やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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最後のノートと伝承の鍵

 オルフェウスとの一戦から二日後。俺達はモニター前に集まって試合を観ていた。アメリカ代表ユニコーンvsアルゼンチン代表ジ・エンパイアの一戦。自力進出のなくなった俺達は、固唾を飲んで観ていた。

 

「…鬼道、大丈夫なのか?」

「…あぁ。心配かけてすまなかったな。もう大丈夫だ」

 

 ミスターKが亡くなって一番ショックを受けたのは鬼道だというのに。中々メンタルが強いじゃないか、こいつ。

 

 俺は気を取り直して、モニターに目線を向ける。ディランとマークが必殺技の体勢に入った。

 

「ユニコーンブースト!!」

 

 二人の強烈なシュートがゴールに迫る。

 しかし。

 

「アイアン……ウォォール!!」

 

 テレスのディフェンス技である、アイアンウォールを繰り出す。ユニコーンブーストは威力がなくなってしまい、テレスに完璧に止められてしまう。

 

 再度、ユニコーンは果敢に攻め上がるが、ジ・エンパイアの鉄壁のディフェンスが崩せない。一之瀬の欠場が、だいぶ影響しているに違いない。

 

 ボールはマークに渡る。マークから土門へとパスを出す。

 しかし、ここで試合終了。1-0でジ・エンパイアが逃げ切った。つまり、ユニコーンは負けたということだ。

 

「ユニコーン負けちゃったっス……」

「ということは……」

「アメリカに勝ち点が付かない!」

 

 しかし、円堂の表情は曇ったままだ。決勝トーナメント進出はしたものの、それは自力進出ではなくユニコーンが負けた結果だからだ。素直に喜んでいいのか、分からないんだろう。

 

「…俺達は前に進む。敗れたチームの思いも受けて、進み続けるだけだ。そうだろ、円堂」

「…あぁ。…よし、みんな!決勝トーナメント進出だ!一之瀬や戦ってきたみんなの思いも一緒に、全力の上にも全力で行こう!決勝トーナメントまで後4日!てっぺん目指して特訓だ!」

「「おう!!」」

 

 遂に決勝トーナメントか……。なんだか、実感が湧いてこないな。

 

「比企谷くん。頑張って」

「八幡、頑張るんだぞ」

「…おう。サンキュな」

 

 雪ノ下と八神から激励を受ける。イタリア戦前から少し怖かったのだが、普通に話す分には大丈夫な様だ。

 俺達は決勝トーナメントに向けて、特訓を始めた。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 俺達が特訓していると、円堂に招集をかけられる。何故か、雷門も一緒にいた。

 

 なにやら大事な話だそうで、特訓は一時中断して監督共々集まった。話を聞くと、円堂のお爺さんの最後のノートが見つかったらしい。

 

「冬花、見覚えあるか?」

 

 円堂がノートを開いて、久遠に見せる。

 

「これは……パパが見ていたノート。パパに勇気をくれたノート」

 

 イタリア戦前、久遠が記憶を戻したらしく、実の父親は監督ではなく別にいたらしい。その時に、久遠の本当の父親が円堂のお爺さんや影山と関わりがあったらしい。

 

「…勇気……」

「パパはこのノートを、何度も何度も読み返していたわ。私が読めるのは、パパがそうやって声に出して読んでくれていたおかげ。私、パパがこのノートから心の強さを貰えるって言ってたのを覚えてる」

「心の強さか……」

 

 久遠のお父さんはよくあんな汚い字を読めるよね。円堂のお爺さん試験とか大丈夫だったのかよ。字の汚さで0点とか普通にあり得そう。

 

「で、そのノートには何が書かれてあるんだよ?」

「裏ノートに書かれてあった究極奥義を超える、超究極奥義とか?」

「…それは、今フユッペが言った通りなんだ」

「はぁ?それじゃ分かんねえぞ?」

「だから、心」

 

 説明を省きすぎだろお前は。由比ヶ浜でももう少しきちんと説明するぞ。

 

「…要するに、そのノートには必殺技は書かれてない。心を強くする何かしらが書かれている。そういうことなんじゃねぇの知らんけど」

「あぁ。比企谷の言う通りなんだ。ここに来るまでに目を通したけど、必殺技のアイデアは書かれていないんだ。この中には、俺達がこれから強くなるために必要なことが書かれているんだ。……じゃあ、読んでみるぞ」

 

 円堂はノートに書かれている内容を音読していく。

 

「技を生み出す根源は心の強さである。新たなる技を生み出すには、新たなる心を身につけること。……分かるか?」

「まどろっこしいなぁ。見せてみろ」

 

 綱海が円堂からノートを取り上げ、中身を拝見するが。

 

「うぉッ……!……すまん、円堂。任せた」

 

 ですよねー。

 そりゃ普通そんな反応するわな。あんなん外国語より難しいぞ。多分翻訳機があっても読み取れない。

 

 何それもはや異世界の言語じゃん。

 

「よし、じゃあ続けるぞ。心の其の一。どんな時も諦めない"ガムシャラガッツ"」

「何それ?」

「心の其の二。どんなに強い敵も恐れない"タチムカウユウキ"。心の其の三。大切なものを守りたいと思う"ソコナシノヤサシサ"。心の其の四。仲間の全てを信じられる"ゼッタイテキシンライ"。心の其の五。どんな事態にも動じない"コオリノレイセイ"。心の其の六。隠された真実を見抜く力"ミヌクシンガン"。心の其の七。人の過ちを許す心の強さ"ユルスツヨサ"。心の其の八。他人の喜びと悲しみを分かつ"ワカチアウナミダ"。心の其の九。高き志を持つ者だけが見る"ハテシナキユメ"。心の其の十。自分の力を信じる心"マヨワナイジシン"。心の其の十一。どん底でも消える事のない"センシノホコリ"。……以上だ」

 

 だいぶ長かったな。

 しかし、この11個が心の強さになる、ということなんだろう。

 

「…比企谷くんはどう思う?自称国語三位の貴方から見て」

「自称じゃないし。つかお前の方が頭良いんだから分かるだろ。……ま、確かに心の強さって言われたら分からんでもないわな」

「分かるのか?」

「要はこれらを意識して、更に強くなりましょうってことなんじゃねぇの?例えば……ガムシャラガッツ、だったか?あれを意識しておけば、いざピンチになっても最後まで戦い抜くことが出来るってことなんじゃねぇの?」

 

 しかし、中々奥が深い内容だった。

 

 これは意識の問題だ。これらを意識するかしないかで、自分が発揮する力が違ったりするのだろう。世界の頂点を獲るためには、これらを意識して戦い抜くことが必要なのだ。

 

「…比企谷の言う通りかも知れない。なんせ、じいちゃんのノートなんだ。今までだって力を貸してくれた。今度だって、きっと俺達の力になる!」

「「おう!!」」

 

 俺達は再びグラウンドに行き、特訓を始めた。11個の心を身につけて、準決勝、決勝を戦い抜いて世界の頂点を目指す。

 ここまで来てしまったものは、もう後戻りなど出来ない。

 

「おいお前さん。お前さんに客だぞい。宿舎の食堂で待たせとるからな」

 

 しばらく特訓をしていると、俺は古株さんに話しかけられる。俺に客だと言われて、嫌な予感がした。

 まさか、陽乃さんとかじゃないだろうな……。

 

「比企谷くん。どこに行くの?」

「宿舎の中だ。なんでも客だとよ」

「……分かったわ。なら、私も行くわ。もし姉さんだった場合なら貴方を近づかせるわけにはいかないから」

「……勝手にしろよ」

 

 特訓を中断して、俺と雪ノ下は宿舎の中へと戻っていった。宿舎に戻り、食堂の中に向かうと。

 

「あ、エイトだ」

「久しぶりねエイト!」

 

 陽乃さんではなかったのが幸いだが、一方で疑問が浮かぶ。何故この島に、この宿舎に、クララやレアン、それにアイシーがいるのだ。

 

「…確か、比企谷くんの知り合いだったわね」

「あ、あぁ…。何しに来たのお前ら」

「何って、応援?」

「あ、うん。いや、まぁそれはいいわ。どうやって来たんだ?」

「福引きでライオコット島行きのチケット当ててさ。しかも三枚」

 

 当てすぎだろ。お前らどんだけ運良いんだよ。不正行為でも使ったのかこいつらは。

 

「まぁ細かいことはいいじゃない!それより、私と勝負よ!」

「杏、落ち着きなさいよ。あ、そうだ。エイトに差し入れよ」

 

 アイシーは、大きなエナメルバッグからマッカンを1ダース取り出した。

 

「ま、マッカンだと……!?」

「そう。この間兄さんと千葉に帰ってね。決勝トーナメント進出のお祝いだと思っていいわ」

「マジかサンキュ」

 

 俺はアイシーからマッカンを受け取った。マッカンが底を尽きて困っていたのだ。1ダースだけでもありがたい。これからアイシーに忠誠を誓おう。

 

「あ、そうだ。島巡りしてた時、雷門の選手がいたよ。名前忘れたけど……関西弁の女の子と、青い帽子を被った女の子」

「マジか。あいつらまでいるのかよ」

 

 おそらく、あの二人だろう。なんでちょっと懐かしい人物がドンピシャで集まってくんのかな。

 

「…比企谷くん。来なさい」

 

 俺は雪ノ下に強引に連れて行かれ、一度食堂から出て行く。

 

「前から思っていたのだけれど、あの三人は誰?」

「…俺がエイリアにいた時に一緒だったやつらだ」

「なんだかとても親しげな様だけれど、彼女達に何か特別な感情でも持っているの?」

 

 雪ノ下は黒く、濁った眼光でこちらに向ける。

 

「……別に、なんでもねぇよ。単なる知り合いってだけだ」

「…そう。分かったわ」

 

 そう納得して、彼女は食堂へと戻っていった。俺も雪ノ下の後に食堂に戻る。

 

「ねぇ、エイト。今練習中でしょ?見に行ってもいい?」

「…別に外から見る分ならいいんじゃねぇの」

「じゃ、見に行こ。杏、愛。行こ」

 

 クララはレアンとアイシーを連れて、宿舎から出て行く。俺と雪ノ下も、後から付いていく様に出て行った。再びグラウンドに戻ると、クララの言う通り、あいつらがいた。

 

「あ、比企谷やん!久しぶりやなぁ!」

「…おう。久しいな。浦部、財前」

「相変わらず暗い顔してるよな、お前!」

「ほっとけ」

 

 以前地上最強のメンバーとして戦っていた財前と浦部が、ライオコット島にやって来ていた。どうせ来るなら小町とか戸塚が良かった。

 

「…八幡。何故こいつらがいる」

 

 八神がクララ達の存在に気付き、俺に尋ねてきた。

 

「俺にもよく分からん」

 

 とりあえずクララ達のことを掻い摘んで説明した。八神は納得いかないという顔だったが、来ちゃった以上は仕方ない。

 

 とはいえ、財前や浦部が来たことでまた騒がしくなるな…。

 俺はそう思って見ていると、浦部の左手首に注目した。

 

「…浦部、お前そんなブレスレット付けてんのかよ」

「そんなってなんや!?これはな、ただでもろたんや!塔子も持ってんねんで!」

「だから私は趣味じゃないってこんなの…」

 

 財前はお土産が沢山入っている紙袋から、浦部が付けているブレスレットの色違いを取り出した。

 

「…私も、好みじゃないかも」

「なんだか変なブレスレットだね」

 

 木野もクララも、あまり惹かれない様だ。

 しかし、たった一人。この紫色のブレスレットに惹かれた人物が出てくる。

 

「私はこれカッコいいと思うけどなぁ……」

「マジ?」

 

 紫色のブレスレットに惹かれたのは音無だった。音無は財前からブレスレットを受け取り、左手首に付ける。

 

「そんなただで貰ったもんよく付けれるな……」

「えぇー!?カッコよくないですか?」

「後悔するからやめとけ」

 

 ただより高いものはないって言うが、実際ただほど面倒なことはないのだ。

 というか、厨二病が怠っている人間が付けそうなブレスレットだ。材木座に渡してやろうかな。超絶似合わんと思うけど。

 

「ちぇっ。折角似合うって褒めてくれるかなって思ってたのに…」

 

 音無はぶーぶー文句を垂れ流しながらブレスレットを外そうとした。すると、音無の様子がおかしくなる。

 

「あ、あれ?」

「どうしたの?音無さん」

「…取れないんです」

「え?」

「リカ、そっちは?」

 

 円堂が浦部に尋ねる。浦部もブレスレットを外そうとしているが、取れる様子が全くない。

 

「何が"伝承の鍵"だよ!とんだ不良品じゃん!」

「…伝承の鍵ですって?」

 

 財前が妙な単語を発して、雷門がそれを復唱する。

 

「あの爺さん達はそう言ってたよ。なんだっけ、天と地の王がどうのって……」

「夏未、知ってるのか?」

「…もしかするとそれは……ライオコット島に伝わる魔王伝説と関わりがあるかも……」

「「魔王伝説!?」」

 

 魔王伝説……?

 

「雪ノ下。魔王伝説って……」

「…えぇ。私が以前説明したあの伝説よ」

 

 雪ノ下が話してくれた、ライオコット島に伝わる魔王伝説。それに関連しているであろうブレスレット、伝承の鍵。

 その伝承の鍵とやらが、たとえレプリカの不良品だったとしても、外れないのは変だ。

 

 ……となると、これマジの鍵なのか?

 

 




本日は景気良く3話連続投稿しました。
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