やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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砂漠の獅子

 今日はアジア予選二回戦の日だ。相手はカタール代表デザートライオン。立っているだけで汗を流しそうな今日の気温は、試合に少なからず影響するだろう。

 俺達はFFスタジアムでストレッチを始めていたが、マジで暑い。それに比べてデザートライオンのメンバーは、汗一つかいていない。

 

 今日のスターティングメンバーは、ほとんどオーストラリア戦と変わっていない。木暮と風丸が交代したくらいだ。DFは綱海、壁山、土方、俺。MFは、緑川、鬼道、風丸。FWは豪炎寺と吹雪と基山だ。GKは円堂。

 

 それぞれの位置に付いて、いざ試合開始。

 基山がドリブルで上がっていく。に対して、FWのザックが激しいスライディング。しかし、基山はなんとか持ち堪えて抜き去っていく。

 

「鬼道くん!」

 

 ボールは鬼道に渡る。

 

「抜かせんぞ!」

 

 MFのメッサーが鬼道に対して強めのショルダータックル。だが、鬼道は負けずに吹き飛ばしていく。

 

 しかし、デザートライオンは最初からラフプレーが多いな……。気性が荒いチームなのか?

 

 鬼道から豪炎寺に渡る。豪炎寺に対してムサとジャメルがダブルスライディング。豪炎寺は躱して吹雪に繋ぐ。

 

「ウルフレジェンド!!」

 

 吹雪のウルフレジェンドが炸裂。しかし、キャプテンのカイルが身を挺して防ぐが、吹き飛ばされてしまう。

 

「やらせるかッ!」

 

 ナセルがパンチングでなんとか防いでボールを外に。チャンスが続くイナズマジャパン。風丸のコーナーキックから始める。

 

「これが俺の…新必殺技だ!」

 

 風丸はボールを大きく蹴る。ミスキックかと思いきや、大きく弧を描いてゴールに向かう。反応が遅れたナセルは触れることが出来ず、ゴールを決められてしまう。

 

 しかし、凄いカーブシュートだ。プロの選手でも直接ゴールに入れることはあるが、あそこまで大きく曲がるとは。コーナーキックだからこそ使うことのできる必殺技か。

 

 イナズマジャパンの先制。しかし、尚も勢いが止まらないイナズマジャパン。

 試合開始後、ザックが攻め上がっていく。

 

「邪魔するやつは吹き飛ばす!」

「思う念力岩をも通すと言ってね!」

 

 緑川はザックからボールを奪取。そのまま攻め上がっていく。

 

「やつを止めろ!」

 

 ファルとスライが緑川にディフェンスを仕掛ける。

 

「吹雪!」

「やつだ!マークに付け!」

 

 吹雪に対してカイルとジャメルがマーク。だが、緑川のパスをアドリブでスルー。ボールが通ったのは基山だ。

 

「流星……ブレードッ!!」

 

 そのアドリブプレーがナセルの反応を送らせ、基山の得点を許してしまう。怒涛の追加点。

 

 ただ、ここまで簡単にいくと何か気味が悪い。オーストラリアがいくら優勝候補だったとはいえ、ここまで呆気ないものなのか?

 

 尚も攻め上がるイナズマジャパン。だが、ここで前半終了のホイッスル。ハーフタイムになり、俺達はベンチに戻り休憩する。

 

「飲め、八幡。今日は特に暑いからな。しっかり水分補給をしておかないと、後半持たないぞ」

「あぁ……」

 

 俺はあまりディフェンスをしていなかったから消耗はそんなになんだが、FWやMFの消耗が早い。いくら暑いからといってそんなに早く消耗するものなのか?

 

「…比企谷くん。何か変じゃないかしら?」

「あぁ……いくら体力差があるって言っても、前半でここまで消耗するなんて……」

 

 別段変わりない試合運びだろ。違和感があるとすれば、カタールのラフプレーと底無しの体力が目立つだけで……。

 

「………まさか」

 

 前半のラフプレーは、意図的に狙ったのか?確かにラフなプレーには力強い突破で返り討ちにはできるが、その分こちらの消耗も激しくなる。しかもこの気温だ……カタールのやつらに比べれば屁でもない暑さなんだろうが、日本人にしたら気が滅入る暑さ。

 

 こればっかりは、体力の差がモノを言う。一夜漬けで得た体力じゃやつらの体力に勝てないだろう。

 

 そんな不安を残しながら、後半戦が始まろうとする。カタールはスリートップという攻撃的な布陣に変えてきた。

 そして、後半戦開始。ザックが攻め上がっていく。緑川と鬼道がマークに付くが、

 

「どけッ!」

 

 ザックはラフプレーで二人を吹き飛ばして突破。次に土方を強引に躱してシュートを打つ。

 

「正義の……鉄拳ッ!!」

 

 円堂はなんとかセーブ。デザートライオンの猛攻を一度止めるため、弾いたボールを風丸がグラウンドの外に出す。

 すると、誰かが倒れた様な音がする。

 

「緑川!!」

 

 緑川は苦しそうに息をする。

 

「どうしたんだ?こんなに早く息が上がるなんて……」

「…ずっと、練習していたツケが回ってきたみたいだ……」

 

 確かに、緑川はいつも誰よりも特訓していた。偏に、レギュラーの座を譲りたくない一心だったのだろう。

 

「過ぎたるは猶及ばざるが如しか……!……すまない、みんなに迷惑をかけて……」

 

 緑川は交代し、代わりに栗松が入る。

 緑川のオーバーワークにも問題があったんだろうが、他にもそろそろ限界に近いやつもいる。あと一点くらい突き放しておかなければ、マジで面倒なことになる。

 

 デザートライオンからのスローイング。ボールはザックに渡り、マジディに繋ごうとするが、栗松がそれをカットし攻め上がる。

 だが、吹雪も基山も栗松に付いていくのが精一杯の様だ。

 

 こうなれば、博打に出るしかない。

 

「栗松!こっちに回せ!」

 

 俺はディフェンスラインから一気にデザートライオン陣内に上がっていく。

 

「比企谷さん!」

 

 栗松からボールを受けて、俺は攻め上がっていく。

 

「お前達!狩りの時間だ!」

「「おぅ!」」

 

 カイルの指示で動きが変わる。

 デザートライオンのMFとDFが次々とボールを奪いにくる。俺はなんとか抜き去っていこうとするが、目の前にカイルが立つ。

 

「デザート……ストーム!!」

 

 カイルは土煙を上げる。周りが見えない俺は身動きが取れず、ボールを奪取されてしまう。

 奪ったカイルはそのまま攻め上がっていく。鬼道がマークに付くが、それすら振り切ってしまう。

 

「ザック!」

 

 カイルからザックにボールが渡る。

 

「行かせない!」

 

 基山がザックに向かっていくが、逆に返り討ちに遭う。そのままザックが攻め上がり、マジディへとセンタリング。

 

「させるかッ!」

 

 空中で綱海とマジディのヘディングでの鬩ぎ合い。だが、徐々にマジディの方が綱海を押してきている。

 

「うおおおォォッ!!」

「何ッ!」

「吹っ飛べェッ!!」

 

 マジディは綱海と円堂諸共ヘディングでゴールに押し込んだ。

 まさか、必殺技無しでゴールを決められるなんて……。それに、円堂と綱海を吹き飛ばす力強いヘディング……。

 

「……って、おい。綱海!?」

 

 円堂はなんとか立ち上がったが、綱海は未だに倒れたままだった。円堂は倒れたままの綱海に呼びかけるが、一切反応しない。

 するとそこへ、カイルが来る。

 

「…ここからが俺達のサッカーの始まりだ。俺達は灼熱の砂漠とフィールドで育ち、その中で鍛え上げられた身体と無限の体力。それがデザートライオンの最大の武器。昨日今日練習しただけのお前達に付いてこれるわけがない」

 

 やはり、デザートライオンの狙いはラフプレーで俺達の体力を消耗させて動きを鈍らせる。そして消耗したところを自慢の身体と体力をフルに使って仕留める。

 

「お前達は砂漠に迷い込んだ旅人も同然。後は息の根が止まるのを待つだけだ」

 

 カイルはそう言い捨てて去っていく。確かにやつの言う通り、このままだと本当に息の根が勝手に止まる。

 どうすればいい……。

 

 

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