やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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引き分け

 1-1の同点のまま後半に突入。前半より更に息詰まる攻防が繰り広げられる。あちらが攻めればこちらは守り、こちらが攻めればあちらは守る。まさに一心同体とでも言うべき試合内容だ。

 

 ボールは立向居。立向居が攻め上がって行くが、

 

「フローズンスティール!!」

 

 ゴッカの強烈なスライディングで立向居からボールを弾く。弾かれたルーズボールは俺が拾って、そのまま攻め上がっていく。

 

「行かせないよ!」

 

 俺の目の前には財前が。

 

「ザ・タワアァァー!!」

 

 財前はザ・タワーを発動。しかし、タワーを盛り出してから雷を発生させるまで僅か数秒の隙がある。

 エイリアで身につけたスピードなら、ザ・タワーを攻略できる。

 

 そう考えた俺は、スピードを上げてザ・タワーを不発で終わらせる。そのままフリーのガゼルにセンタリング。

 

「凍てつくがいい!!ノーザン……インパクトッ!!」

 

 ガゼルの十八番、ノーザンインパクトが炸裂。エターナルブリザードよりも更に冷たく、強烈なシュートが円堂に飛んでいく。

 

「はあああァァッ!!正義の……鉄拳!!」

 

 円堂は正義の鉄拳を繰り出す。しかし、円堂は少しずつ後ろに退がっていく。そのまま正義の鉄拳を粉砕し、ゴール。

 

「くっそぉ……!」

「勝つのは、我々ダイヤモンドダストだ!」

 

 ようやく勝ち越した。だが、まだ油断はできない。追い詰められる度に、彼らの底力は発揮される。

 

 雷門のキックオフから試合再会。点を取られたことで士気が上がったのか、雷門の猛攻が始まる。

 さっきまで奪えていたのが、今では奪えなくなっている。

 

 ボールはアフロディに。アフロディに、ゴッカ、アイキュー、クララがマークにつく。

 

「バカ!そんなにマークに行ったら…」

 

 俺は判断が遅れ、パスをカットできなかった。アフロディからパスを受けたのは、雷門のエースストライカー、豪炎寺だった。

 

 ボールを受けた豪炎寺は、炎の魔神と共に大きく回転しながらジャンプする。

 

「爆熱……ストォォォーム!!」

 

 豪炎寺から放たれる強烈な炎のシュート。

 

「これ以上入れさせるか!」

 

 俺は豪炎寺のシュートの威力を少しでも減らすために、ディフェンスに入る。右足に力を込めて、シュートを迎え打つ。

 だが、

 

「があァァッ!!」

 

 豪炎寺のシュートは凄まじい威力を誇り、俺如きでは弾き飛ばされてしまった。

 

「アイス……ブロック!!」

 

 ベルガが氷を纏う拳で爆熱ストームにぶつけるが、その勢いは止まらず、ベルガごとゴールに叩き込んだ。

 

 2-2。再び同点。しかも、残り時間はあまり残ってはいない。次入れた点が試合を決めることだろう。

 

 ダイヤモンドダストのキックオフ。攻撃陣は猛然と雷門陣内に突入していく。だが、雷門の底力の高さゆえに、攻めあぐねている。

 すると、ゴールから円堂が飛び出し始めた。ボールは一之瀬が保持している。

 

 これはまさか……。

 

「アイキューは土門を!クララは円堂にマーク!」

 

 俺はもしかしてと思い、アイキューとクララに指示を出す。二人は指示通りに動いてくれた。

 一之瀬が一人になったところを、

 

「もらったッ!」

 

 俺は掠め取る。ゴールはガラ空き。円堂は戻るのに時間がかかる。

 

「ガゼル!」

 

 俺は前線のガゼルにロングパス。だが、そう物事は上手くいかず、身体能力の高い綱海は、驚異的な跳躍を見せてそのパスをカット。ボールはグラウンド外に転がってゆく。

 

「チッ……」

 

 あと少しで点が入ったものを。

 全然知らんやつだが、さっきからなんなんだあの身体能力は。

 

 試合は再開して、ダイヤモンドダストのスローイング。だが、すぐまたボールを奪われる。鬼道がボールをキープし、そのまま上がって行く。

 

「行くぞ豪炎寺!円堂!」

 

 鬼道の合図で豪炎寺と円堂が駆け上がる。ザ・フェニックスの次はイナズマブレイクの体勢かい。

 鬼道が勢いよくボールを上に蹴り上げる。

 

「打たせるか!」

 

 俺は蹴り上げられたボールをトラップし、そのまま攻め上がっていく。しかし、今度はアフロディが邪魔をする。

 

「円堂くん戻れ!早く!」

「くっそ!」

 

 流石世宇子のキャプテン。テクニックがずば抜けている。

 

「こっちだ!エイト!」

 

 後ろから駆け上がっていたガゼルの呼びかけに応え、俺はパスを出す。そのままハイスピードで雷門ゴールに突き進む。

 

「凍てつく闇の恐怖を思い知れ!ノーザン…インパクトッ!!」

 

 ガゼルは構わずノーザンインパクトを打ち込んだ。しかし、打ったと同時に円堂がノーザンインパクトに回り込み、正義の鉄拳の体勢に。

 

「ダメだ円堂!ペナルティエリア外だ!ハンドになる!」

 

 円堂はペナルティエリア外でも迷わず正義の鉄拳を繰り出そうとしていた。しかし、繰り出したところで止めれるとは限らない。

 

 すると円堂は自棄になったのか、ノーザンインパクトを頭でぶつける。その後、頭から拳のようなものが現れ、ノーザンインパクトを弾いてしまった。

 

「何ッ!?」

 

 そしてホイッスル。試合が終了した。

 2-2の同点。最後の最後は円堂の新技らしきもので幕を下ろした。

 

「そこまでだよ、ガゼル」

 

 グラウンドに現れたのは、私服姿のグラン、およびバーンの姿。

 

「試合は見てたよ円堂くん。短い間に、よくここまで強くなったね」

「エイリア学園を倒すためなら、俺達はどこまでも強くなってみせる」

「…いいね。俺も見てみたいなぁ。地上最強のチームってやつを」

「……本当に、そう思っているのか?」

 

 円堂の問いに、グランは答えずにはぐらかす。そして上から黒いサッカーボールが降ってきて、俺達を眩い光で包み込む。

 

「円堂守……次は必ず、君達を倒す!」

 

 ガゼルはそう言い残して、ダイヤモンドダストを引き連れて去って行った。グランやバーンとともに、グラウンドから消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え」

 

 

 

 去って行った?消えて行った?

 

 あれ?俺は?これ目の前には星の使徒研究所が広がってるパターンじゃないの?なんでまだ目の前に円堂達いるの?

 

 

 

 

 

 これはまさか。

 

 

 

 

「……放って行かれた…」

 

 

 

 

 

 ヤバいヤバい。円堂達がすんごい目で見てくるんだけどどうしよう。俺帰れないじゃん。わざわざ富士山まで自力で帰れってか。

 鬼かよ。

 

「えっと……比企谷、先輩?」

「ひ、ひゃいっ」

「あ、良かった。比企谷先輩ですね」

 

 いや確認方法。

 なんだその確認方法は。斬新だな音無よ。

 

「もしかして放って行かれたの?だっせーの。うっしっし」

 

 はいその通りです。放って行かれましたよ。何か悪いですか悪いですねすいません。

 

 どうしよ。とりあえずこの場から去るしかないよな。俺は何も言わず、グラウンドから去ろうとすると、

 

「待て、比企谷」

 

 デスヨネー。そりゃ引き止めますよねー。

 

 去り際に引き留めたのは鬼道だった。

 

「お前は何故、エイリアに味方する。エイリアが今までどれだけのことをしてきたか、お前には分かるはずだ」

「そ、そうっスよ!理由くらい話して欲しいっス!」

 

 味方する理由、か……。

 それを聞いてくるあたり、こいつらはまだ俺を嫌っていないと見える。裏切ったやつなど、普通は話しかけたくもないはずなのに、だ。

 

 でも、誰しも言えない秘密や物事が沢山あるのだ。だから俺は口にしない。それでも、あえて言うならば。

 

「……エイリア学園を倒せば、理由くらいは話すと思う」

「…比企谷……」

「……本当、お前ら凄ぇよ。ダイヤモンドダストと互角に戦うんだから。あれでもエイリアではトップクラスだぞ」

「そりゃそうだろ!エイリア学園を倒すために、俺達は日々努力しているんだ!それに、お前だって凄いじゃないか!いつの間にあんな必殺シュートを覚えたんだよ!」

「……円堂は変わらないな」

 

 一応俺はエイリアだぞ?なのに円堂は、それを度外視して笑いながら会話している。

 すると、もう一つの黒いボールがグラウンドに現れる。眩い光と共に姿を現したのは、

 

「……全く、エイトを連れて帰ってくるのを忘れるとは何事だ」

 

 いつものユニフォームを着た、ウルビダが溜息混じりで呟きながら現れた。

 

「お前はジェネシスの!」

「……今日はお前達などに用はない。さぁ、行くぞ」

「…おう」

 

 俺はウルビダの隣に立つ。黒いサッカーボールは光を放ち、俺達を包み込む。

 

「比企谷!」

「……またな」

 

 俺は別れを告げて、今度こそ彼らの前から去って行った。

 次からはきちんと連れて帰って欲しいです。マジで。

 

 

 

 

 


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