やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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最後の試合

 

 陽花戸中の練習試合は雷門の勝利で終わる。しかし、ある人物が俺達を驚かせた。

 

 立向居勇気。

 

 彼は、円堂の持ち技であるゴッドハンドを使いこなした上に、試合中で未完成ながらもマジン・ザ・ハンドをやってのけた。戸田曰く、立向居は見ただけで必殺技を繰り出せたそうだ。

 恐ろしい才能だ。

 

 次に円堂大介のノート。究極奥義たるものが書かれていたらしい。やはり、円堂以外に読解は出来なかったが。早速練習試合で試したものの、やはり失敗に終わった。

 

 そんなこんなで時間が過ぎて行き、福岡の夕日も姿を消し、周りは完全に暗くなる。陽花戸中の部員達と和気藹々と食事をしているなか、吹雪士郎が一人でポツンと座っていた。

 

「……カレー、食わないのか」

「…比企谷くん。うん、ちょっと食欲がなくて…」

「そうか」

 

 その先には会話はなく、ただ無言の時間が過ぎてゆく。すると吹雪が、口を開く。

 

「ねぇ、比企谷くん」

「なんだ?」

「この間のイプシロン戦、なんか変じゃなかった?」

「……まぁ吹雪と会って間もないから、そんな細かいことは言えんけど。まぁ、変だったな。特に防御から攻撃に転じる瞬間。あの時、俺は苦しそうに見えた」

「……すごいね。よく見てるなぁ」

「人間観察が得意なんでな」

 

 アツヤのことも聞かれてなお意識して吹雪を見たから分かったのかも知れないが。

 

「……監督から聞いたぞ。お前と、そしてアツヤのこと」

「!そう、だったんだ……。もしかして、この間の比企谷くんの提案もそれを知った上で?」

「人格を使い分けるなんて想像出来ないからな。何をきっかけに精神崩壊するか分かったもんじゃない」

 

 俺がそう返すと、吹雪はポツポツと話し始める。

 

「……僕ね。完璧にならなきゃならないんだ。完璧こそが全て。完璧になることで、僕が雷門にいる意味があるんだ」

「……聞いていいか?お前の言う、完璧ってなんだ?」

「……分からないんだ。でも、最近こう思い始めたんだ。アツヤになることで、完璧になるんじゃないかって。アツヤがいるから、僕は求められる。僕が雷門にいる理由になる。でも、シュートを止められたなら、僕がいる理由がなくなる。…僕は、また一人になる」

 

 ……どうやら吹雪の精神は思ったより深刻な状態だった。雷門に求められるために、彼はアツヤ自身になる気でいる。一人にならないために、誰かから求められるために。

 

「……そうか。けど、お前は一人じゃないだろ」

「えっ…」

「雷門が消えても、白恋中のみんながいるんじゃねぇの。シュートを決められなくなって、それで縁を切られるならその程度のチームだったってことだろ。ま、誰かに求められることなんてないから今のは聞き流してもいいけど」

 

 俺はそう言って、吹雪から離れる。この問題は、吹雪にしか解決できない。俺達は、彼を見守ることしか出来ないのである。

 

 

 

 翌日。

 

 

 どうやら円堂の知り合いらしい人物のチームと、昼頃から試合を始めるらしい。午後12時に、その人物が現れる。

 

「…12時だ」

 

 すると、陽花戸グラウンドに黒い霧が足元を漂う。この感じは…エイリア学園だ。

 

「来た!」

 

 グラウンドの真ん中に、眩い光を放ちながら、やつらは現れた。赤髪の少年が筆頭に、いずれも一癖も二癖がありそうな選手がいる。

 その中には、昨日の謎の女がいた。

 

「やぁ、円堂くん」

「!?そ、その声……お前まさか……ヒロト…なのか?」

「うん。今日は俺のチームを連れてきたんだ。さぁ、円堂くん。サッカー、やろうよ」

 

 ヒロトと呼ばれる赤髪の少年は、まるで友達感覚で話している。しかし、円堂から聞いた限り、ヒロトと呼ばれる者は友達と言っていた。つまり、人間だってことである。

 しかし、現に彼らはエイリアの格好をしている。

 

「今日は単純に君達とサッカーをしに来たんだ。それと、ウチのウルビダが雷門にいる選手に用があるって聞かなくてさ」

 

 赤髪の隣に、昨日の青髪の女が話を継いだ。

 

「いいか、よく聞け。雷門イレブンよ。この試合で貴様達が敗北した場合、比企谷八幡を貰っていく」

「な、何だと!?」

「なんで比企谷くんが…!?」

 

 どうやら否が応でも俺を連れて行きたいそうだ。青髪の女、ウルビダという人物は。

 

「比企谷八幡は素質がある。雷門にいるには惜しい人材だ。我々、エイリア学園でこそ、やつの力は発揮できる」

「ふざけんな!比企谷は絶対に渡さない!」

「ならば我々の試合を受けることだ。我々、ザ・ジェネシスに勝つことができれば、先程の話はなかったことにしてやる」

「……というわけさ。えっと、比企谷くん、だっけ?悪いけど、雷門が負けたら君を連れて行くから」

 

 赤髪の少年は、丁寧に謝ってくる。それが逆に怖くて仕方がない。

 

「……勝てばいいんだろ」

 

 と、見栄を張るものの、恐らく雷門は負ける。イプシロンより上のチームっぽいし。多分、やつらを出し抜いてフェードアウトは出来ないだろう。神出鬼没の連中相手に、俺の逃げ場はない。

 

「……腹括るか」

 

 俺を必要とする以上、命までは取らないはずだ。だが、危険な目に遭わないとも言い切れない。

 

「比企谷!絶対勝とう!」

「あぁ…」

 

 円堂は意気込むが、やはりみんなの心境は穏やかではなかった。イプシロンを超えるチームが現れたこと、俺が何故標的になったのかということで、パニックが生じている。

 

「比企谷くん、君にはこの試合に参加してもらいます」

「……はい。分かりました」

 

 これが雷門での最後の試合になる。小町達にはなんて説明すりゃいいんだろうな……。

 

 ついにジェネシスとの試合が始まる。FWは浦部と吹雪。MFは俺と鬼道と風丸と一之瀬。DFは壁山、木暮、土門に財前だ。GKは円堂。

 

「……はぁ…」

 

 俺は落ち着いて深呼吸をする。覚悟を決めるしかない。雷門での最後の試合が、ホイッスルの合図から始まった。

 

 

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