やはり俺がサッカーをするのは間違っている。 作:セブンアップ
雷門との試合から4日程度経った。俺はマッカンを飲みながらゆっくりしていた。
いやしかし、マジで放って行かれた時は絶望したわ。研究所の場所が場所だけに一般人が来れる様な場所ではないから。富士山麓だぞ富士山麓。
迷って死んじゃうよクソが。
「エイト、戻ったぞ」
ウルビダが帰ってきた。帰ってきた彼女は俺の隣に腰掛ける。そして、口を開いた。
「……事後報告をしておこうか。今回の試合で、ダイヤモンドダストは用無しとなった」
「……マジか。だいぶ厳しいな」
「当たり前だ。引き分けは敗北と同じ。同様に、プロミネンスも追放だ」
マスターランクの2チームが一気に解散。ということは、マスターランクのみんなが執着していたジェネシスの座というのは、ガイアになったということなのか。
だが、俺はきっと恨まれているだろう。助っ人扱いとされている俺が結果を出せず、ジェネシスの座を頂くチームに所属しているのだから。
「…別にお前が気にするほどじゃない。それに、我々の敵が消えたのだ。………それに、エイトに近づく目障りな女も消えた。無様だな」
雷門と同様に、エイリア学園も負ければ追放される。悲劇しか生まない戦いは、一体いつになったら終わるのだろう。
「エイト。もうあんなやつらのことは気にするな。消えたやつらのことなど捨て置け」
「…あぁ、そうだな」
追放された者達は、きっとどこかで彷徨うことになるだろう。行き所を失って、どこに行けばいいのか分からない状態になる。
最悪、警察に保護されてるといいのだが。
「……エイト……」
ウルビダは唐突に、俺の首筋を噛み始める。勿論、俺の体を逃さない様に抱きしめる形で。
もうこの行為には特に意味を成さないはずなのに、未だに彼女は躊躇いなく続けている。きっと、彼女なりの欲求解消なんだろう。
「……エイト……エイトっ……」
首筋を噛みながら、俺の名前を連呼する。それを交互にして、何度も何度も繰り返している。その行為が続くたびに、ウルビダの抱きしめる力が徐々に強くなっていく。
彼女は俺に依存している。それも重度の依存症だ。もし小町関係なく、俺がエイリアを去ると言い出せば、彼女は死んでも止めるだろう。止めるどころか、きっと俺を監禁するまである。
そんな考察をしていると、ウルビダの通信機に受信が入る。彼女は舌打ちしながらも、応答に出る。
「……なんだ」
「お父さんが呼んでいる。今すぐ来てくれ」
「……分かった」
ウルビダは通信機を切って、ベッドから腰を上げた。
「お父様からの呼び出しだから行ってくる。ではな」
ウルビダは部屋を出て行き、俺は一人となった。
「はぁ……」
ウルビダの依存症にも困ったものだ。妙に疲れた俺は、ベッドで寝転んだ。少しすると、部屋にノックをする者が。
「…開いてるぞ」
俺がそう許可を出すと、部屋に入ってきたのはガゼルとバーン。ダイヤモンドダストのキャプテンとプロミネンスのキャプテンが何しに来たのだろうか。
「エイト。君の力を貸せ」
「…いや、急になんだよ。力貸せって、お前らエイリアから用無し判定されたんじゃなかったのか?」
「そんなもん、認められるわけがねェだろ!ガイアがジェネシスとは認めねェ!」
「私達は、グランに思い知らせるのだ。上には上がいることをね」
ジェネシスの座についたガイアを認めることが出来ず、彼らの独断でジェネシスの座を獲ろうとしているのだろう。
ここから考えられるのは、おそらく雷門との勝負。もしガイアを相手にするなら、ガイアのメンバーである俺を誘うことは出来ないからな。
その上、今エイリアの脅威にとなりつつある雷門を倒せば株は上がるだろうから。
「……しかし、ウルビダがなんて言うか……」
俺の独断で行こうものなら、彼女は分かり次第連れ戻す。それだけじゃない。また小町を盾にするかも知れない。
「私達は知っているのだ。ここに、君の妹がいることをね」
「な、何……?」
ガゼルから驚愕の告白を受けた。小町のことを知ってるのは、俺とウルビダ、あとは吉良星二郎とエージェントくらいだけだと思っていた。
ガゼルは俺に構わず説明をし続ける。
「いくら実力者とはいえエイトにあそこまで固執するウルビダが気になってね。私が秘密裏に探っていたのだが、まさか妹が監禁されていたとはね」
「どうだ?俺達の混成チーム、ザ・カオスに入りゃァ、お前の妹を助けてやるぜ」
確かに、出鱈目を言っている様子は無さそうだ。こいつらの提案に乗れば、小町は助かる……か、どうかは分からないが、少なくともそういう希望はある。
だが、その場合。
彼女は、ウルビダはどうなってしまうのだろう。
俺が消えたことで彼女の精神は崩壊してしまうかも知れない。いや、自棄になって当たり構わず壊してしまうかも知れない。
……何故、俺は自分を束縛する相手を気にしているのだろう。そもそも、エイリアはみんな敵なんだから、敵であるウルビダは放置してもいいのだ。
だが、きっと彼女は俺がいなくなることで、自分の身を滅ぼしてしまう。俺のせいで、彼女が不幸になる。
彼女が何故、俺を好いているのかは分からない。だが、少なくとも彼女の一端には俺が取らねばならない責任がある。
「……聞いてんのかエイト!」
「ッ!」
バーンのその声に、俺はボーッとしていたことに気づく。
「で、どォすんだよ。入るか入らねェか」
だが、もとより俺は小町を助けるためにここにいる。ウルビダのことは、また後で俺が責任を負えばいい。ウルビダの人格上なら、これくらいでは小町には手を出さないはずだ。
これ俺の勝手な予想だし、普通に考えて小町に手を出すことも十分に有り得る。それでも、俺は早く小町を助けなきゃならない。
「……分かった。そのチームに加わらせてもらう」
「…良い答えだ。では、今すぐ来てもらおうか」
「もう試合するのか?」
「あァ。お前には、MFに入ってもらう」
俺はバーンの指示に頷く。ガゼルからは、赤と青が混じったユニフォームを渡される。
これが、カオスのユニフォーム。
「…着替えたらグラウンドにさっさと来い」
そう言い残して、彼らは部屋から出ていく。俺はカオスのユニフォームを着て、ウルビダの部屋から彼らの後を追う様に出て行った。
グラウンドには、ダイヤモンドダストとプロミネンスで見たことある人物が揃っていた。
「あ、エイト……」
「…クララか。お前もカオスに?」
「うん。あのままじゃ、引き下がれないから」
ガゼルやバーンだけじゃなく、他の連中もジェネシスの座を諦めていない様だ。
なんでサッカーやるやつはみんな変に負けず嫌いなんだろうか。
「…では行くぞ」
グラウンドには、黒いサッカーボールが落ち、いつもの様に眩しい光が俺達を包み込む。
二度目の雷門との決戦だ。
カオスのMFにはプロミネンスのヒートがいたと思いますけど、代わりに八幡が入りました。
ヒートが好きな人はごめんなさい。
全然違う話ですが、メンヘラな人とかヤンデレな人とかと一緒にいると、こちらまで病んでしまうケースがありますよね。今の八幡の状態は、それに近いです。