やはり俺がサッカーをするのは間違っている。 作:セブンアップ
カタール代表デザートライオンを倒してついに決勝戦。本来のプレーを取り戻した宇都宮も最近は積極的にシュートを打っている。
……あと、彼小学6年生だったのね。小町より一歳年下じゃん。
時間は朝。食堂にて、鬼道が話を始めた。
「みんな聞いてくれ。オーストラリア戦、カタール戦を通してある程度世界レベルは実感出来たと思う。だが、アジア予選を勝ち抜き、世界大会で戦い抜くためには更なる必殺技が必要不可欠となる。風丸、お前が日本代表での選考試合で綱海を突破しようとした時を覚えてるか?」
「俺が綱海を……?」
「そういや、なんか風が巻き起こってたな」
綱海を吹き飛ばしてそのままシュートにいった時のことか。
「覚えてるぜ。確かに凄ぇ風だった」
「あの風に更に磨きを掛ければ、強力なオフェンス技となるだろう。久遠監督にも自主練習の許可は得ている」
「分かった。その必殺技を完成させればいいんだな?」
「あぁ。それから吹雪と土方。二人には連携シュートの必殺技を習得してもらいたい。パワーと安定したボディバランスを持つ土方に、スピードの吹雪。この二つが組み合わされば、強力なシュート技になる」
「攻撃の幅を広げるんだな?よし任せとけ。やろうぜ吹雪」
「うん」
風丸のオフェンス技はともかく、よくそんな技をポンポン思いつくよね。どうなってんだよ鬼道の頭の中は。
「連携技か……なんか面白そうだな。よし壁山!俺達もやろうぜ!」
「え、えぇ!?俺っスか!?」
「なんだよ嫌なのか?」
「い、嫌じゃないっスけど……」
「よし決まり!いいだろ鬼道!」
「綱海と壁山か……面白い組み合わせだな」
しかし、連携技ね……。俺には無縁の領域だな。ジェネシスにいた時、何度かスーパーノヴァを打ったけど、元を辿れば八神に強制的にやらされたしな。
何度か失敗したけど多分あれ俺のせいだろうし。
俺は俺個人の技を作らないとな。ライアーショットもひとりワンツーも、世界大会では通用しなくなってくるだろう。
とはいえ、イメージがないから出来ないんだけど。
「よし!そうと決まれば、早速特訓だ!」
朝食を食べ終えた俺達は、朝の練習に向かうことにした。それぞれが新しい必殺技、乃至スキルアップの練習を始めることにした。しかし、中々必殺技のイメージが浮かなばないのでどうしたものかと考えていた。
俺の一日の練習は、結局必殺技をイメージしただけで終了した。夕食も食べ終え、俺は部屋に戻って、どういう必殺技にすればいいのかを考えていた。
すると、
「何を悩んでいる?」
悩んでいる俺の隣に、八神がやってきた。ていうか君いつの間に入ってきたの?怖いよ。
俺は簡潔に、ありのままを八神に伝えた。
「…新しい必殺技か。しかし、お前はライアーショットやアストロゲートがある。悩むことがないのではないのか?」
「……ライアーショットはほぼ初見殺しみたいなところだし、アストロゲートはオーストラリア戦で止められてる。ひとりワンツーなんて初見でも取れるやつ多分いるだろうし」
「…まぁそう悲観的になるな。お前には私がいる。お前が悩んでいるのなら、私はいくらだって知恵を貸してやる」
こいつはいつからこんなカッコいい子に育ったの?八幡嬉しくて涙が出そう。
「…だから他のやつには悩みを明かすなよ。お前の悩みは私だけが聞いて私だけが解決する。特に、あの雪ノ下には絶対に話すな」
はいいつも通りのヤンデレ八神ちゃんでした。
まぁとりあえず、イメージが無ければ技もクソもない。決勝まで時間はあるから、変に焦る必要もないけど。
「そうだ八幡。オーストラリア戦、そしてカタール戦のご褒美を忘れていたな」
「ご褒美ッ……!?」
八神は唐突に、俺の首筋を噛み始める。そしてそれと同時に、噛まれる部分だけが吸われている感覚が首筋を襲う。
「……最近は忙しくて私のモノだという証拠を付けられなかったが、今は二人だけだ。………なぁ八幡。私と、あの時の様に……互いが互いを求め合わないか?お前の身体に私の存在を、私の身体にお前の存在を刻み付けるのだ」
「……決勝が近いんだ。そういうのはしばらくやめろ」
すると、八神の目は段々と暗くなる。やばい不機嫌になった証拠だどうしよう。
「…何故断る。私達は相思相愛だろう?あの時、お前は私に愛していると言った。あの時、お前は拒絶せずに私を抱きしめ返してくれた。あの時、お前は私を許してくれた。これでも相思相愛ではないというのか?」
愛しているとか言ったっけ俺。後の二つはなんとなく覚えてるけども。
「……お前が愛してくれないのなら私に存在価値がない。お前が私を求めてくれるから、私という存在がいるのだ。……しかし、愛してくれないなら私はもうここにいる必要がない」
また八神が病んできている。こういうタイプは放っておくと何をしでかすか分かったもんじゃないのは体験済み。エイリアにいた時より落ち着いたと思ったのだが、そうでもなかったみたいだ。
しかし、いきなり八神の身体を抱きしめるのは八幡的にちょっと意味分かんないから、とりあえず彼女の手を握ることで落ち着かせよう。
「……これじゃダメか」
「…ダメだ。私を抱きしめろ。私が苦しくなるくらいに。壊れてしまうくらいに。お前という存在を私の身体に、私の身体だけに刻み付けて欲しい」
結局抱きしめることになりました。俺は溜息を吐いて、仕方なく実行に移るとした。
「……頼むから今回だけな」
俺は八神の身体を強く抱きしめる。彼女は素早く、強く抱きしめ返してくる。二度と俺を離さないと言わんばかりの抱擁力の強さ。
「……私にはお前しかいない。私は、お前がいなければダメな女なのだ」
「……そうか」
「…だから、これからも共にいよう。私達はずっと一緒だ」
彼女を落ち着かせることになんとか成功した俺は、結局そのまま彼女と共に眠ってしまった。
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そして翌日。
「……何をしているのかしら?貴方達は」
目を覚ますと、俺の部屋には雪ノ下が見下げ果てた目で俺を見てくる。
……終わった。
「……まぁどうせ、八神さんから強引にきて断れなかったんでしょう?もし貴方が八神さんを誘う様な低俗な輩なら、私はとっくに襲われているわ」
なんだかんだと理解してくれて助かる。序盤の雪ノ下なら間違いなく通報して刑務所にぶち込まれていたかも。
「八神さん、起きなさい」
「……んぅ……もう…朝か……」
八神は目を擦りながら身体を起こす。
こういうところは、普通の女の子って感じがするんだけどな。
八神は目を覚ますと、雪ノ下の方を見て途端に睨み付ける。
「……ちょっと待て。何故、貴様が八幡の部屋にいる」
「ただ起こしに来ただけよ。マネージャーなのだからそれくらいは当然よ。八神さんもマネージャーならさっさと起きて朝食の準備を手伝いなさい」
「……チッ……では、また後でな八幡」
八神はそう言って、俺の部屋から出て行った。しかし、雪ノ下が未だに俺の部屋から出て行かない。
「……どうした?」
「…比企谷くん。貴方、彼女のこと好きなの?」
俺が八神を……?
そういえば、何故俺は八神に付き合っているのだろう。前みたいに、もう小町を盾にすることもない。だから拒絶なんていくらでも出来る。
「……少なくとも、恋愛感情としては見ていない」
彼女は狂気のレベルで俺に好意を寄せてくれているが、俺は彼女に対して恋愛感情を抱いたことはない。だからといって、別に人間的に嫌いというわけではないが。
「…ならいいのだけれど。……貴方は優しすぎるのよ」
雪ノ下は去り際に小さく呟いた。
……俺は別に優しくない。俺が優しくするのは小町and戸塚だけだ。だから八神にも優しくはしていない。
……しかし、なんだかんだ八神に付き合ってしまっている俺は、きっと依存していっているのかもしれない。狂気的な愛をぶつけられ、それを否定すれば彼女の精神は崩れてしまう。
自分のせいでそうなってしまうのなら放っておけない。そんな一心で接しているうちに、八神同様に依存しているのだろう。
「……優しすぎる、か…」
俺に合わない言葉だな、本当。