幻想郷に店を構えてます【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 紅魔郷までの物語、完結です。
 三人称視点。
 では本編どうぞ。



最終話『日常』②

 宴会が終わった次の日の朝。後はもう異変関係者達は日常に戻るわけだが……その中、霧雨魔理沙はいつものように封結の店である【名前の無い店】に来ていた。

 

「さてとと、いつもの通り封結から飯をたかるか。結梨華はしょうがないとして……霊夢より先に来られたのなら結構意味があるぜ」

 

 そう呟き、彼女は挨拶をしながら店に入ったのだが──

 

「おーい、封結! 結梨華! 飯を買いに来たぜ──」

 

『──いらっしゃいませ……って、あなたは魔法使いの魔理沙じゃない……』

 

「…………は?」

 

 魔理沙は一瞬困惑した。いつも聞き慣れているはずの二人の声ではなく、違う女性の声。それでも、聞き覚えはあるのだが。

 

 彼女は声のした方向に振り向くと、会計する場所に座りながら本を読んでいる、清楚な服装を着て三つ編みを両耳の傍にしている──紅魔館の住人十六夜咲夜がそこにいた。

 

「あいにく、封結はいないわよ。結梨華ならまだ寝ているけど」

 

「いやいやいやっ!? 何で咲夜がここにいるんだぜ!?」

 

 咲夜は当然のように言うが、魔理沙は疑問しか湧かない。魔理沙はその事について問いかけると、咲夜は平然と答える。

 

「お嬢様達は昨日は例外として、夜に活発的になるのよ。午前中でもうやる事を終えちゃってね……。暇な時間、ここで雇って貰っているのよ。残っている時間は有効活用しないと」

 

「……それはつまり……店員になっているのか!?」

 

「えぇ。そうなるわね。ちゃんとお嬢様にも許可は貰っているし、彼も私を受け入れてくれたから」

 

 彼女の言葉に驚きを隠せない魔理沙。魔理沙自身はとある理由で彼の店で働く事は好ましくない。しかし、自分が出来ないことをしている咲夜に、彼を店員に採用している事に。確かに店員は欲しいと言っていた彼だが、こんなに早く雇うとは思っていなかったからだ。

 

 ……ちなみに咲夜がレミリアに許可を貰う過程で、内容は結梨華の正体を探るという方便にしているが。確かに彼女自身も気になるモノの、大して執着は無い。

 

 色々と魔理沙は問い詰めたい質問が多数あるが……一先ずは店主の情報を求めた。

 

「じゃあ、封結はどこに行ったか知っているのか?」

 

「出かけてくると言っただけで、詳しい事は教えられてないわ。そんなに時間は掛からないって言っていたけど……心当たりある? この事は結梨華も知らないみたいなのよ」

 

「うーん……あいつが行くとしたら両親の墓参りだが……その日はもう過ぎているしなぁ……。買い物なら適当な人里か、香霖堂だと思うし……」

 

「(墓参りについては結梨華から聞いたけど……この事については腐れ縁でも知らないのね……そうなると霊夢も知らないのかしら──)」

 

『──封結ー、結梨華ー? ご飯をたかりに──って、あんた達何しているのよ?』

 

 魔理沙の情報を元に考えていた咲夜だが、ちょうど良く博麗の巫女である博麗霊夢が店に訪れた。手には霊撃札を持っており、彼女なりの【通貨】を持っているが……魔理沙を始め、この場にいるのが珍しいと考えている咲夜に視線を向けている。

 

 考えていた事も含め、咲夜は彼女に魔理沙の質問を同様に尋ねてみた。

 

「あなたは知らない? 彼はどこかに行ってくると言っていたんだけど……」

 

「知らないわよ。あいつはたまにどこかにフラフラしていくんだから。腐れ縁でも、そんないちいち封結の行動なんてわからないわよ。それより……何であんたがここに居るのよ?」

 

「簡潔に言えば暇な時間はここで働く事になっているわ」

 

 霊夢の質問に当然のように返す咲夜。その事に彼女でも驚きの様子を見せる。

 

「はぁっ!? 封結が!? あいつよほどな事が無い限り店員なんて雇わないわよ!? 私が善意で店員なってあげようと言った時は断ったくせにっ!」

 

「……霊夢。本当は?」

 

 彼女の言い分に心なしか似ていると思いつつ、魔理沙は本音を尋ねてみると。

 

「そうすればお店で食べ放題じゃない?」

 

「お前不純すぎるだろ……(私も言えた義理じゃないが)」

 

 会話が続く中で、店の中の襖が開いた。眠そうに目元をこすりながら、普段とは違う服装で、白い和服で外見が幼く見える少女。

 

「むぅ〜……久しぶりの遅寝の満喫中なのにうるさいですよ〜……」

 

「結梨華……珍しいわね、あんたがいつもより遅く起きてくるなんて?」

 

「宴会で少し夜更かしの分をあるんですよ〜……。普段、定時に寝ているもので。それで咲夜さんが代わりにお店をしてくれるという事で、結梨華はお休み中なのです……。後で龍神の像にお祈りしてきますが……」

 

 ふぁ〜……と、欠伸をしながら答える結梨華。そのような彼女に構わず、魔理沙は結梨華に咲夜の事について話し掛けた。

 

「……結梨華は反対しなかったのか? 新しい店員を雇うことについて」

 

「主人様がむしろ咲夜さんを採用したがっていたので、結梨華は反対する事はないです……。むしろお仕事仲間が増えて結梨華は嬉しいのですよー……」

 

 結梨華は咲夜がこの店にいる事を肯定と示した。

 

 しかし……誰一人知らない封結の所在について、疑問を持っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──コホッ」

 

『? どうした封結? 風邪でも引いているのか?』

 

「……そう言うワケでは無いと思いますが……異変や宴会の疲れの影響もあるかもしれませんね……」

 

「まぁ、お前の場合は店の経営に、異変解決までやっているんだ。普段好きなことを没頭している霊夢とかと違うんだからしょうがないさ」

 

 軽く咳き込みながら、とある人里から少し離れた一軒家に、封結はいた。彼は正座をして、珍しく敬語で話している。一方、彼の目の前に話し相手がいるのだが……その女性はあぐらをかいて酒を飲んでいた。

 

 彼女の振ってきた話題から外れ、本題に戻るように封結は話を再開させた。

 

「──それで、今回の異変である【紅霧異変】は以上です。無事に異変解決者である霊夢、同じく霧雨魔理沙が解決しました」

 

「今回の話を聞くとなると、霊夢が異変元凶者を退治したみたいだねぇ……霊夢が作ったスペルカード勝負──弾幕ごっこで。霊夢の代で新しい規則を作ったときはどうなるかと思ったが……結構良いみたいじゃないか。私もやってみても良いかもねぇ……」

 

「……貴方なら、大抵の妖怪は退けますよ。霊夢とは違うベクトルで強いんですから」

 

「ほう? じゃあお前は私を人外とでも言いたいのか?」

 

「種族は人間ですが、実力は人間以上と言っているんです。侮辱などの内容は含まれていません」

 

「丁寧に説明してくれるね。まぁ、お前が私を貶すとは思っていないしな。これは私の単なる意地悪だ」

 

 豪快に笑いながら、封結に酒を注がせることを動作で示す女性。呆れながらも彼は彼女の杯に酒を注ぐ。

 

 注ぎ終えた後で──彼はいつも思っていたことを彼女に言った。

 

 

 

 

 

「引退にしても、早すぎると思うんですけどね──今ではもう【先代の巫女】と呼ばれているんですよ貴方?」

 

 

 

 

 

 彼が言った【先代の巫女】。目の前に居る彼女こそが、霊夢の前の代である──先代の博麗の巫女である。

 

 封結の言葉に何ともないように言葉を返す先代の巫女。

 

「私の代の時は、名前では無く【博麗の巫女】と呼ばれていたからねぇ……。それに、私はもう出番はないのさ。霊夢は私と違って天才で才能に溢れているからね。これからのことも考えても、私が引退しても何も問題は無い。しばらくの間幻想郷の管理は霊夢に任せておけば問題ないんだよ」

 

「だとしても、もう少し霊夢にいろいろ教える事はあるでしょう? 巫女としての生活態度とか生活態度とか生活態度とか」

 

「……まぁ、腐れ縁──というよりは幼馴染みか。それについては封結が何とかするんだな。お前は同年代の人間と比べると精神的に大人びているんだ。教えるとかそういう類いは得意分野だろう?」

 

「……間接的に面倒くさいと思ってません?」

 

「本音でいうならそうだね」

 

 彼の問いかけに素直に答える先代の巫女。それでも彼女は言葉を続ける。

 

「一時お前のいた【童の集い】でも、年長だった所為もあると思うぞ? それでお前は全般的に年下には甘い。だから霊夢はそれも含めて、お前を頼りにしているんだ」

 

「頼りというよりは我が儘の気が……」

 

「むしろ霊夢は私より封結の方が興味があるから軽く嫉妬を感じている」

 

「逆に貴方が霊夢の面倒を俺に触れさせたのが一つの原因ですからね?」

 

「それを置いておくとしてだ」

 

 露骨に会話を逸らした先代の巫女だが、何食わぬ顔で違う話題に移した。

 

「……お前がここに来てくれる事はありがたいと思っている。より詳しく、霊夢の近況や異変、お前の生活模様を聞けて安心できるよ。これも私にとっては一種の楽しみだからな」

 

「……それは何よりです」

 

「それじゃあもう報告は以上か? 他に伝えることは?」

 

「無いかと。では、俺はこれで──」

 

 話が終わり、封結は立ち上がり去ろうとしたところで……先代の巫女から制止の声が掛けられた。

 

「あぁ、ちょっと待ってくれ。それとは別に聞きたい事がある」

 

「……何でしょうか?」

 

「お前のところで居候している……結梨華だったか? どうだい? その子の様子は?」

 

「……幻想郷にちゃんと溶け込んでいますよ。現状、問題はなさそうです」

 

「そうか。なら帰って良し」

 

「……失礼します」

 

 最後にきちんと封結は別れの挨拶をし、部屋から出て行った……。

 

 

 

 

 

「……あいつがあの訳ありの少女の名前に【結】を使っていたときは驚いたが……そこは、両親に似たのかねぇ……。封也(ふうや)結衣(ゆい)……お前達の息子はきちんと立派に育っているよ──む? いつも何かを伝え忘れたような気がするが……まぁ、良いか」

 

 

 

 

 

 

 

 封結が人里で店に移動しようとしていたころ。寄り道がてらに人里の違う店の店頭にある品を見定めていた。

 

「……この商品を取り入れるのも良いかもしれない……しかし、それをどう工夫して、売るのかが問題だな……」

 

 いろいろと店の改善点、商売の考えを巡らせる中で考えたところ──

 

 

 

 

 

『あら? 何をそんなに熱心に見ているのかしら?』

 

 

 

 

 

 ──女性から声を掛けられた。彼は声の主に反応し振り返ったところ──その女性は紫を主体にしたドレスを着ており、ナイトキャップに見える、リボンがついている帽子を被っている。髪の毛は長髪で枝分かれした髪の毛の束にリボンを付けていて、さらには日光を遮るための日傘をさしていた。その女性の雰囲気は何故か近寄りがたい。そのような印象を封結は感じていた。

 

 少し彼は対応に戸惑ったものの、一先ず彼女の言葉に返事をした。

 

「……こういういろんな店の商品を見て観察することで、ウチの商品としてどう受けるか考えているんだ。世の中、店は競争するからな」

 

「その口ぶりから判断すると……あなたもお店を経営しているのね。見た目、若そうに見える人間なのに」

 

「まぁ、そうだ。名前の無い店だが……それなりには繁盛しているつもりだ。気があったら寄ってくれると助かる」

 

「気が向いたら寄ってみるわ……あなたのお店はいつも騒がしいみたいだから少し面白そうよね。じゃあ、私はこれで」

 

 適当な話を交えた後、その女性は歩いて立ち去って行った。だが……彼はその女性に疑問を覚えていた。

 

「(……? 別に商品を見るぐらい普通だろうに。それに、騒がしい事……まるで俺の日常を知っているかのような言い回しが気になるが……遠目で見ていたんだろうか。やっぱ、霊夢達がいることによって少し客の出入りが変わってくるんだろうな……それをどうするか……?)」

 

 少し悩みを抱えながら、封結は自分の店に帰って行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 人里から離れた場所。封結に話しかけた女性は、思っていたことを呟いていた。

 

「……今日、初めてコンタクトをとってみたけど……こうして触れ合ってみるとただの人間よね──(らん)。いるかしら?」

 

『はっ』

 

 彼女の声に、一人の女性が現れた。その女性は服の上に青い掛けがあり、服の手の袖口が広いおかげか、両手を袖口に入れて腕を組むようにしている。彼女も帽子を被っているのが……頭には三角形の形が突出している。さらには彼女の後ろ腰下の近くには──狐の尾と見られる尻尾が九本あった。

 

 その妖怪と判断できる女性──藍と呼ばれた女性は、目の前に女性の言葉を聞く姿勢を。

 

「あのお店の状況はどうかしら?」

 

「現状は博麗の巫女、人間の魔法使いの異変解決者がいます。さらには、今回の紅い霧の異変の首謀者の従者である十六夜咲夜も確認できます。会話から察するとなれば、紅魔館のメイドはこれからはあのお店と深く関わっていきそうです」

 

「……花結びをしている少女の正体はわかったかしら?」

 

「……(ゆかり)様のスキマ越しで見させてもらいましたが……封結、彼の能力で妨害されていて正体はわからずじまいでした。おそらく、あの図書館での出来事は誰もわからないかと……。それに加え、彼の能力はその花結びの少女に掛けているようなので……彼女の正体を知るためには、彼の能力を解く必要があるようです」

 

「……封印や結界関係ならば彼は霊夢や私より上……彼の能力は縛り事を与える能力だもね……藍、それはしょうがないわ」

 

 そして【紫】と呼ばれた彼女は片手をかざし……空間が歪んでは、新たな空間を生み出した。その空間の背景は、多数の目が映し出されている。

 

 その空間を彼女は作りながら……どこか、寂しげな表情をしながら言う。

 

「もしも、彼が幽々子(ゆゆこ)の時代に生きていたのならば……いえ、考えるのは止めましょう。過ぎ去った事はもう後戻りは出来ないわ」

 

「……紫様……」

 

「それにしても……不思議よね。霊夢は縛られない能力だというのに、逆に彼は縛る能力だもの。これほど正反対な能力はないわ。彼が霊夢に気に掛けるのも、わかる気がする」

 

 彼女が作った空間を広げ、人が入れるほどの大きさにする。そして目線で【藍】を促し、彼女がその空間に入った後で……【紫】は続くようにして入って──

 

 

 

 

 

「これからも、彼の動向も注意した方が良いわね。封結……いえ、──封結」

 

 

 

 

 

 ──二人の女性は、その場から消えていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

『──おーい、帰ったぞー。結梨華、咲夜ー』

 

 名前の無い店に店主である封結が帰ってきた。居候をしている少女の名前と、新しく雇った人物の名前も。その二人はきちんと反応し、彼の元に寄って来た。

 

「お帰りなさいですー!」

 

「お帰り。一言伝言を残して、どこに行っていたの?」

 

「ちょっとな。違う店の品を見定めたりしていた」

 

 適当に彼は質問に答えているところで……店の奥から、今でも見慣れている二人も出迎えた。

 

「封結~……ご飯~……」

 

「朝っぱらから来たのにも関わらず封結がいないんだもんな……ま、封結も羽を伸ばしたいのもあるんだろうけど。それより腹減ったぜ」

 

「……意外にも、先に食ってなかったんだな」

 

 少し意外そうな反応をしていたが、その事に霊夢は少しいらつきを込めながら彼の言葉に意見する。

 

「咲夜がそういう事に厳しかったのよ……結梨華は店の経営を咲夜に委ねているって言っていたし、真面目に対応しすぎなのよ」

 

「まがりなりにも彼にお店の事は頼まれているからね。ちゃんと彼が望むような働きはするわよ。あなた達みたいな物々で商品を買おうだなんて甘いわ」

 

 当然のように霊夢の発言に意見する咲夜。そして話を戻すように霊夢は最後は弱弱しくだが言う。

 

「それで封結が帰ってくるのを待っていたのよ。店主であるあんたが戻れば権限は封結にあるわけでしょ? だからご飯ー……」

 

「……そうなると魔理沙もそうだったのか?」

 

「そうだぜ。だから私達はさっさと飯が食いたい」

 

 霊夢の言葉を聞き、彼の確認の言葉に頷きながら答える魔理沙。彼はため息をつきながら、行動を移し始める。

 

「はいはい。じゃあ作ってくるから待っていろ……結梨華は手伝ってくれ」

 

「わかりましたっ。結梨華、いつも通り頑張っちゃいますよっ」

 

 彼が動くのと同時に結梨華も動き出す。二人が動こうとしている中、咲夜は彼に声を掛ける。

 

「……結局、この二人の分の朝食も作るの?」

 

「いつも通りに霊撃札とマジックポーションを持ってきているだろうからな……何かしらは代価としてもらっているわけだからだ。咲夜は気にしなくてもいいからな。お前はここの店員でもあるからそういう代価はいらん。まかない食だと思ってくれ。俺が支度している間、店番を頼んだ」

 

「……えぇ。わかったわ」

 

 きちんと頼りにしていてくれているのか咲夜は特に意見する事はなく、勘定をする場所に移動した。店の三人はともかく、腐れ縁の常連は居間へ移動しては背中を伸ばして畳に寝ころび始めた。

 店主である封結は少し呆れながらも、結梨華と共に少し遅い朝食作りを始めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 一通りの仕事を終え。昼前になる時間になったころ、咲夜は自身が持っている懐中時計の時刻を確認しながら封結に話しかけた。

 

「封結。そろそろ私は帰らなくちゃいけないわ。昼は紅魔館で仕事をしないと」

 

「ん? そうか。とりあえずありがとな。咲夜がいる分、全然仕事効率が違くて助かった」

 

「……そう。褒め言葉として受け取っておくわ」

 

 彼の褒める言葉に、どこか満更でもなさそうな咲夜。その二人の様子を見てからかはわからないが……霊夢と魔理沙は彼に行動を促した。

 

「じゃあ封結ー。今度はお昼ご飯ー」

 

「昼ごはんは一体何するんだ? まぁ、封結が作るもんだったら何でも構わないが」

 

「お前らは何時まで居座るつもりなんだ……?」

 

 遠慮のない二人に疑問しか思わない封結。何もしないでゆっくりとしていた二人を判断してか、咲夜は注意するように言う。

 

「……せめてあなた達二人で料理しないと思わないの?」

 

「だって正直めんどくさいもの。私はここにいる時は封結の料理を食べてゆっくりするって決めてんのよ。ここは良い空間だわー」

 

「私は別に作っても良いんだけどな。ただ……封結はあまりキノコ料理が好きくないんだ」

 

「……そうなの?」

 

 少し意外そうに咲夜は真相を彼に確かめる。その彼は少し悩むようにしながら答える。

 

「……まともに自分の能力で保護していないときに食べた時はトラウマでな……。その時の魔理沙は毒キノコの種類があんまりわかっていない時だったんだ。それで体調を崩して以来……キノコ料理はあまり得意じゃない」

 

「封結さ、昔の私と今の私はレベルが違うんだぜ? そろそろ私の料理を食ってみろって。病みつきになるぞ」

 

「……気が向いたらな」

 

 曖昧な返事で魔理沙の言葉を流す封結。どうやら現在は食べる気はしないらしい。

 

 その光景を見てか結梨華は、どこからか楽しそうに言う。

 

「何だか【家族】って感じがしますね……主人様がお父さんで、咲夜さんがお母さん。霊夢さんと魔理沙さんは娘さんみたいです」

 

「「それは異議を申し立てる(わ)ぜ」」

 

 彼女の言葉に不満があるように言う腐れ縁の二人。あまり詳しい結梨華の事情を知らない咲夜だからこそ言える言葉。

 

「……見た目お嬢様の外見年齢に指摘されるのってどうなのかしらね……?」

 

 どこか気分がよさそうに言う咲夜。それでも二人は不満そうな表情をしている。

 

 そして話を中断させるためか、封結は咲夜にある事を話し掛けた。

 

「さてとと、咲夜には給料を払わなくちゃな。とりあえず労働時間から考えて──」

 

「あ、封結。お金は別に良いわ」

 

「……は? マジか?」

 

 急な彼女の断り。彼は信じられないような声を出した後、彼女は言葉を続けた。

 

「でも……給料の代わりにお店の商品を貰っても良いかしら? 別に私はお金に困ってないしね。それだったら生活に役立ちそうな商品や、あなたが作った食料関連でも良いと思ってね。わざわざお金をもらって買うよりも、労働をお金として購入するのも良いでしょ?」

 

「咲夜さん凄いですっ! きちんとしたお店の売買の仕方の一つですっ」

 

 彼女の考えに結梨華は賞賛。しかし、当本人である封結は複雑な顔を浮かべている。

 

「う、うーん……間違ったことは言っていない。確かにお金を介さず手っ取り早い買い物ではあるが……何か違和感があるな……。しかし、労働してもらったから断るに断れないしな……」

 

「肯定として受け取っておくわね、その言葉。じゃあ、何選ぼうかしら……」

 

 彼の肯定ともいえる返事に咲夜は機嫌を良くし、店の中で商品を選び始める。その事に便乗しようとしたのだろう。霊夢と魔理沙も店の中を動き回り始めた。

 

「じゃあ私も霊撃札を払って買いましょうか。お昼ご飯が出来るまでね♪」

 

「そうだなー……私も何か探してみるか。封結、マジックポーションを適当に置いておくぜ☆」

 

「……お前ら……」

 

 彼の言った事は聞こえていないようで、霊夢と魔理沙も店の中を練り歩く。彼はその二人に声を掛けようとしたのだが……店の外から、来訪者の声が店の中に響いてきた。

 

『すみませんー!【文々。】新聞発行者の射命丸文ですけど……封結さんはいらっしゃいますかーっ?』

 

「……文か?」

 

「ですね。主人様、お昼ご飯の材料は結梨華が用意しておくので、対応をお願いしても良いですか? 一応、文さんも主人様の事を呼んでいるので」

 

「……あぁ」

 

 結梨華に促され彼は一先ず【買い物】をしている三人を置いておき、店の外に出る。そこにいたのはもちろん、紅魔館に一緒に訪れた烏天狗の射命丸文だ。彼女は背負っているカバンから新聞を取り出し、彼に手渡しながら話し掛ける。

 

「封結さんは当事者の一人という事で知っていますが……これは紅霧異変についての新聞です。それでどうぞ」

 

「……新聞、か……まともに読んだのは初めてかもしれないな……」

 

「あ、それで埋め合わせの事なんですが……良いですか?」

 

「……一応聞こう、何だ?」

 

 彼女の言った埋め合わせ。封結が異変解決者としてのことを秘密にする代わりに言った事だ。彼は彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「それはですね……私の発行する【文々。】新聞をお店の商品としてどうかと思いましてね」

 

「……新聞を?」

 

「はい。一応、私なりにいろんな方に読んで貰えるようには努力はしているんですが……中には私が妖怪という分類上、怖がる人間の方がいるんですよね。それならば、人間の方に売ってもらえれば良いのではないかと思ったんです」

 

「……まぁ、中には妖怪を毛嫌いしている奴もいるからな」

 

「それに、それだけはないんですよ? ここの記事をよく読んでみてください」

 

 文は封結が広げながら新聞を読みながら聞いているところに、ページを捲ってある記事のピックアップ。そんな大見出しではなかったが──

 

「……! 俺の店の紹介がある!?」

 

「そうです。本当なら広告料として私がもらいたい気分なのですが……そこは妥協して、無料で提供します。封結さんや結梨華さんがお店の情報を広めるのは私がやるという事です。もしも仮に直接私の新聞を買う方がいるとして、その記事に興味を持たれたのなら……お店に寄るかもしれませんね。どうですか?」

 

「……メリットは確かにある。俺が大した労働をせずに【店主としての】宣伝ならば俺は一向に構わない。よし、その条件を飲もう!」

 

「あやや♪ ありがとうございます!」

 

 彼女の説明に自分に利益があると判断した封結は申しれを受け入れた。そして彼はさらに交渉に入ったのだが──

 

「それで……何部お前のところから仕入れば良いんだ? 単価はいくらなのか──」

 

「その事ですか? お金はいりませんよ?」

 

「……は? マジ──」

 

 再び彼の間抜けみたいな声を出そうとしたが──デジャビュ。察しのついた封結だが……確かめる意味合いで、彼女に問いかける。

 

「……まさかだと思うが、新聞で商品を買うつもりか?」

 

「お察しの通りです! いや〜……一人暮らしとなると、一人分の食事を作ったり調達したりなど少し億劫に感じていましてね……。でも、封結さんのお店ならばそんな事を気にする必要はないと思いまして。過去に霊夢さんが霊撃札でお食事していることですし。常に封結さんは複数人の料理などをしているので、私としても効率が良いのですよ! では許可も頂いたのでとりあえず──何部かはお店の商品をとして飾ってきますね。それで、今回はお昼ご飯を頂くという形でお願いします! ではっ!」

 

 そのまま彼女は店内に入っていく。呆然としている封結をよそに、文が入ってきたのがわかったのだろう。結梨華が始めに対応していくなか、店内にいる人物の会話が聞こえてきた。

 

『いらっしゃいませ──って、文さん? その新聞はどうしたんですか?』

 

『この新聞を商品として置くことを封結さんの許可を得たのですよ! それで今回は買い物ということではなく、この新聞の分のお昼ご飯でも頂こうと思いまして!』

 

『ほわ〜……新聞を商品として扱うとは……主人様見境無しですね……』

 

『──本当にここはいろんなお客が来るのね……』

 

『あや? これは紅魔館のメイドの咲夜さんじゃありませんか? 霊夢さんと……同じく常連だという魔理沙さんはいるのだろうと思いましたが……何故貴方がここに?』

 

『時間があるときはここで働かせて貰っているのよ』

 

『あややっ!? これはスクープですか!?【店主と店員の秘密の密会】みたいな!?』

 

『──文、そんなこと封結に限って無いから……』

 

『──霊夢の言う通りだぜ。ところで……封結はどうした?』

 

『彼はまだ外にいるみたいですが……何か考え事でもしているのではないですか? 新聞の値段など』

 

『封結ー! 早くお昼ご飯作りなさいよーっ!』

 

 会話の最後に、霊夢の催促の声。彼は遅れてその声に気づいたが……悩むように片手で頭を支えながら溜息をつく。

 

 

 

 

 

 馴染みの腐れ縁の常連がいて。

 

 

 

 

 

 訳ありの居候看板娘がいて。

 

 

 

 

 

 新しい店員、客もいて。

 

 

 

 

 

 それなりに店が繁盛しているから良いものの、少し対応の仕方に後悔しながらも、彼は店の中に戻っていく。そして店の中にいる人物達に、言ってもしょうがないことかもしれないが──名も無き店の店主はこう言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──頼むからちゃんと金を払ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

  ―幻想郷に店を構えてます 完結―

 

 

 

 




 タグで今まであった通り、紅魔郷までの原作沿いの物語、完結です。私のメイン作品と比べていかがだったでしょうか?

 幻想入りではなく、変わり者の幻想郷住民。そして訳あり居候幼女。原作沿い……リプレイ見ながらという作業は本当に長かったような気がします。

 まだまだ見返してみると、謎のフラグ部分がまだあると思います。本来ならば回収して終わりにしようかと思ったのですが……活動報告などで、続編希望という意見がありました。それで仮にですが続編を出すと仮定して、あえて伏線のフラグは残しているままにしています。続編にてフラグは回収できるかと。ただし……本当にこの小説が需要と評価があればですが。もしも評価や需要がなければやらないかもしれません。後はそれに基づいたモチベーションです。興味のない、やらない場合は裏設定希望者はメッセージをお送りください。

 仮にやるとしたら、とある原作異変Xまで終わった設定という事を考えています。時々回想に入ったり、とあるフラグを回収する章を作ったり。この事については近日の活動報告にて。一先ずはメイン作品に執筆を集中したいと思います。メインの方では共通章にそろそろ入りそうな頃ですし。

 以下、ここまでの店主と看板娘の設定。本編既読推奨です。まぁ、それでも構わないというならどうぞ。



 〜名も無き店の店主〜
 封結(ふゆ)

 職業:自営業(主に物品売買)

 能力:結び繋ぐ程度の能力

 住んでいるところ:人里

 幼い頃に両親を亡くしているものの墓参りなど欠かさずし、幻想郷の人里の隅で店を経営している少年。それなりに知識はあるみたく、その知識を営業に使っている。時たま営業とは全く関係の無い知識を持っていたりするが。

 店を経営するにあたって、色々な商品を作りは売っている。自身の能力で工夫した畑から野菜や、その食材を生かした総菜、さらには生活道具や衣食住に関わるものまで。彼の趣味が基本「いろいろなモノの開発」。ときおりどこかに出かけ、外界の本を拾ってきては知識を蓄え店の経営に役立てている。しかし……その店には異変解決者がよく出没するとか何とか。

 一人称は『俺』。基本的には誰も同じように話すが、先代の巫女に対しては敬語で話す。お酒はそれなりに強い。

 【外見】
 170センチ程に55キロほど。若干やせ気味。普段は作務衣に額に伊達眼鏡、腰ぐらいまで伸びた後ろ髪をポニーテールにしている。何かしらの異変時は香霖堂で購入した外界の服を着て行動する事が多い。


 【性格】
 基本的に真面目だが、時折黒くなる。真面目な表情をしておきながら冗談を言う時があり、本気か冗談がわかりにくい時がある。しかし、ちゃんとしたお客に対しては真面目に丁寧に対応する。

 何だかんだ腐れ縁である霊夢や魔理沙に厳しい事を言っているのだが、はんば本人は諦め掛けている。たまたま言う事を聞いてくれれば良いレベル。そして発言に矛盾した行動は彼の優しさが含まれていたり。

 【能力】
 霊夢曰くの「結び繋ぐ程度の能力」。魔理沙曰くの「封じて結びつかせる程度の能力」。簡単に説明するならば、主にとある事柄を封印する能力。印を対象につける事で発動。短時間なら封印だけにする事は可能だが、長期間だと封印とは別に「とある事柄」を結びつける必要がある。時たま利点となる場合があり、封印と合わせてメリットとメリットが生まれる可能性もある。しかし、逆もまたしかり。基本的にはデメリット(封印)とメリット(結びつけ)の両方が生まれる。これも逆もしかり。この能力を応用すれば結界も展開することもできる。



 〜訳あり居候看板娘〜
 結梨華(ゆりか)

 職業:名も無き店の店員

 能力:においで種族がわかる程度の能力

 住んでいるところ:人里(封結の店に居候)

 封結の店にて居候している訳あり少女。基本的には誰にでも対し敬語で対応し、積極的に人々とコミュニケーションをとっている。何かと頼まれると一生懸命にその仕事にまっとうする少女。ちなみに封結に対しての好感度は振り切れている。彼女の名前も封結から与えられたもの。一人称については自身の名前である『結梨華』。

 外見年齢という判断かはわからないが……現状の結梨華より年上に見える人物には「さん」づけ。同年代、年下ととらえる人物には「ちゃん」づけ、もしくはあだ名を作って「ちゃん」づけして呼ぶことがある。

 基本的にお店で彼女は会計を担当している。封結曰く「結梨華の方が客の出入りが良い」という少し黒い理由だったりする。実際に彼女を気に入っている人里の住民、寺子屋に通っている子供達に人気がある(もしくは好かれていたりする)。自由時間は与えられているようなので、その時間帯は人里の人物と触れ合いに行っているとか。たまに龍神の像でお祈りしている様子が見られる。彼女は龍神に信仰しているのだろうか……?

 【外見】
 見た目の年齢は10歳に満たすかどうか怪しい。レミリアよりほんの数センチ背が高い。しかし本人曰くで生きている年数は1600年は生きているという事。この年齢については封結も肯定している。服装に関しては大きめの白いパーカー、赤と黒のチェック柄のスカート。髪の毛のアクセサリーとして花結びの簪をつけている。

 【性格】
 天真爛漫があてはまる元気で優しい性格。相手がどのような事情でも、その人物の距離を縮めようと積極的に行動をする。種族関係なくである。それに伴い、真面目でもある。

 【能力】
 においで相手の種族を判断することができる。直接ならその人物のにおいを判断し、種族の断言が基本できる。対象となる人物が触れ合っている他者のにおいも範囲内なのだが……その場合は人間、妖怪などといった大雑把な分類しかわからない。だが、特定の物質を空間に広がるものは種族の断定が可能。レミリアの紅い霧がその例である。



 ……以上がここまでの二人の設定です。それと……後書きで2400字を超えたことは内緒。



 ご愛読、ありがとうございました。


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