やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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コトアール襲撃

 ザ・キングダムとの準決勝は、俺達が3-2の逆転で決勝進出を決めた。残るは後一試合。イタリア代表オルフェウスと、グループBを2位で突破した、コトアール代表リトルギガントの試合結果で相手が決まる。

 

 その試合を見に行くために、みんなはコンドルスタジアムへと向かった。

 

 そう。()()()は。

 

 俺と雪ノ下は、病院へと向かった。受付の看護師に、ある人物の病室の場所を教えてもらい、そこへ足を運んだ。

 

 病室を開けると、

 

「おっ、比企谷くんだー。ひゃっはろー」

 

 病室のベッドで片足にギプスを身につけた陽乃さんが、元気にひゃっはろーと挨拶をする。

 

「…相変わらず元気ね」

「まぁ大した怪我じゃないからねー。単に足捻っただけなのに、大袈裟にされたもん」

 

 今朝、病院から雪ノ下に、陽乃さんが足を怪我したという連絡が流れてきた。だから俺と雪ノ下はコンドルスタジアムには行かず、病院へと赴いたのだ。

 

「…それで、何があったんですか?」

「…ガルシルドに逃げられちゃったんだよね、これが。あんな犯罪者一人逃すなんて、私もまだまだだなぁ」

「…でも、ガルシルドは姉さんや鬼瓦さんと一緒にいたのでしょう?」

「連行中に通行止めされてるところがあってさ。パトカーから外に出たら上から鉄骨がズドン。幸い、誰一人として死人は出ていないよ」

 

 やはり、ガルシルドはあのままじゃ終わらなかったか。素直に連行されるのも、なんだか変だとは思っていた。

 

「それより、二人とも気を付けて。ザ・キングダムが敗れた以上、ガルシルドは君達、イナズマジャパンをこのまま放っておかないと思うから。決勝戦前に、誰か死んじゃいましたーっとかシャレにならないし」

「…分かっているわ」

 

 そう忠告した陽乃さんは、退屈そうに背伸びをし始める。

 

「…にしても、病院って暇なんだねぇ。比企谷くん、よく退屈せずに病院にいられたよね」

「小町にゲームやら本やら持ってきてもらったんで」

 

 なんなら病院生活を楽しんでいたまである。

 

「あ、そうだ。どうせ今日練習ないんでしょ?今日一日、私の部屋で一緒に過ごそうよ」

「俺がいたら余計退屈になると思うんですが」

「そんなことないよー。暇つぶしには最適だよ」

 

 怪我をしていても、魔王はいつだってブレていなかった様です。

 

「…そういえば、あっちはどうなってるんでしょうね」

 

 雪ノ下が思い出した様に、口を開いた。

 

「イタリアとコトアールの試合か?」

「そういえば今日だったね。今どんな感じだろ」

 

 陽乃さんはリモコンを操作して、テレビを点け始める。チャンネルを変えると、イタリアとコトアールの試合が映り始めたが。

 

「……マジか」

 

 0-8という、驚愕的なスコアになっていた。

 

 点差にも驚いたが、それ以上に驚いているのは、負けているのが()()()()()()だったからだ。

 

 ミスターKが亡くなって、キレのある采配が無くなったことも痛手だろうが、それでもチームにはフィディオがいる。

 にも関わらず、リトルギガント相手に8点を許してしまう展開。

 

 試合終了のホイッスルが鳴り響き、決勝戦に駒を進めたのは、コトアール代表リトルギガントだった。

 

「凄いよね、このリトルギガント。イナズマジャパンのついでに、ちょこちょこグループBの試合も観てたんだけどさ。お姉さんが知る限り、リトルギガントは必殺技を一度も使ってなかったよ」

「必殺技を一度も……!?」

 

 何のためにそんな縛りを付けたのかは分からないが、そんな状態でスペインやドイツを差し置いて、グループBを2位通過したってことになる。

 

 コトアール代表リトルギガント…。これはまた、面倒なチームに当たったもんだな。

 

「…あ、そうだ」

 

 陽乃さんが思い出したように、再び口を開いた。

 

「?どうしたんですか?」

「全然話変わるけど。この間救急車で搬送された人いるじゃない。名前知らないけど……サングラス付けてた人」

 

 サングラス付けてた人……響木監督のことか。

 

「…響木さんが、どうかしたの?」

「その人、一般病棟に移されるところ見たの。多分、もう大丈夫だと思うよ」

 

 その陽乃さんの知らせに、俺は少し、安堵の息を吐いた。

 

「…そうですか」

 

 一番心配していたのは飛鷹だった。この報告を聞けば、きっと彼は喜ぶだろう。

 

 俺達はこのまましばらく、陽乃さんと病室で過ごした。病院だから、前みたいに襲われる心配もない。それに雪ノ下が物凄く警戒しているしから多分大丈夫だろうし。

 

 仮に襲われた瞬間、ナースコールに頼るとしようそうしよう。

 

「…本当に暇だなぁ」

「暇が一番平和ですよ」

 

 そうしてまったりしていると、俺のケータイに着信が入る。着信先は、レアンだった。

 

 俺は一度病室から退出し、コールに出る。

 

「…どうした?」

「エイト大変よ!今すぐコトアールエリアに向かって!」

 

 電話口から聞こえる彼女は、何やら焦っている様子だった。

 

「…マジでどうした」

「とにかくコトアールエリアに向かってって言ってんの!私達も今からコトアールに向かうから!それじゃ!」

「ちょ、おいっ…」

 

 レアンは言いたいことだけ言って、一方的に電話を切る。レアンはコトアールが大変なことになっていると言っていた。

 コトアールエリアで何かが起きたのだろうか。

 

「比企谷くん!」

 

 すると、病室から勢いよく雪ノ下が飛び出てくる。

 

「どうしたんだ?」

「大変よ……コトアールエリアが…!」

「…!?」

 

 俺は陽乃さんの病室に戻って、映っているテレビを急いで確認した。どうやら、緊急速報が流れているようだ。

 

「ライオコット島のコトアールエリアが襲われています!襲っているのは何者なのか、その目的はなんなのか、一切不明です!なお、現場ではコトアール代表達が協力し、救助を行なっている模様です!」

 

 …こりゃ確かに大変だわ。

 

 テレビに映っているコトアールエリアは、ほぼ壊滅状態と化している。建物や木は破壊され、土煙だけが高く蔓延している。

 

「…私の見舞いはいいから、早くコトアールエリアに行きなさい。おそらく、これを仕組んだのはガルシルド。なんでコトアールを襲っているのか分からないけど、このままガルシルドを放っておくのも危険だよ」

「…分かりました。行こう、雪ノ下」

「…えぇ」

 

 俺達は病室を飛び出して、今すぐコトアールエリアに向かうことにした。病院のエントランスを飛び出すと、目の前には円堂達イナズマジャパンのみんなと、赤キャップを被った爺さんに、雷門がいた。

 

「比企谷くん……それに雪ノ下さん」

「…どうしたんですか?そんなに焦って……」

 

 俺達は、さっきのニュースの内容を端的に伝える。

 

「今、正体不明の者達がコトアールエリアで破壊活動を行なっていると速報が入ったの」

「コトアールエリアが!?」

 

 その知らせを聞いたみんなが驚愕する。雪ノ下に続けて、俺も知らせる。

 

「コトアールの代表達が救助を行なってるらしいが、それもいつまで保つか分からん。とっとと行かねぇと、島からエリア一つ消えることになる」

「…よし、分かった!みんな、コトアールエリアに急ごう!」

 

 俺達は急いでキャラバンに乗って、コトアールエリアに向かった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 俺達はコトアールエリアに到着した。

 目の前に広がっていたのは、コトアールエリアのあちこちが破壊されている惨状だった。

 

「コトアールの街が……」

 

 随分と派手にぶち壊してる。ここまでくると、ガルシルドがコトアールに何か恨みでもあるんじゃないかと思う。

 

「エイトーッ!」

 

 俺の名前を呼びながらこちらに走ってくるのは、レアンとアイシー、クララに、ターバンを巻いたコトアールの選手。

 

「リュー!」

「ナツミ、監督!」

「無事だったか…」

 

 しかし、リューと呼ばれるこの選手。どことなく、吹雪に似ているような気がするのは俺だけだろうか。

 

「状況はどうなってる?」

「建物は見ての通りだけど、奇跡的にコトアールの住人に重傷者はいないよ。みんな、コトアールの宿舎に避難してるけど、サッカーボールで無差別に攻撃してるやつらはまだそこかしこにいる」

「…そのテロもどきをどうにかしないと、最悪コトアールの宿舎にまで被害が及ぶぞ」

「あぁ!みんな、街を壊してるやつらを止めるんだ!」

 

 俺達は、崩壊したコトアールエリアを探索し始めた。周りは見ての通り、災害が起こった後の様な状態。

 

 それにしても、サッカーボールでこれだけ街を壊しているとなると、暴れているやつらは相当な身体能力を持っていることになる。

 そもそも、普通にサッカーボールを蹴っても街なんて壊せないからな。それこそ、エイリア石とかでも使わない限り。

 

「あっ、あそこ!」

 

 アイシーが指差した先には、大木を支えているコトアールのキャプテン、ロココ・ウルパがいた。どうやら、小さな子供を守るために倒れてきた大木を支えているのだろう。

 

「熱血…パンチッ!!」

 

 勢いよく飛び出した円堂は、右拳に力を込めて大木にぶつける。円堂に殴られた大木は、大きく吹っ飛んでいく。

 

 つーか円堂のパンチやばすぎるだろ。今度から円堂に喧嘩売らんとこ。殺される。

 

「危ないところだったな!」

「…エンドウマモル…?それに、イナズマジャパン……?」

 

 彼は俺達を不思議そうに見る。何故ここにいるのかという疑問の現れだろう。俺達の後ろから、赤キャップの爺さんがロココに近づく。

 

「…ダイスケ!それにナツミ!」

 

 すると、どこからか誰かの拍手が聞こえてくる。拍手の音をする方に視線を向けると、そこに臙脂色のマントや、スカーフを身に纏う11人が現れた。

 

「…流石はイナズマジャパンのGKエンドウマモル……見事な反応です」

 

 昨日まで聞いた様な声と話し方だった。加えて、体型が小太りである。俺の記憶の中では、そんな人物は一人しか知らない。

 

「……お前、ガルシルドの側近のやつだな」

「…ご名答。観察眼だけでエイリア学園に抜擢されただけはありますね」

 

 すると、顔を纏っていた臙脂色の布を取り外す。

 取り外すと、やはり正体はガルシルドの側近である小太りの男だった。小太りの男に続いて、周りのやつらも正体を見せていく。

 

「私達はガルシルド様のために作られた私設サッカーチーム……"チームガルシルド"」

「チームガルシルド……?」

「…イナズマジャパンの諸君。君達まで現れるとは…」

 

 すると、今度は土煙の向こう側から、()()()の声が聞こえてきた。

 その姿は段々と鮮明になっていき、次第に姿が完全に目視出来た。

 

「ガルシルド!」

「……リュー。この子をみんなのところに」

「分かった!」

 

 リューは子どもを連れてこの場から去っていった。

 

「やはりお前の仕業だったのか!」

「…まぁ、こんなことするのは貴方しかいないしね」

「しかし何故だ!何故コトアールの街を破壊する!」

「何故?知りたければその男に聞いてみることだな」

 

 ガルシルドが指を差した人物とは、赤キャップの爺さんだった。

 

「この人に……?」

「そうだ。コトアール代表リトルギガントの監督、ミスター・アラヤ。………いや、円堂大介にな」

 

 円堂大介って、円堂の爺さんの……。

 生きていたってのか……。

 

「…目的はこのわしか?だがわしを引っ張り出すために、こんな下手な小細工までするとはな。この間のブラジル戦で世界中に悪事がバラされて焦ってきた様に見える。いつもは人を操るだけで、自分は安全なところから見ているだけのお前がな」

「フン、貴様にだけは言われたくないわ。40年間もの間、こそこそと私を嗅ぎ回っていたお前にはな」

 

 40年……。

 つまり、この二人は前から知り合い、あるいは互いが互いを一方的に知っていたということになる。

 その互いを知ることになった40年前の出来事といえば……。

 

「……40年前って言ったら、イナズマイレブンを襲ったあの事故が起きた年だったよな」

「事故?なんの話よ」

「…そういえば、杏さん達はイナズマイレブンのことや影山のことは知らないわよね」

 

 木野が、40年前のあの出来事を話し始めた。

 

「…その年、円堂大介監督率いる伝説のイナズマイレブンは、FF全国大会決勝戦に出場するため、バスで試合会場に向かっていたの。でも、その途中バスは事故を起こして、伝説のイナズマイレブンは試合会場には行けずに不戦敗…」

「でも、それは影山がやったことだって……」

「その時影山は中学生。一人でそんなことは出来ない。影山に力を貸しているやつがいた。それが、そこにいるガルシルドだったってわけだ」

「比企谷くんの推測通り。ガルシルドは、世界征服の欲望のための一つの手段として、世界のサッカー界を支配してきた。日本においては、影山を帝国学園の総帥にして操り、日本サッカー界を思うようにしてきたの」

 

 掻い摘んで言えば、今までのことは全部こいつが悪いってことだ。

 

「わしはこの40年間、お前のことを調べ上げ、追い続けてきた。お前の行なってきた悪事の全てを暴くために」

「だがその苦労もどうやら無駄だったようだ。現に私はこの通り捕まっていない。……円堂大介。これ以上私の邪魔はさせぬ。貴様とイナズマジャパンは、この場で私が叩き潰す」

 

 陽乃さんの言う通り、やはり俺達も標的となっていたか。この間のブラジル戦じゃ、なんだかんだとガルシルドの邪魔をしてきたからな。

 

「この子達は関係ない。潰すならわしだけで十分な筈」

「そうはいかぬわ。私が叩き潰すのは、円堂大介。貴様と貴様のサッカーだ!今日こそ、貴様を葬り去ってやる……貴様のサッカー諸共な!」

「そのために、この島の人達を巻き込んだというのか…!?」

 

 私利私欲のために、様々な人を巻き込んできたということか。クソみたいな話だな本当。

 

「…その勝負、受けて立つ!」

 

 円堂がガルシルドに向かって、勝負を受けると告げる。

 

「…やめろ守。これはわしとガルシルドの問題だ」

「違うよ、爺ちゃん。これは、爺ちゃんとこいつだけの問題じゃない。サッカーを守る戦いなんだ!…俺、許せないんだ。サッカーを悪いことに利用するなんて絶対許せない!」

「守……」

「円堂の言う通りです。俺達にやらせて下さい。なぁ、みんな!」

 

 円堂や豪炎寺に続いて、みんながガルシルドに挑むようだ。サッカーを守るために、みんなの意思は固まった。

 

「……止めても無駄の様だな」

「!だったら僕達が!僕達だって思いは同じ!街を壊されて、このまま黙ってなんかいられない!やるなら僕達にやらせてよ!」

「……戦えるのか?その肩で」

 

 ロココは肩を痛めている。さっきの大木で、見て分かった。オルフェウス相手に、必殺技無しで0点に抑えるGKが、大木ごときで辛そうな顔はしない筈だ。

 

 ロココは肩を押さえながら、悔しそうな顔をする。

 

「…ここは、俺達に任せてくれないか?絶対に守ってみせる…俺達のサッカーを!」

「……分かった。頼んだよ、イナズマジャパン」

「あぁ!」

 

 こうして、俺達イナズマジャパンと、チームガルシルドの試合が行われることとなった。

 

 

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