やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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音無奪還

 音無を賭けた試合の後半戦が開始した。

 

「みんな!ディフェンスラインを固めろ!」

 

 俺達は鬼道の指示でディフェンスラインを固めるが、魔界軍団Zの猛攻が止まらない。時間は刻一刻と過ぎていく。

 

「鬼道!もう時間がないぞ!」

「分かっている……分かっているが……!この状態では、守りに徹するしかない…!」

 

 このまま負ける?ずっと守りに徹した結果が敗北?音無が、魔王復活の生贄となるってのか?

 

 …そんなこと、許されるわけないだろ。

 

「バカかお前。守りに徹しても勝てるわけねぇだろ」

「…しかし…!」

「お前このままじゃ音無が生贄になるんだぞ。それでいいのかよ」

「いいわけがないだろう!…だが…」

 

 天才ゲームメイカーと呼ばれる鬼道がこのままでは、ガチで負けてしまう。

 

「……いい加減にしろよ」

 

 自分でも気付かなかった。自分の声が、普段より冷たく、低い声になっていることを。

 

「…お前はあいつの兄だろッ!お前が助けなくて、誰が音無を助けんだよ!」

「比企谷……」

「妹が困っていたなら、兄は手を差し伸べて助けるもんだろ!それがどんだけ恥ずかしくても、惨めになっても、傷付いても!それが、兄としての役目だろうが!」

 

 俺なら絶対助ける。小町が困っていたなら、俺は何をしてでも絶対に助ける。何故なら、たった一人の妹だから。

 

「俺は絶対に音無を助ける…!あいつには、色々と世話になってんだ……汚かろうがラフプレーだろうが、そんなもん知ったことじゃない……!あんなコスプレ軍団に、音無取られてたまるかっつの…!」

「…比企谷……」

 

 仮にここで重症になって決勝トーナメントに出られなくても構わない。俺の怪我で音無の身柄が確保出来るなら、安いものだ。

 

 今度ばっかりは、犠牲覚悟だ。

 

「ハッ!人間風情が何しよォが、お前達の未来は絶望しかねェンだよォ!」

 

 デスタがボールを持って、攻め上がってくる。

 

「絶対通さねぇよ…!」

 

 俺はデスタの前にディフェンスに入る。

 しかし。

 

「どけェ!!」

「ぐあッ!」

 

 デスタの激しいプレーに、俺は吹き飛ばされてしまう。今の立向居には、ダークマターを止められる気力がもうない。

 

「くらえェ!!おおおおォォッ!!ダーク…マタァァー!!」

「アイアン…ウォォール!!」

 

 デスタが打ち込む瞬間、テレスはアイアンウォールを繰り出す。鉄の壁をぶち抜けないデスタは、そのまま空中から落ちていってしまう。

 

「何ィッ?!」

「デスタが倒された?!」

「馬鹿なァ!」

 

 デスタが倒されたことで、魔界軍団は驚きを隠せずにいた。

 

「比企谷の言う通りだ、鬼道!守っているだけでは勝てんぞ!」

「テレス……」

 

 ボールを奪ったテレスに、サタナトスが襲い掛かる。

 

「ゴー・トゥー・ヘルッ!!」

「ッ!効かん!!うおおおォォォ……!!はあああァァ!!」

「ぐああァァッ!!」

 

 テレスは気合でゴー・トゥー・ヘルをそのままサタナトスに返した。

 

「鬼道!お前は焦って集中力を欠いている!だが、ピンチの時こそ攻める心を忘れるな!…攻撃こそ最大の防御!それを教えてくれたのは、アンデスのありじごくを破ったお前達、イナズマジャパンじゃねぇか!」

「…テレス……」

「…俺は決勝トーナメントでのイナズマジャパンの戦いを楽しみにしているんだ。お前達もそうだろ?」

「あぁ!こんなところで負けてもらっては困る!」

「カズヤもきっと、同じ気持ちさ!」

 

 テレスの言葉に、マークとディランが同意する。

 

「鬼道。君は優れたプレーヤーであり、イナズマジャパンはいいチームだ。だが、チームプレーにこだわり過ぎてサッカーが小さくなっている」

「サッカーが小さく…」

「圧倒的な個人技がチームの局面を変える場合もある」

「Yes。フィールドの魔術師、カズヤが見せた様にね!」

 

 彼らの力説が、集中力を欠いた鬼道に大きく響いた。

 

「……やるかい?」

「いいだろう!」

「相手は魔王の手下!不足はないぜ!…まさかアルゼンチンとアメリカが手を組むことになるとはな」

「南アメリカと北アメリカ……夢の競演だね」

「Yes!全米が泣くね!」

「…行くぞ!」

「Let's party!!」

 

 ディランが指で鳴らすと、その合図でボールを持ったテレスが攻め上がっていく。

 

「よくもデスタを!」

 

 テレスに対して、アラクネス、グラーシャ、バルバトス、メフィストが包囲する。しかし、テレスはたった一人で四人を相手にする。

 

 なんてフィジカルとテクニックなんだ……。これが、鉄壁のチームのキャプテンの力…。味方になった時に、ここまで心強いとは…。

 

「マーク!」

 

 四人を相手にしたテレスは隙を見つけて、マークへと大きく繋げた。マークは高度なテクニックで、ベルゼブを突破する。目の前に、ヘビーモスとアビゴールがマークの行手を遮るが、大きな跳躍で二人を躱す。

 

「そこだ!」

 

 マークに向かって、ベリアルがジャンプ。空中で衝突し、二人はそのまま倒れてしまう。

 

「…まだまだ!」

 

 マークは倒されながらも、前線のディランに繋いだ。

 

「Nice pass、マーク!」

 

 ディランはそのままゴール前まで攻め上がっていく。

 

「決めるぜbaby!!」

「フフ……」

「これでもくらいな!必殺の…!!」

 

 ディランが右コーナーを狙って、大きく足を振り上げる。それに反応したアスタロスは、横っ飛び。

 だが、ディランはボールを蹴る寸前で足を止める。

 

「なッ…?!」

 

 そして、アスタロスが横っ飛びでゴールがガラ空きになった瞬間を狙い、軽くゴールに蹴る。ボールはポンポンと跳ねながら入る。

 

「マジ…?」

 

 魔界軍団Zから1点を返し、1-2となる。

 

 まさか、必殺技もなしで点を奪い返すとは…。その上、テレス、マーク、ディランのたった三人でゴールを決めた……。これが、世界トップクラスの個人技……。

 

 点を取られた魔界軍団Zからのボールで試合再開。サタナトスが攻め上がってくる。

 

「人間風情が図に乗りおって…!くたばりぞこないがァ…!!」

「くたばりぞこないはどっちだよ」

 

 俺はサタナトスの前にディフェンスに入る。

 

 確か……こうだった。

 

「…ゴー・トゥー・ヘル!」

「な、なんだとォ?!ぐあああァァ!」

 

 俺はサタナトスの必殺技をパクらせてもらった。特別複雑な力はいらない。左足に力を込めて放つ……ただそれだけであそこまでの威力。使わないわけにはいかない。

 

「ざまぁ」

 

 サタナトスから奪った俺は、不動へとボールを繋げる。

 

「テメェら全員、蹴散らしてやるぜ!!」

 

 グラーシャとアラクネスを片っ端から吹き飛ばしていく。

 

「不動!こっちよ!」

「あァ!」

 

 不動からボールはレアンに渡る。目の前から、バルバトスとメフィストが詰めてくる。

 

「貴女達なんて、燃やし尽くしてやるわ!」

 

 レアンはボールと共に宙に浮き、そのままあの必殺技を繰り出した。

 

「フレイムベール!V2!!」

「ぐわああァァ!」

 

 進化したフレイムベールでバルバトスとメフィストを文字通り燃やし尽くす。

 

「レアン!こっちにくれ!」

「…仕方ないわね!エイト!」

 

 レアンからボールを受け取り、そのままゴール前に迫っていく。

 

「来い、比企谷!」

「ミーが決めるね!」

 

 豪炎寺、それにディランと選択肢がある……。だが、普通にパスを回してシュートを打ったんじゃ決まらない。

 

「…豪炎寺!」

「こちらか」

 

 アスタロスは豪炎寺に向けて手をかざす。

 かかったな。

 

「アストロゲート…!V3ッ!!」

 

 俺は豪炎寺にパスを回すと見せかけて、渾身のアストロゲートをアスタロスに打ち込む。ジ・エンドを出す余裕を作れず、そのままアスタロスごとゴールに叩き込んだ。

 

「これが本当のジ・エンドってな」

 

 俺はグッドポーズを作って、それを逆さまにする。

 

 やべぇ超爽快だわ。今のは完全に決まったわ。

 

「まさかミー達を囮にして、自分で決めるとはね」

「…よく言うだろ。敵を欺くなら味方からって言葉を」

 

 これで同点。2-2だ。

 しかし、何やら不満な表情をしたレアンがこちらに詰め寄る。

 

「いい?本当は私がシュートを打ちたかったのを、仕方なく我慢してあげたんだからね!大体、あんなやつ相手なら私だって決めれるんだから!」

「すまんすまん。てか近いから」

「ちょっと、適当に流すないでよ!」

「ふっ…」

「貴方も何笑ってんのよ!」

 

 レアンのクレームっぷりに、豪炎寺やディランが笑う。

 

 2-2で少しは精神的に余裕が出来た。

 しかし、まだ油断は出来ない。あちらには、ブラックサンダーがある。

 あれを使われたらおしまいだ。

 

 魔界軍団Zからのボールで試合再開。

 

「人間共がここまで粘るとは……」

「魔王復活は目前なンだァ。邪魔はさせねェ」

 

 再び、豪炎寺達三人がデスタに突っ込んでいく。

 

「ブラックサンダー!!」

 

 瞬きすると、目の前からデスタは消えていた。

 

「うおおおおォォ!!」

 

 すると、後ろから立向居の雄叫びが。立向居はブラックサンダーが来ることを読んで、浮いたボールを強引にキャッチ。勢い余って、デスタと衝突。

 

「立向居!」

 

 立向居は倒れてはいるが、なんとかボールを死守した。ブラックサンダーを阻止するとは…。

 

「ば、馬鹿なァ!!」

「こっちだ立向居!」

「はい!比企谷さん!」

 

 俺は立向居からボールを受け取って、鬼道にパスを繋げようと試みるが。

 

「魔王を復活させて、貴方も悪魔にしてあげる!」

「そんな面倒なこといらねぇんだわ!」

 

 俺はアラクネスをフェイントで突破する。

 

「決めろ鬼道!」

「おう!!」

 

 鬼道がトラップし、ゴール前まで攻め上がる。

 

「決めるぞ!佐久間、不動!」

 

 鬼道達は大きくジャンプして、シュートの体勢に入った。

 

「皇帝ペンギン…!3号!!」

 

 三人の連携技、皇帝ペンギン3号がアスタロスに向かって飛んでいく。

 

「ジ・エンド!」

 

 アスタロスはペンギン諸共圧縮し始める。徐々に潰れていき、消されてしまう。

 

「ククク……」

 

 アスタロスは止めたと油断した。しかし、ボールとペンギンは生きており、勢いよくゴールに突き刺さる。

 

 ついに3-2と逆転する。そして同時に、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

「俺達が……負けたァ…?!」

 

 マジで、ギリギリの試合だったわ。 

 

 俺は安堵の息を吐いて、立ち尽くした。

 

「お兄ちゃん!」

「春奈!」

「お兄ちゃん……怖かった……怖かったよぉ……!」

「…もう大丈夫だ」

 

 …良かったな、音無。

 

 すると、レアンがこちらに来て心配そうに伺う。

 

「…エイト、大丈夫?貴方、だいぶ身体痛めつけられたでしょ?」

「…一度二度これ以上の痛みを受けたことあるから大丈夫だ」

 

 とはいえ、決勝トーナメントに響かないかって言われたら嘘になるかな。かなり身体中が痛いし。

 

「比企谷先輩!」

「へ?」

 

 レアンと話していると、音無がこちらにやってくる。すると、突然に抱きつかれてしまう。

 

「ふぁ?!」

「……先輩……先輩だぁ……」

 

 音無は離れる様子を見せるどころか、俺の胸に顔を埋める。え、ちょ、どうしよ。

 

「…お前のおかげだ、比企谷」

「鬼道…?」

「お前のおかげで春奈を助け出すことが出来た。お前だけじゃない。イナズマジャパンのメンバーは勿論、テレスやマーク、それにレアンやディランのおかげだ。ありがとう」

 

 鬼道は頭を下げる。

 

「…まぁ、何?あれだよあれ。知り合いっていうか、仲間っていうか……その妹助けるのは当然だろ」

「比企谷……」

「……エイトらしいわね」

 

 …あの、なんでもいいけどそろそろ離れて欲しいな。あとみんなそんな温かい目で見るのやめて?レアンだけ睨むのもやめて?

 

「…ちょ、音無。そろそろ離れてくんない?なんならもう一度鬼道の方に…」

「やですっ……離れたくないっ……もうちょっとこのままがいい………」

「…鬼道。なんとかして?」

「諦めろ。春奈は前からお前に懐いているからな」

「えぇ……」

 

 そうは言ってもですね、あの柔らかいのがむにゅむにゅ当たってですね……。私ちょっと困ってるんですけど…。

 

「……ていうか、エイトってあそこまで誰かのために感情を剥き出しにすることあったのね。……意外」

「は?」

「君の説教……あれは心に響いたね。カズヤからは、捻くれてはいるが冷静沈着な男だと聞かされていたが……成る程。確かに懐くのも頷ける」

「いや、勝手に頷かないで?」

 

 俺が説教?そんなこと試合中に……。

 

『…お前はあいつの兄だろッ!お前が助けなくて、誰が音無を助けんだよ!』

『妹が困っていたなら、兄は手を差し伸べて助けるもんだろ!それがどんだけ恥ずかしくても、惨めになっても、傷付いても!それが、兄としての役目だろうが!』

『俺は絶対に音無を助ける…!あいつには、色々と世話になってんだ……汚かろうがラフプレーだろうが、そんなもん知ったことじゃない…!あんなコスプレ軍団に、音無取られてたまるかっつの…!』

 

 ……あ。

 

 あは、あはは……。

 

 あははは、ははは。

 

 あはははは…はあああああァァァァ!?

 

 俺何主人公みたいなこと言っちゃってんの!?待って待って死にたい死にたい超死にたい!

 

「ちょ、音無離れてマジで今俺死にたいから」

「やだっ…」

「はははッ!顔が赤いな!」

 

 顔が赤いな、じゃないんだよ!?俺いつからあんなジャンプ漫画にいそうなやつのセリフ吐いてんの!?

 もうやだ本当!!また黒歴史作ったじゃん!!アイデンティティーをクライシスっちゃったよぉ!!

 

「ちょ、レアン。余計なこと言いやがって…」

「……ふん。知らないわよ、そんなの」

 

 レアンは笑うどころか、少し不満そうだ。まだパスのことを根に持ってんのかこいつは。

 

「おぉーい!!みんなぁー!!」

 

 洞窟内で、高らかな声量が響き渡る。こんな喧しい声を出すやつは一人しかいない。

 

「円堂!」

「勝ったんだな、お前達も!」

「あぁ!」

 

 どうやら、円堂達側も浦部を助け出した様だ。

 浦部も音無も奪還出来た。これで、FFIの決勝トーナメントに戻ることができる。

 

「感謝しているわ」

 

 すると、アラクネスが怪しい笑みを浮かべながらそう礼を告げた。

 

「貴方達との戦いは、その子を遥かに凌ぐ良い生贄となったもの」

「お前達の強き魂のおかげで、魔王は今目覚めたァ!」

「何!?」

 

 すると、デモンズゲート内で地響きが起き始める。それと同時に、魔界軍団Zは姿を消していく。

 デスタの言葉が本当なら、魔王がここにやってくる筈だ。俺達は魔王がいつ来てもいい様に身構えた。

 

「……千年の封印は解けたァ」

「…今、破壊の時が始まる」

「その声は、まさか……」

 

 その声に聞き覚えがあった。片方は魔界軍団Zのリーダーであるデスタだったが…。

 

「強き魂を喰らい、魔王は復活したァ!」

「我らは、ダークエンジェル」

「…セイン…?セインなのか…!?」

 

 天空の使徒のリーダー的存在が、デスタと共に同じ衣装を着て現れた。

 …何があったんだ…?

 

 




 ということで、八幡の新技は魔界軍団からパクったゴー・トゥー・ヘルでした。正直魔界軍団の技って全部八幡に似合う気するんですけど。

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