やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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天魔襲撃

 チームは分けられて、俺は白チームとなった。

 

 同じチームには、鬼道や豪炎寺に宇都宮、不動に佐久間。それに綱海と飛鷹と立向居。そして、レアンやディラン、マーク、テレスが一緒となった。

 

 対して赤チームは、円堂を筆頭に、染岡や風丸、基山と吹雪。壁山と木暮と土方、財前。アイシーやクララ、そしてフィディオとエドガーだ。

 

「面白くなりそうじゃないか!」

「ジャパンのみんな、よろしくな」

「おう!こっちこそよろしくだ!」

「今日の試合、いい思い出になるっス!」

 

 みんな、これから始まる一戦を楽しみにしている。俺は控えでサボれると楽しみだったのに……。

 

「…序盤から出なきゃならないのね」

「ていうか、なんで貴方と一緒のチームなのよ。私、エイトと戦いたかったんだけど」

「俺に言うなそんなこと」

 

 俺達の控えには佐久間と飛鷹だ。試合始まってすぐに変わってもらおうかな。

 

「さぁみんな!決勝トーナメントに向けて、気合入れていくぞ!」

「「おう!!」」

 

 白組からのキックオフで、試合が始まろうとしている。

 

「白組!ギンギンに行こうぜ!」

 

 試合開始のホイッスルが鳴り響く。するとその瞬間、ゴロゴロと雷の音が小さく鳴る。

 

 今日一日はずっと晴れの予報だった筈だが……。

 

「構うもんか!雨だろうがなんだろうが関係ねえ!練習だ練習!」

 

 するとピカッと光り、雷の音も先程より強く鳴り響いた。

 

「……帰った方がよくない?」

 

 それでも構わず、試合は始まってしまった。

 

 なんでだよ帰ろうよ。わりと激しい雷だよ?俺達が打たれたらどうすんのよ。髪の毛黄色とかになっちゃうよ?いいの?

 

 ボールはマークから宇都宮に。宇都宮に向かって、財前のチャージ。財前は宇都宮からボールを奪い取った。

 

「たはっ、やるー!!」

「へへっ!結構やるもんだろ?フィディオ!」

 

 財前からフィディオへとパス。それを食い止めるために、俺とテレスが向かっていくが。

 

「きゃあああっ!」

 

 雷の音は未だに静まらない。それどころか、先程よりもっと激しくなっていた。

 

「どうする?続けるか?」

「うーん……」

「きゃあああっ!!」

 

 試合を中断するかどうか悩んでいると、再びベンチからマネージャー達の悲鳴が聞こえる。

 何事かと思い、そちらに視線を向けると。

 

「な、なんでこんなんなってんの!?」

「なんなんですか、これ…」

 

 浦部と音無が身につけているブレスレット、もとい伝承の鍵が、何かに反応しているかの様に光り輝く。

 

「まさか……雷門や雪ノ下が言っていた……!?」

「そんな……あれは伝説よ……!?」

「あの爺さん達、絶対怪しかったもん!やっぱり何かあるんだよ!」

 

 すると再び雷鳴。今度は、グラウンドのナイターに天空から一筋の稲妻が落ちて破壊する。

 凄まじい爆風と土煙が俺達全員を襲う。

 

 少しして、爆風と土煙が収まると。

 

「円堂さん!!上!!」

 

 円堂が後ろを振り向いて顔を上げると、ゴールポストの上には妙な格好をした人物がいつの間にか現れていた。その格好はまるで、"天使"。

 

「なんだよお前!!」

 

 しかし、天使と思われる人物は無視してボールを上に打ち上げる。自身も大きくジャンプし、打ち上げたボールをグラウンドに蹴り落とした。

 

「うあああッ!!」

「ぐあああァァッ!!」

 

 蹴り落とされたボールが地面に着いた途端、先程以上の衝撃が俺達を吹き飛ばす。衝撃が収まり、俺達が立ち上がると、天使は浦部の目の前に立っていた。

 動けずに座り込んでいる浦部に、天使は怪しい笑みで見下していた。

 

「……迎えに来た」

 

 天使が浦部の額に人差し指を優しく突くと、浦部の目は何かの催眠にかかったかの様に死んでいた。天使が浦部に手を出そうとすると、

 

「おい!リカに何するんだ!!」

「人間……邪魔をするなッ!」

 

 天使に向かって走る円堂をボールをぶつけて返り討ちにする。

 

「円堂!!」

 

 ボールをぶつけられた円堂は腹を抑えて、地面に横たわる。

 

「…これ以上の邪魔立ては、恐ろしい結末を迎えることになるぞ」

 

 天使が浦部を抱き抱えながら、円堂に警告する。

 だが、ここに来たのは天使だけではなく。

 

「きゃあああッ!」

 

 今度は音無の悲鳴。そちらに視線を向けると、天使とは真逆の真っ黒な格好した人物が現れる。その姿は、"悪魔"の様だ。

 

 悪魔が音無に近づくと、天使が悪魔に向かってボールを打ち込む。悪魔は、それを軽々とトラップした。

 

「失せろ!ここはお前達の様な邪悪な者どもの来る場所ではない」

「偉そうに行ってンじゃねェよ!お前こそ消えろ!世界は魔王と魔界軍団Zが支配するって、決まってンだよ!」

 

 魔王とか魔界軍団とか言っている。ということは、こいつらガチモンの天使と悪魔…?

 

「笑止!世界を統べるのは天の輝きのみ。天空の使徒が、今ここでお前を成敗してくれよう」

「天空の使徒だって……?」

「や、やっぱり、本物の天使と悪魔ってことっスか…?」

 

 俺達のそんな疑問の呟きに、悪魔が苛立ち威嚇する。

 

「うるせェンだよ人間共ォ!!ガタガタ吐かすとお前らの魂喰っちまうぞォ!!」

「やれるもんならやってみなさいよ!返り討ちにしてやるわよ!」

 

 そんな威嚇に一歩も引かないレアンは逆に威嚇し返し、ボールを持って悪魔に向かって蹴り込んだ。

 

「ザコがァ!!調子に乗ってンじゃねェ!!」

 

 レアンのシュートを悪魔はダイレクトで打ち返し、レアンにぶつける。

 

「きゃああァッ!!」

「れ、レアン!」

 

 レアンはぶつけられた箇所を押さえながら悪魔を憎しげに睨む。クララやアイシーがレアンの身体を支える。

 

「騒がしいぞ、不浄の者」

 

 悪魔は天使の静止に鼻で笑い、音無の肩を強引に掴む。

 

「春奈ァァ!!」

 

 音無に手を出されたことに、鬼道は怒りを表す。音無を助けようと走っていくが、

 

「おらァ!!」

 

 悪魔によって鳩尾をぶつけられ、倒されてしまう。

 このままじゃ、浦部も音無も危険な目に遭う。それだけは絶対に避けなければならない。

 

「クッソ!」

 

 俺は転がっているボールを、悪魔目掛けて打ち込む。しかし、やはり悪魔には通用しなかった。

 

「どいつもこいつもしつけェンだよォ!!」

「ぐあァッ!」

 

 悪魔に蹴り返されたボールは、鳩尾の部分に直撃。俺は痛さのあまり、押さえずにはいられなかった。

 

「お兄ちゃん!先輩!」

 

 音無がこっちに駆け寄ろうとするが、悪魔はそれを許さず、音無の腕を強引に掴む。

 

「お前は選ばれた……魔界になァ」

 

 悪魔に睨まられると、音無は意識を失ってしまう。悪魔はその音無を抱き抱える。

 

「春奈!!貴様離せ!!」

 

 鬼道が悪魔に立ち向かうと、グラウンドに再び大きい稲妻が落ち、稲妻の閃光で周りが光る。

 光が収まると、天使と悪魔、それに浦部と音無がグラウンドから消えていた。

 

「…まさか、連れて行かれたというの?」

「でもどこに!?あいつら本当に天界と魔界のやつらなんですか!?」

「そんなの分かんねぇよ!」

 

 目の前であんな衝撃的なことが起こり、みんなは現状を受け止め切れていなかった。

 

「まだ遠くに行ってない筈だ!追いかけよう!」

「よし!とにかく探そう!」

「闇雲に探しても見つかんねぇだろ。この島バカみたいに広いんだぞ」

 

 こういう時こそ、冷静にならなきゃならない。

 普通の人間なら、冷静にならない方が当たり前なんだ。……だが、知り合いが二人も拐われている。考えなしに探すのは得策じゃない。

 

「…春奈は、選ばれたと言っていた」

「気になる言い方だった。本当に天界と魔界に関わる者なら、言いそうな言葉だけど……」

 

 音無が選ばれた……?

 音無が魔界に選ばれたのなら、浦部は天界に選ばれたものになる。しかし、彼女達が無作為に選ばれたなら迷惑なことこの上ない。

 

 彼女達が選ばれる、その共通点……。

 

「……そういうことか」

「何か分かったのか、比企谷」

「天使と悪魔っつったら、浦部も音無も伝承の鍵を付けていた。もし、あの魔王伝説が本物だとするなら……」

 

 俺は大きく聳え立つ火山に視線を向けた。

 

「目指すはマグニード山か…!」

「…よし!行こうみんな!」

 

 俺達の目的地はマグニード山へと決まった。

 

「八幡、私も行くぞ。八幡に手を出したことを後悔させてやる…!」

「…ダメだ。お前は残ってくれ」

「な、何故!?」

「敵があまりにも不明過ぎる。音無と浦部が拐われたとはいえ、他の天界と魔界のやつらがまだ潜んでいるかもしれない。宿舎の中に避難しておくのが最善だが、最悪を想定して、力のあるお前は残ってくれ。…頼む」

 

 俺は八神に頭を下げる。

 

 もし俺達がいない間にマネージャー達に手を出されるって考えると、恐ろしいからな。もしかしたら無意味なのかも知れないが、それでも頼りにはなる。

 

「……分かった。八幡に頼まれては仕方がない。……ただ、無理だけはしないで欲しい。もし八幡がいなくなってしまったら………私も死ぬからな」

「今回ばかりは八神さんの言う通りよ。…自分の身体を、大切にしてちょうだい」

「……善処する」

 

 改めて、俺達は天使と悪魔がいるであろう、マグニード山へと向かっていった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 マグニード山を登っていくと、段々と妙ないローブを着こなした老人が二人立っていた。

 

「あ!」

 

 財前がそれを見るや否や、一目散に詰め寄った。

 

「あんた達、ここで何してんだよ!」

「ほぉ……やはり伝承の鍵はお前さんを選ばなかったと見える」

「よい…それでよい」

 

 状況的に考えて、さっきの連中と関わりがあるのは間違いなさそうだな。

 

「知ってるのか?」

「あぁ…!伝承の鍵を私達に押し付けてきたのは、あの爺さん達なんだよ!」

「本当か!?」

「あぁ!間違えるもんか!…あんた達のせいで、リカと春奈がッ!」

 

 財前は更に詰め寄ろうとしたが、円堂がそれを静止した。

 

「ほっほっほ……どうやらあの娘さん達を取り戻しに来たみたいだな…」

「当たり前だ!」

「二人はどこにいる!」

「…天空の使徒住うは"ヘブンズガーデン"」

「…魔界軍団Z蠢くは"デモンズゲート"」

 

 ヘブンズガーデンにデモンズゲート……。

 いかにも天使や悪魔が住み着いてそうな、捻りのない名前だな。

 

「春奈はそこにいるんだな……!たとえ地獄の底だろうと、俺は春奈を助け出す!」

「その意気だ鬼道。天使よりも悪魔よりも強いものは、人間の絆だってことを教えてやろう」

 

 佐久間のその言葉に、謎の老人は嘲笑う。

 

「人間の絆とは……」

「見せてもらいたいものよ…」

 

 謎の老人達は、片方は上の道を、もう片方は下の道を指差す。

 

「行くがいい。天界への道は上だ」

「魔界への道は下じゃ」

「…貴方達は、一体何者なんです!?」

 

 フィディオの問いに、老人達は声を合わせて笑い始める。

 

「…なんだか楽しそうじゃねぇの」

「……楽しんでおるとも。新たな千年紀の始まりになるやも知れぬからな……」

「さぁ行け!この祭りを盛大に取り行おうではないか!」

 

 そう楽しそうに言い捨てて、謎の老人達は洞窟の中へと姿を消していった。

 

「……さっきの爺さんの話だと、浦部はヘブンズガーデン、音無はデモンズゲートにいるってことだ。……ここからは、赤組と白組で二手に分かれた方が良さそうだな」

「俺も行くぜ、鬼道!」

「おう!同じチームになったんだ、力貸すぜ!白組全員で、魔界に乗り込んでやろうぜ!」

「今度こそ、あの悪魔を燃やし尽くしてやるわ!」

「赤組はヘブンズガーデンだ!天界のやつらから、リカを取り戻すぞ!」

「「おう!!」」

 

 円堂率いる赤組は、天使が住うヘブンズガーデンに。そして俺達白組は、悪魔が潜むデモンズゲートに進むことになった。

 

 まさか15年間生きてきて、ファンタジックな場所に行くことになるとはな。材木座に言ったら喜びそうな話だな。

 

「エイト」

「ん?どうした、クララ」

「…気を付けてね」

 

 クララは心配そうにこちらを伺う。

 

「…互いにな」

 

 クララやアイシーが実力者とはいえ、たった一人で俺達全員を吹き飛ばした相手だ。俺だって、心配しないわけがない。

 

「よし!白組出発だ!」

 

 円堂達はヘブンズガーデンに、俺達はデモンズゲートへの道のりを辿っていった。全ては、浦部と音無を助けるために。

 

 

 

 

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