やはり俺がサッカーをするのは間違っている。 作:セブンアップ
レオーネのヘルファイアで先制したジ・エンパイア。
俺達からのボールで試合が再開。染岡がボールを持って攻め上がる。そのまま勢いよくチャージを仕掛けるパブロを躱す。
「染岡!豪炎寺にパスだ!」
しかし、目の前からゴルドが迫ってきていた。
「ジィィグザグフレィィム!!」
染岡はパスする間もなく、ゴルドにボールを奪われてしまう。そのまま畳みかけてくるジ・エンパイア。点を取るどころか、防戦一方だ。
「レオーネ!」
エステバンからレオーネにボールが繋がる。
今の立向居ではヘルファイアを止めることは出来ない。
「はァッ!!ヘルファイアァァッ!!」
レオーネの容赦ないヘルファイアが立向居に襲いかかる。
「魔王・ザ・ハンドッ!!」
立向居はムゲン・ザ・ハンドを捨て、未完成の魔王・ザ・ハンドで挑むも、やはり失敗してしまい、再びゴールを許してしまう。
0-2。イナズマジャパンは依然ピンチのままだ。
試合は再開し、豪炎寺がボールを持って攻め上がる。しかし、セルヒオの素早い動きで豪炎寺はボールを奪われてしまう。セルヒオはエステバンにボールを回す。
今ここでFWに繋がれたらまずい。エステバンに一番近くにいるのは、風丸だ。
「風丸!」
「あぁ!任せろ!」
エステバンがレオーネにパスするその瞬間、風丸のスライディングでボールをクリア。
なんとか3点目は防いだか。
「くっ……うっ…」
「風丸!」
「風丸さん!」
風丸が足を押さえている。どうやら、これ以上のプレーが出来ない様子である。綱海が風丸をゆっくりベンチに連れて行く。
ベンチにいるのは栗松と土方…攻撃に出るなら栗松、守りを固めるなら土方だ……押されているいまなら土方で守備を固めるか……?
いや、だがやつらの攻撃は半端じゃない。正直、守り切れる自信がない。それに既に2点差つけられてるんだ。失点覚悟で攻めるしかない。となれば、後のことを考えると攻撃的布陣に切り替えた方がいいか。
「風丸の代わりに、栗松に入ってもらう。頼めるか?」
それなりにドリブル力があって、ディフェンスも出来る栗松。俺は栗松に懇願する。
「はい!!」
風丸の代わりに栗松がグラウンドへと向かっていく。
「比企谷。お前にこれを渡しておくよ」
風丸から受け取ったのは、キャプテンマークである。
「…分かった」
俺は風丸から受け取り、左腕にキャプテンマークを身に付けてグラウンドに戻る。
試合はエステバンからのスローイングで始まる。セルヒオに投げ渡すが、栗松が上手くボールをカット。
「えッ!?」
しかし、すぐさまエステバンにボールを奪われてしまう。
「レオーネ!」
エステバンはレオーネへとパスを回した。
「立向居!」
綱海がなんとかレオーネを食い止めているが、それもいつまで続くか。レオーネは綱海のマークを振り切り、立向居に迫っていく。
「怖がってんのか!?」
「えっ……」
「失敗したっていい!お前の全部をぶつけるんだ!」
飛鷹が立向居にそう力強く説教する。韓国戦で、円堂が飛鷹に言った時を思い出す。
「はァッ!!ヘルファイアァァッ!!」
ヘルファイアは立向居に飛んでいく。立向居は目を逸らさず、ヘルファイアに挑み始める。
「これが俺の全部だああァァッ!!」
力を入れながら前屈みの体勢を取る。すると、背中から紫色の竜巻状のオーラが発生し、魔王が飛び出す。
「魔王・ザ・ハンド!!」
魔王と共に立向居はヘルファイアに全てをぶつける。
結果、立向居はヘルファイアを完璧にキャッチした。
「あれが魔王・ザ・ハンド……」
円堂のイジゲン・ザ・ハンドに劣らぬ、強烈なGK技だ。円堂と同様に、土壇場で完成させやがった。
そしてここで前半終了のホイッスル。依然ジ・エンパイアのリードに変わりはないが、雰囲気的にはまだ良くなった。
「やったでやんす!」
「すっげぇぞ立向居!」
「ついにやったね!」
今までの苦労は無駄にならなかった。
立向居はみんなに感謝を告げる。
「飛鷹さん!ありがとうございました!」
「……キャプテンなら、ああ言うと思っただけだ」
待って飛鷹お前カッコ良すぎだろ。
飛鷹はぶっきらぼうにそう言って、ベンチへと戻っていく。俺達もベンチに戻り、次の作戦を立て始める。
「…魔王・ザ・ハンドがある限り、あっちもそう簡単に点を取れなくなった。後半は積極的に攻めて行こう」
「「おう!!」」
とはいえ、このまま終わりそうには見えないけど。
俺達は再びポジションに着いて、後半戦に向けて構える。
キックオフはジ・エンパイアから。ホイッスルが鳴り響き、後半戦が開始。
すると、ディエゴがイナズマジャパンサイドに向かって大きく蹴り上げた。
「さぁ、どこからでもかかって来な」
「バカにしやがって!」
「綱海!」
綱海は豪炎寺に向けてボールを大きく蹴り上げる。豪炎寺がボールを受け取ると、その瞬間にテレスとフリオ、ラモス以外のメンバーが豪炎寺を囲む。
「これが俺達ジ・エンパイアの必殺タクティクス……アンデスのありじごくだ」
豪炎寺は基山や宇都宮にパスを試みようとするが、パスコースが塞がれていてパスを出せない。
パスを諦めた豪炎寺は一人で攻め上がっていくが、思うように進めないでいる。宇都宮や染岡がフォローに入ろうとしても、残ったメンバーがそれを阻止する。
豪炎寺はなんとかアンデスのありじごくから飛び出す。
「爆熱……スクリュゥゥゥー!!」
「アイアン…ウォォール!!」
豪炎寺が爆熱スクリューを放つが、テレスがそれを完璧に食い止める。
「あらあら正面。残念だったな」
「くッ……」
「今度はもっといいところに蹴ってみな!」
テレスは大きくボールを蹴り上げる。ボールが飛んだ先には、染岡がいた。
「だったら俺が!」
染岡が攻め上がっていくが、再びアンデスのありじごくの中に引き摺り込まれてしまう。そして豪炎寺同様、ありじごくから飛び出すが、目の前にはテレスが立ち塞がっていた。
染岡はシュートを打つのを躊躇う。その隙に、エステバンがボールをクリア。
「……そういうことか」
アンデスのありじごくは、ドリブルで進ませながら相手をテレスの正面に誘導している。ありじごくを抜けた先には、テレスの真正面。放ったシュートをテレスが止める。フォローしようにもパスコースを消されているからテレスの横を抜けることもできない…。
それが鉄壁を誇るジ・エンパイアの必殺タクティクス…アンデスのありじごく…ってことかよ。
俺達は攻め続けるが、何度やってもテレスの真正面に誘導されてしまう。時間は徐々になくなっていく。
0-2という点差に加えてアンデスのありじごく。更に円堂と鬼道がいない状況。みんなは意気消沈としてしまっている。
「…やっぱり無理だったんス……監督もキャプテンも無しで戦うなんて……」
このままじゃアンデスのありじごくを破るどころか、試合にすらならない。俺には、円堂や葉山みたいに気の利いた言葉なんて言えない。
それでも。
「…じゃあ諦めるのかよ。このまま」
俺は羞恥心を捨てて、そうみんなに言った。
「試合はまだ残っているんだぞ。もう終わりにするのかよ」
「でも、あのディフェンスが破れないんじゃ……」
「だからなんだ?だから勝手に試合放棄するつもりかお前らは」
ディフェンス一つ破れず諦めるイナズマジャパンなど、俺が知っているイナズマジャパンじゃない。
「俺はお前らとサッカーをして学んだ。逆境に立っても、諦めない精神力を。…最後まで何がなんでも諦めない……それがお前らイナズマジャパンのサッカーじゃなかったのかよ。俺が見てきたお前らのサッカーは、全部偽物だったのかよ」
押してダメなら諦めろ。サッカーをする前までは、ずっとこの座右の銘で通して来た。
だが、円堂や雷門のみんなに出会って、俺は学んだ。負けて転んで倒れても、また立ち上がる。立ち上がって諦めないから、こいつらは強いのだ。
時に、諦めが肝心なのは確かだ。諦めないからって成せるものがあるとは限らない。
しかし、そんなものはこいつらのサッカーじゃない。諦めないことを強要するのは間違えているかも知れない。それでも、このままじゃあいつらの為にならない。
諦めないからこそ発揮出来る、彼らならではの底力があるのだ。
「諦めなかったからアジア予選を勝ち抜いて、ナイツオブクィーンを倒すことが出来たんじゃなかったのかよ」
すると俺の説得に、思わぬところから援軍が。
「…そうです!比企谷さんの言う通りですよ!みんな立ち上がって下さい!立ち上がって、最後まで戦って下さい!」
「やりましょう!最後まで、イナズマジャパンのサッカーを!」
「…久遠……木野……」
「…日本代表は何も貴方達だけのものじゃないの。日本にいる人々の思いが懸かっているのよ。最後まで戦い抜きなさい。諦めることは許さないわ」
あの雪ノ下までが俺に続いてイナズマジャパンを説得してくれている。
「そんなディフェンス、みなさんなら絶対に破れます!私、信じてますから!」
「八幡がここまで言っているんだ。破らなかったら八幡以外全員潰してやるから覚悟しておけ」
「音無……八神……」
ていうか最後の八神のは恐喝だよ恐喝。励ます代わりに怖がらせてどうする。あいつのことだからマジで潰しに来る。イナズマジャパンから死人が出ちゃう。
「何があっても諦めない……」
「だからこれまでも勝ってこれた……」
…焚きつけてみたはいいものの、気合だけじゃアンデスのありじごくは破れない。俺はあのディフェンスを破る策を考えていると、
「比企谷さん!俺達に任せて欲しいでやんす!」
「…お前らが?」
栗松がそう自信を持ちながら懇願する。
「要するに、あのテレスが取れないところからシュートが打てればいいんだろ?」
「豪炎寺さん達はそこで待ってて下さいっス。俺達がそこまで持って行くっスから」
栗松に続いて、木暮と壁山も言った。
「持って行くったってな、あの必殺タクティクスはそう簡単に破れるもんじゃねぇんだぞ。それにボールを奪われてカウンターを狙われたりしたら……」
「大丈夫です!ゴールは、俺が守ります!」
魔王・ザ・ハンドを身に付けたことで、すっかり自信を持った立向居。今の立向居なら、円堂並みの安心感がある。
「…分かった。じゃあ頼んだわ」
策が決まり、俺達は位置に着く。
飛鷹のスローイングで試合開始。ボールは木暮に渡る。同時に、栗松と壁山がサイドから上がっていく。
しかし、アンデスのありじごくに再び囲まれる。
「お前らなんかに取られるかよ!」
「いいぞ木暮!」
アンデスのありじごくの中で木暮は辛抱強くボールをキープし続けている。
「真ん中に寄って行ってるっス!」
「もっと右でやんす!」
壁山、栗松の指示を取り入れながら、木暮はアンデスのありじごくで動き回る。
「ちょこまかちょこまかとッ…!」
木暮が空いたスペースを見つけ、そこに飛び込んだ。
「甘いんだよッ!」
しかしゴルドの足が木暮を遮り、体勢が悪くなる。
「木暮!」
しかし、彼の高い身体能力でボールをなんとか奪われず、アンデスのありじごくを抜け出して壁山に繋いだ。
「なッ…!?」
パスを繋げられたことに驚きながらもジ・エンパイアは壁山を素早く囲んだ。壁山は頑張ってアンデスのありじごくの中でドリブルし続ける。
「絶対に持って行くっス!豪炎寺さん達のところへ!」
「壁山……」
壁山の前にエステバンとセルヒオが立ち塞がる。
「絶対、渡さないっス!!」
しかし、自信の巨体を使って強引に突破口をこじ開け、栗松へとボールを繋いだ。
栗松が攻め上がっていくが、ジ・エンパイアは三度アンデスのありじごくを発動して栗松を囲む。
「負けないでやんす!」
栗松は必死に足掻いてアンデスのありじごくを攻略しようとしている。
「右でやんす!右に行くでやんす!」
しかし、徐々に真ん中に寄って行っている。
「真ん中に寄ってるぞ!」
「ダメでやんす!そっちに行ったらダメでやんす!」
「栗松……」
「右へ行くでやんす!右へ行くで…!」
しかし、栗松からエステバンがボールを奪う。
「もらった!」
エステバンが奪い、ボールを前に繋ごうとする。
「繋ぐでやんす!」
栗松は粘り強い精神力で、強引な体勢からエステバンのボールをクリアし、豪炎寺へと繋いだ。そしてシュートコースにテレスの姿はなかった。
「豪炎寺くん!虎丸くん!新必殺技だ!」
豪炎寺、宇都宮、基山が結集し、3人同時にボールを打ち込んだ。
「グランド…ファイアァッ!!」
大きな炎を纏うシュートが地面を壮大に抉ってゴールに飛んでいく。テレスが必死にシュートコースに飛び込み止めに行くもアイアンウォールを出す時間もなく、グランドファイアに吹き飛ばされてしまう。
「任せろテレス!!ミリオン…ハンズ!!」
GKのホルヘはパントマイムの様に空中に何回も手を突き出す。突き出したところから、掌の壁で作られたシールドが張られる。
その壁をグランドファイアにぶつけるが、威力はグランドファイアが上手であり、ミリオンハンズを破ってゴールに叩き込んだ。
1-2。無失点を誇るジ・エンパイアから1点をもぎ取った。
「そんなバカな……俺達の必殺タクティクスが破られるなんて……」
テレスが手を出し損ねたとはいえ、グランドファイアのあの威力…。カオスブレイクやネオ・ギャラクシーと同等、もしくはそれ以上かも知れない。
「あの必殺タクティクスさえ破ってしまえばこっちのものだ!勝てるぜ、この試合!」
「よしみんな!このまま一気に逆転するぞ!」
「「おう!!」」
しかし、無情にも試合終了のホイッスルが鳴り響いた。ジ・エンパイアのキックオフが始まってすぐに試合が終えた。
1-2でイナズマジャパンはジ・エンパイアに敗北した。
俺達はこの結果を甘んじて受け、ヤマネコスタジアムを後にした。
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俺達は宿舎に到着。宿舎前にて、円堂達が帰ってくるのを待っていたが、みんなは試合に負けたことをだいぶ悔やんでいる様子だ。
「みんなー!!」
円堂を含めた四人が宿舎に帰ってきた。
事情を聞くと、ミスターKこと影山が妨害してきたせいで試合に出られなかったとのことらしい。
「すまない、円堂。勝てなくて…」
「みんな……。…元気出せよ!決勝トーナメントに行けなくなったって、まだ決まったわけじゃないんだしさ!」
「確かに一敗はしたが、残りの試合を全勝すれば可能性は十分残っている」
それを聞いたみんなは、少しだけだが明るくなる。
「それより凄いじゃないか!あの新必殺技のグランドファイア!」
「フッ…」
「立向居!」
「は、はい!」
「やったな!ついに魔王・ザ・ハンド、完成させたんだな!」
「はい!」
円堂がいるだけで、チームの雰囲気が良くなる。やはり、彼がいるからみんなは輝くことが出来るのだ。
「……帰ろう」
一方、俺は今すぐに帰りたいという気持ちが抑えられないでいる。試合が終わってからずっと思っていた。
何故俺はあんな恥ずかしいことを言ったんだろう。何が「最後まで諦めないのがお前らのサッカーじゃなかったのかよ」だ。
やっべぇ思い出す度に死にたくなる。
みんなに気付かれずに部屋に戻っちゃおう。そう思い立って、みんなが見ていない隙を狙ってこっそり帰ろうとするが。
「待ちなさい」
雪ノ下に腕を掴まれてしまう。俺を逃すまいと、力強く掴まれてしまう。
「ちょ、離せ。今すぐ部屋に帰りたいんだよ」
「大人しくここにいなさい」
帰りたい今すぐ帰りたい。嫌な予感がして仕方がない。
「それに栗松、壁山、木暮!お前達もよくやったな!なんたってあの必殺タクティクスを破ったんだからな!」
「…比企谷さんのお陰でやんす」
「比企谷の?」
やっべぇ俺の名前出た。余計なこと言うなよ言ったら死んでやるからな。
「そうなんですよキャプテン!比企谷先輩が思い出させてくれたんです!"最後まで何がなんでも諦めないのがイナズマジャパンのサッカーだろ"って!凄くカッコ良かったですよ!」
音無ぃぃぃ!!余計なこと言うなって言ってんだろぉもぉ!!いや正確には言ってないけどさぁ!
死にたいよぉ!!今すぐ部屋に帰りたいよぉ!!なんなら明日から練習に出たくないよぉぉ!!
マジなんであんなこと言ったんだ俺はぁッ!!死んじゃえばいいのにつーか死ねよばーかばーか!!
「顔真っ赤じゃねぇか比企谷!」
「比企谷さん、照れてるんですか?」
「し、しょんなことはないじょ…!?」
「思いっきり噛んでるじゃねぇか!」
「「あははははっ!!」」
周りは試合中と違って明るい雰囲気となる。みんなは俺を見て笑っている。
もうイナズマジャパン抜けようかな。俺はイナズマジャパンの中でも黒歴史を残してしまった。恥ずかし過ぎて日本に帰りたい。
「よーしみんな!残りの試合、全勝を目指して明日からまた特訓だ!!」
「「おう!!」」
円堂の一言で、みんなは再び気を引き締め直した。
イナズマジャパンは第二試合を敗北という結果で終わる。ついでに俺の黒歴史も残ってしまった一戦であった。
最悪な一戦でした。
イナズマジャパンでも黒歴史を作った八幡なのでした。