やはり俺がサッカーをするのは間違っている。 作:セブンアップ
エイリア学園イプシロンが去った後、総武中には何台もの救急車が駆けつけ、サッカー部員を運んでいく。
担架で運ばれていく葉山や戸部に、俺達は駆け寄る。
「隼人くん……」
「悪いな結衣……優美子や姫菜たちに、謝っててくれ……」
「うん……」
いくらFF全国大会に参加していたとはいえ、ここまでズタボロにされるとは……。
「比企谷……」
不意に、葉山が俺の名を呼ぶ。
「……なんだ」
「…最後に教えてくれ。なんであのとき、助けた?」
「…別に善意で助けたわけじゃねぇよ。さっきも言ったろ、身体が勝手に動いた。それだけだ」
「……そうか…。怪我が治ったら、一度君とサッカーをしてみたいな…」
「お断りだ。大体、俺に集団でやるようなスポーツが出来てんなら今頃パリピだわ」
「…それもそうだな」
葉山は儚げな笑みで、救急車の中に運ばれていく。学校は壊されずに済んだものの、総武中サッカー部は全滅だ。
「……これからどうなるんだろ」
由比ヶ浜は不安げに呟く。
「…サッカーで力を見せつけてくるあたり、この学校は狙われないかも知れない。狙われる可能性も否定はしないが」
「…どのみち、私達には何も出来ないわ」
あの雪ノ下でさえ、現状を打破することが出来ないと言う。超常的なことが起こってしまったからか、誰も受け止め切れていなかった。
「せんぱい…」
一色がいつものようにあざとらしく俺の袖を掴む。だが、顔は今にも泣き崩れそうであった。
「…行かなくていいのか?」
「……はい。葉山先輩たちが学校を守ったんです。サッカー部のマネージャーで生徒会長でもある私にも、何かやるべきことはないかなって……」
「…強いな、お前」
眼前で葉山たちが倒されておきながら、自分に何か出来ることを模索している。
すると、救急車とは入れ違いで、青いキャラバンが総武中に乗り込んできた。
「平塚先生、あれなんすか?」
「いや……私にも分からん」
青いキャラバンから、青色と黄色の鮮やかなジャージを纏った者達が次から次へと降りてくる。
「お兄ちゃん……あれって……」
話したことはないが見覚えがあった。バンダナを付けた男にゴーグルを付けた男、中学生にしてはだいぶデカい男も。
「雷門……」
FF全国大会優勝校で、一度エイリア学園を退けた雷門中学。キャプテンの円堂守を筆頭に、強者達が顔を揃えてやってきた。
「くそっ、一足遅かったか……」
「でも、校舎は壊されてないでやんすよ?」
「イプシロンがまだ来てないとか?」
キャラバンから、女性が現れる。おそらく、雷門の監督か何かだろう。
「失礼、そこの貴女」
「は、はいっ!」
謎の女性は一色に話しかける。
「イプシロンが総武中に襲撃予告が届いたと聞いたのだけれど……」
「え、えっと……」
「イプシロンは先程、この総武中に来ました」
一色の代わりに、平塚先生が答える。
「そうですか…」
「一つ、聞いていいですか?」
ゴーグルを付けたドレッドヘアーに、青のマントを羽織るオプションだらけの男が質問する。
「何だ?」
「イプシロンはジェミニストームと同じく、学校破壊を主軸に強豪校に姿を現しています。ですが、イプシロンが来たのにも関わらず、総武は破壊されていない」
「あぁ…そのことか……」
チラリと俺を見る平塚先生。
いやちょっと待って。なんで俺見るの?俺何かしたか?
「せんぱいですっ!せんぱいがイプシロンを追い払ったんですっ!」
一色が興奮気味にそう答える。
せんぱい?あぁ、葉山達だな。確かに身を挺してまで学校を守ったからな。
「葉山先輩達はイプシロンに倒されて……でも、せんぱいが駆け付けて助けてくれたんですっ!」
葉山達じゃなければ、きっと謎の存在Xだな。X先輩ありがとう。総武中を守ってくれて。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
「待ちなさい比企谷くん」
この場からフェードアウトしようとするも、雪ノ下が俺の腕を掴む。もう嫌な予感しかしないんだけど……。
「ちょっと落ち着きなさい。その、貴女の言う先輩って、一体どなた?」
茶髪のお嬢様のような子が一色に問う。一色はこちらに振り向いて、指を差した。
「あのせんぱいです!あの人が、イプシロンを追い払ってくれたんです!」
すると周りは同じところに一斉に視線を向けた。視線を向けた場所は………。
はい、勿論俺しかいません。
「あいつがイプシロンを……?」
「へぇーっ!スッゲーなあいつ!」
バンダナ男、円堂守が一目散にこちらに駆け寄る。
「君、総武のサッカー部?」
「い、いや……。つか、サッカーなんてリフティングとドリブルぐらいしかしたことないし」
勿論、一人でね。
一人野球も一人サッカーも一人バスケもなんでも出来ちゃう比企谷八幡ですこんにちわ。
「君、サッカー好きなのか?」
「別に嫌いじゃないけど…」
つーかさっきからこいつぐいぐい来るんだけど。コミュ力高くない?まさか葉山達と同じ、あちら側の世界の人間か?
「俺、円堂守!君、名前は?」
「…比企谷八幡だ」
「比企谷だな!よろしくな!」
円堂は右手を差し出す。何これ。カツアゲ?
「お兄ちゃん、握手だよ握手」
「お、おう。まぁ、何。よろしく」
俺と円堂は握手をする。つーかめっちゃ握るやんこいつ。痛いし。
「監督!比企谷をイナズマキャラバンに参加させてもいいですか?」
「え?」
「……その前に、彼の実力が知りたいわね」
「ちょっと?」
なんか知らん間に勝手に話進んでるんだけど。
「俺達と一緒にサッカーしないか?」
「へ?」
「イプシロンを追い払ったんだ!きっとやってみたら楽しいぞ!」
「ちょっと待って?サッカー素人なんだけど。リフティングとドリブルしかしたことないけど。一人で」
「大丈夫だって!な?サッカーやろうぜ!」
いや何が大丈夫なのん。イプシロンを追い払ったことで、おかしな展開になっていってしまった。