やはり俺がサッカーをするのは間違っている。 作:セブンアップ
一之瀬達がいるアメリカ代表ユニコーンを逆転勝ちで収めた。残りの試合は、ミスターK率いるイタリア代表オルフェウス。グループAで1位のチームである。
そして一日の練習を終えたそんな時。
「ひゃっはろー」
神出鬼没の魔王が車に乗って現れた!八幡は逃げようとするが魔王の睨みで逃げられなかった!残念!
「…また何の用ですか、陽乃さん」
本当、この人俺の行動把握し過ぎじゃない?特訓終わってから電話かけてくるとか明らかにイナズマジャパンのスケジュールを把握してる。
ヤバ過ぎんだろ。ストーカーかよ。魔王がストーカーとかバッドエンドまっしぐらじゃねぇか。
「比企谷くん冷たーい。お姉さんとキスした仲なのに」
「ッ…」
アルゼンチン戦の前。俺は陽乃さんに、強引にキスをされた。あの時のことが今になって頭の中で思い浮かんでしまい、陽乃さんを直視出来ないでいる。
「…あれは、陽乃さんが強引にしたんでしょうが」
「むっ、ツレないなぁー。……まぁいいや。とりあえず乗りなよ」
俺は陽乃さんの車に乗り込む。乗り込んだ俺に、彼女は調べあげた情報を話し始めた。
「今日呼んだのはこの間の続き。次のイナズマジャパンの相手は、ミスターK率いるイタリアでしょ?この間のことから更に情報を洗い出してみたんだけど、ミスターKの背後にはもっと大きな存在がいるのが分かったの」
「…やっぱそうですか」
「なーんだ、知ってたんだ。つまんないの」
「いや、知ってたっていうか……ちょっと色々ありまして」
アジア予選の最中、円堂のお爺さんから手紙が届いた時があった。円堂のお爺さんが亡くなった理由をあまり知らなかった俺は音無に聞いた。
40年前に影山の罠でお爺さんが亡くなったと。しかし当時影山は中学生。そんなこと一人で出来るとは思えない。ならば誰かが影山に力を貸した人物がいるということだ。
「それで、そのラスボス的な存在の正体は分かったんですか?」
「ま、それなりにね。まだ確証はないけど」
流石は陽乃さんだ。本当この人一人で警察何人分の働きをしているんだろうか。相変わらずのスペックの高さに恐れ入る。
「その人物と関係あるかは分からないけど、ここ最近ミスターKはイタリアの銀行にお金を送り続けていることが分かった。その受取人は"R"。それ以外はまだ分からない」
何かの企みのために金を送ってるってことか?ミスターKに謎の人物"R"。それとは別にいるであろうラスボス的な存在。
なんか途端にキナ臭くなってきたな。
「とりあえずはこんなところかな。ま、注意して頑張んなさい」
「…はい。ありがとうございます」
話が終わった様なので、俺は車から出て行こうとドアノブに手をかける。だが、何故か車のドアが開かない。
「…陽乃さん。鍵開けッ……!?」
鍵開けてください。俺はそう言おうとした。だが、それを陽乃さんは遮る。俺の言葉を遮ったのはただ一つ。陽乃さんの艶やかな唇だ。
「んっ……ちゅっ…れろっ………」
彼女は、陽乃さんは、深く濃厚なキスを始めた。俺を絶対に逃すまいと、両手で俺の髪をこれでもかというくらいに握りしめる。陽乃さんは、俺の全てを余すところなく支配しようと、狂った様に俺の口内を自身の舌で犯し尽くす。
「ん、んっ………れろっ……ちゅぷっ……」
そんな陽乃さんに、俺はまたも拒絶出来なかった。突き返そうとすれば出来るはずなのに、それすら許してくれなかった。
「ん………ぷはぁっ……。…本当、比企谷くんは可愛いなぁ……。特に、その怖がっている表情が…」
陽乃さんは、互いの口内で混ざり合った唾液の糸をゆっくり引いていきながら離れていく。陽乃さんの唇はいやらしく光り、それを舌舐めずりして拭き取る。
「……キス、好き過ぎるでしょ……」
「比企谷くんが悪いんだよー?お姉さんをこんなに発情させちゃうから。本当なら、今すぐにでも君を私のモノにしちゃいたいんだけどなぁ」
「…それは遠慮します。多分遺書を遺す羽目になるので」
俺は陽乃さんが苦手だ。確かに味方になったらこれ以上ない戦力だ。しかし、陽乃さんの思考が読めない。彼女は何を考え、何に基づいて行動しているのか。
このキスだってそう。俺はそこまで好かれることなどしていない。
すると突然、俺のケータイに着信が入る。かけてきたのは、雪ノ下だった。
「へぇ。雪乃ちゃんからじゃない」
「……もしもし」
「遅い。もう夜ご飯の時間よ。一体どこにいるの」
「…それは」
なんと答えればいいのだろう。単純に陽乃さんといると言えばいいのに、何故か口からそれが言えない。
「比企谷くん。ケータイ貸して」
陽乃さんが小さく囁いた。
この人に貸したらまず間違いなく面倒なことが起きる。
「それは無理で…」
「貸しなさい」
陽乃さんは低く冷たい声でそう囁いた。それだけではなく、彼女の表情も何かおかしかった。さっきはずっとニコニコとしていたのに、今では鋭く俺を睨む。
すると、陽乃さんは有無を言わさずにケータイをひったくる。
「ひゃっはろー雪乃ちゃん。元気してるー?」
「…なんで姉さんがそこにいるの」
雪ノ下は呆れた物言いだった。それに対して、陽乃さんは妙にテンションが高かった。
「んーっとね、比企谷くんとドライブデートだよ」
「……話にならないわ。比企谷くんに代わって」
「え、嫌だけど」
「…は?」
「今お姉さん達大事な取り込み中だから。じゃあねー」
陽乃さんはそう言って、通話を無理矢理終わらせた。何を考えているんだ、この人は……。
すると、再び雪ノ下から着信が入る。
「しつこいね雪乃ちゃんも……。…あ、そうだ。比企谷くん」
「……なんですか」
陽乃さんは俺を呼んでから、雪ノ下からの電話を出る。するとすぐさま、陽乃さんは俺を抱きしめて動けなくする。
「勝手に切らないでちょうだい。比企谷くん、早く代わって」
ケータイからは、雪ノ下が喋っている。電話に出ようにも、出られない。そんな中、陽乃さんは俺の耳元に囁いてくる。
「ねぇ、比企谷くん。今ここで比企谷くんと私があんなことやこんなことしてることを雪乃ちゃんにバレたら、どんな反応するのかなぁ?」
「ま、まさか……あんた……」
それはヤバい。いくら雪ノ下を揶揄うにしても、度が過ぎてる。
「急に顔を青ざめちゃって……。可愛い子だね。……んっ」
陽乃さんは突然、俺の耳を噛み始めてきた。優しく、労る様に甘噛みしてくる。彼女の生温かい歯や、いやらしい唾液が混じった舌などが、俺の口内ではなく、耳に襲いかかる。
「くっ……うぁっ……」
「…いい声。もっと聞かせて?比企谷くんの、可愛い声を」
「うっ……ぁッ……」
俺は声を抑えるが、それでも尚声を発してしまう。
以前、陽乃さんに耳が弱いと言った覚えがある。事実、女子に耳元で囁かれたり弄られたりしたら恥ずかしくなってしまうくらいだ。
「比企谷くん?変な声出さないでちょうだい?いいから早く出て」
「…だってさ。比企谷くんの鳴き声が聞こえてる筈なのに、何もされてないって疑わないんだね」
「は、陽乃さん……ちょ、やめっ……」
「嫌だ」
俺の儚い願いは陽乃さんに届かなかった。むしろ、陽乃さんの行為を後押ししてしまう。
「比企谷くん?どうかしたの?返事をして」
「あははっ。雪乃ちゃん焦ってる焦ってる。楽しいなぁ」
「姉さん。一体何をしてるの?早く比企谷くんに代わってちょうだい」
「そうだなぁ……今私達が何やってるかを当てれたら代わってあげる」
「はぁ?何やってるかなんて分かるわけないでしょう?」
「つまんない答えだね。なら、ヒントを差し上げよう。……あむっ」
すると陽乃さんは再びキスを始めた。そしてわざと聞こえる様に、ケータイを俺達の顔付近に近づけ、先程よりも激しく乱れた。
「…んっ……んぁ……ちゅぱっ……」
「…姉さん?本当に何をしているの?」
しかし、雪ノ下の問いに陽乃さんは反応せず、ただただ俺の唇を、舌を、唾液を、全てを支配し、貪り尽くすのに集中している。
「れろぉっ……ん、んぁ……ちゅ……」
「…姉さん。まさか、貴女……」
「んっ……ぷはぁっ……。…ごちそうさま……比企谷くん」
陽乃さんの表情は、誰もが魅了される程妖艶で、いやらしい。彼女の口からは、俺と交わった証である唾液が垂れていく。
「……雪乃ちゃんがモタモタしてるから悪いんだよ?これから比企谷くんは私のモノだから。手を出さないでね」
「……最低。そんな不純なことをしていたなんて……。お母さんにこのことを伝えるわ」
「別にいいよそうしても。まぁ雪乃ちゃんにそんな度胸あるのか知らないけど。……それに、比企谷くんを紹介出来るいい機会だし。なんならこっちからお願いしちゃうくらい」
「……ふざけないで。…とにかく、比企谷くんを早く解放して」
「ちぇっ。比企谷くんが日本代表じゃなければなぁ。ずっと手元に置いておけたのに」
陽乃さんは可愛らしく舌打ちをして、俺から離れていく。俺はもう何も考えることが出来ず、ただ虚空を眺めていた。
「…あらら。比企谷くんを骨抜きにしちゃったかな。おーい。比企谷くーん」
陽乃さんが俺を呼びかける。ボーっとしていた俺は現実に引き戻され、つい挙動不審になってしまった。
「ッ……は、はい…?」
「雪乃ちゃんが早く戻って来いってお怒りだよ。今日はもう十分比企谷くんと楽しめたし、ありがとね」
「……俺には背徳感と罪悪感しかないんですけどね」
「もし居場所が無くなったらいつでもお姉さんのところにおいで。ずっと可愛がってあげるから」
「……結構です。自分の居場所は自分で決めるんで。じゃ、失礼します」
俺は今度こそ車から出て行き、陽乃さんに軽く頭を下げる。そして、俺は宿舎へと戻っていった。
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宿舎に戻ると、雪ノ下が仁王立ちで待っていた。彼女は俯いており、顔は長い黒髪で部分的に乱れながら覆われて、どんな表情をしているのかが分からない。
「…比企谷くん。来なさい」
「いッ…!」
雪ノ下は俺の右腕を強く掴む。強く掴まれてしまった俺は、痛いと感じてしまう。
雪ノ下は何も言わず、彼女の部屋に連行される。
「入りなさい」
俺は雪ノ下の部屋に無理矢理連れ込まれる。
「…雪ノ下」
「黙りなさい」
「ッ……」
彼女はきっと怒っている。夜ご飯の時間に遅れたこともあるだろうが、それ以上に陽乃さんに揶揄われたことが。
「…特訓終わってどこに行ったのかと思えば、姉さんのところなのね。この間も遅れて帰ってきたのも、姉さんなんでしょう?」
雪ノ下の酷く冷たい声が、俺の耳に突き刺さる。痛いほどに。
「それで話をしていたと思えば、姉さんと淫らなことことまでしていた。……私、前に貴方に言ったわよね?女に現を抜かして下手なプレーをすれば、貴方の居場所はないって。聞いてなかったのかしら?」
「……覚えてるよ」
「にも関わらず貴方は八神さんや姉さんと淫らな関係を持っている。今の貴方は最低な屑と呼ばれても仕方ないわ。それが不可抗力だったとしてもね」
返す言葉が見つからない。
八神然り、陽乃さん然り。俺が最初から強く拒絶しておけばこんなことにはならなかった。
あれこれ言い訳を考えて突き返せば良かった。それでも、出来なかった。偏に、俺の意思の弱さが招いたことだ。
「…貴方からしていないというその一点は信じているわ。姉さんや八神さんから仕掛けてきたのだろうしね。……そう。貴方からするわけがない。私は貴方のことを知っている。貴方が進んでそんな不潔なことをしないと分かっているもの」
「ゆ、雪ノ下……?」
「……これから比企谷くんは私が監視します。貴方のこれからの全てを」
雪ノ下の様子が何かおかしい。
すると彼女は顔を上げてこう言った。
「だから、これからは私に連絡しなさい。どこに出かけるにも、何をするのにも。全て私に連絡しなさい。これは命令よ。断ることは許さないから」
彼女の表情に恐怖を抱いた。別に髪で顔が部分的に隠されているとかではない。
彼女の瞳は暗く濁っており、瞳孔が完全に開いてしまっている。これはまるで……。
「…八神……」
「私は八神さんではないわよ比企谷くん。それとも、私の目の前でその名を出すくらい彼女を意識しているの?違うでしょう?」
雪ノ下の表情は、八神と同じ表情だ。この表情を、俺は幾度となく目にしてきた。
雪ノ下が、壊れてしまった。
「ゆ、雪ノ下っ。何かおかしいぞ」
「私は普段通りよ。貴方が更におかしくなったのでしょう?元からおかしいのに、更におかしくなってしまって……これはもう重症ね」
いつもと変わらない雪ノ下の罵倒。だが、今の雪ノ下の言葉には返す余力もなく、ただ恐怖だけを感じていた。
「…これ以上おかしくならない様に、私が監視するわ。じゃないと手をつけられないから。いいわね、比企谷くん」
「雪のッ…」
「いいわね?」
彼女は俺の首に両手を添えた。少しずつ、彼女の力が強まっていく。分かった、と言わなければ首を絞める。そう言わんばかりの彼女の瞳。
「…分かった」
雪ノ下は壊れてしまった。いや、俺が壊してしまったんだ。俺の意思の弱さが、彼女を壊してしまった。なら、その責任は誰が取るのか。
そう。
俺が取らなければならない。
「…いい返事よ。もう二度と姉さんと二人きりにさせないわ。八神さんともね」
彼女は満足できる答えを得たのか、俺の首から手を離す。
「……これも言ったわよね。奉仕部という空間の中では私の言うことが正しい、と。つまり、私の言うことは絶対なの。貴方には逆らう権限も権力もない。私が貴方の全てを決める。それこそが、私達にとって正しい選択なのよ?分かった?」
「……雪ノ下」
「私は分かったのかと聞いてるの。私の名前を聞いてるわけではないわ」
「………分かった」
「…そう。ならいいのよ。では、早く食堂に行きましょう」
「……そうだな」
これを見た由比ヶ浜や一色、小町はなんと言うのだろうか。俺を責めるのだろうか。はたまた雪ノ下を止めるのだろうか。
そんな仮定を考えても仕方がない。俺は、彼女を壊してしまったのだから。
そんな仮定より、彼女を修復することを考えよう。じゃないと、イタリア戦に集中出来ない。
はるのんがエロのんに、ゆきのんが病みのんに変わる瞬間でした。
なんなんだろうねこれ。