やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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今話は正直八幡が全然出ません。
ヒデナカタとミスターKの話が長い長い。


ミスターKとルシェ

 2-2の同点で競り合うイナズマジャパンvsオルフェウス。俺達のボールから試合開始。

 

 鬼道にボールが渡るが、フィディオのディフェンスによって行手を遮られてしまう。鬩ぎ合いの末、フィディオが鬼道のボールをクリアする。ボールはタッチラインを割っていく。

 

 と、ここで選手交代。染岡に代わって不動が投入される様だ。不動が入るということは、カテナチオカウンターの攻略の術を見出したと捉えることが出来る。なんだかんだで、不動はカンフル剤として出てくるからな。

 

「監督から伝言だ。鬼道が持ち込めってよ」

「!…お前も見ていただろう。俺の動きは全てフィディオに読まれてしまう」

「だったら、お前にもやつの動きが読めんだろ?」

「…何?」

「本当は気付いてんだろ。フィディオのプレーが自分に似てるってよ」

「……やっぱ、あれ鬼道のプレーに似てたのか」

 

 フィディオの動きに親近感が湧いたのは、いつも近くで見ている鬼道のプレーが重なっていたからか。

 

 確かに、互いが似た動きをするのであれば、互いの動きを読むことが出来る。フィディオが鬼道の動きが読めるのなら、鬼道もまたフィディオの動きを読むことが出来る。

 

 つまり、カテナチオカウンターを破ることも出来なくはない。

 

 佐久間からのスローイングで試合再開。ボールは不動に渡り、不動と共に鬼道も前に上がる。

 

「行けッ、鬼道!」

 

 不動から鬼道へ。そのまま鬼道は一人で攻め上がる。

 しかし、オルフェウスは容赦なくカテナチオカウンターの体勢に入る。鬼道は再び、オルフェウスの選手に包囲された。

 

「来い!何度来ても、カテナチオカウンターは破れないぞ!」

「勝負だッ!」

 

 鬼道がフィディオに対してフェイントを仕掛ける。フィディオもそれに対応する。しかし、先程とは一転してフィディオの動きに鬼道は付いていくことが出来ている。

 相手の一手、二手先を読み合った競り合いが勃発する。

 

「どうだッ!」

 

 競り合いの末に、フィディオが鬼道からボールを奪い取る。

 

「まだだ!」

 

 しかし、鬼道は粘ってフィディオから再びボールを奪い返して抜き去る。

 

「そこだッ!」

 

 鬼道は勢いに乗ったままオットリーノの横を抜いていく。

 鬼道が一人で、鉄壁のカテナチオカウンターを打ち破った。

 

「ヒロト!!」

 

 鬼道から基山へのセンタリング。

 

「流星ブレードッ!V2!!」

 

 基山のダイレクトシュートがブラージへと向かっていく。

 

「コロッセオガード!!はああァッ!!」

 

 ブラージはコロッセオガードを繰り出す。しかし、流星ブレードはいとも簡単にグラウンドの外へと弾き出されてしまった。

 

「危ねぇ……」

「…まさか、カテナチオカウンターが破られるなんて……」

 

 ここで前半終了。依然変わらず2-2の同点のまま。激しい接戦は後半に流れた。

 

「点が入らなかったとはいえ、カテナチオカウンターを破ったことが大きいな」

「この調子で行けば勝てる!」

「…それはどうかな。やつらは試合中に、あれほどの必殺タクティクスを完成させて来たんだ。どんな力を秘めているか計り知れないぞ」

 

 鬼道の言う通りだ。あんな難易度の高い必殺タクティクスを本番で完成させてきた。それに、オルフェウス自体個々のスペックが高い。カテナチオカウンターを破ったからといって、油断は一つも出来ない。

 

 俺達がハーフタイムで休憩をしていると、スタジアム内の歓声が徐々に大きくなる。何事かと思って周りを見渡すと、スタジアムの入り口である階段から現れる。その人物は、オルフェウスのベンチへと歩み寄る。

 

「キャプテン!」

「「キャプテン!!」」

 

 オルフェウスの選手は、その人物のことをキャプテンと呼ぶ。オルフェウスのキャプテンはフィディオではなく、あの栗松と同系統の頭をした人物だということなのか。

 

「…中田。ヒデナカタか?」

「初めまして。ミスターK」

「キャプテンでありながら、随分長い間チームを離れていたな」

「チームのためです。でも、自分の考えた以上の成果ですよ。貴方のお陰でね」

「フッ…」

 

 話から察するに、彼、ヒデナカタという人物は自分が抜けることでオルフェウスの選手達を強く育てようと考えていたということになる。

 

 不意に、ヒデナカタが後ろに視線を向ける。ミスターK共々、俺達もそちらに視線を向けた。そこには、俺達同い年くらいの外国人の少年と、幼い少女がやって来ていた。

 

「ルシェ……どうしてここに。中田、どういうつもりだ。ルシェをここに連れてくるなど」

 

 ミスターKは、どことなく焦った様な雰囲気でヒデナカタに問うた。

 

「お言葉ですがミスターK。ルシェの願いなんです。目が見えるようになったら、最初に貴方のサッカーを観たいってね」

「だからといって、こんなところに…」

「……これが最後なんじゃないんですか?今日を最後に貴方の試合は観られなくなる……違いますか?」

「ッ……」

 

 この一戦が、ミスターKの最後の試合?それは一体……。

 

「前半の戦いを見て分かりました。貴方はもう過去の貴方ではない。今日で全てを償うつもりではないですか?…もう自分から逃げることはない。自分の犯した罪からも……」

 

 最後の試合とは、そういうことか。陽乃さんや鬼道に聞いた話では、ミスターKこと影山は幾度となく人に危害を加え、あまつさえ殺人まで行なった。それらを全て償うために、今日の一戦が最後だってことなのか。

 

「貴方はサッカーへの恨みを晴らすための手段を選ばなかった。その手に掛かって多くの選手がチャンスを奪われ、ルシェはその策略の中で怪我を負ってしまった。サッカーとは何も関係がないというのに。そのことが心のどこかで引っかかっていたんでしょう。だから貴方はルシェを見舞ったんですよね。そして彼女の目の病気のことを知った。その手術には莫大な費用がかかることも。貴方はルシェの怪我が治ってからも手紙を送り続けた。治療費と共に」

 

 お金を送っていた……?

 そういえば、陽乃さんも似たようなことを言っていたな。Rという人物にお金を送り続けていると。

 

 R………つまり、ルシェって子のことだったのか。ミスターKの巻き添えを食らったルシェには目の病気があること、そしてその手術費に莫大な費用が必要なことを知った。

 だからミスターKはルシェが手術を受けられるように、お金を送っていたということなのか。

 

「どうしてそんなことを?」

「……ただの気まぐれだよ」

「…そうでしょうか?…ルシェのために何かしてやることで、少しだけ救われていたんじゃないですか?闇の世界に入り込んでしまった貴方自身の心が……貴方の心は闇の世界から抜けたがっていたんです」

 

 ミスターKも一人の人間だ。ルシェのことも、自身が今まで犯した罪も、きっと彼は悩んで、苦しんで、足掻いたんだろう。その結果が、最後の試合だということなのだ。

 

「…お前はそんなことを調べるために旅に出ていたのか?」

「いえ。旅の途中、偶然知ってしまっただけです。俺はそんなお人好しではありませんよ」

 

 ヒデナカタが話し終えると、ルシェはミスターKのそばに歩み寄った。

 

「おじさん?」

「…ルシェ……」

「その声…やっぱりおじさんだ!」

「…見えるのか?」

「うん!おじさんのお陰で私の目、見えるようになったんだよ!」

「…そうか。良かったな」

「おじさん、ありがとう!」

 

 ルシェは更にミスターKの近くに寄ろうとすると、ミスターKは手で彼女を静止する。

 

「ルシェ。私は君に感謝されるような人間ではない」

「そんなことないよ!おじさんは私に手術を受けさせてくれた!手紙で励ましてくれたもの!おじさん、ありがとう!私、サッカー勉強する!おじさんといっぱい話したいから!」

 

 ルシェは満面の笑みで微笑んだ。

 

「…私には試合がある。話は後だ」

「うん!じゃあ後で!応援してるから!」

 

 ルシェはミスターKにエールを送り、外国人の少年と共にグラウンドから去って観客席へと戻っていった。

 

「……ハーフタイムも終了だな」

 

 俺達は後半戦に向けて、再びグラウンドへと入っていく。オルフェウスはここでメンバーチェンジ。

 MFのジャンルカに代わって、ヒデナカタ。本当のキャプテンであるヒデナカタがジャンルカのポジションに入る。

 

「…ヒデナカタか…」

 

 彼のことは知らない。しかし、一目見ただけですぐ分かった。

 彼は強い。恐らく、この場にいる誰よりも。そう思わせるような風格が、彼から溢れ出している。

 

 激闘の後半戦が、いよいよ始まろうとしている。

 

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