
「……? 姉妹で、元凶が姉なのか……。それで妹君。それで……どうして紅くなっている事を知らなかったんだ? 外に出てみりゃ一発でわかるだろ。こんな薄暗い部屋にいるよりはさ」
「……私も人間というものが見たくて外に出ようとしたときがあるの」
「そうなのか。良かったじゃないか。ほれほれ、思う存分見るが良い」
彼女の要望通りに魔理沙は自身の存在を強調するが……彼女は【ある事】を申し込んだ。
「一緒に遊んでくれるかしら?」
「いくら出す?」
フランドールの申し込みに、魔理沙は見返りを求めてみる。彼女の返答はシンプル。
「コインいっこ」
「一個じゃ、人命も買えないぜ」
「あなたが、コンティニュー出来ないのさ!」
魔理沙は彼女の申し込みが【弾幕ごっこ】を理解したその時は、フランドールから多数の弾幕が放たれていた……。
レミリアの妹であるフランドールの弾幕を魔理沙は、箒に乗って飛翔し、弾幕を躱しながら彼女も弾幕をフランドールに繰り出す。しかし、物量でいえばフランドールが大きいらしく、全てを相殺しきれない。相殺しきれなかった弾幕が魔理沙を襲うが……弾幕と弾幕の隙間を見つけてはそこへ移動し、グレイズしながら直撃を避ける。
「中々強いなお前! これなら私もやりがいがあるってもんだっ!」
「ありがと! じゃあ──私からどんどん行くね!」
魔理沙の言葉にフランドールは笑みを浮かべながら……一枚の紙、スペルカードを取り出して宣言。
「禁忌【クランベリートラップ】!」
彼女の宣言と同時に、魔理沙の四方から魔法陣が展開される。前後、左右と順番に円球状の弾幕が放たれ──魔理沙に襲い掛かる!
「前後左右からの弾幕……! 確かに厄介だが──このぐらい、何ともないぜ!」
素早く状況を確認しながら、魔理沙は攻撃を避けていく、時折当たりそうな弾幕には自身の弾幕を放って相殺を。
「凄ーい! 全然当たらない!」
驚いたように、どこか嬉しそうにフランドールは言う。その様子を見てか、疑問を覚えたのか魔理沙は彼女に問いかけた。
「……? 最近来たとはいえ弾幕ごっこ、あまりしてないのか?」
「……私とたまに妖精メイドが相手してくれるんだけど──壊レちゃウの。妖精ダから、すグに治ルけど──」
魔理沙の問いかけに答えていくフランドールだったが……言葉づかいが段々とおかしくなっていく。それでも彼女は言葉を続ける。
「──オ姉様も、咲夜モ、めーリんも、パチュリーモ……私ト遊んデクれない。仲間外レニさレる。いツも、私は一人ぼッチ。ドウして? 何カ、私悪イ事をシタの? 悪イ子なノ? デも、魔理沙ハ私ト遊ンデくれル──」
攻撃が止み、スペルブレイク。しかし、彼女の表情は──
「──楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ楽シイ──」
──悦びに満ちていた。狂ったように言葉を繋ぎ、狂ったような笑顔を浮かべながら。この魔理沙との【弾幕ごっこ】を愉しんでいる。
急な変貌に魔理沙は驚きしかない。正気を確かめるように彼女はフランドールに話しかけるが──
「お、おいっ!? 急にどうしたんだ!?」
「ジャア、マダマダイクヨ──禁忌【レーヴァ―テイン】!」
彼女の言葉が届かない。フランドールは次のスペルを宣言した。そのスペルは炎の剣を模した得物。フランドールはそれを手につかみ──飛翔して魔理沙を斬りにかかる!
「うおっ!? 危なっ!?」
彼女はすぐに箒を動かし、彼女の斬撃を避け逃げる。しかし、フランドールは笑みを浮かべながら魔理沙に焦点を当てる。
「魔理沙ハ鬼ゴッコヲシタインダネ! 追イツクヨ!」
吸血【鬼】だからというわけではないかもしれないが……フランドールは自身を鬼として、魔理沙を追いかける。接近しては炎の斬撃を、距離が離れている時は弾幕を。魔理沙は必至に避け続けながら、弾幕を放つ。
「【イリュージョンレーザー】!」
白いレーザーの攻撃力が高い弾幕をフランドールに時折振り向きながら放つ。少ない時間だがフランドールに被弾できているレーザーはあるが……彼女はその事を気にする様子を見せない。
「──アハハハッ! モット楽シマセテヨ魔理沙ッ!」
「何だよこの強さ……!? 異変の元凶者でもないのに、それなり以上の実力を持ってやがる……! 案外、【強い奴】ってのは間違ってなかったみたいだな!」
ひたすら、彼女の攻撃を避ける。一撃でもまともに受けたら満身創痍に近いだろう。魔理沙は微量なダメージを負わせながら応戦。
そして、相手のキャパシティか、時間がきたのか……炎の剣が消えていく。スペルブレイク。
「危ねー……急変してから容赦がなくなったな。もう魔理沙さんは本気だしちまうぞ?」
「マダマダ楽シメルンダネ! 次ハ──禁忌【フォーオブアカインド】!」
疲れる様子は見えないまま、フランドールは次のスペルカードを宣言した。瞬間、彼女の体がブレ──彼女が四人に増える!
「おまっ!? 急に四人に増えるとか!?」
「「「「マダマダ楽シマセテネッ!」」」」
魔理沙の反応を気にすることはなく、四人になったフランドールは各々の弾幕を放ち始める。単純に言えば、密度が四倍。もしくは一対四。現在でも、魔理沙は若干不利だと感じていた。先ほどの【鬼ごっこ】での移動、弾幕の密度を濃くしてフランドールの弾幕に応戦。彼女のスタミナは確実に減っていく。このままいけば、魔理沙は負ける。
「……しょうがねぇっ! 本来は異変の元凶に取っておきたかったんだが……出し惜しみはしないぜ!」
必死に四人の弾幕を躱しながら魔理沙は、正八角形のアイテム──ミニ八卦炉を取出し構え始める。そして──スペルカードを取り出して宣言!
「──恋符【マスタースパーク】!」
瞬間……彼女の構えたミニ八卦炉から太い、密度が圧倒的に濃い、極太レーザーが一人のフランドールを襲う!
魔理沙は片手をミニ八卦炉を持っている肘を抑えながら、標準を合わせようとする。
「このまま一気に片付けさせてもらうぜ!」
二人目、三人目……と続いたときに、四人目のフランドールは現状を把握し、飛び回って回避行動に移す。
そして射程時間を終えたのか……魔理沙はゆっくりと構えた腕を下ろした。
「……本体にはダメージを与えられなかったか。だが……他の三人は潰した! それでスペルブレイクだぜ!」
自慢げに言う魔理沙の離れた正面に、フランドールは飛翔を止め……笑みを続けながら新しいスペルカードを宣言。
「禁忌【カゴメカゴメ】!」
彼女の宣言で、周りに円球状の弾幕が配置される。それはかなりの空間に配置され、魔理沙を取り囲むような配置で。弾幕による袋小路の状態に魔理沙はなる。
「! 弾幕が壁に!?」
「コレナラドウカナ!?」
フランドールは大きな円球状を辺りに放つ。そしてその弾幕が静止している弾幕に当たるにつれ──崩れ落ちるようにして魔理沙を襲いに掛かる!
「ちっ! 面倒なスペルばっか使いやがって!」
それでも魔理沙は箒に乗り続け、隙間を見つけて躱す。その繰り返しだ。
その様子を見てかフランドールは……とある行動に移す。
「ヤッパリ、ソノ箒ハ邪魔ダネ……ジャア──壊シチャオッ!」
「なっ!?」
フランドールは手を構え、その焦点が魔理沙の箒に。そして彼女は広げた手のひらを握りつぶすようにして動かし──叫ぶように言った。
「──ぎゅっとしてドッカーン!」
………………………………………………………………………………。
「……何だ?」
「…………アレ? 壊レナイ…………?」
──何も起こらない。何かしらのアクションはフランドールは起こしたつもりなのだ。彼女の能力である【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】で。
だが……その疑問は魔理沙は納得する事になる。ふと、後ろから黒い光を感じる。彼女は振り返って箒を改めて確認すると──竹を束ねている箇所に隠れるように、封結特性の御札が貼られていた事を。
「(! これは封結の能力が掛かっている札!? 何時の間にこんなのを──)」
『大事に扱ってくれよ? まぁ、保険も掛けてあるからな』
魔理沙は納得した。彼の言っていた保険の意味を。何かの原因で壊れるであろう箒を、壊れないようにしていた。彼固有の能力で。
「(そうか! 封結はこの箒を【壊れる】ということを封じているんだ! フランはこの箒を何かの手段で壊そうとしていた……まさか封結がこういうことを見通して能力を掛けてくれたのか……!)」
魔理沙は彼の厚意に嬉しい反面……体力に限界が来つつあった。彼女の運動、魔力。そして最後に放ったスペルカード。弾幕はパワーと魔理沙は口癖のように言っているが……その分のスタミナがもうほとんど無くなっていた。
フランドールの動揺で偶然、弾幕で囲うスペルカードはブレイクしていたのだが……それでも彼女は、新しいスペルカードを宣言しようと構え始める。
「壊レナイノハ驚イタケド……マァイイヤ! コノスペルカードデ──禁忌【恋の迷路】!」
彼女が宣言したとき……名前の通り、わずかに空き道がある弾幕を繰り出してくる。しかし……今の彼女にそこまで動くほどのスタミナがなかった。彼女はもう走馬燈のように出来事を振り返って──
「(やばいぜ……もうさっきのスペルカードで体力が……封結、悪かったぜ。せっかく箒は壊れないようにしてくれたのに──)」
『魔理沙っ! こっちに体を向けろっ!』
──急に聞こえてくる聞き慣れた、男の声。魔理沙はその声した方向に振り向いた時……何かに体が持たれているような感じがした後、目の前に感じる温もり。
魔理沙を正面に抱いてもなお、滑るように移動したながらその人物は迷路の出口へと向かっていく。その人物は魔理沙は確認出来た。その人物こそが、なも無き店の店主である──
「──封結!? まさか本当に封結なのか!?」
「それ以外何がある!? それに言っただろ!『行った先に犯人がいなかったらそっちに向かうから安心しろ』ってな!」
「(本当に……来てくれたのか……っ!)」
魔理沙は窮地の場面で約束通り仲間が駆けつけてくれ、安堵が広がる。封結は魔理沙をしっかりと片腕で離れないようにしながら、空いている手で弾幕を放つ。
第三者の登場で、必然的にフランドールは驚き、声をかけたが──
「誰!? アナタモ遊ビ相手にナッテクレルノ──」
「親切で言っておこう──後方注意だ!」
彼が後方に注意を促し、彼女は彼の言う通りに振り向いてみると……投擲されたナイフがフランドールを襲おうとしている!
「!? コノナイフッテ咲夜ノ──」
「そして──さらに後方注意だ!」
フランドールはナイフを回避していたのだが……死角になった後方から、封結が放った弾幕がフランドールに当たり、彼女はダメージを負う。
「ウッ……!?」
そして、一定量の弾幕によるダメージを与え続けたのか、制限時間がきたおかげか……スペルブレイク。封結はフランドールから距離をとり、安全な場所に魔理沙を運んで安否を確かめる。
「……一応、無事みたいだな」
「あ、あぁ……封結……その、なんだ……約束、守ってくれて、ありが──」
彼女が顔を俯けてお礼を言っていたところで──封結の傍に一瞬で現れた人物が一人。カチューシャに、三つ編み。メイド服を着た──十六夜咲夜。彼女は片手にナイフを構えたまま、封結に話し掛ける。
「封結、早く妹様を止めるわよ。まだパチュリー様が万全じゃないみたいだから……私達で時間稼ぎしないと」
「時間を操るのにそれを稼ぐとか……面白い事を言うな。咲夜は」
「褒め言葉として受け取っておくわ」
「……封結? 誰だぜそいつ?」
魔理沙から見れば、自分の知らない異性が彼と親しげに話していたら気になるだろう。彼女の疑問に答えるように彼は説明。
「この異変の元凶者の従者である十六夜咲夜だ」
「…………はぁっ!? それって敵だろ!? それなのに何でそんな風に話しているんだぜ!?」
「何。今はちょっとした事情があってな。目の前にいる……元凶者の妹であるフランドール・スカーレットか? そいつを止める為に咲夜と来たんだ」
「……訳がわからないぜ……」
「魔理沙。お前はもう休め。十分役目を果たしてくれたさ。ここからは──俺達に任せろ」
魔理沙の頭を撫でるようにして言った後、封結は振り返り咲夜の隣に並ぶ。
「さてとと……目の前にいうるのがフランドールで合っているよな? 咲夜」
「えぇ。合っているわ。そして……私達で妹様の狂気を鎮めないとね……!」
封結は刀を、咲夜はナイフを構え直す。フランドールは最初は戸惑いがあったものの……悦びへと変わった。
「アハハッ! 咲夜モ遊ンデクレルンダネ! ソレデ新シイ玩具モ! イイヨ! 一緒ニ遊ボウ!」
そうして三人は、それぞれの弾幕を放ちあい、戦闘を開始した……。
封結と咲夜にバトンタッチ。そして次話に続きます。
ではまた。