やはり俺がサッカーをするのは間違っている。 作:セブンアップ
俺達は宿舎に戻り、雷門から魔王伝説の話を聞かされる。ライオコット島に向かう途中に雪ノ下から聞かされた話と、ほぼ同じ内容だった。
「今でも、天界と魔界の民っているのかな?」
「あくまでも伝承よ。でも、マグニード山に昔から住んでいる先住人の少年達には、天界と魔界の力を操ることが出来るとも言われているわ」
何度聞いてもテンプレみたいなファンタジー物語だ。ゲームとかラノベとかでよくあるお話。
「…で、その伝承の鍵のことなんだけど……」
雷門がモニターに、魔王伝説の関わりある画像を映す。千年前に描かれた絵なのだが、その中には天界と魔界の民らしき人物が多数描かれている。
そしてその民の手首には、浦部と音無が付けているブレスレットと同じものが付けられていた。
「…そっくりだな」
「つまり、古代から伝わる本物…?」
「そこまでは分からないわ。レプリカかも知れないし。けど、外れないというのは気になるわ」
「…でもそれ、鍵って感じに見えないけどな……」
ファンタジーな話ならあるあるだろう。この伝承の鍵から考えられるのは三つ。何かの儀式に使ったか、天界と魔界に行くためのものか、自分達が天界の民、あるいは魔界の民だって証明付けるもの。
「まぁでも、ウチは気にしてへんで?」
「マジ?」
「別に害があるわけちゃうし、なんちゅうても可愛いやん?それにその内取れると思うでー?」
「取れなかったらどうする」
「人間が作ったもんやったら外せるに決まってるやん。これ常識やで?な、春奈」
「そうですね!そのうち外れますよ!やっぱりカッコいいじゃないですか、こういうの!」
「お前らお気楽だなぁ」
「綱海ほどとちゃうけどな」
お前ら三人はどっこいどっこいだろ。戸部とたいして変わらんぞ。マジっベー。
とはいえ、今の段階では何の害がないのは確かだ。ただ、不良品のレプリカとは考えにくい。かと言って本物だっていうのも怪しい。
もし本物だったとして、千年前に作られたものが表に出回ってるのも変な話だ。
「じゃ、そういうわけですから、練習です!決勝トーナメントまで僅かですよ!」
「そうやで!勝利の女神が5人も来てんのに、優勝せーへんかったら許さへんで!」
「え、私達も含まれてるの?」
「…どうやらその様ね」
あまり浦部と関わりのないクララ達が、少し動揺している。
ごめんね。浦部のノリがきつくてごめんね。関西人は本当、ノリと勢いが凄いわ。俺なら絶対引くレベル。
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気を取り直して、俺達は再び特訓を始めた。浦部やレアン達などがやってきたおかげで、一段と活気付いている。それだけではなく、決勝トーナメントに出られるという事実が、みんなのテンションを上げている。
「ほらほら気張らんかい!」
「エイト!何よそのドリブル!貴方鈍ったんじゃないの!?」
前言撤回。活気付いたっていうか騒がしくなっただけだ。浦部と同じくらいにレアンもクソうるせぇ。誰か日本に帰してくんないかな。
しばらく特訓を続けていると、グラウンドの入り口に見覚えのある少年が練習を見ていた。
「あぁー!!イタリアの白い流星じゃん!!」
「フィディオ!」
「マモル!」
イタリア代表オルフェウスのストライカー、フィディオが登場する。今更敵情視察か?
「なんだよ突然!あ、そうだ!一緒に練習しないかー!?」
「いいね!ボールをくれ!」
円堂は手元のボールを思い切りフィディオに向かって蹴り上げた。フィディオは大きくジャンプして、ボールをトラップ。すぐさま、別方向にボールを蹴り込んだ。
「え?」
フィディオが蹴った先には、アルゼンチン代表ジ・エンパイアのキャプテンでアンデスの不落の要塞と呼ばれる人物が現れ、ボールを受け取る。
「テレス!」
テレスがボールを受け取り、再び別方向にボールを蹴り上げる。そのボールに合わせて、今度はアメリカ代表ユニコーンのキャプテンが受け取った。
「マーク!」
テレスからのボールを受け取り、ヘディングでまた別方向に繋げる。その先にはユニコーンのストライカーが張り切って登場する。
「ディラン!」
「行くぜッ!」
ディランが大きく上に蹴り上げる。そのボールに合わせ、イギリス代表ナイツオブクィーンの主将があの技の体勢に入る。
「エクス…カリバアアアァァーッ!!」
「エドガーまで!」
エドガーの十八番、エクスカリバーが円堂に向かって一直線。
「イジゲン・ザ・ハンドッ!改!!」
イタリア戦で進化したイジゲン・ザ・ハンドをエクスカリバーにぶつける。エクスカリバーは段々とゴールから逸れていき、完璧に防いだ。
「…見事だ」
ナイツオブクィーン、ジ・エンパイア、ユニコーン、オルフェウスの主要人物が揃い踏みした。オールスターじゃねぇか。
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「みんな、どうしたんだ?」
「マモル、彼らはジャパンのみんなに言いたいことがあるそうだよ」
「言いたいこと?」
円堂が復唱すると、エドガーが話を持ち出す。
「まずは、イナズマジャパンの決勝トーナメント進出決定に、イギリスを代表してエールを送りたい。おめでとう」
「エドガー……ありがとう!」
エドガーは手を差し伸べて、円堂はそれを握り返した。
「思い出さないか?俺達、ここでちょっとしたゲームをやったよな」
マークが懐かしみながら、そう話しかける。
「……あぁ。イギリス代表にパーティーに呼ばれた日のあれか」
そういえば心当たりがある。パーティー会場にいつまでも来ない円堂を俺が迎えに行った時、何やらサッカーをしていた。
「エドガーはいなかったけど、ミー達四人の誰がシュートを決めるか、ってね」
「勿論覚えてるさ!」
「そのおかげでパーティーには随分と汚れた格好で遅刻したんだったな」
それはもうごめんなさい。うちのサッカーバカがご迷惑をおかけしました。後でしっかり叱りつけておくので許して下さい。
「円堂。お前に言いたいことがあると言い出したのは、俺なんだ」
テレスが神妙な面持ちで円堂に話し始める。
「あのゲームをやった日のことを、謝罪したい」
「し、謝罪って、そんな大袈裟な…」
テレスは円堂に謝罪の理由を、続けて話す。
「GKのお前を無視して戦っていたんだ。ジャパンなんて大したことないってな。…ところがこの結果だ。みんな驚いてるよ。ジャパンがこれほどの力を秘めていたとは、とね」
「私も、今回の結果を戒めとするよ。世界は広い。まだまだ上がいる。その上にいたのは紛れもなく、君達イナズマジャパンだった」
「アメリカの分も頑張ってくれよ!」
「ギンギンにね!」
「同じグループAを戦った者として、イタリアとジャパンの健闘を祈る」
ナイツオブクィーンやジ・エンパイアなどから、世界から見れば大したことのないイナズマジャパンを格下に見ていたのに、みんなが力を認めている。
サッカーをすることで、国境を超えた、良い関係が出来上がっている。
…凄ぇな、サッカーってのは。
「みんな…ありがとう!フィディオ!お互い、頑張ろうな!」
「決勝戦で会おう!マモル!」
「おう!」
円堂とフィディオががっしり握手をする。
すると、円堂が思いついた様に提案を持ちかける。
「そうだ!これだけいるんだし、みんなで練習しようぜ!」
「それはいい!」
「やろう!」
「今日は遠慮なくゴールに打たせてもらうとしよう」
まさかの世界の連中と混合で練習するとは。
「はいはーい!私やる!」
「面白そうな練習じゃない!私も混ぜなさい!」
「…私も入りたい。エイトと久々にサッカーしたい」
「世界レベルのプレーヤーと練習なんて、これからきっと無いだろうし。私もやりたいな」
血気盛んな女子達なことで。
「いっそ2チームに分かれて、ゲームをするというのはどうかな」
「でも、誰かは控えになっちゃうしな……」
「…じゃあ試合の時間を通常より少し伸ばせばいいんじゃねぇの。普通の試合でさえクソ長いんだし、少し伸ばせば控えに入ってる連中も満足すんだろ。知らんけど」
「あ、それいいな!基礎体力も同時につけることが出来るし!」
よし。これで俺が控えに回って長時間サボることが出来る。
世界の選手と交えて練習?そんなもんどうでもいいよ。そんなことよりマッカンを飲むことの方が重要なんだよ。
「リカさんや八神さんは行かないんですか?」
「…私は八幡の活躍を見るだけでいい」
「ウチも、今日はイケメン軍団を観賞するんやぁ」
財前を始めとした彼女達は、ストレッチを始める。
それにしても、財前やクララ達がサッカーをする姿なんて久しぶりに見るな。
「チーム分けはどうする?」
すると、目にも留まらぬ速さでエドガーとフィディオの前に赤面した浦部が現れる。
「そら勿論くじ引きやぁん!」
浦部曰く、赤と白の2色を用意した棒を二人が同時に引いて、赤組の人と白組の人に分けて試合をするとのこと。
まずは、GKの円堂と立向居が引くことになった。
「白です!」
「俺は赤組だ!」
その後、俺達は続いてくじを引いていき、赤組と白組に分かれる。俗に言う、ドリームマッチが始まろうとしていた。
しかし。
「……暗いな」
先程まで暑いくらい晴れていたのが、今では雨が降りそうな程の暗雲になりつつあった。
……マジで嫌な予感がするな。