やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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ザ・キングダムの闇

 俺達の準決勝の相手が決まった。グループBを全勝で勝ち上がった、ブラジル代表ザ・キングダム。

 

 キャプテンのマック・ロニージョはブラジル史上最高と呼ばれるほどの実力者であり、そのロニージョに続く面々も個々の実力は相当高い。

 それに、ザ・キングダムには攻撃型必殺タクティクス、アマゾンリバーウェーブという最強のタクティクスを持ち合わせている。

 

 円堂を始めとしたみんなは、そんな強豪相手に戦えると楽しみにしていたが……。

 

「…八百長?」

「そうなんだ。今朝ロニージョに会ったんだけど、負けて欲しいって言われてさ……。でも、試合でのロニージョを見れば、あいつはそんなことを言うやつじゃないって思うんだ」

「…比企谷はどう思う」

「いや、どうって言われても……」

 

 円堂と鬼道、それに土方が事情を説明してくれた。しかし、ロニージョがそういうことを持ちかけるってことは、そうせざるを得ない何かがあるということだ。

 

 可能性としては一つ。()()が絡んでいる。

 

「…あれ。何してるの?」

 

 俺達が話し込んでいると、そこにアイシーがきょとんとした顔でこちらを見ていた。

 円堂や土方は、アイシーに大体の事情を説明する。

 

「…八百長、ね。でもなんかあるとしたら、ガルシルドってやつが原因でしょ」

 

 そう。

 アイシーの言う通り、ブラジル代表の監督はガルシルドが原因と考えられる。ミスターKを操って日本代表を潰そうとしたんだ。何かあってもおかしくない。

 

「…やはりそこに行き着くか。だとすれば、このままにしておくわけにはいかないだろう」

「よし!じゃあ早速ブラジルエリアに行こう!何か分かるかも知れない!」

 

 俺達は練習が終わった後、ブラジルエリアに向かった。ブラジルエリアに到着すると、街の色んなところでサッカーをしているのが映る。

 

「…すっげ…」

 

 流石はサッカーが国民的スポーツとなっている国だけはある。サッカーだけでなく、陽気にサンバを踊っている人もちらほらいる。俺達はブラジルエリアを探索すると、何やら誰かが揉めていた。

 

「待ってください!」

「お前の親父には仕事を辞めてもらうからな」

「そんな……それじゃ俺達家族は生きていけないよ!」

 

 俺達が目にしたのは、黒いスーツにサングラスをかけた男が二人、小さい子供とザ・キングダムのジャージを羽織ったDF、ラガルートが揉めている場面だった。

 黒尽くめの男は、子供から持っていたサッカーボールを奪った。

 

「何するんだよ!」

「これはガルシルド様が与えた物……もうお前に使う権利はない。恨むなら試合でミスした兄を恨め!」

 

 黒尽くめは奪ったボールをどこかへと蹴り飛ばした。サッカーボールを強引に奪われ、挙げ句の果てにどこかに蹴り飛ばされたことに対して、子供は号泣する。

 

「お願いします!次の試合、絶対期待に応えて見せます!だからもう一度!もう一度だけ、チャンスをください!」

「チャンス、か」

「お前達のミッション成功率は常にチェックしている。それを忘れるな」

「はい!二度とミスはしません!」

「おい、揉めてるんだ」

 

 彼らのそんなやり取りに、土方が横槍を入れる。

 

「あんた達は、イナズマジャパン……」

 

 土方は小さいな子供の頭を撫でて、慰める。

 

「ほら、もう泣くな」

「だってぇ……僕のボールを…」

「分かった。後で探してやるから、な?」

 

 黒尽くめは舌打ちをして、その場から去っていった。

 

「ちくしょう!ガルシルドめ!」

「ガルシルドめって……」

「よせ、もういい……!…行くぞ…」

 

 二人はそそくさとその場から立ち去ってしまった。

 

「……やっぱり、ガルシルドが絡んでるのね」

「…さっきの黒尽くめのやつらも、ガルシルドの手下だろうな」

 

 俺達はさっきの少年を探すついでに、蹴飛ばされたボールを探す。土方がボールを見つけ、俺達はラガルートと、ラガルートと一緒にいた子供を見つけた。

 

 土方は子供にボールを渡した。

 

「あ、僕のボール!ありがとう!」

「…何か用か?」

「ロニージョに会いたいんだ。どこにいるか知らないか?」

 

 円堂達はロニージョの居場所を尋ねるが、知らない様子だった。

 

「…そのロニージョが八百長頼んできたらしいの。何か知らない?」

「何ッ…?!」

 

 どうやらラガルートは知る由もなく、八百長試合の件はロニージョの独断で頼みにきたらしい。

 

「ロニージョのやつ、そこまで思い詰めていたのか……」

「……兄ちゃんがこんなに苦しい思いをしているのは、ガルシルドのせいなんだ!みんな騙されたんだよ!」

「……話してみてくれないか?」

 

 ラガルートは、ぽつぽつとガルシルドについて話し始めた。それはあまりに重く、残酷な話だった。

 

「…ガルシルドは、貧しくて困っていた俺達に、サッカーをするためのお金や場所を提供してくれて、家族にも仕事を与えてくれた。…でも、あいつに逆らったり試合でミスをしたら、厳しい罰を受けることになったんだ……俺達の家族にまで……」

「何!?」

「ガルシルドは、自分の作戦通り完璧に勝つことを要求した。ミスは一切許さない。だから……」

「…選手への負担が、バカみたいに大きいってことか…」

「既に2人、オーバーワークで動けなくなってしまった………このままでは、二度とサッカーが出来なくなるやつも出てくる……。ロニージョは、君達イナズマジャパンを強いチームと認めたからこそ、負けてくれと頼んだんだ……チームや家族を守るために、自分のプライドを捨てて……」

 

 ラガルートから、大体の事情を聞かされた。その事情に、円堂が、土方が、アイシーが、鬼道が怒りを抱いた。

 

「…まるで、家族が人質みたいなものじゃない…」

「そんなことを自分のチームの選手に……」

「なんて酷ぇやつなんだ!」

 

 ガルシルドは恐ろしいやつだ。ザ・キングダムの選手は勿論、ミスターKやボディーガードすらも道具としか見ていない。にも関わらず自分は悠々と表舞台で猫を被っている。

 

 そういうやつが、一番危険なやつだ。何を仕掛けてくるか読めたもんじゃない。

 

「…許せない!絶対に!」

「あぁ!こんなのおかしいぜ!なぁ、なんとかならねぇのかよ!」

「…どうしろって言うんだ……?」

「それは…」

「俺達にはどうすることも出来ない。ガルシルドの言うことに従うしかないんだ…」

「それで、本当にいいのか!?」

「……いいんだ……それで……」

 

 ラガルートは、弟を連れて俺達の目の前から去っていった。そんな彼の後ろ姿は、悲痛な姿に見えてしまった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やっぱりダメだ!このままじゃ、準決勝を戦うなんて出来ない!」

「あぁ!あの二人の辛そうな姿を見たら放っとけないぜ!なんとか助けてやらなきゃよぉ!」

「ザ・キングダムを、ガルシルドの手から解放するんだ!」

「だが、簡単には行かないぞ」

「…家族のこともあるしね」

「……一つ、案がある」

 

 俺がそう口にすると、みんながこちらに注目する。

 

「ほ、本当かよ!」

「……ガルシルドのところには、きっと証拠がある。ロニージョ達を限界以上にプレーさせて家族を人質に取っていることに加え、ミスターKに力を貸したという証拠……。さっきのボディーガードは、選手達をチェックしていると言っていたし、証拠が無くても何か手掛かりはあるかも知れない」

「た、確かに……!それじゃあ早速…」

「だが、これはかなりリスキーだ。失敗すれば俺達はただじゃ済まない。最悪殺される可能性だってある。……それでも、お前達は行くのか?」

 

 そもそも、これは誰からも助けてくれなんて言われていないし、余計なお世話だと言われてしまう可能性がある。完全なるエゴだ。

 

 しかし、彼らの答えは最初から決まっていたようだ。

 

「…あぁ!俺は行くぜ!ロニージョを、ザ・キングダムのみんなをガルシルドの手から解放しなくちゃ!」

「俺も!あいつらの辛そうな姿は放っとけないからな!」

「……お人好しだな、本当」

 

 俺達は、ブラジルエリアの外れにあるガルシルド邸へと向かった。正面から堂々と入るわけにはいかないので、ガルシルド邸の外壁でバレないところから入れるところを探す。

 

「ここだ。この木を伝って行こう」

 

 ガルシルド邸の内側へと伸びている太い枝を使って侵入する。サッカーグラウンドがあるが、そこら一帯にはボディーガードがいない。

 俺達はガルシルド邸に近づき、草の茂みで目立たないところにある窓から侵入を試みた。円堂が開けようとするが、中々開かなかった。

 

「任せろ」

 

 円堂の代わりに、土方が交代して窓を開けようとした。鍵が掛かっているであろう窓に、土方は自分の腕力で強引に開けようとした。

 結果、開いたには開いた。しかし、その直後に警報の音が邸宅中に響き渡る。

 

「強引に開けすぎたな……」

「だって、グズグスしてらんねぇだろ?」

 

 俺達は即刻ボディーガードに見つからぬように、情報が記載されているコンピュータを見つけるために、手当たり次第に部屋を開けていく。

 しかし、中々そのコンピュータが見つからない。

 

「急がねぇと捕まっちまうぞ!」

「……もう遅いけどな」

 

 俺達の少し後ろには、小太りの男性とボディーガード四人が立っていた。

 

「見つけましたよ」

 

 捕まるわけにはいかず、ガルシルド邸の廊下を走っていく。

 廊下を走り回った先には、大きな扉があった。円堂がなんとかして開けようとするが、ここにも鍵が掛けられていた。

 

「下がれ円堂」

 

 円堂は退いて、代わりに土方が。土方は自身の身体を使って扉に体当たり。鍵諸共ぶち壊して扉をこじ開ける。

 

 土方ここに来て色々壊し過ぎじゃね?請求書とか送られないよね。

 

 土方がこじ開けた部屋の中には、いくつか端末が揃っていた。おそらく、ここがガルシルドに関する情報がある筈だ。

 

「…ここね」

「頼むぞ、アイシー」

「任せなさい」

 

 アイシーはポケットからUSBメモリを取り出して端末に繋ぐ。そして、端末の中にある情報を次から次へと吸い出していく。

 しかし、扉のあちら側から体当たりしている様な音が響いてくる。力のある土方と円堂が扉を押さえているが、いつまで持つか。

 

「……終わったわ!」

「よし!もういいぞ!」

 

 次の体当たりが来る瞬間に、円堂と土方が扉から離れる。それを知らず体当たりを仕掛けたやつらは、勢いよく前に倒れてしまい、その隙に一気に逃げ出した。

 

 しかし、ガルシルドのボディーガードは増え続けて俺達を追ってくる。サッカーグラウンドから、グラウンド外に続く架け橋に差し掛かったタイミングで、土方が止まる。

 

「ここは任せろ!!スーパー……しこふみいいいィィッ!!」

 

 土方の必殺技、スーパーしこふみが炸裂。地面が揺れてしまい、ボディーガードは架け橋から水が溜まっている大きな溝に落ちていく。

 その隙に、俺達はガルシルド邸を脱出して、宿舎へと戻っていった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 俺達は宿舎に戻り、すぐにモニターに先程のデータを映し始める。そこに映っていたのは、俺達には全く無縁のものばかりであった。

 

「…響木さん」

「……とんでもないものを持って来てしまった様だな……」

「とんでもないもの?」

「ここに載っているのは、ガルシルドが世界征服を企んでいる証拠だ」

 

 その言葉に、みんなは驚いてしまう。

 俺達が取ってきた証拠が、まさか世界征服の情報だとは思わなかった。

 この大会、マジでどうなるんだ……。

 

 

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