やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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ミスターKの最期

 オルフェウスのキックオフで後半戦が開始。すぐにMFのヒデナカタにボールが回る。

 すると、ヒデナカタからジョルジョ、ダンテ、ラファエレと続け様にダイレクトパス。正確なパスもさることながら、空いたスペースを見つけてそこに走り込むポジショニングもいい。

 

 これが前半戦で戦ったチームかって思うくらいだ。これだけチームが変貌したのは、あの男、ヒデナカタが加入したからに違いない。

 俺達はオルフェウスのパス回しに手を出せずにいた。

 

 ボールはフィディオに渡る。綱海と吹雪がフィディオに対して詰めるが、ヒデナカタが走り込んでくる。フィディオはヒデナカタにボールを繋げる。

 ヒデナカタには壁山と飛鷹がディフェンスに入るが、ヒデナカタのキラーパスで奪うことが出来ず、再びフィディオにボールが渡った。

 

「オーディン……ソォォード!!」

 

 フィディオの必殺シュートのオーディンソードが円堂に切っ先を向ける。

 

「イジゲン・ザ・ハンドォッ!!」

 

 円堂はイジゲン・ザ・ハンドで迎え討つ。しかし、またもオーディンソードに破られてしまう。ゴールに入るか入らないかという瀬戸際で、

 

「くッ!!」

 

 ゴール前まで戻ってきていた鬼道がブロック。ゴールポストの上に当たって下へと跳ね返り、円堂がなんとかそれを止める。

 

「助かったぜ鬼道!」

「…負けるわけにはいかないからな…!」

 

 なんとか防いだが、ヒデナカタが加入しただけでオルフェウスが見違える様に強くなっている。

 

 円堂から前へ前へとボールを繋ぐ。そして、ボールの保持者は鬼道に。鬼道が攻め上がっていくと、再びオルフェウスは必殺タクティクスの体勢に入る。

 

「カテナチオカウンター!」

 

 フィディオが鬼道からボールを奪い取ろうとするが、鬼道は完璧にフィディオの動きを見切って躱した。

 しかし。

 

「なッ!」

 

 フィディオを躱した先には、ヒデナカタが走り込んできていて、鬼道からボールを奪ってラファエレに繋げた。

 ヒデナカタが加入したことで、カテナチオカウンターまでもが強化されている。

 

 綱海と吹雪がラファエレに向かって走るが、ヒデナカタへとボールを戻す。

 

「行くぞッ!」

 

 俺はヒデナカタに向かって突進。しかし、俺はあっさりヒデナカタに躱されてしまう。

 

「え、エラシコかよ……」

 

 サッカーのテクニックとして有名なエラシコ。ヒデナカタのそれは尋常じゃないくらいのスピードだった。

 プロのサッカー選手みたいな動きじゃねぇか。

 

 ヒデナカタはそのままゴール前まで走っていく。ヒデナカタは一度止まり、ボールに強烈なバックスピンをかけてボールを浮かせる。

 

「ブレイブ……ショォォットォッ!!」

 

 浮かせたボールにヒデナカタがオーバーヘッド。青いオーラを纏ったシュートが円堂へと向かっていく。

 

「イジゲン・ザ・ハンドッ!!」

 

 円堂も負けじとイジゲン・ザ・ハンドを繰り出す。

 しかし、イジゲン・ザ・ハンドは簡単に破れてしまい、ゴールの中に入ってしまった。

 オルフェウスが逆転して2-3となる。

 

「…すごいシュートだ…!でも、次は止めてみせる!」

 

 チーム力が格段に上がったオルフェウス。

 しかし、1点を取られたからといって諦めるようなイナズマジャパンではなかった。試合が再開し、鬼道にすぐボールが渡る。

 

「カテナチオカウンター!」

 

 鬼道はフィディオを躱すが、その先には必ずヒデナカタが待ち構えていて、ボールを奪われてしまう。俺達は絶え間なく攻め上がるが、オルフェウスに尽く防がれてしまう。

 タイムアップまで刻一刻と迫る。このままでは、イナズマジャパンが負けてしまう。

 

 ボールは再びヒデナカタに渡る。

 今ここでシュートを打たれてしまっては、ダメ押しになる。俺はヒデナカタに挑むが、今度はヒールリフトを仕掛けて躱されてしまう。

 

「クッソ!」

 

 ヒデナカタはブレイブショットの構えに入った。

 

「ブレイブ……ショォォットォッ!!」

 

 容赦のない一撃が打ち込まれる。

 

「必ず止める!そして、みんなに繋げるんだ!!」

 

 円堂は三度イジゲン・ザ・ハンドの構えに入る。

 

「イジゲン・ザ・ハンド!改ッ!!」

 

 なんと円堂はこの土壇場でイジゲン・ザ・ハンドを進化させてきた。この進化に、ヒデナカタも驚いている。

 

 ボールは段々と逸れていき、ゴールポストに直撃する。直撃したボールは前に跳ねていき、ラファエレがヘディングで決めようとするも、綱海がヘディングでクリア。

 

「行けぇッ!壁山!!」

 

 綱海から壁山にボールが渡る。

 

「このボールは渡さないっス!」

 

 壁山から飛鷹に、飛鷹から吹雪に。イジゲン・ザ・ハンド改で死守したボールを、オルフェウスに渡さぬ様にパスを繋げていく。

 ボールは豪炎寺に渡る。豪炎寺にはヒデナカタが詰めて行くが、豪炎寺が鬼道へとヒールパス。

 

 鬼道がボールを受け取って、攻め上がっていく。しかし、またしてもオルフェウスの選手に囲まれてしまう。

 

「カテナチオカウンター!!」

 

 鬼道はフィディオのディフェンスを躱すが、再びヒデナカタが立ちはだかる。

 が、しかし。

 

「鬼道!」

「フッ!」

「行くぞ!」

 

 鬼道の背後から佐久間と不動が現れて、三人がかりでついにヒデナカタを抜き去っていく。三人はそのまま必殺技の体勢に入った。

 

「皇帝ペンギンッ……!!3号ォォォォッッ!!!」

 

 鬼道、佐久間、不動の渾身の一撃、皇帝ペンギン3号がブラージに襲いかかる。

 

「コロッセオガード!!はああァァッ!!」

 

 ブラージも全力のコロッセオガードで皇帝ペンギンにぶつかった。しかし、コロッセオガードに徐々にヒビが入り始め。

 

「ぐあああァァッ!!」

 

 コロッセオガードを粉砕してゴールに叩き込み、点をもぎ取った。

 3-3。これでオルフェウスと並んだが、残り時間がもう残されていない。

 

 オルフェウスのボールから、試合が再開。

 

「もう一度突き放す!」

「決勝点を取る!」

 

 俺達イナズマジャパンとオルフェウスは、決勝点を取るために激しいプレーを繰り広げた。

 

 そして、ここで試合終了のホイッスルが鳴り響いた。3-3の引き分けで、オルフェウスとの試合を終えてしまった。

 

「はぁッ……はぁッ……」

 

 勝てなかった。この試合に勝たなければ、イナズマジャパンは決勝トーナメントに進出出来ないというのに。

 

「勝てなかったっス……」

「はぁ…はぁ……クッソぉ……」

「チームを離れていった人達の思いを、僕達は背負っていたのにッ……」

「悔しいね……!」

「くッ……」

 

 みんな、とても悔しい思いをしている。

 

「あいつに勝って……」

「予選突破を、決めたかった…!」

 

 ここまで悔しいと思ったのは一体いつ以来だろうか。アルゼンチン戦で敗北した時も悔しい思いはしたが、それ以上だ。

 

「…小町に、なんて言われるかな……」

 

 まだ決勝トーナメントに行けなくなったわけではないが、明後日のアメリカ代表ユニコーンと、アルゼンチン代表ジ・エンパイアの一戦の結果で決勝トーナメント進出チームが決まる。

 しかし、ユニコーンが負けない以上、俺達の進出がなくなる。このまま、俺達は終わりなのかも知れない。

 

「……胸を、張ろうぜみんな!」

 

 そんな中、あの人物がみんなに声をかけた。

 それは勿論、サッカーバカの円堂だ。

 

「俺達、やるべきことは一生懸命やったんだ!」

 

 この円堂の一言が、周りを元気付けた。

 俺達は立ち上がり、試合終了の整列を行なった。

 

「いい試合だったな!」

「あぁ。心から楽しめたよ」

「フィディオ、感謝する。本当のあの人を引き出してくれて…」

「…そうしなければならなかったんだ。チームのためにも、俺のためにも」

 

 俺達は握手を交わして、ベンチに戻っていった。

 音無と目金が、グループAの試合結果を調べている。

 

「待つしかないなんて……」

「全ては明後日……。明後日行われるユニコーンの試合結果次第です。この引き分けでオルフェウスは勝ち点8でグループ1位が決定。イナズマジャパンは勝ち点が7。ユニコーンが勝てば、同じく勝ち点7。その場合、二つのチームの得失点差で決まります。ですが、イナズマジャパンは大量得点差で勝った試合が一つもありません…」

 

 悔しい顔を浮かべるみんな。そこに、久遠監督が話を始めた。

 

「勝たなければならない試合に勝てなかったな。それがお前達の現実だ。…だが、誰に恥じることもない、最良のプレーだったと言えるだろう。…後は、結果を待て」

「「はい!!」」

 

 俺達が今出来ることは待つことだけだ。緑川風に言えば、人事を尽くして天命を待つってことだ。

 

「…フィディオ。そして鬼道。お前達は本物だ。私も、お前達の様になりたかったのかも知れない」

「…貴方なら、なれますよ」

 

 すると、コンドルスタジアムの最下層でパトカーのサイレンが聞こえて来る。

 

「まさかッ、自分で!?」

「…私にとってこれが最後の試合だ。楽しかったよ」

 

 すると、鬼道は不意にいつも付けているゴーグルを取り外した。初めて、鬼道の素顔を見た気がする。

 

「…久しぶりだな。お前の素顔を見るのは」

「これは帝国学園にいた時、貴方がくれたものでしたね」

「お前には、もう必要ないか」

「いえ。これからも使わせてもらいます。これは俺のトレードマークですから」

 

 そんな穏やかな会話をしていると、スタジアムに鬼瓦刑事を含めた警察と雷門夏未、そして陽乃さんがやってくる。

 

 ……なんでいるのあの人。

 

「ミスターK、いや、影山零治。傷害罪及び、国外逃亡の容疑で逮捕する」

 

 ミスターKは警察に連行され始める。ミスターKは止まり、フィディオと鬼道にこう告げた。

 

「…私がこの言葉を口にすることはないと思っていたが…………ありがとう。フィディオ…そして鬼道」

「…監督……」

「影山……総帥……」

 

 ミスターKは再び連行され始めた。そんな中、俺は陽乃さんに話しかけられる。

 

「ひゃっはろー比企谷くん。試合、お疲れ様だったね」

「…何しに来たんですか、あなた」

「まぁまぁそうツンツンしなーい。私、今鬼瓦刑事と手を組んでるの。何度か話してるでしょ?ミスターKのこととか色々。警察ってやっぱり頼りになるね」

 

 すると、話の展開が読めない雪ノ下が、俺に尋ねてくる。

 

「比企谷くん。何のこと?」

「まぁ雪乃ちゃんにも後から話すよ。とりあえず、ミスターKから話を聞かなきゃね」

 

 連行されるミスターKに、鬼瓦刑事は問い詰める。

 

「待て影山。お前を操っていたのは誰だ?お前が40年前にバスに細工し、ここまでの全ての陰謀を企むことが出来たとは思えん。お前に力を与え、闇に引き込んだ人物がいるはずだ」

「…そこまで調べていたか」

「今自白した方がいいんじゃない?どうせ後で言うことになるんだし」

 

 ミスターKはその場で止まり、ゆっくりと白状していった。

 

「……いいだろう。確かに私に力を貸し、苦しみから解放すると言う人物がいた。私はその言葉を信じたが、結局は40年間苦しみ続けた…。その人物は外国から日本に組織を送り込み、日本のサッカー界を支配しようとしていた……」

「で?それは誰なの?」

 

 陽乃さんはミスターKに問うた。ミスターKは、その人物を名乗り上げた。

 

「……その男の名は……"ガルシルド・ベイハン"」

 

 ミスターKの口からはっきりと聞いてしまった。ミスターKを操っていたのは、ブラジル代表ザ・キングダムの監督でFFI大会運営委員長のガルシルドであった。

 

「…ガルシルドには気を付けろ。やつの闇は底知れぬ……」

 

 ミスターKはそれを最後にして、スタジアムから姿を消した。鬼瓦刑事や雷門、そして陽乃さんはミスターKの連行に付いて行った。

 

 このFFI、何やら波乱が巻き起こりそうだ。

 

 俺達もコンドル島を後にして、自分達の宿舎へ戻った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 オルフェウスとの一戦から次の日。

 宿舎のモニターを点けると、衝撃のニュースが流れ込んできていた。

 

「昨日、イタリア代表チーム、オルフェウスの監督であるミスターK氏が、事故により亡くなりました。ミスターKこと影山零治氏は、元帝国学園サッカー部の監督であり……」

 

 そのニュースに円堂が、鬼道が、佐久間が、不動が特に驚いていた。この4人は特に、ミスターKに思い入れがあったからだ。

 

「鬼道……大丈夫か?」

「……影山……総帥……」

 

 円堂が鬼道に尋ねるが、鬼道は何も答えない。ずっと、ミスターKの名前を呟いていただけだった。

 

「…佐久間。鬼道を部屋に連れて休ませてやれ」

「…分かった」

 

 俺はそう伝え、佐久間は鬼道を部屋に連れて行った。折角和解が出来たというのに、すぐに死亡………受け入れられないのも無理はない。

 

 とはいえ、事故とは考えにくい。

 大会運営委員長のガルシルドなら、昨日の試合を観ていたに違いない。おそらく、ミスターKが連行するところも。

 

 証拠隠滅のためか、見限ったのかは分からないが、事故に見せかけて殺したっていうのが妥当な考えだが……。

 

 

 真実はもう、誰にも分からない。

 

 

 




さよなら、影山。
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