やはり俺がサッカーをするのは間違っている。 作:セブンアップ
久遠監督は、限界に達した基山と綱海を退げて、飛鷹と木暮を投入。DFが増えたことで、5-3-2の防御的布陣に変わり、俺はMFのポジションになる。
イナズマジャパンのボールで試合再開。吹雪が攻め上がるが、いつもの吹雪のスピードが出せていない。
「もらったッ!」
ザックがスライディングでボールを弾く。こぼれ球を鬼道が拾う。鬼道に向かってカイルが突っ込んでいく。
「いくぞ吹雪!」
鬼道から吹雪のセンタリング。
「ウルフレジェンド!!うおおおォォッ!!」
吹雪はウルフレジェンドを打ち込んだ。しかし、GKナセルは余裕の笑み。
「ストームライダー!!」
ナセルはその場で回転しながら、砂嵐を生み出してウルフレジェンドを包み込む。ウルフレジェンドは砂嵐の勢いで弱まり、その弱まったところをナセルが上から勢いよく叩きつけてキャッチする。
「フン、この程度か?」
「…そ、そんな……」
吹雪も限界に達して、ドサッと重々しく倒れてしまう。ここに来て吹雪もダウンか…。
「大丈夫か?」
「う、うぅ……」
「…ここまでの様だな」
再び、カイルが俺達を見下す様に話し始める。
「この気温の中、よく頑張ったと認めてやろう。最後に勝つのは、極限まで鍛え上げたフィジカルを備えた俺達だ。お前達の得意なチームプレーで、どこまで戦えるかな?」
一点リードされているのにこの余裕。一点リードは負けているうちに入っていない様に見える。
ダウンした吹雪に代わり、宇都宮が投入される。宇都宮のテクニックなら、デザートライオンのラフプレーにも対応できるだろうが……。
GKナセルから試合再開。ボールはザックに渡る。
「カイル!」
ザックからのパス。だが、それを宇都宮がインターセプト。そのままデザートライオンのメッサーとジャメルをあっという間に抜き去り、ゴール前に。
宇都宮はシュートの体勢……になるが、またもやシュートを打たずに豪炎寺へとバックパス。だが、それはムサによって奪われてしまう。ムサは大きく前線にパス。
そのパスを受け取ったザックはスライにパス。
「はああああ!!旋風陣!!」
後半に入ったばかりの木暮がスライからボールを奪う。
「木暮こっちだ!」
俺は木暮からボールを受け取る。しかし、目の前からメッサーとセイドが立ちはだかる。
「ライアーショット!」
俺はライアーショットで隙を生み出して二人を抜き去る。
「鬼道!」
俺は鬼道に向かってループパス。しかし、それにデザートライオンは対応して鬼道にマークに付く。すると、鬼道へのパスを宇都宮がカット。
この大胆なプレーにデザートライオンのディフェンスは反応が出来ない。
「今だ!打て虎丸!」
宇都宮の決定的なシュートチャンス。宇都宮はシュートの体勢に入るが、またシュートを打たずに豪炎寺にパスをする。
「爆熱……ストォォーーム!!」
豪炎寺は爆熱ストームを放つ。
「ストームライダー!!」
しかし、GKナセルは余裕で爆熱ストームをキャッチしてみせた。
……しかし、マジでさっきから宇都宮は何をしている。あれほどシュートチャンスがあったのに一つも打たないとは。どういう理由があるのかは知らないが、客観的に見ればただ迷惑なやつだろ。
GKナセルからザックに。デザートライオンは、カイルを中心に猛然と迫ってくる。
「行かせるかッ!」
「どけッ!」
俺はザックからボールを奪おうとするも、ザックの強引なドリブルで吹き飛ばされてしまう。こいつら、読みもクソもねぇ。目の前にいるやつらを吹き飛ばすことしか考えていない。
「カイル!」
ザックからカイルへのセンタリング。カイルは必殺技の構え。
「ミラージュ…シュートォッ!!」
カイルの必殺シュートが円堂に迫っていく、
「正義の……鉄拳ッ!!」
円堂は正義の鉄拳を発動。カイルのシュートをなんとか弾いて外に出す。時間はもうロスタイム。ここで食い止めれば勝てる。
デザートライオン、カイルからのコーナーキック。すると、ここでショートコーナー。意表を突かれる。
ボールを受けたセイドは円堂に向かってシュート。だが、円堂が止める前にいつの間にか円堂の目の前にまでザックが迫っていた。
「何ッ!」
セイドのシュートをザックのヘディングで強引に軌道を変えて、ゴールへと押し込んだ。
「ま、マジか……」
ロスタイムというところで追いつかれてしまった。これじゃまるで、ドーハの悲劇じゃねぇか。
このまま延長に持っていかれると、確実に勝ち目がなくなってしまう。
イナズマジャパンボールで試合が再び始まる。俺達は必死に上がっていくが、カタールのゴールが遠く感じる。
ボールは宇都宮に渡り、メッサーを抜き去っていく。宇都宮と豪炎寺はゴール前に辿り着く。
「豪炎寺さん!」
宇都宮は豪炎寺にボールを繋ぐ。だが、豪炎寺は宇都宮にボールを蹴り返す。それも、宇都宮が吹き飛ぶほどの。まるで、吹雪にやったのと同じ様だ。
「いった……何するんですか、豪炎寺さん!」
「さっきからなんだ!お前のプレーは!」
「ッ……」
「試合時間は残されていないんだぞ!精一杯、ベストだと思えるプレーをしろ!」
「これが俺のベストなんです!俺のアシストでみんなが点を取る……それが一番なんですよ!そうすれば俺がみんなの活躍の場を奪うこともない……みんなで楽しくサッカーが出来るんです!」
そんな身勝手な宇都宮の理由に、豪炎寺は憤慨。
「ふざけるなッ!!」
「ッ……」
「そんなサッカーは、本当の楽しさじゃない!」
サッカーの楽しみは人それぞれだからそこは何も言わんけど、宇都宮のプレーに俺は文句の一つも言いたくなる。
「……まぁ豪炎寺がキレるのも分からないわけじゃない」
「比企谷さん……」
「俺も暑さ込みでイライラしてたし。宇都宮のプレー」
ここで宇都宮の理由を聞いて、「じゃあ仕方ないからシュート打たなくていいぞ」とか言ったところでこいつのためにもチームのためにもならない。
「…お前さ、そんなふざけたプレーを続けるならもうチームから抜ければ?他所のサッカークラブでやってくんねぇかな、そのプレー」
「ッ……」
「何が活躍の場を奪うこともない、だよ。お前調子乗んなよ。俺が本気出したらお前くらい軽く捻り潰せるからな」
ごめん嘘ついた多分返り討ちに遭うと思う。普通に考えたら俺の方がサッカー歴短い多分。
「…宇都宮。俺達が集められた理由はなんだ?」
「……それは、俺達が世界一を目指すために戦うんじゃ……」
「そうだ。でもそれは俺達だけじゃなく、相手も同じことだ。あいつらも俺達も、国中の人間の思いを背負って全力で戦うためにここにいるわけだ。それ忘れんな」
「……そうだぞ、虎丸」
すると、宇都宮の周りには円堂達がやってきていた。
「全員が全力でゴールを目指さなくちゃ、どんな試合にも勝てないぜ。もっと、俺達チームメイトを信じろって!」
こういうのは円堂の役目だ。俺が言えるのはそいつに現実を教えるくらいだ。お涙頂戴のセリフなんて言えないしな俺。
「チームメイトを……?」
「あぁ!今の思いを、サッカーに全部ぶつけろ!俺達が全部受け止めてやる!」
「…キャプテン……」
「虎丸。ここには、お前のプレーを受け入れられない様なヤワなやつは一人もいない」
「やろうぜ!虎丸!」
「……いいんですか?本気でやっちゃっても」
「フッ…俺を驚かせてみろ、虎丸」
「はい!!」
デザートライオン、ザックのスローイングから試合が開始。ユスフに投げ渡し、再びザックに戻す。
すると、ザックに向かって飛鷹が詰める。
「な、なんだこいつ!カイル!」
「通させるかァッ!!」
カイルに渡るボールを風丸がカットし、鬼道に繋げる。
「虎丸ッ!!」
鬼道から宇都宮へのパス。宇都宮は受け取って、攻め上がっていく。
「抜かせんぞ!!」
宇都宮の前にはメッサー、ユスフ、ムサの三人が立ちはだかるが、宇都宮はいとも簡単に抜き去っていく。
あいつやば。神がかってんじゃねぇか今の。
「こいつッ!!」
ジャメルのチャージも簡単に躱していく。続いてセイドが宇都宮に迫る。
「比企谷さん!」
宇都宮からのパス。このボールを取れなきゃ、多分一生あいつにナメられる。俺は宇都宮からのパスを受けて、そのまま蹴り返す。
「行け、虎丸!」
宇都宮は攻め上がっていく。
今のあいつの表情は、どこか生き生きとした表情。心の中からサッカーを楽しんでいる。そんな表情だった。
「ずっと封印してきた俺のシュート……!!」
今度こそ、宇都宮はシュートの構えに入る。しかも、必殺シュートの構え。
「タイガー……ドライブッ!!」
宇都宮が打ち込んだボールとともに、虎がゴール目掛けて駆けて行く。
「ストームライダー!!」
ナセルはストームライダーを発動。だが、宇都宮のタイガードライブが勝り、ストームライダーを破ってゴール。
「やったあああぁぁ!!」
宇都宮、試合終了寸前にデザートライオンを突き放す強烈なシュートを決めた。
そして、試合終了のホイッスル。二回戦を突破し、アジア予選決勝へと駒を進めた。
「ギリギリだな……」
それにクソ暑い。とっとと帰ってシャワー浴びて寝たい。俺は重い足取りで、ベンチに戻っていった。