やはり俺がサッカーをするのは間違っている。 作:セブンアップ
俺達の目の前からガルシルドが逮捕された。しかし、ロニージョ達の顔は浮かないままだった。そんな様子のまま、後半戦が始まろうとしていた。
イナズマジャパンはここでメンバーチェンジ。宇都宮に代わって染岡。点を取るために、攻撃のリズムを変えるという考えだろう。
緊張の後半戦、開始。
ボールはロニージョに渡る。鬼道がすぐさま向かっていくが、ロニージョはガトにパス。風丸がガトにマークに付くが、ガトはコルジァにパス。コルジァも、モンストロにパス。
守りに徹した様なパス回し……これがザ・キングダム本来のサッカーだっていうのか?
…いや、表情から読み取った感じではそうは見えない。ザ・キングダムの、本来のサッカーではなさそうだ。
それどころか、前半より動きが悪く見える。
ガルシルドが捕まって、ロニージョ達に危害を加えるやつはいないわけだが……。
「ッ!」
……そうか。そういうことだったのか。
ガルシルドが捕まったことが却って、ロニージョ達を苦しめている。その理由は、確かにあった。
彼らが守りに徹していると、
「がっかりだ!!」
俺の後ろから怒号が飛んできた。
普通にびっくりしたんだけど。ちょっと漏らしそうになっちゃった。ちょっと土方さん、あんた顔怖いんだから声まで上げたらマジビビるんだけど。
「ガルシルドが逮捕されて、本気のザ・キングダムが見れるかって期待していたのによぉ」
ロニージョは何も答えられなかった。
「ロニージョ!」
レオナルドからロニージョにパス。直後、前線にいた基山と鬼道がロニージョに向かって走っていく。
「これじゃパスできない…!」
ロニージョはバックパスを諦めて、仕方なく攻め始めた。しかし、ロニージョの前には土方が。
「ブレード……アタック!!」
土方がかかとから生み出した衝撃が、ロニージョを吹き飛ばす。
「これがイナズマジャパンのサッカーだ!」
土方がボールを持ち込んでいく。前からラガルートが突進してくるが、土方はヒールパスで吹雪に繋いでラガルートの裏をかいた。
ボールは土方に戻して、二人は攻め上がっていく。
土方と吹雪は、あの必殺技の体勢に入った。
「サンダー……!!」
「ビーストッ!改!!」
韓国戦で見せた二人の連携技。進化したサンダービーストが、GKファルカオに飛んでいく。
「カポエィラ…!!」
しかし、ファルカオは必殺技を出す間も無く、ゴールを許してしまう。
これで1-1の同点となった。
「ロニージョ、どうしたんだ?」
円堂がロニージョの様子を見兼ねて、駆け寄った。
「前半より、プレーにキレがなくなってる。ガルシルドは刑事さんが必ず逮捕するって約束してくれた!もうお前達を脅かしたり、命令したいするやつはいないんだぞ!」
「……家族のこと、だろ」
「ッ……あぁ…」
俺が端的に言うと、ロニージョは力なく頷いた。
「家族って?」
「ロニージョ達の家族は、ガルシルドから仕事をもらっていたって言ってただろ。そのガルシルドが逮捕された今、ロニージョ達の家族は仕事を無くすってことだ」
ある意味、ザ・キングダムはガルシルドがいてもいなくても変わらないってことだ。
「…彼の言う通りさ。サッカーで優秀な成績を収めることで、家族の生活を楽にさせようと頑張っていたら、逆に家族を苦しめることになってしまう。サッカーでの自由は手に入れたのかも知れない……だが、本当にこれで良かったのか…?ガルシルドの言うことを聞いていれば、少なくとも家族は……」
未だに苦悩するロニージョに、土方が喝を入れる。
「お前達は、何も分かっていない!」
「お前に何が分かると言うんだ?!恵まれた環境で生活をしてきたお前に、俺達の何が分かる?!」
「……家族の想いだ」
「…家族の?」
「俺にも兄弟がいる。一番上の俺が、世界大会に出場している間、弟達は寂しい思いをしている筈だ。だが、それでも弟達は俺を世界大会に送り出してくれた。何故だか分かるか?」
土方の問いに、ロニージョは何も答えなかった。
「自分達のことより、俺がサッカーで活躍する姿が見たいからだ。弟達もその想いがあるから、俺は頑張れる。ロニージョ、きっとお前達の家族もそうだ。お前にサッカーをさせてやりたい……お前の活躍を見たいからこそ、お前をこの大会に送り出してくれた筈だ」
「………」
「しっかりしろ!兄ちゃん!!」
土方がロニージョに説得していると、観客席から大きな声が飛び込んできた。その声を発したのは、ラガルートの弟だった。
「俺は、カッコいい兄ちゃんが見たいんだ!」
「あいつ……」
「兄ちゃん!!」
土方の説得に加え、ラガルートの弟の叫びにロニージョは笑みを浮かべた。
「…俺達は勘違いをしていたようだ。あの日、家族が笑顔で送り出してくれたのは、サッカーで輝いている俺達を見たかったから、か……」
「……あぁ!」
ロニージョの言葉に、ザ・キングダムの面々は頷く。
「…やろうぜ!!俺達ザ・キングダムの、本当のサッカーを!!」
「「おう!!」」
どうやら、彼らに迷いは無くなった様だ。緑川風に言うなら、寝た子を起こしたってやつだ。
…あいつ元気にしてるかな。
「みんな!こっちもイナズマジャパン魂、見せてやろうぜ!」
「「おう!!」」
改めて、本当の後半戦が始まる。1-1で同点となり、ザ・キングダムからのボールで試合再開。
ボールはロニージョに渡る。ロニージョは不敵な笑みを浮かべると、その場で軽快にステップを踏みながら踊り始めた。その行動に、俺達や観客は目を丸くする。
鬼道が構わず、ロニージョに向かっていくと、ロニージョは踊り始めながらドリブルをし始めた。まるで、ボールと共に踊っているかの様だ。そのまま向かってくる鬼道を華麗に躱して、レオナルドに繋ぐ。
続いてレオナルドも、その場で見事なボール捌きを繰り広げる。吹雪が突っ込んでいくが、レオナルドは躱していく。何度もチャージを続けるが、レオナルドはそれをのらりくらりと躱して、ガトへと繋いだ。
ガトは力強いドリブルで駆け上がっていく。に、対して土方が行手を阻む。
「ブレード…アタック!!」
しかし、ガトはそれを物怖じせずに、続け様にボールを蹴って青いオーラを生み出す。
「スーパー…エラシコォ!」
壁キックの要領で、空中でエラシコを仕掛け、土方を突破する。
「ロニージョ!」
ガトからロニージョへのパス。
「来い!ロニージョ!!」
ロニージョがヒールでボールを打ち上げ、そのボールを足で挟んで、空中で勢いよく回転させる。
「ストライクサンバッ!V2!!」
エネルギーを纏ったボールを、ロニージョが豪快に蹴り出す。
「真!イジゲン・ザ・ハンドッ!!」
円堂はダークエンジェル戦で進化させたイジゲン・ザ・ハンドを繰り出す。
しかし、ものの見事に破られてしまう。
「くッ!」
ロニージョのストライクサンバが決まり、1-2となる。
シャドウ・レイを止めた真イジゲン・ザ・ハンドを完璧に破った。流石は大会得点王……マック・ロニージョ。えげつねぇやつだ。
ボールは俺達から。
しかし、勢いに乗ったザ・キングダム相手に俺達は苦戦する。防戦一方といったところである。
だが、このまま負けるわけにはいかない。
「円堂!」
「おう!」
円堂からのボールを受け取った俺は、攻め上がっていく。目の前には、MFボルボレタとDFのバーグレが立ちはだかる。
「サザンクロスカット!V2!!」
俺はサザンクロスカットで二人を抜き去って、そのままゴール前に。
「これ以上は入れさせない!」
GKファルカオはしっかりと警戒する。
「アストロゲート!V3!!」
渾身のアストロゲートをファルカオに向かって打ち込む。
「カポエィラ…スナァァッチ!!」
ファルカオは、シュートに側転しながら向かい、逆立ちの状態でボールを両足で挟み込む。回転しながら蹴り上げてシュートを外へと弾き飛ばす。
「行ったれ!」
「「おう!!」」
俺は弾き飛ばされたボールを、染岡に繋いだ。
「ドラゴン……スレイヤァァァー!!V3!!」
染岡の進化したドラゴンスレイヤーに合わせて、豪炎寺も必殺技の構えに。
「真!爆熱……スクリュゥゥーッ!!」
凄まじい威力を放つ合わせ技のシュートが、ファルカオに向かっていく。
「カポエィラ…スナァァッチ!!」
再びカポエィラスナッチを繰り出して、シュートを弾き飛ばしてしまう。
だが、二人が放ったシュートの威力が残っていたため、地面に触れた途端、勢いよく回転してゴールの中に飛んでいく。
「なッ!?」
これで2-2の同点となる。
しかし、ザ・キングダムもこのままでは終わらない筈だ。
ザ・キングダムのボールで試合再開後、すぐにロニージョにボールが渡った。
「ストライクサンバッ!V2!!」
ロニージョがストライクサンバを放つ。これ以上の点はやれまいと、吹雪と飛鷹が身体を張ってブロックする。
「「ぐああァァ!!」」
しかし、ストライクサンバはそのままゴールに向かって飛んでいく。
「いかりのてっつい!V2!!」
3人がかりでストライクサンバを防ぐ。防いだ円堂は風丸へとボールを繋いだ。
「竜巻ィ……!!」
「落としッ!!」
韓国戦で見せた風丸と壁山の連携技、竜巻落としが炸裂。
しかし、空中でロニージョが竜巻落としを足でブロック。威力は落ちたものの、ロニージョのブロックを破ってゴールに飛んでいく。
「カポエィラスナッチV2!!」
カポエィラスナッチが進化させ、竜巻落としを完璧に防いだ。ロニージョだけではなく、あのGKも進化させている。
「勝つぞ!!」
「「おう!!」」
「最後まで諦めるな!!」
「「おう!!」」
もう時間は残されていない。次の1点が、決め手となるだろう。
竜巻落としを止めたファルカオが、ラガルートへと繋ぐ。
「ロニージョ!!」
ラガルートからロニージョに。すると、ザ・キングダムは再び必殺タクティクスの体勢に入った。
「これが本当の必殺タクティクス……アマゾンリバーウェーブだ!!」
すると、先程より大きく、激しい波が俺達を呑み込む。下半身だけだったのが、今では全身を呑みこまれてしまった。ザ・キングダムに突破され、ロニージョはゴール前に。
「ストライクサンバァッ!!V3!!」
ロニージョはまたストライクサンバを進化させる。今まで見たことない威力を誇りながら、円堂に飛んでいく。
「させるかよッ!!」
土方と壁山が足でブロックするが、威力は落ちないまま二人を蹴散らしていく。
「真!イジゲン・ザ・ハンドォッ!!」
円堂は全身全霊でイジゲン・ザ・ハンドを繰り出すが、やはり破られてしまう。ゴールに入るその寸前で、彼が現れた。
「させねぇ…!絶対に入れさせちゃならねぇんだ!!真空魔ッ!V2!!」
ゴールに入るという際どいところで、飛鷹が現れる。進化した真空魔を繰り出して、ストライクサンバの威力を完全に殺して防いだ。
「響木さんに報告するんだ!勝利を!!」
飛鷹からのロングパス。鬼道がボールを受け取り、モンストロの激しいチャージを躱して基山に繋ぐ。
「ヒロトくん!!特訓の成果を!!」
「よしッ!」
二人は止まり、腕を組んで仁王立ち。基山が赤色、吹雪が青色の気を放出し、黄緑色のオーラを纏ったボールが上昇する。二重螺旋を描きながら二人が上昇し、基山と吹雪が同時に打ち込む。
「ザ・バァァァース!!」
二人の新技がファルカオに飛んでいく。
「カポエィラスナッチV3!!」
ファルカオも進化させたカポエィラスナッチで対抗する。ファルカオは、逆立ちでボールを挟み込んだまま、シュートを入れさせまいと粘る。
「「行けえええェェッ!!」」
「勝つんだああァァ!!」」
ザ・バースの威力が息を吹き返し、ファルカオの足を弾いてそのままゴールに突き刺さった。
3-2となり、ついに逆転。この1点は、紛れもなく飛鷹の渾身のディフェンスが引き寄せたものだ。
そして、試合終了のホイッスルがスタジアムに鳴り響く。
俺達はザ・キングダムを逆転勝ちで下し、決勝進出を決めた。決勝進出を決めたことで、みんなはとても喜んでいる。
小町。世界一まで後一歩だ。お前が自慢出来る様に、俺は頑張るからな。
ちゃんと見といてくれよ。ていうか見てなかったら泣くからな。せめてお兄ちゃんの活躍はちゃんと見ててね。
「ボーイ…いや、円堂!おめでとう。君達イナズマジャパンこそ、決勝に行くのに相応しいチームだ」
「ありがとう!」
「いや、礼を言うのはこっちの方さ。準決勝の相手が君達で良かった。それに土方!お前の言葉、ここに響いた!」
ロニージョは、自身の胸に手を当てた。
「そうか!」
「この先どんな苦しいことが起きても、俺は俺のサッカーを貫き通す!その決意が出来たよ」
「今度、サンバを教えてくれよな!弟達に教えてやりてぇんだ!」
「あぁ!勿論さ!」
俺達はベンチに戻った。木野が病院からの連絡を、そのままこちらに伝えた。
「響木監督の手術、成功したそうよ」
「本当か!?やったああぁー!!」
響木監督の手術にみんなは喜ぶが、木野が、でも、と続けて話す。
「…かなり長い時間の手術だったから。消耗も激しいみたい。目が覚めるまでは、安心出来ないって」
「……そうか」
「…要するに、待つしかないってことか」
激闘を繰り広げた準決勝は、イナズマジャパンが決勝戦に駒を進めて幕を下ろした。
このまま、何事もなく決勝戦を迎えられたらいいんだがな。