三人称視点。
では本編どうぞ。
宴会が本格的に始まる前。博麗神社では霊夢、魔理沙、結梨華。そして食料を持って来た封結が準備を行っていた。料理をしている霊夢が封結に声をかける。
「じゃあ封結、作るのは任せたわ。私は倉からお酒持ってくるから。結梨華、ちょうどいいからあんたも手伝ってちょうだい」
「まぁ……任された」
「わかりました!」
封結は霊夢の作業を受け継ぎ、結梨華は霊夢の手伝いで神社内から出ていき。そうして封結が作業に取り掛かっていた時に……帽子を脱いでいた魔理沙は少し声を詰まらせながら、彼にある事を尋ねる。
「……なぁ、封結。ちょっと聞きたいことがあるんだが……良いか?」
「それは別にいいが手伝ってくれ。俺は野菜を切っているから、適当に野菜を洗ってくれ」
「あ、あぁ。わかったぜ」
彼の指示通りにし、封結の隣に来て野菜を洗い始める。時折、魔理沙は封結を横目で見ながら。身長差がある所為か、上目遣いになっているようにも見えるが。
彼女の視線を感じ取ったのだろう。彼は顔を動かさずに魔理沙に声で確認を取る。
「で? 何が聞きたいんだ?」
「その……紅魔館にいる人間の……咲夜だったか? いつからあんな感じなんだぜ?」
「あんな感じというのは何だ?」
「だから、その……異変で敵対していたのにも関わらず、仲がよさそうだったじゃないか。何かあったのか?」
「何かあったかと言われてもな……少々話しただけだ」
「……その何を話していたんだぜ?」
魔理沙から続く質問の声。彼は少しため息をしながら、作業をしながら彼女に言葉を返す。
「別に大した話じゃない。気にしてもしょうがないぞ?」
「じゃあ私が個人的に気になるんだ。気になってしょうがない。今夜は眠れそうもないぜ」
「今夜『は』か。じゃあ今日しのげば明日から眠れるから問題ないな」
「……封結。さすがの私も怒るぜ? 何を隠しているようにしているんだ?」
「別にそういうつもりじゃない。言うならば、そうだな……『もしも』の話をしていた」
切り終えた野菜を皿に盛りつけながら答える彼に、彼女は詳細を求める。
「どんな『もしも』を話していたんだ? そもそも何でそういう話になったんだぜ……?」
「能力云々で話していたらそうなった。それでもしも俺と出会うのが早かったら店員として欲しかったなぁっていう事を話していただけだ」
「店員、ねぇ……封結は別に結梨華だけでも店員は足りるんだろ?」
「足りるかバカ。俺にも少し自由時間が欲しいんだ。今あるとしたら結梨華が自由時間を使っていないときだ。俺だって稼ぎたいのもあるが、ゆっくりと休みたいんだよ。異変の後の店の開店とかダルイ」
「……だったらさ──」
悩むように言う封結に魔理沙は彼に体を向けながら、頬を染めながらも彼に言葉を伝える。
「──わ、私が店員になっても良いんだ──」
「却下だ」
「封結!? 返答が早すぎるぜ!?」
ためらいもなく、質問内容を察して拒否する封結。続けて彼は驚愕している彼女に話を始める。
「お前を雇ったら知らず知らずに仕事をサボり始めるだろ? そして変な薬品を俺の店で暇があったら作り出すだろ? それとお前の話し方は客によろしくない。過去で最初に会った女らしい言葉なら別だが──」
「わぁーわぁーっ!? 言うな私の黒歴史をーっ!?」
彼の言葉を塞ぐように、焦って背伸びしながら彼の口を手でふさごうとする魔理沙。彼はそれを手で振り払い、ある事を伝える。
「それにたまに、お前の親類関係も来るんだぞ? 今では偶然鉢合わせしていないが……揉め事は避けられないだろ」
「…………諦めるぜ」
彼の言った言葉に、落ち込みの様子を見せる魔理沙だった。
『おーい、来てやったわよー』
外で聞こえてくる幼い少女の声。しかし、この声には多少の重みがある。封結と魔理沙は作業を中断し、神社の外に出ることに。
「紅魔館御一行のご到着か。まぁ、適当にくつろげば良いんじゃないか?」
「まぁ、誘われた側だしそうさせてもらうわ。それと……霊夢と結梨華はどうしたのかしら?」
「酒を取りに行っている」
レミリアの質問に封結は答えると……彼女の傍にいたパチュリーは魔理沙に怒りを込めながら話をふっかけた。
「魔理沙っ! 図書館の本を持って行ってくれたわね! 本を返しなさい!」
「安心しろ。死ぬまでに返すぜ」
「……良いでしょう。なら表に出なさいっ! 弾幕ごっこで取り返してあげるわ!」
「ちょうどいいっ! 私もこのイライラをどこかにぶつけたかったぜ!」
魔理沙はパチュリーに誘導されると、二人は共に飛翔。しばらくすると騒々しい音が聞こえてくる。
「……パチュリー様、大丈夫ですよね……」
彼女の使い魔である小悪魔は主の事を心配していたが。
封結は人物を確認していくと、門番である紅美鈴がいる事を気がかりに思い、話し掛ける。
「……門番がこんなところにいても良いのか?」
「今日だけは妖精メイドの方々にお任せしているんですよ。まぁ、これだけの荷物を持ってくるというのもありますが」
彼女の言う通り、片手でそれぞれの袋で持っている食料と──西洋の酒の瓶もある。少なくとも彼は見るのは初めてだったため、概要を尋ねようとするが──
「……? 何だその酒瓶みたいなのは? とりあえず酒か?」
「あぁ、これはですね──」
「【ワイン】というものよ? 封結は初めてかしら?」
レミリアの従者である十六夜咲夜が答えた。彼女の問いかけに彼は首を横に振る。
「【わいん】? 何か本で読んだことがあるな……何かたくさんの時間を使って作る酒じゃなかったか?」
「えぇ。それを私の能力で応用して作ったのよ」
「……やっぱ、その能力便利だよな……」
羨ましそうに咲夜を褒める様に言う封結。それで気分を良くしたのか、心なしか機嫌がよさそうだ。
そこへ──数種の酒の瓶を持ってきた博麗神社の主である博麗霊夢と、結梨華が戻ってきた。
「あんた達、来たのね。手伝える奴が手伝いなさい。その方が早く終えるから」
「ふむ……咲夜、出番よ。異変解決者達にどちらか上か示してやりなさい」
「仰せのままに」
異変の準備の手伝いを咲夜に言うレミリア。そして、結梨華の存在を確認して、喜びながら彼女に駆け寄るとある吸血鬼──フランドール。
「あ! 結梨華お姉ちゃん! もっと楽しいお話を聞かせてくれるっ?」
「う〜……お話をしたいのは山々なんですが……主人様、良いですか?」
悩むように、フランドールとの行動を許可を求める結梨華。仮にも現在は手伝い中だからだ。彼は少し目を閉じて考えた後、彼女に言う。
「……結梨華にはアフターケアで世話になったからな。本格的に出来て配膳するまでゆっくりしていて良いぞ」
「! ありがとうございます主人様♪」
許可が出て結梨華は嬉しそうにし、フランドールと離れた部屋に移動しようとしていたが……レミリアが静止の声を掛ける。
「……待ちなさい。私もそういう話に興味があるわ。聞かせなさい」
「要約『妹が盗られちゃう……私のって思わせなきゃ!』という事ですね!」
「なっ!? ち、違うわよそんな風に思ってないわよ!? ただ個人的にどんな話か気になるだけ!」
結梨華なりの解釈の仕方に焦りながら頬を染めて否定するレミリアに、フランドールは楽しそうに言う。
「お姉様もお姉ちゃんの話が聞きたいんだね! じゃあ一緒に聞こうよ♪」
「フランちゃんの言う通りなのですよ! さぁ、このまま身を委ねるんです!」
二人はそれぞれレミリアの左右へと移動し、腕を組むようにしてレミリアと動かすようにして二人も動いていく。途中、レミリアの抗議の言葉が発せられたが……部屋から移動されると、聞こえなくなった。
その光景を見てか、美鈴はどこか嬉しそうにしながら封結に話を振る。
「封結さん。今回の事はありがとうございます。まさかお嬢様達のあのような光景が見られるとは思っていませんでした……」
「やったのは俺じゃない。礼は結梨華に言ってくれ」
「いえ。その結梨華さんと繋がりがあったのは封結さんじゃないですか? それに聞いたところ一つ屋根の下で一緒に暮らしているみたいですし……。ですので封結さんにもきちんとお礼と思いまして」
「……まぁ、どうも」
単調だが彼は彼女に返しの言葉を。そして、会話を終わったのを見計らった咲夜は彼に話をしていたが──
「それで封結……私はどうすれば良いのかしら?」
「ん……そうだな……握り飯でも作るか。ここじゃ狭いから外に出て、一緒に握り飯でも──」
「──それは私がやるから問題ないわ。咲夜は適当におつまみでも作ってちょうだい」
途中で霊夢が話に割り込み、咲夜に別の仕事を押し付ける。その事に咲夜は反応してか、少し機嫌が悪そうに反論の言葉を。
「……私は彼に頼まれたのよ? おつまみはあなたでも出来るでしょう?」
「ここの家主は私よ? 私がしたいことをして何が悪いワケ?」
「むしろ家主だから休んでいても良いのよ? 私は彼に頼まれたことを一緒にしようって言われているんだから」
「別に封結の指示通りじゃなくても良いのよ? ほら、封結。あんたも何か言いなさい」
軽く口喧嘩が発生している中で、霊夢は彼に発言を促す。彼は当然のように言う。
「じゃあ俺はつまみでも作っておくから二人で握り飯を作ってくれ。二人して握り飯を作りたいならそれで良いだろ。美鈴と……小悪魔だったか? 二人は別な作業を教えるから、手伝ってくれるなら聞いてくれ」
「「えっ!?」」
「じゃあ私も手伝いますね。料理は久しぶりですが……頑張ります」
「はい。わかりました」
霊夢と咲夜の驚愕をよそに、封結は彼女二人に御握りを作ることを任せた。そしてつまみを作る作業の手伝いを美鈴と小悪魔に促し、彼は説明に入っていた。おそらく彼の中では「二人が握り飯を作りたいなら任せるか」という勝手な判断だったりする。
そこへ──風が入り込むように、一人の烏天狗が呆然としていた二人に話しかけたのだが──
「あやや……ようやく妖怪の山での仕事が終わりました……ん? どうかしたんですか霊夢さんに咲夜さん? それとお聞きしたいんですけど、魔理沙さんとパチュリーさんが上空で弾幕ごっこをしているのですが──」
「「……ちょっと表に出なさい……」」
「あ、あやっ? どうしてそのような怖い表情で御札とナイフを構えているんですかっ? もしかして手伝いに来るのが遅かったから怒っているんですか!? ちゃんと手土産にお酒だって持ってきて──って、どうして二人して投擲し始めるんですかーっ!? 私まだ何もしていないですよーっ!?」
偶然で遅れて宴会場である博麗神社に来た射命丸文だったが……少しの間、彼女は標的にされて逃げ回っていた……。
多少の事があったが。頭を冷やした霊夢と咲夜は御握りを作る作業に。文は身の覚えのないとばっちりに封結に抗議していたり(美鈴と小悪魔は苦笑いをしながら作業を続けていたが)。上空での弾幕ごっこの最中に喘息で体調を悪化させたパチュリーを魔理沙が面倒をみたり。疲れた表情をしながらレミリアはフランと結梨華の話を聞いていたりなど。時間は少しずつ進んでいく。
そして、ようやく配膳作業でいるメンバーはその作業に勤しんだりしながら──ようやく、宴会の準備を終えた。それぞれ博麗神社の居間の座布団に好きな席に座る。
……途中、封結の隣に座ろうとしている人物達がいたが、彼は机の隅に座った後に結梨華が流れるように座った。その隣に続くようにフランドールとレミリアも座る。諦めたかのようにその人物達はそれぞれの座席へ座ったり。
後は各々勝手に飲んでは騒ぎだしたりしていた。魔理沙と図書館組は何やら魔法について討論していたり、文は霊夢と美鈴から異変の事を改めて聞いたり私的な事を聞いたりしてネタ作りをして。吸血鬼姉妹と結梨華の世話をメイドがして。封結はゆっくりと食べ進める。
時間が過ぎていき、違う意味で人と騒ぎ合っていたり、酔いつぶれて眠っていたりしている人物がいる中で……封結は宴会場である居間を抜け出していた。神社の賽銭箱の近くでのあがる階段付近の柱にもたれかかって座り、外に酒の入った入れ物を傍に置き、猪口をゆっくりと口に近づけて飲みながら月を眺めていた。
そこへ……一人の人物が彼の元に近寄り──屈んで彼の目線で話し掛けてくる十六夜咲夜。
「こんなところにいたのね、封結。やっぱり騒がしいのは苦手なのかしら?」
「苦手というワケではない。ただ、あまり長居する気がないだけだ。普段はこういう静かな場所が落ち着く。それより主人達は良いのか?」
「お嬢様達は眠っちゃったわ。今日は色々な事があったからだと思うけど……隣、良い?」
「別に構わん」
彼は咲夜の言葉を了承すると、彼女は彼がもたれかかっている柱に同じようにもたれかかる。彼が持たれている方角で示すなら、月が見えている南。彼女は東向きにもたれかかり、顔の向きを変えて酒を飲んでいる封結に話し掛けた。
「……昨日までは敵だったのに、こうして騒いで飲む機会があるとは思わなかったわ」
「大抵異変後は酒でも飲んでおけばそういう認識は無くなるんだ。これから先も異変があればそういう機会は訪れる事を頭に入れておくと良い」
「……異変、ねぇ……でも、そういうのって異変を起こした側と解決した側でやるものじゃないの? 部外者がそんな簡単に宴会に来られるとは思えないけど?」
彼女が思ったことを口に出し、彼に改めて問いかける。封結は酒を喉に通した後、彼女の疑問に答えた。
「だったら異変解決者になれば良いんじゃねぇの?」
「……私が異変解決者に?」
「そうすれば、異変の関係者って事で気楽に参加できるだろ? まぁ、ぶっちゃけそういう事は気にしないで宴会に参加出来るんだけどな。文がその例だ」
彼の猪口に酒が無くなったので、新しく注ぎながら封結は答える。再び酒を口に含んでいる中で、咲夜は彼にある疑問を。
「……どうして封結は異変解決者である事を名乗ろうとしないのかしら? その方がお店でも興味本位でお客も来るんじゃないの?」
「結梨華が関連しているってのもあるが……それは違うと思うんだ。それはあくまで『異変解決者』としての俺。『店主』としての俺じゃないんだ。そうなったら違う意味で冷やかしが来る可能性もあるだろうし、腕っ節が強いだけの本当のバカが喧嘩を売りに来る可能性も無いとは言い切れない。大体、異変解決者というのは『強い』というイメージがある。魔理沙は別として、代々の博麗の巫女に手をあげてはいけない。それに俺は外見が女々しく見えるからな。この長い髪の毛の所為かもしれないが」
「だったら切れば良いんじゃない? そうしたら男らしく見えるだろうし……あなただったら格好良いと思うわよ」
酒が入っている所為かわからないが、咲夜は頬を染めながら彼に髪の毛を切る事を勧める。だが……彼は首を横に振った後、後ろでまとめられている髪束を触りながら答えた。
「どうもな、未練がましいというかなんというか……この方が安心するんだ」
「未練がましいって……その額にある眼鏡は? 普段は額に掛けてあるばかりで、目元に掛けていないじゃない? 視力は大丈夫なの?」
「あぁ? これ?」
彼は酒を飲むのを止めて縁側に置くと、眼鏡を外した後、咲夜に手渡した。
彼女は疑問に思うものの、レンズの先の景色を見ようとすると──
「……! これって──伊達?」
「そう。伊達なんだよ。ぶっちゃけ裸眼で普通に見える」
「そうなると、これはファッションなの? 異変の最中掛けていたのも。そうなると邪魔じゃない?」
「違う店で店主の霖之助の眼鏡は本物だが……俺はこれをしている理由はちゃんとあるつもりだ」
「……それは?」
彼の意味深の言葉に咲夜は耳を傾けた。彼女の興味津々な態度に機嫌が良さそうに、彼は答える。
「何か眼鏡があったほうが──店主っぽいだろ?」
「…………(クスッ)」
「…………? どこに笑う要素があったんだ?」
まさかの言葉に咲夜は笑いかけた。少し熱のある喋り方をしたとおもったら、彼女は──子供っぽいとギャップを受けたからだ。普段は物事に冷静に対処している彼が、『眼鏡があったほうが店主っぽい』という外見的な理由で眼鏡を掛けている。予想外の言葉に咲夜は彼の発言を面白く感じた。
彼はいたって真面目に答えたつもりなのだが、彼女が何故笑っているのかわからない。彼はその事を問うと、彼女は少し謝りの言葉を交えながら言う。
「ごめんなさいね。あなたの事だからもっと深い理由があるかと思ったから……その理由が予想外過ぎてちょっと、ね……」
「そうか……? それなりの理由だと思うんだが……?」
「まぁ、良いんじゃない? 人の感性はそれぞれだと思うし、そのままでいてくれたら──はい、返すわ店主さん」
「……何か納得いかん……」
不機嫌そうに言いながら彼は咲夜に伊達眼鏡を返してもらう。そして、彼女は話を変えるように、彼の耳元に顔を近づける。
「ねぇ……もし、良いのなら──」
小声で、咲夜の唇から封結の耳元に言葉を伝える。話が終えると咲夜は離れ、確かめるように封結は尋ねる。
「……マジか?」
「えぇ。お嬢様には許可はもらっているし、時間があるときにはね」
「……まぁ、その時は──」
彼が言いかけているところで──襖が開き、酒瓶を持った異変解決者二人、メモ帳をもった文が現れた。その人物たちは各々のリアクションをとりながら、二人に話しかける。
「封結、やっぱりこんなところに──ってどうしてメイドと一緒に酒を飲んでいるのよ!? あんたは私に酒を注ぎなさいっ」
「二人して飲むよりは多数で騒いだ方が良いに決まっているぜ! ほら、二人とも戻るぞ!」
「あやや……こんなところで密会とは……スクープですかねっ!」
「……それなりに酒が回っているな、お前ら」
「じゃあ、戻りましょうか。話したいことは話し終えたし」
二人は促されるまま、宴会場の居間へと戻っていく中で……小声で咲夜は封結に話し掛けた。
「……少なくとも、明日からもよろしく」
「……あぁ。私用で少し俺は出かけるが……よろしく」
話し終え、夜遅くまで宴会は続いた……。
次話で最終話です。
ではまた。