やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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千年の決着

「…いってぇ……」

 

 俺は腹を押さえながら座り込んだ。無理して我慢すればなんとかなると思ったが、マジで吐きそうなくらい痛い。

 

「大丈夫ですか、比企谷先輩?」

「…まぁ、後半戦なんとか戦えるくらいにはな…」

 

 しかし、活動限界がギリギリだ。魔界軍団Zと戦った痛みのまま、ダークエンジェルと戦うこととなったのだ。

 

「…しかし、レアンがグランドファイアを使えるのは驚いたな」

「あぁ。お前のおかげだ」

 

 基山の言葉に豪炎寺も賛同する。

 

「当たり前でしょ!なんてったって、私は最強のサッカー選手になるんだから!あんな技くらい、私だって出来て当然よ!」

「クスっ…。エイリア学園の時から変わらないなぁ、レアンは」

 

 宇都宮が出場していないから少し懸念していたが、思わぬ誤算だった。

 

「……凄ぇよ、レアン」

 

 グランドファイアだって、努力の末に作り上げられた連携技。豪炎寺と基山と息を合わせることも凄いが、何よりそれを裏付けるのは彼女の努力。

 エイリア石に頼っていた時より、もっとレベルアップしていた。それこそ、世界と渡り合えるレベル。

 

「…ま、まぁね!今更私の凄さが分かったの?貴方なんて今の私にかかれば倒せるんだから!この試合が終わったら勝負よ!」

「…また気が向いたらな」

「そればっかりじゃない!」

 

 レアンはギャーギャーと騒ぐ。そのレアンの喧しさに、周りは笑い始める。

 

 ……だが、まだ油断はできない。やつらは、一度見たら対応してくるはずだ。それに自尊心が高い。1点取られたことで、恐らく逆に力を高めてくる。

 

「無敵の力を手に入れた筈なのにッ……よもや失点などォ!」

「…一人一人の力が強いから勝つんじゃない。全員の力と、思いが一つになるから勝つんだ!だからサッカーは面白いんだ!」

「面白い?我らのサッカーに面白さなど必要ない。…サッカーは儀式。憎い相手を叩き潰すための手段に過ぎないのだ!…お前達をぶっ潰す…!魂も残らない程にな…!」

 

 セインの、他の者を憎む目が強くなる。

 

 後半戦が開始する。俺達のボールからでキックオフだが、すぐさま奪われてしまう。

 ボールがメフィストが保持し、不動に向かって蹴り込んだ。

 

「ぐああァァ!」

 

 そのボールを今度はウイネルが鬼道に向かって打ち込む。

 

「うあああァッ!!」

 

 不動、鬼道に続けて、前線にいる三人以外の俺達が、ダークエンジェルの猛攻に次々と倒されてしまう。

 

「これ以上は無理だ!俺達も戻って守備だ!」

 

 前線にいる三人が守りに徹し始めた。豪炎寺に向けて、デスタがボールを強くぶつけた。

 

「ぐあああッ!」

 

 そのボールを次にセインが、基山とレアンにぶつけていく。

 

「うあああァ!」

「きゃあああァ!」

「喚けェ!叫べェ!恐怖しろォ!!」

 

 残った円堂にセインとデスタの一方的なリンチ。俺達は、ダークエンジェルの前に倒されてしまう。

 

「どうやらここまでの様だな」

「我らに歯向かった結果がこれだ」

 

 二人は揃って高笑いし始めた。

 だが、この状況下でも尚、立ち上がる人物がいた。それは勿論、あいつしかいない。

 

「違う…!お前達のやっていることは……本当のサッカーじゃない…!」

「愚かな。我らを認めぬだと?」

「ならば止めを刺してやろう……お前達のサッカー諸共なァ!」

 

 二人は三度、シャドウ・レイの構えに入った。

 

「シャドウッ…!!」

「レイィッ!!」

 

 止めのシャドウ・レイが円堂に襲いかかる。

 

「「キャプテン!!」」

「「円堂!!」」

 

 円堂はイジゲン・ザ・ハンドの構えに入るが、円堂の放つ光が強くなる。

 

「真…イジゲン・ザ・ハンド!!」

 

 また土壇場でイジゲン・ザ・ハンドを進化させやがった。シャドウ・レイは徐々に逸れていき、ゴールポストに直撃。それを、円堂がしっかりとキャッチ。

 

「仲間の思いに応える…!これもサッカーだ!!」

 

 シャドウ・レイを防いだ円堂はパスを出す。ボールを受け取った俺は、向かってくるエルフェルとギュエールに臆せず進む。

 

「サザンクロスカットッ!改ッ!!」

 

 俺は二人を突破してフィディオに繋げる。

 

「オーディン……ソォォード!!」

 

 フィディオの渾身のオーディンソードがアスタロスに切っ先を向ける。

 

「やらせぬ!」

 

 しかし、オーディンソードに合わせて豪炎寺、基山、レアンが合わせて走っていく。

 

「グランド……ファイアアアァァッ!!」

 

 オーディンソードの加わったグランドファイアがアスタロス目掛けて向かっていく。

 

「ジ・エンドV3!」

 

 円堂と同じく、アスタロスもジ・エンドを進化させる。だが、オーディンソードに重ねたグランドファイアはジ・エンドを打ち破る。

 ゴールに入る瀬戸際で、ゴール前まで戻ってきたセインとデスタが同時に弾き返す。

 

 だがそんな中、円堂が自陣のゴールからダークエンジェルのゴール前まで攻め上がってきた。

 

「いくぞおおォッ!!メガトン……ヘッドォ!!」

 

 前よりパワーアップしたメガトンヘッドを、ゴール目掛けて弾き飛ばした。デスタは手を出せず、セインは自身の身体で堪えていた。

 だが、徐々にセインは押されていき。

 

「ぐあァッ!」

 

 セインをも吹き飛ばして、逆転の1点をもぎ取った。

 

「やったあああぁぁ!!」

 

 仲間の思いに応えて進化させ、仲間を信じて反対側のゴールまで駆け上がってきた。

 

 …円堂の前じゃ、天使も悪魔も敵わないってことか。ということは円堂人間やめてることになる。

 まさかうちのキャプテンがバケモンだったという事実。

 

 そこで、砂時計の砂は落ち切って、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 2-1で、ダークエンジェルに勝利。

 

「身体に満ちていた悪魔の力が消えていく……」

 

 どうやらセインを始めとした、天空の使徒の意識が正常となる。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 天空の使徒のメンバーは全員元に戻った。天空の使徒は白い衣装に戻り、魔界軍団Zは黒い衣装になる。

 

「戻ったんだな!」

「あぁ。感謝するぞ、円堂」

 

 セインは次に、デスタを筆頭した魔界軍団Zに視線を向ける。

 

「デスタ、そして魔界軍団Z。使命により、お前達を封印する」

「クッ…」

「待った!」

 

 セインが魔界軍団Zを封印しようとした時、円堂が待ったをかける。

 

「サッカーは、使命とかそんなもんでやるんじゃない。もっと楽しいものだぜ」

「お前、何を……」

 

 すると、魔界軍団Zが現れた岩の扉が開き始める。

 

「…今回は失敗したが、次の千年後には必ず、我ら魔界の民が天界を支配する!」

「…そしてそこの瞳の死んだ人間。今度こそは必ず、私の悪魔にしてあげるわ」

 

 彼らはそう告げて、岩の扉の向こう側へと姿を消した。どうやら、外側からじゃ開かない様だ。

 

「お前が止めなければ、やつらを封じ込めることがッ……!………そうか……そうだったのか……」

「セイン?」

「…今分かった。私の中にある憎しみの心……そのせいで私は悪魔に付け込まれたんだ…。我ら天界の者と魔界の者とが合体したチームが魔王そのものだとするならば………魔王とは、我々の中にある醜く争う心だということになる…」

「…どういうことだ?」

「伝説にあった魔王はいないのだ。…魔王とは、自分の中にあったのだから。…先祖は、魂と魂のぶつかり合うことの大切さ……それを伝えるためだけにサッカーを選んだのではない……自分自身の醜い心を抑えるための修行として、サッカーを選んだのだ…」

「…貴方の言う通りかも知れないわね」

 

 だからなんでサッカーに固執するかな。

 

 しかも、セインの言うことが正しいなら俺の中に魔王が住み着いてることになるんだけど。もしかして俺の中に陽乃さんいるの?何やだそれ怖い。

 

「…お前達のおかげで、ようやく理解出来た気がする。サッカーとは、心の修行なのだな」

「修行かどうかよく分からないけど……楽しいもんだぜ!」

「楽しい………。…フッ…そうだな」

 

 彼らは逆光を纏いながら、デモンズゲートの出口に戻る。

 

「また千年後に備えなければならない。魔界の民に、この事実を伝承するためにも。…さらばだ!」

 

 天空の使徒は、光が差す道の向こうへと歩いていく。

 

「サッカーの素晴らしさを教えてくれたこと、感謝する!円堂!」

「セイン!!また一緒に、サッカーやろうなぁー!!」

 

 こうして、魔王伝説の物語は幕を閉じた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 俺達もデモンズゲートから去り、マグニード山の麓のバス停に向かった。外に出ると、空は綺麗な夕焼け色に染まっている。

 

「ありがとうな、みんな」

「円堂、フィディオ。決勝トーナメントでの活躍を期待してるぜ」

「あぁ!」

「マモル。俺達が次に戦えるのは決勝だ。お互い準決勝を勝ち抜き、必ず決勝で会おう!」

「必ず!」

 

 バスがやってきて、彼らは乗り込む。そして、それぞれの国のエリアへと帰って行った。

 

 俺達も、自分達の帰るべき宿舎に向かって、歩き出して行った。宿舎に帰ると、浦部と音無の無事を木野や久遠が泣きながら喜んだ。

 雷門や雪ノ下、それに八神も無事を祈っていた様で、少し安堵した様子を見せていた。

 

 疲れた俺は、みんなより先に部屋に戻って眠りについた。明日からどうせ練習あるって言うんだし、とっとと寝るに限る。

 

 今日はよく働いたぜ。

 

 

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