幻想郷に店を構えてます【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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お久しぶりです。何時かはやらねばと思っていました。
では、どうぞ、


クロス『パラレル・イマジンワールド』

 ある幻想世界。そこにはよろずなものを多種多様に扱っては売っている店が存在する。その店の名前は――実は無い。名前がないからといって代名詞で「あの店」や「この店」と呼ばれることはなく、【名前の無い店】と呼ばれている。

 そこの常連客は、幻想郷を平和を守る異変解決者がその店にいたり、赤い洋館のメイドの人物がそこで一定時間【アルバイト】の間隔で働いていたり。最近では烏天狗も常連客の一人になっているという。

 その中、その名前の無い店の看板娘である白いパーカーを羽織っては花の髪飾りをしている【結梨華】の少女は店番をしていた。現在客がいないので本を読んで待機しているが、お客が来るとなれば営業スマイルを浮かべては、天真爛漫な表情で客を迎えている。

 その中、店には二人の来店者が。その二人は結梨華にとっては初めて見たお客。本を読むのをやめ、いつもの彼女らしい笑顔を浮かべて来店を歓迎した。

 

「いらっしゃいませなのですよーっ!」

『ん……。こんなに幼い子が店番を……む?』

『? どうした親友? この子に何か興味でも?』

『いや……なんでもないよ。じゃあせっかくだから店員さん、このお店でおすすめの和菓子とかってある? 風の噂でこのお店にはコンビニ――もとい、いろいろなものを扱っているって聞いたんだけど……』

 

 二人の男の来店者。初めに結梨華に反応したのは、赤いネクタイをきっちりと首元につけながら、それに合う黒い上着に黒いズボンを着ており。次の男子は執事服、だろうか。前者の男子と比べると着崩しており、少し開いた無名も元に袖まくりした腕。そして男子では珍しく髪留めをつけており。

 幻想郷では見慣れない格好に結梨華は気になったが、あくまで現状の結梨華はいつも通りにお客の相手を。

 

「和菓子ですね? それだったら主人様が作ったこしあんの大福がお勧めなのですよっ!」

「お、大福あるんだ。よし、食べ歩きにはこれを食べよう」

「大福と聞いて即決だな、お前さん……」

「大福こそが和菓子で至高だと思っている」

 

 彼女のお勧めを聞いてはすぐさまに注文。結梨華は注文通りに品物を用意し、金銭を使ってでの等価交換を終えたあと、大福について語っていた男子はどこか満足そうな表情を浮かべては、随伴する男子はどこか呆れながらもその店を出ていく。

 二人が去ったのを確認した結梨華、彼女が抱いた違和感を口に出していた。

 

「……ヘアピン男性の種族が、【荒人神】……? 聞いたことの無い神様です……。そしてなによりも、主人様の異変解決の格好に似ていた男性のにおい――【お爺様】に似ていたような……?」

 

 ――そして、事は起こる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――紅魔館が乗っ取られた?』

『えぇ……乗っ取られたんだけども……』

『……? 何か腑に落ちないようだな……?』

 

 後日。アルバイトとして『名前の無い店』で働いている、紅魔館のメイド――十六夜咲夜が店の主人である封結に話を持ち掛けていた。

 話から見るならば普通は深刻な話のはずだが、どこか咲夜は困っているような表情を浮かべており。同時に店に居座っていた紅白の脇の空いた巫女服をきた――博麗霊夢は詳細を咲夜に尋ねた。

 

「……乗っ取られたという割には、落ち着いているわよね、あんた」

「最初は落ち着いていなかったわよ。急にヘアピンの男が『この紅魔館はしばらくの間、オレ達の根城にする』って。それはもちろん、私達は抵抗したけれど……その男一人に、私達は負けたのよ」

 

 どこか疲弊しているように語りながら言う咲夜に、同じく居座っていた魔法使い――霧雨魔理沙が驚きの声をあげた。

 

「はぁっ!? 一人の男に負けたのかよっ!? じゃあフランは!? フランはどうしたんだ!? 私達で共闘してようやく勝てたフランは!?」

「それも、ヘアピンの男に負けたわ。それにしても……そのヘアピンの男、どこか私達の動きがわかっているようだったよね……」

「……それでだ。現状、紅魔館はどうなっているんだ?」

 

 事の深刻さを理解した封結は情報を求めたところ――どこか咲夜は苦笑い。

 

「それが――普通に馴染んでいるのよね、その男……。昨日も『うの』というスペルカードのような何かを使って、私達と遊んでいるのが現状なのよね……」

「…………すまん。その男は何がしたいんだ?」

「それがわかったら何も苦労しないわよ……。いつの間にかに紛れ込んでは、お嬢様でさえヘアピンの男の遊びに参加しているぐらいだし……」

 

 もっとも、いつも勝つのはその随伴している男だけどね、と説明を加える咲夜。そこで、ある事を思い出した咲夜は封結に言う。

 

「……そういえば、封結。あなたの異変解決時に着る服装あるじゃない? あなたは白だけど……黒の服を着ては、同じような赤いネクタイをしている男もいるのよ」

「何? 俺と同じような服だと? あれは香霖から仕入れたものだが――まさか、その二人は『外来人』と呼ばれる人物か?」

「そうね……その可能性が高いわ」

 

 外来人。この言葉は主に幻想郷の外から来た人物に総称されている言葉である。厳密にいえば、最近幻想郷に来た咲夜達紅魔館の人物達も外来人の分類だが……。

 そこで、咲夜が改めて本題。

 

「霊夢も魔理沙もちょうどいて良かったわ。紅魔館を占拠している、主に主犯者のヘアピンの男を退治して欲しいのよ。正直あなた達でも勝てるかどうか危ういぐらいだけど――」

「あんたなめてんの? そう簡単に負けるはずが無いじゃない」

「そーだぜー。前の紅霧異変の時とは違って、ちゃんと前情報はあるしな。昨夜たちが私達にどんな戦いを教えてくれればもう楽勝だぜ」

「だといいけど……そういえば結梨華はどうしたのかしら? あの子だったらこの手の話には食いついてくるはずだけど……?」

 

 ふと思い出したかのように、店内を見渡す咲夜。その彼女に封結は事情を説明。

 

「何か気になる事が出来たってことで、ちょっと実家に帰省しているぞ」

「実家……?」

「あぁ、実家だ。普段は念話的なもので会話を済ませることはあるんだが、結梨華自体が直接動く事は珍しいことだけどな……。まぁ、それはともかくとして。その外来人たちが幻想郷を脅かすかどうかは不明だが、不確定要素は排除した方が良いな。俺達も動こう。それで咲夜、その主犯格の男は名前はなんていうんだ?」

 

 普段はめんどくさがりな彼だが、関わりの持つ人物の『お願い』は聞いてくれる。情報を集めるために彼女に問いかけたところ――咲夜は答える。

 

 

 

 

 

「確か、彼はこう言っていたわ。【心お気楽荒人神】――本堂静雅って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――しっかし、ここまでスムーズに進めたもんだなぁ……」

「本当ね。少なくとも紅魔館を乗っ取ってると聞いたから、そこらの妖精達が撃墜しにくると思っていたのに……」

「ま、楽に進めることは良い事だと思うぜ。このままさっさと異変解決だ!」

 

 封結、霊夢、魔理沙は紅魔館内にすでに入っていた。中華風の門番、紅美鈴がいたが、現状が現状なので、彼女も三人を通していた。その際美鈴が現状の紅魔館の事を表すと、【まぁ、一応平和と言えば平和なのですが、お嬢様の威厳が、ですねぇ……】とどこか遠目だった。

 

 閑話休題。

 

 飛翔しながら進む霊夢と魔理沙、特製のローラーブレードで進んでいく封結だったが――一人の男が、三人達の目の前に歩いて現れた。

 

『ん……咲夜から聞いたけど、異変解決者が本当に来たねぇ……。博麗霊夢に、霧雨魔理沙は確認。それで……男の異変解決者? それに君が着ている服って外界の服じゃ……?』

 

 その男は、封結の服装黒バージョンと言っても良い。違いは数点あり、封結は髪の毛は縛っては腰まで長さがあるが、彼の髪の長さは一般的だ。心なしか、彼の頭上の髪の毛は若干倒れかけの角のように、後ろに反れながらまとまっている。その印象は、どこか優男にも見える。

 彼の出現に行動はとりあえず止まり、霊夢はその男にどこかイラつきながら言葉を飛ばす。

 

「あんたが私達の休憩時間を奪った【ほんどうしずまさ】って奴? だったらさっさと退治されなさい!」

「……うーん、ちょっと【君】に言われるとちょっと傷つくなぁ……。まぁ、それはともかくとして。自分は静雅じゃないよ。強いて言うなら、今回の主犯の仲間、かな」

「なんだ。主犯じゃないのか。じゃあ下っ端は封結に任せるとして――私はさっさと主犯を退治することにするぜ!」

 

 標的の人物ではないことが判明し、魔理沙はスルーしてそのまま箒にまたがってはそのまま飛翔して通りすがった。反応に遅れた霊夢は封結に「じゃあ、封結。さっさと片付けてくるのよー」と気楽に事を押し付けながら、彼女も男を通りすがっていく。

 その様子を見守っていた男だが、封結は今の光景を疑問に覚え、思った事を問いかける。

 

「……追わなくてもいいのか?」

「追っても良いんだけどね。でも、彼女達の相手は静雅に任せるとするよ。彼女達以外の人物を担当するのは自分だって静雅に言われているからね」

「……そうか。ならさっさとお前を片付けて――霊夢達を補助しないといけないからな!」

 

 戦闘意欲を見せるためか、封結の持つ【鬼切】を鞘をつけたままで刀を向ける。それに対して目の前の男は、一枚の紙――スペルカードを持ち出して、宣言。

 

「ま、こうなるよね。静雅達が決着着くまでやろうか――武符【リトルセイバー】」

 

 彼の左手に、半透明の赤い色の西洋の剣が出現。

 

 

 

 

 そして、二人は【剣】を構え――戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――さぁ、さっさと異変の首謀者は出なさい!」

「そうだぜっ! 霧雨魔理沙様のお通りだ! さっさと退治されろー!」

 

 大広間への扉を蹴破る勢いで、扉を弾幕で吹き飛ばす霊夢と魔理沙。彼女達が目の向けた先には――玉座に頬を着きながら座り、見定める男。

 

「――クックック――ようやく来たか、異変解決者の少女達よ」

「……何かバカっぽい雰囲気しているわね」

「あぁ。何かレミリアが背伸びしている感じがするぜ」

「謂れのない風評被害がレミリア嬢を襲う! ……ってか、わざわざそういう演技しているんだからさぁ、ノッてくれよ……」

 

 いかにも自分がそうですと言わんばかりに声をかけた男だが、その返しの言葉は毒があり。思わず座りながらもこけるかのように座っていた玉座から位置がずれ、つまらなそうに言う男。

 しかし、どのように男が言おうが異変解決者は関係ない。ここで改めて男の情報を霊夢達は求めた。

 

「それはともかくとして。あんたが紅魔館を乗っ取った【本堂静雅】って奴ね。そうじゃなくとも部外者だからやっつけるけど」

「そうさ。オレが皆大好き【心お気楽荒人神】の本堂静雅。この幻想世界に旅行気分でやってきた」

「誰が旅行気分で紅魔館を乗っ取るんだぜ? そもそもアラヒトガミってなんだよ……?」

「簡単に言うとオレの種族の事だな。簡略に説明するならば、【神々を滅ぼす神】だ」

「「……は?」」

 

 魔理沙の問いに答えた本堂静雅の言葉に、思わず聞き返す反応をした二人。その答えは度肝を抜かれたようだが。固まっている二人にフォローするかのように説明する男。

 

「まぁ、おまけ感が凄いんだよな、この種族。神々を滅ぼすつもりはないから安心してくれ」

「どう考えても厄介ごとを持ってくる神じゃない! あんたの存在で博麗神社の神様が滅んでくれたらどうしてくれるのよ!?」

 

 神様といえばいるかどうかは定かではないが、形では神社の巫女である博麗霊夢にとって静雅の存在は害悪だ。さらには異変といえない今回の事件かもしれないが、元凶が目の前にいる。

 

 なら、答えは簡単――弾幕で交渉するだけだ。

 

 霊夢の言葉の喋り具合から判断したのだろう。すぐさま魔理沙は箒に乗り、本堂静雅に弾幕を放ち始める。

 

「霊夢の言う通りだ。お前の存在で何か異変がさらに起こるというのなら――すぐさま退治するまでだ! 【マジックミサイル】!」

 

 先手必勝の魔理沙の攻撃。質量の濃い弾幕のミサイルを静雅に放った。

 当本人の静雅はというと――どこかから一瞬で槍を出現させては――

 

「そいやっさ!【リフレクトジャベリン】!」

 

 ――丁寧に魔理沙の弾幕を踊るかのようにして体を動かしながら槍ではじき、お返しに全てはじいた魔理沙の弾幕が霊夢達に跳ね返った。

 その行動に驚愕していた魔理沙だったが、霊夢の行動は迅速だった。

 

「! ――【ホーミングアミュレット】!」

 

 すぐさまお札を取り出し、丁寧に魔理沙の弾幕を相殺を試みる霊夢。おかげで大多数の弾幕を相殺できたが、全ては相殺しきれなかった。とはいえ、残りは簡単だ。荒くなった弾幕の攻撃をちょんよけ――グレイズするだけだ。二人は残った弾幕を躱していく。

 全て攻撃を躱し終えた二人。すぐさまフォローしてくれた霊夢に魔理沙は礼を言った。

 

「助かったぜ霊夢! まさか弾幕を跳ね返すなんて予想してなかったしな……」

「私だって最初は驚いたわよ。あそこまで丁寧に弾幕を処理するとはおもってなかったもの。それにただはじくだけじゃなくて、余計な動きを交えながら躱すなんて……!」

「はっはっは。ただの弾幕ならオレには効かんよ。そら、もっと出し惜しみなく攻撃するといい! こっちから行くぞ――槍符【天からの五月雨】!」

 

 自身を自負しながら次に男はスペルカードを使用した。そのスペルカードは男の周りに槍の形をした弾幕が形成され、男はそれを天井に向けて放った。

 最初はどこに撃っているんだと困惑していた異変解決者達だが、その答えを知ることになる。

 ――天井に当たった槍の弾幕が反射し、雨のように霊夢達に襲い掛かったからだ。

 

「! なるほど……だから雨という文字を弾幕ってわけね……!」

「中々質量のある弾幕だな……!」

「そら、攻撃はまだ続くぞ!」

 

 続いて槍の弾幕を生成し、再び天井に向けて男は弾幕を放つ。二人はこの時点でどのような弾幕か分析したのか、後は一回の単純に回避行動をとるだけ。魔理沙、霊夢の順にスペルカードを構え、宣言しようとしたとき――霊夢は宣言中で何かに気づき――

 

「そんな攻撃はもう見切ったぜ! 今度はこっちの番だ! 魔符【スターダスト・レヴァリエ】!」

「さっさと終わらせる! 霊符【夢想封――】! 霊符【封魔陣】!」

 

 何かに気づき、攻撃系スペルから防御系スペルに切り替えた霊夢。その事に疑問に思っていた魔理沙だったが――その答えがわかった。

 

「――がぁっ!? う、後ろから、弾幕が……!?」

 

 ――魔理沙の背中に弾幕が被弾した。言わずもがな、その弾幕の正体は――何度かの壁などの反射をした静雅のスペルカードの弾幕。彼女は攻撃中だったスペルカードが強制中断され、弾幕の量は中途半端に。

 後は静雅は簡単だ。攻撃の量が少なくなった魔理沙の弾幕をはじき、躱すだけ。おまけに霊夢は防御を優先しているので、彼女の攻撃の弾幕もない。

 結果として静雅は無傷。霊夢は防御に周り、魔理沙にはダメージが蓄積された。

 攻撃を終えて、今の二人に言葉をかける静雅。

 

「おー、霊夢はどうかなと思ったが、魔理沙は被弾したか。まぁ。猪突猛進なお前さんなら情報の刷り込みの後、攻めてくるとわかっていたからな。お前さんは本当に騙されやすい」

「!? ……お前、私の事を知っているのか?」

 

 知っているかのような発言に、言葉をとぎらせながら問う魔理沙に静雅は含み笑いを浮かべながら答える。

 

「ククク……オレの眼は未来を見通せる眼があるんだ! おかげで霊夢は警戒する姿が見え、魔理沙は構わず突進する未来が見えたからな。後は簡単に対処ができる!」

「み、未来が見える……!?」

「そ、そんなやつとどうやって戦えばいいんだぜ……!?」

「嘘だ」

「「嘘かよ!?」」

 

 一遍信ぴょう性のある能力のようなものに霊夢が驚き、どう対処したらいいのか困惑していた魔理沙に、真顔で自身で言ったことを否定する静雅に、二人は耐えきれずツッコミを。

 

「さすがにオレはそこまで改造されてねぇ……。体は普通の人間と同じだ。未来を見通せる能力なんぞあったら宝くじでも買って大儲けでもしてるわ」

「ふざけた奴ね……! 一瞬信じかけたじゃない!」

「(……こんな奴から被弾したのか……)」

「まぁ、それはともかくだ。オレのターンはまだまだ続く! 神符【戻りゆく軌道線】!」

 

 違うスペルカードを宣言する男。宣言をし終えると彼から波紋のように多数の球の弾幕が拡散し、霊夢達に正面から襲い掛かるが、二人は冷静に回避、

 

 ――だが、今度の二人は最初から警戒を怠らない。

 

「霊夢! どうせあいつのことだ! あいつのスペルカードは何かしらセコイギミックでもある! 霊夢はその対処に当たってくれ! こいつは私かぶっ飛ばさないと気が済まないぜ!」

「不器用なあんたならパワーでまっすぐピチュらせた方が良いでしょうよ! だから――あんたの言う通りにしてあげる!」

 

 すぐさま霊夢は躱し終えた後には後方を警戒し、振り返る。すると彼女の読みは当たっていたのか、躱した弾幕が急に止まり、数秒経ったのちに放たれた軌道線に沿って、弾幕が戻ってきた。

 

「! やっぱりね……スペルカードに【戻りゆく】なんて言っているから戻ってくると思ったらビンゴよ!」

「おっふ。さすがにオレの言葉は信じないと思ったのにな……嘘をつく子芝居でオレの言葉を信じさせないようにしたのに。何故だ?」

 

 どうやら先ほどの子芝居は誘導もあったみたいだ。静雅に疑問に、単純に霊夢は答える。

 

「そんなの――【勘】に決まっているじゃない!」

「把握した」

「把握したのかよ!?」

 

 普通なら「そんなもので読まれてたまるか」とでも反論すると思っていた魔理沙だが、静雅はどこか納得するかのように頷いていることに魔理沙は追いつけない。

 霊夢は、もうやることが決まっている。彼女の攻撃系のスペルカードを宣言。

 

「霊符――【夢想封印】!」

 

 彼女から現れた、色とりどりの大きな八つの球の弾幕。その内の四つの弾幕が動き、流れていくように静雅の弾幕をなぞっていくように相殺する。残りの半分の弾幕はというと――静雅に向かっていく。

 

「おおっ!? さすがにこの質量の弾幕がはじききれねぇって!?」

 

 彼は獲物の槍ではじくことは無く、走って逃げているのが現状だ。

 そして、好機を言わんばかりに得られた情報に魔理沙は含み笑いをしながら、行動を始める。

 

「……なるほど。一定量の弾幕の質量なら弾けないってわけか……なら!」

 

 すぐさま魔理沙は箒に乗って飛翔し、先回りをして彼の正面に。後は彼女は八卦炉を構え――

 

「――やっぱり、弾幕はパワーだぜ! 恋符【マスタースパーク】!」

「後ろから【夢想封印】、前から【マスパ】かよっ!?」

 

 挟み撃ちにされ、本堂静雅は被弾した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこか本堂静雅の体からプスプスと煙を出しながら倒れていたが、すぐさま起き上がり、現状受けたことについて語る静雅。

 

「さすがに大ダメージを受けてしまったな……二人の攻撃を素で避けるのは無理があったか……」

「慢心したでしょ、あんた。だからあんたはどこかアホっぽいのよ」

「ひどい言われようだ。まぁ反論はできんが」

「これで借りは返したな。異変解決だぜ。後は封結がお前の仲間を片付けるのを待つだけだな」

 

 ちょうどその時だった。ロビーの扉が開き、仲間が戻ってきたと思っていた霊夢と魔理沙は声を掛けようとしたが――

 

「封結、遅いわよ。もう首謀者はこっちで退治して――」

「まったくよ~。お前がもう少し早く来てくれればスムーズに解決できたのに――」

 

 

 

 

 

 

 

『――何だ。静雅負けちゃったのか』

 

 

 

 

 

 

 

 違かった。霊夢と魔理沙はいつものように、適当な随伴の相手は彼が片付けてくれている。そう信じていた。

 しかし、現状は違う。まるでダメージを一度も食らっていないのか、ピンピンしている本堂静雅の仲間。

 そして――ボロボロの満身創痍で、彼に担がれている封結の姿だった。

 

「嘘っ……!?」

「そんな……!?」

 

 驚愕している二人は差し置いて、そのまま静雅へ近づいていく男。その彼が担いでいる男に疑問を覚えた静雅は声をかけた。

 

「ん? 親友よ、その男は誰だ?」

「なんでも【この世界】の男の異変解決者みたいだね。中々面白い能力を持っていたけど……相性が悪すぎたね。そもそもご先祖様が自分にいない状態だとはいえ、最低限の【負】にかかる力は無効化出来るし。剣術も扱えるみたいだけど……まだ形としてはなってない。言い方にもよるけど完璧には使いこなせてない印象を受けるね。これからに期待ってことで」

「ほぉ……そんな奴がいたとはな……」

 

 男は封結を玉座に座らせ、静雅に行動を促す。

 

「さてとと。主犯の静雅が負けたことで異変は終了。こちらの戦術的敗北ということで撤退しようか」

「あぁ。それが敗者の定めだな」

 

 彼に言われるままに、静雅は空間に手をかざし始めたが……霊夢と魔理沙は男にお札を八卦炉を構え、戦闘耐性をとっていた。

 

「待ちなさい! 封結をこんな風にして……! あんたは絶対しばく!」

「そうだぜ! 封結をここまで追い詰めるとは……! 異変解決したが、まだ後処理が残ってる! 封結の仇は私がうつぜ!」

「えぇー……戦うの? まぁ……別にいいけどさ」

 

 仕方ないと言わんばかりに戦闘体制に移った男。すぐさま三人はスペルカードを宣言しようとしていたところに――

 

「――やめろ、霊夢! 魔理沙……!」

「封結!? あんた意識があるのね!?」

「安心しろ封結! お前の仇は私がとるだからお前はそこで休んでろ!」

 

 意識を失っていた封結だったが、途切れ途切れながらも声を発して霊夢と魔理沙を制止する声をかける。しかし彼女達は彼の言う事を聞かず戦闘を始めてしまう。

 そこで、封結を倒した男がスペルカードを宣言。

 

「――龍撃【ドラゴンバスター】」

 

 両手を顎のように構えると、まるで龍のブレスのような、赤く質量の濃い弾幕が彼女達を襲う。その弾幕量は部屋全体を包み込むほど巨大で――

 

「なっ――」

「でか――」

 

 いきなり巨大なスペルの宣言に頭の中で混乱した所為か、二人は避けきれずに被弾した。その攻撃力は大きく、彼女達は耐えきれずに倒れこんだ。

 その様子を見て、男は言葉を漏らす。

 

「うーん……まさか初見で躱せない、か。【こっち】の霊夢は初見で冷静に躱したというのに。頭に血が上っていたしそれで躱せなかったのなら納得だけど」

「いやいや。お前さん無慈悲だろ。さすがにハードルが高すぎる」

「そうは言ってもねぇ……魔理沙はともかく、霊夢は躱せるすべは持っているはずなんだよ。まぁ……時系列から推測するに、【過去のパラレル】みたいだし。紅霧異変が終わった時間軸みたい。まだ経験が足りないみたいだ」

「うーむ……まぁ、とりあえず帰るか」

 

 本堂静雅は男の手を取りながら空間に手をかざし、黒い空間のようなものを作り出した。そして本堂静雅が黒い空間に入り、霊夢達を一撃で沈黙させた男が空間に入る前に言葉を。

 

「……少なくとも、自分達はこの幻想郷に危害を与えるつもりはないよ。ただ、静雅の提案とはいえ、本当に【遊び】に来ただけなんだ。それはわかってほしいかな? それで……ゴメン。もしもまた会えた時は、お互いに話し合って平和的に過ごしたいな」

 

 申し訳なさそうに男は三人に会釈をして誤り、黒い空間の中に入っては消えていく。そしてその黒い空間も消えていった。

 静寂が流れる。片膝をつきながらも、姿勢を正していく霊夢と魔理沙だが、二人はまだ困惑している。まず最初に霊夢は封結に改めて男について情報を求めた。

 

「封結……あいつ、一体何者なのよ……?」

「……あいつは、少なくとも【人間】だと言っていた。しかし、何も装備は基本的にはないはずだが、走って【八卦ローラー】と同速度で移動してたぞ……!」

 

 彼の言う【八卦ローラー】は単純に言えば、ローラーブレードに八卦炉を内蔵した改造靴。このローラーブレードは足に自分の力の素養を溜めることで。足から弾幕を放出することが可能であり、それを利用してブーストすることで高速移動が可能になる優れものだが……。

 彼の持っている装備を知っている魔理沙は、彼と【競争】したこともあり、封結の言った言葉は信じがたかった。

 

「はぁ!? その装備をした封結と同等!? そこまであいつ早いのかよ! それにあの弾幕の質といい……あいつも、もしかして私と同じスピードとパワータイプなのか!?」

「それも含めるだろうが、技術もあった。あいつも剣を使っていたが――綺麗だった。型に収まらないというか、テクニカルに対処された。本当に人間が出来る動きかどうか疑うぐらいにな。あいつはスピードとパワーもあり、テクニックもある――近衛のとれたバランス型と表現するよりは、振り切った万能型がしっかりくる」

「万能、型……」

 

 魔理沙の質問に答える封結の言葉の一部を復唱する霊夢。これまでに見たことの無い人物だ。

 

 

 

 

 

 ――もしも、異変の主犯格があの本堂静雅ではなく、あの男だったら。この異変は解決できただろうか――

 

 

 

 

 

 最悪なパターンを一瞬考えた霊夢だが、そのことは頭の隅に追いやり。改めて、霊夢は封結に男の名前を尋ねた。

 

「……封結、あいつの名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

「……あの男は、【異世界の神主見習い】――辰上侠と言っていた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所が変わって、雲海地帯。その場所には一人の少女と、体格の大きい【竜】と向かい合っていた。

 少女は、疑問を竜にぶつける。

 

「……お爺様。【アラヒトガミ】の男性も気になりますが、問題は結梨華達と同じにおいがする男性が不思議なのです。どうしてお爺様と同じにおいがするのですか?」

『……考えられることは単純だ。我はその者に干渉した覚えはない。可能性ある答えは並行世界からやってきた子孫。そして――我の体の一部がどこかにあるのだろう。においは同じ並行世界の人物で同じというのはありえるが、子孫とはいえ完全な別人なのに関わらずにおいが同じというのはそういうことだろう』

「……そんなことが可能なのですか? 子孫とはいえ、お爺様の体の一部を宿すことなんて……? 普通なら拒絶反応が起きそうなものだと思うんですが……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そして、可能にできることはある。体の一部を宿せる条件。何しろ、祖先と同じ媒体になれば問題ない。祖先と同じ形質で突発的に稀に引き継がれる――先祖返りというものがな」

 

 

 

 

 

 




過去の人気投票会のときからやろうと思っていたので、書けて良かったです。

では、また。

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