やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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不落の要塞

 明日のアルゼンチン戦に向けて、俺達は朝練習を行なっていた。円堂含めた4人が、まだ帰っていなかった。

 

「…変だな…」

 

 陽乃さんの話では、ミスターKは円堂や鬼道に何か思い入れがあるらしい。もしあいつらがミスターKに危害を加えられていたら問題どころじゃ済まない。

 

 そんな嫌な予感を抱きながら、午前の練習が終えたその時。

 

「…ちょっと待って。それは本当なの?」

 

 ベンチに座っていた雪ノ下が勢いよく立ち上がる。雪ノ下が誰かと電話していた様だが、彼女は何やら焦っている模様だ。

 

「…どうしたんだ、雪ノ下」

「今、姉さんから連絡があって……イナズマジャパンとジ・エンパイアの試合が、一日繰り上がって今日になってるの」

 

 その突然な情報に、イナズマジャパンのメンバー、およびマネージャーは驚きを隠せずにいた。

 

「音無さん、今すぐ確認してくれるかしら」

「は、はい!」

 

 音無は急いでFFIの公式サイトを確認し始める。

 

「ほ、本当だ!今日の午後3時から試合になっています!」

「今、何時だ?」

「もう1時です」

「あと二時間しかねぇじゃねぇか!」

 

 円堂達は未だに帰ってきていない。もしこのまま帰って来なければ、あいつら抜きで試合をしなきゃならない。

 

「そういえば、監督は?」

「今日、お父さんは響木さんと一緒にFFI大会運営委員に呼び出されたって言って、朝早くに出かけました…!」

 

 円堂達だけじゃなく、監督までがいない。そんなタイミングでジ・エンパイアとの試合。

 いくらなんでも出来すぎている。ミスターKがFFI大会運営委員に手を回したのか…?

 

「…どうする、風丸」

「…あ、あぁ……」

 

 円堂達や監督がいない状況下で、まともな試合が出来るとは思えない。恐らく負ける可能性が高い。

 

「…行くしかないだろう。試合に遅れるわけにはいかないからな」

「お、俺達だけでやんすか!?」

「そんなの無理っスよ!監督もキャプテンも無しで戦うなんて!」

 

 栗松や壁山の不安は最もだった。今まで円堂が精神的支柱となり、鬼道がゲームメイクすることでなんとかなったが、今回は両方ともいない。

 

「心配すんな。円堂達なら必ず来る。そういうやつだろ、あいつらは」

 

 染岡の言う通り、あのサッカーバカ共のことだ。がむしゃらに走って後半には間に合って来るかも知れない。

 

 ただ、それでも最悪あいつら抜きで試合をやり通す覚悟はしておかなければならない。

 

「それじゃ行くぞ!!」

「「おう!!」」

 

 俺達は、試合会場であるヤマネコ島のヤマネコスタジアムへと向かった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 俺達はヤマネコスタジアムに到着した。スタジアムに入ると、初戦と同じく観客席が埋まっていた。

 

 俺達は試合に向けてウォーミングアップを開始する。刻一刻と試合時間が迫っているが、依然円堂達はやってこない。気がつけば、既に試合開始3分前だった。

 

「両チームはグラウンドへ!」

 

 ここまでか……。

 

「どうするんスか……?」

「風丸さん……」

 

 未だにみんなは不安になっている。円堂達が戻ってくると信じていても、もう試合は始まってしまう。

 

 だが。

 

「……やるしかないだろ」

「比企谷くん……?」

「…円堂達が監督がいなくて不安になるのは分かる。だが俺達は日本代表。あいつらがいないから試合に出られないとか笑い者もいいところだ。……それに俺達には、吹雪や緑川、砂木沼達、日本にいるやつらの思いを背負ってここに来てるんだ。それを無駄にするわけにはいかないだろ。例え、それが苦しい試合になるとしても」

 

 小町や由比ヶ浜、俺を送り出した総武中の連中、レアンやクララ達エイリア学園のみんなの思いを背負っている。エドガーの言う通り、世界一は俺達だけの夢ではないのだ。

 

「…比企谷の言う通りだぜ!あいつらの思いに応えなきゃ、俺達は日本代表とは言えねぇだろ!乗り掛かった波は超えるしかねぇんだ!」

「…そうだな」

 

 今回は風丸がキャプテンとなり、スターティングメンバーを発表する。FWは染岡、豪炎寺、宇都宮。MFは基山、風丸、俺。DFは綱海、壁山、飛鷹、木暮。GKは立向居だ。

 

「ジ・エンパイアの強さは、なんと言っても予選大会を通して、これまで無失点を記録している強力なディフェンスです!」

「彼らの攻撃にも注意だけれど、あのディフェンスを破らない限り勝利はないわ」

「任せとけ!そんなディフェンス潰してやるからよ!」

「あぁ!」

「それじゃあ、行くぞ!!」

「「おう!!」」

 

 俺達はグラウンドへと入っていき、自分のポジションに着いた。

 

 今の俺達で、円堂達や監督抜きでどこまで戦えるか。ある意味、いい経験を得る試合となるだろう。

 

「みんな!気合入れていくぞ!!」

「「おう!!」」

 

 イナズマジャパンのキックオフからだ。審判がホイッスルを吹いて、試合開始の合図を出す。

 俺達はまず、ボールを次々と繋げて攻め上がっていく。

 

「虎丸くん!」

 

 基山から宇都宮へのパス。

 だが、MFのエステバンが素早い動きでボールをカット。

 

「あいつ、いつの間に!」

 

 流石は防御を売りにしているだけはある。

 

 エステバンはFWレオーネにボールを繋げる。レオーネは基山を抜き去り、攻め上がっていく。

 

「行かせねぇッ!」

 

 俺はレオーネにスライディングタックル。ボールを奪い、豪炎寺へとパスを繋いだ。

 

 今度は通る……と思いきや、今度はパブロがカット。パブロは低姿勢、かつ素早い動きのドリブルで攻め上がってくる。まるで、狼の如く。

 

「ディエゴ!」

 

 パブロがディエゴにパスを出すが、染岡がそれをインターセプト。しかし、ボールを奪った染岡の前から、DFのゴルドが炎を巻き上げながらジグザグに走ってくる。

 

「ジィィグザグフレィィムッ!!」

 

 逃げ場のなくなった染岡はゴルドにボールを奪われて吹き飛ばされる。

 あれがジ・エンパイアのディフェンス技……思った通り強力な技だ。だが、あのディフェンスを破らなければ勝機はない。

 

 ボールは風丸に渡る。

 

「豪炎寺!」

 

 豪炎寺にパスを出すがセルヒオがカット。次に宇都宮が攻め上がっていくが、エステバンがボールを奪取。次に再び、染岡が攻め上がっていくがゴルドのジグザグフレイムでボールを奪われてしまう。

 

 俺達は攻め続けるが、ジ・エンパイアのディフェンスが崩せない。

 再び、ボールは宇都宮に。前からゴルドが走ってくる。

 

「虎丸!パスだ!」

「今度こそ!!」

 

 宇都宮は染岡の指示に聞く耳持たず、ゴルドに向かって走っていく。

 

「ジィィグザグフレィィム!!」

 

 宇都宮はゴルドにボールを奪われた。

 

 …何か変だ。いつものイナズマジャパンのサッカーが出来ていない様に見える。攻撃が噛み合っていない、チグハグなサッカーとなっている。

 

「…そうか」

 

 相手のディフェンスを破るのに必死でチームプレーが出来ていない。その上、チームを纏める司令塔が欠けている。

 ただでさえジ・エンパイアの厚いディフェンスに難航しているのに、チームプレーがバラバラなんじゃあ試合にならない。

 

「…やるしかないな」

 

 鬼道や不動みたいな司令塔がいない今、誰かが自主的にアドリブで司令塔をやるしかない。

 

 風丸がボールを持って攻め上がる。だが、エステバンとセルヒオがマークに入る。

 

「宇都宮、フォローに入れ!」

 

 俺は宇都宮に指示を出すが、宇都宮は風丸より遥か先にいた。

 

「豪炎寺!」

 

 次に豪炎寺に指示を出すが、豪炎寺も宇都宮同様遠すぎる。

 

 風丸はセルヒオに奪われてしまう。しかし、すぐさま壁山がセルヒオからボールを奪い返す。

 壁山は前に上がっている染岡に繋げようとした。

 

「染岡さん!」

「壁山、こっちに回せ!」

「えっ!?」

「上がれ風丸ッ!」

 

 俺の指示を受けた風丸は上がっていく。

 壁山は俺にボールを回し、俺はそのまま攻め上がる。しかし、前からロベルトのスライディングタックル。

 

「ふッ!」

 

 そのスライディングをジャンプで躱し、風丸へと繋ぐ。

 

「風丸、豪炎寺にパスだ!」

 

 風丸は指示通り、豪炎寺へと繋げる。

 

 頭をフル回転しろ比企谷八幡。相手の動き、自陣の動きを把握しろ。ぼっちで培った人間観察を発揮しろ。

 

「フリオ!」

 

 ゴルドとフリオが豪炎寺に迫る。

 

「豪炎寺!こっちだ!」

 

 豪炎寺はバックパスで俺に回し、ゴルドとフリオを抜き去る。その後、すぐに風丸へとパス。

 

「行かせるかよ!」

 

 エステバンとゴルドのチャージが風丸に襲いかかる。

 

「風神の……舞ッ!!」

 

 風丸のオフェンス技で二人を吹き飛ばす。抜いた風丸は豪炎寺へとセンタリング。

 

「爆熱……スクリュゥゥゥーッ!!」

 

 豪炎寺の爆熱スクリューが炸裂。だが爆熱スクリューに対して、ジ・エンパイアのキャプテン、テレスが立ち塞がる。

 

「アイアン…ウォォール!!」

 

 テレスの背後から、大きく厚い鉄の壁が現れ、爆熱スクリューを完璧にブロックした。

 

「な、なんだ…今の技は……」

「豪炎寺さんの爆熱スクリューが止められた……?」

 

 あれがアンデスの不落の要塞、テレス・トルーエか……。なるほど、守備力が非常に高いジ・エンパイアのメンバーの中でも、ずば抜けてスペックが高いな…。

 

「これでもシュートか?小学生でももうちょっとマシなシュートを打つぜ」

 

 余裕の笑みを見せるテレス。

 するとテレスは徐に指笛を吹き始める。それと同時に、ジ・エンパイアは身体を低い姿勢に構え始めた。

 

「上がれええェェッ!」

 

 テレスからパブロに渡る。その瞬間、テレスを除くジ・エンパイアのメンバーはこちらに攻め上がってくる。

 

 俺達はやつらの動きに付いていくことが出来ずに、カウンターを許してしまう。パスを回しながら低姿勢で早いドリブルで俺達を圧倒する。

 

「綱海!」

「おう!」

 

 ボールを持ったロベルトが綱海に向かって走る。

 

「ドッグラン!!」

 

 ロベルトが蹴ったボールは凄まじいスピンで綱海の足元を目まぐるしく回る。綱海を翻弄し、ボールはレオーネに渡ってゴール前まで猛然と攻め上がる。

 

 レオーネはボールを少し浮かし、浮いたボールに炎を纏う左足で回転をかけ、炎を纏ったボールを勢いよく蹴り込んだ。

 

「ヘルファイアァァッ!!」

 

 炎を纏う強力なシュートが立向居に向かって飛んでいく。

 

「はあああァァ!!ムゲン・ザ・ハンドォッ!!」

 

 しかしムゲン・ザ・ハンドは簡単に破れてしまい、ゴールを許してしまう。

 

 0-1で、イナズマジャパンは失点してしまった。この1点は、きっと重い1点となるだろう。

テレスを中心にした固いディフェンスに素早いカウンター攻撃…。立向居のムゲン・ザ・ハンドが通じないとなると、あのディフェンスを破らない限り、再びカウンターを喰らってしまう可能性が高い…もし魔王・ザ・ハンドが完成しても通じるかわからないしな…。しかし、鬼道と不動がいないいま、どうすればあのディフェンスを破れる……?

 

 やつらに打ち勝つ方法を探りながら、再び俺達からのキックオフとなるのだった。

 

 

 




基山が頑張ってましたけど八幡に頑張ってもらいました。
ジ・エンパイア戦は八幡に頑張ってもらいます。
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