幻想郷に店を構えてます【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 一先ずはこのお二人。
 男主人公視点。
 では本編どうぞ。


四話 『香霖堂、競争』

 魔法の森を歩いて数十分。ある場所に向かって俺は歩いていた。久しぶりにとある店にいく為だ。それと……依頼した物を受け取りに。

 

 そしてその店に行くと、周りには【無縁塚】で拾ってきたという外界の物がたくさん置かれている。意味不明な【まねきん】という変わった等身大の人形があるが。

 

「……店の外に置かれている【商品】に惹かれるような物は無しっと」

 

 商品を確認した後、ドアを開いて挨拶を。

 

「霖之助ー? 何かめぼしい商品はあるかー?」

 

『おや、この声は……封結君か。久しぶりだね』

 

『お、封結じゃん。【香霖堂】に何か用か?』

 

『いや、魔理沙? ここは僕の店だからね? 用件を聞くのは君じゃないから』

 

 来た店、【香霖堂】に入ると店主である森近霖之助と魔法使いの霧雨魔理沙がいた。俺の知っている範囲で二人はかなり過ごした日が長いらしい。俺は途中から霖之助と知り合ったが。

 

 俺が来たことを確認した魔理沙は近寄り話し掛けてくる。

 

「たまにお前もここに来るが……何か買い物か?」

 

「お前と違ってちゃんと金は払っているからな。いい加減霖之助にちゃんと金払えよ」

 

「失礼な。出世払いで死ぬまでに返すぜ」

 

「果たしてお前に出世する機会はあるんだろうか……? まぁ、それはともかく。霖之助、何か俺の興味があるような商品を仕入れたか?」

 

「うーん……そうだね……じゃあこれはどうかな?」

 

 そう悩むように言った霖之助は机の下から外界のものであろう……小さな箱みたいなものを取り出した。

 

 そして霖之助は能力である【未知のアイテムの名前と用途が分かる程度の能力】で説明。

 

「これは【ハーモニカ】といってね? 用途は【息を吹きかけて演奏する】ものだ。息を吹きかけて、指で空いている穴を防ぐ数や場所を変えると音が違うんだ」

 

「何か変わった楽器ってのは理解した。しかし……実用性が無いな」

 

「まぁ、娯楽の類いだと思っても良いかもね。それで興味湧いたかい?」

 

「これといってないな。それで……依頼した物はできあがったか?」

 

 霖之助がお勧めした【はぁもにか】を断り、本題に入る。

 

「あぁ。完成しているよ。じゃあ持ってくるから待っててくれるかな?」

 

「わかった。感謝する」

 

「? 何か香霖に作らせたのか?」

 

 裏へと移動していく霖之助の後に、改めて問いかけてくる魔理沙。

 

「あぁ。霖之助が仕入れた商品と俺の持ってきた──というよりは結梨華にもらったものか? それを合わせたものだ」

 

「……? 結梨華から? 何を貰ったんだぜ?」

 

「魔理沙も同じ素材を持っている物質をどこかから拾ってきてな? 日頃の礼という事で貰った」

 

「私と同じ素材の物……?」

 

 魔理沙がそう疑問に思っていると──霖之助が俺の依頼した商品を持ってきてくれた。

 

「はい、封結君。【ローラーブレード】にミニ八卦炉の特性を付け足した商品だよ」

 

「ありがとな霖之助。余った緋々色金は約束通り渡すとして、いくらぐらいだ?」

 

「そうだね……これくらい──」

 

「緋々色金!? 封結それを拾えたのか!?」

 

 精算してもらっている途中で魔理沙が驚愕の声をあげた。まぁ、無理は無いかもな。再び俺は説明する。

 

「俺じゃなくて結梨華な。本当に良い物を渡してくれたよ──お? 結構予算に余裕があるが良いのか?」

 

「あぁ。構わないよ。君は常連さんでもあるからね」

 

「やっぱ普通に買い物してくれてこそだよなぁ……」

 

 霖之助に感謝しながらお金を払い、商品を受け取った。受け取った商品について魔理沙は詳細を尋ねてきた。

 

「なぁ……靴に丸い物が一列に並んでいるが……何だぜそれ?」

 

「霖之助曰く【ろぉらぁぶれぇど】。これを履いて滑ることにより、通常より速く行動が出来るんだと。改造してもらう前に試しにやってみたんだが……これが速い速い。生活にも役立ちそうなアイテムだ」

 

「そんなアイテムがあったのか!? 香霖っ! どうして教えてくれなかったんだぜ!?」

 

 少し怒りを含めて霖之助に詰め寄る。俺の満足な表情を見て欲しがったのかもしれない。

 

 しかし、霖之助なりにもちゃんと理由はあったので話した。

 

「足のサイズの問題もあったんだよ。僕だと小さくて入らない。君の場合だと大きすぎてぶかぶかで危険。試しに封結君が履いてみて少し余裕のあるちょうど良いサイズだったんだ。この【ローラーブレード】は持ち主を選ぶんだよ」

 

「小さいと危険なのか!?」

 

「下手したら途中で靴が脱げる可能性があるからね。ましてや、改造したこれは君にとって危険すぎる」

 

「……さすがに危険なアイテムを使う気にはなれないぜ……」

 

 霖之助の表情を悟ったのか、魔理沙は食いつくのを止めた。まぁ、折角俺が最初に目を付けたのに盗られるのは解せないからな……。

 

 会話を変えるようにして霖之助は俺に話し掛けてきた。

 

「この【八卦ローラー】は全体的にも緋々色金でコーティングされているから、耐久性はあまり問題ないよ。もしも欠けたりとかしたら、持ってくるといい。余っているので修復しよう。それと安全のために膝まで別の素材を作って伸ばしている。膝下までの高さしかなかったが……膝まで覆える方が負担も少ないし、安全だからね。そして両方の八卦ローラーの靴の部分は四方向に噴射口がある。前後左右にね。足に霊力なりを溜めて込めなきゃいけないという特殊だが……それは大丈夫か。それが出来たからこういう作りにしているわけだし。靴の後ろは前に加速、靴の前は減速とバック。左右については方向転換だ」

 

「把握した」

 

「……封結はどうして短時間で理解できるんだぜ……?」

 

「そりゃあこういう作りにしてほしいと頼んだからな。依頼者が把握出来なくてどうする?」

 

「何か安心したぜ」

 

 魔理沙が適当に安堵したところで、最後に補足という事で霖之助は一点。

 

「後は……これは君以外の人物には使わせないように。君の【能力】で安全が保証されている物だからね。能力が無かったら体の負担が大きすぎるから」

 

「……だろうな。気をつける」

 

「なぁ、封結? そんなに速いってなら私と勝負しようぜっ! どっちが速く着くか競争だ!」

 

 霖之助の説明が終わると、魔理沙から……【かけっこ】だろうか? そういうのを申し込まれた。

 

 ……良いかもな。これがどれくらい速いのか知る必要がある。

 

「わかった。じゃあここから霧の湖まで競争だ」

 

「よし! 私が勝ったら何か奢れよ?」

 

「普段俺の店にたかりに来る奴が何を言う? ……まぁ、考えておこう」

 

「その言葉忘れるなよ! じゃあ表に出ようぜ!」

 

 魔理沙に促されるまま、手を掴まれて店の外に連れて行かれそうになる。完全に店から出る前に、霖之助に挨拶を。

 

「ありがとな霖之助! また来る!」

 

「あぁ。歓迎するよ」

 

 そして俺達は香霖堂から出て行った……。

 

 

 

 

「……魔理沙も魔理沙だねぇ……。素直に誘えば彼は了承してくれると思うのに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──封結。準備は良いか?」

 

「あぁ。大丈夫だ」

 

 俺は普通の靴から【八卦ローラー】に履き替えて、二人でスタートダッシュの準備をする。

 

 ……今の内に足に霊力を溜めておこう。いつでもダッシュ出来るように。

 

 そして……お互いの声で、カウントダウン。

 

「「3、2、1──」」

 

 魔理沙は箒にまたがり、俺は構えて──

 

「「──スタート──」」

 

 お互い言ったところで──かかとに霊力を込めて──霊力を一気に放出!

 

 俺はすぐさま言い終わった魔理沙を置いて目の前に直進した。左右の噴射口、ステップを上手く調整しながら木々を避けていく。

 

「──おまっ!? スタートダッシュ速すぎるぜ!?」

 

 遅れながらも魔理沙は箒で動き出しただろう。後方で魔理沙の声が聞こえてきた。

 

「一先ずはスタートダッシュで差を付けるのが優先だからなっ!」

 

 直進しながら後方にいるであろう魔理沙に声をかける。それに応えるように自信がある声で魔理沙の声が聞こえてくる。

 

「速さなら総合的に私の方が上だぜ!」

 

 後ろから魔理沙の声が近づいてくる。普段の魔理沙は結構飛ばして移動している所為か手慣れだ。一瞬だけ後ろを振り返りながら確認しながら前に俺は進んでいく。

 

 ──そして何時の間にか、併走するようになる。

 

「……さすがに普段飛ばしている方が有利か……」

 

「当たり前だぜ! 私に速さで敵うと思うなよ!」

 

「……お前、ずっと俺の方を見ているようだが良いのか? 前方不注意だぞ?」

 

 そう。魔理沙は俺に視線を向けながら話し掛けている。今のところは、何も問題は無かったのだが──

 

「封結と違って大体把握してるんだぜ? キノコの収拾で地理は──」

 

「──バカッ!? 前見ろっ!!」

 

「おいおい、そりゃないぜ? 私の気をそらそうとするのは──」

 

 ──あいつ本当に見てないっ!? 俺の言葉を妨害として認識して──数十メートル先の正面に大木があるのにも関わらず!

 

 俺はすぐさま魔理沙に体を向きながらも、せめて現状を把握させるために言葉をかけ続ける。

 

「マジで正面見ろっ! ぶつかるぞっ!」

 

「? 焦るようにそんな──え──」

 

 ようやく現状を把握した魔理沙だが──突然に入ってきた目の情報から体が動いていない!

 

 だから俺はすぐに──

 

「魔理沙っ!!」

 

「!? ふ、封結──」

 

 八卦ローラーで魔理沙の元に一気に加速、箒から魔理沙を引き離して──なるべく広く、傷つけないように魔理沙を包み込むように抱き寄せる!

 

 刹那。箒と大木がぶつかる鈍い音が聞こえる中、俺と魔理沙は転がっていく。数十回か、それ以上近くだろうか……ようやく転がるのが止まった。偶然、霧の湖に着いたが……それよりも、確かめなければいけない事がある!

 

「魔理沙っ! 怪我はないかっ!?」

 

 座るような体勢に移し、魔理沙の確認。近くに彼女の帽子があって、魔理沙の金髪の髪の毛が簡単に見える、見たところ外傷はないようだが……魔理沙が心配そうに俺に話し掛けてくる。

 

「わ、私よりも封結は!? 私を庇って──」

 

「俺は能力で害を封じているから影響はないっ! それよりも怪我は無いんだな!?」

 

「な、ないぜ……封結が庇ってくれたからな……」

 

「そうか……良かった……」

 

 どうやら外傷は本当にないようなので安堵した。あの速さでぶつかっていたらシャレにならなかった……。

 

 その中……魔理沙は頬を赤く染めながら……声が少し小さいながらも──

 

「その、封結……ありがとう……」

 

「……素直に礼を言われているのはともかく、お前が言うと違和感がありすぎるな……」

 

「おまっ!? 人が素直に礼を言っているのにそりゃないぜ!?」

 

「仕方ないだろ。魔理沙はそういう奴なんだから」

 

「……解せないぜ……」

 

 軽く礼を言った後、すぐに魔理沙は近くにあった帽子をとって土埃を払い、被った。俺も立ち上がり、服をはたいて土埃を落とす。

 

 そして魔理沙は悔しそうに、箒が鈍い音を出したのを思いだしたように言う。

 

「……あの音の大きさだと絶対壊れているぜ……」

 

「だろうな。まぁ、自身が大怪我するよりはよっぽどマシだろ」

 

「そうだけどよ……」

 

 名残惜しそうに、悔いがあるような言い方で、箒が壊れた場所に視線を移しながら言う魔理沙。

 

 …………仕方ない。

 

「実はというとな魔理沙。かけっこの結果なんだが……実はお前の勝ちなんだ」

 

「は……? 私、封結に明らかに負けただろ? 私は……大木に本来ぶつかっているんだし」

 

 疑問を含めた声で魔理沙はこちらに振り返って尋ねてくる。

 

 ……黙っていれば俺の勝ちですんだかもしれないのに、我ながら甘いな。

 

「魔理沙を庇って転がったとき、ちょうどこの霧の湖についただろ? その時、魔理沙の背中──というよりはその長い髪の毛か? それが俺よりも先にゴールしたんだよ、お前」

 

「……じゃあもしかしてあれなのか? 私を庇って、その私が勝ったのか?」

 

「そういう事になるな……やれやれ。今回の敗因は運だな。これで俺は魔理沙に何かを奢らなきゃいけないワケだが──」

 

 そこで俺は区切り──交渉を持ちかけたみた。

 

「──箒で良いか? 二日ほどあれば作れると思うが……」

 

「え……!? 良いのか!? てっきり封結の事だから『今回の勝負は無しだな』って言うかもって思ってたんだが!?」

 

「霖之助の買い物で余裕があるからなー。材料から集めて作ればさらに低コストだし。人里で箒の材料を集めて、特注品作ってやるよ。『もう二度と壊してたまるか!』って思わせるぐらいのな」

 

 ……どうしてか、魔理沙の悲しそうな顔は見たくない。魔理沙は……覇気のある顔の方が彼女らしいからな。

 

 そして、その事が嬉しく思ったのか──

 

 

 

 

 

「──ありがとな封結っ! 楽しみにしてるぜっ!」

 

 

 

 

 

 ──覇気のある、彼女らしい笑顔を見せながら礼を言われた……。

 

 

 




 前方はキチンと確認して進みましょう。

 八卦ローラー……ローラーブレードにミニ八卦路に似たような物を改造して取り付けた靴(?) 霖之助曰く、能力云々も考慮すると、基本封結にしか扱えない代物。かなり速く滑って移動することが出来る。

 ではまた。
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