やはり俺がサッカーをするのは間違っている。   作:セブンアップ

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40年の終止符

 俺達がベンチに戻ると、円堂のお爺さんからポジション変更を言い渡される。

 

「壁山と飛鷹がFWに!?」

「豪炎寺と宇都宮はMF。不動と風丸は、ディフェンスに下げる」

 

 だいぶ大胆なポジションチェンジなことで。その円堂のお爺さんの指示に、みんなはどよめく。

 

 だが、この策に俺は賛成だ。なんせ、ほとんど考えていたことが一緒だったからだ。

 

「…夏未」

「はい」

 

 円堂のお爺さんに変わって、雷門が話を紡いでいく。

 

「…前半の試合を見る限り、身体能力では明らかに向こうが上。けれど、彼らにも弱点があるわ」

「弱点?」

「完全な分量制であるが故に、それが却って仇になったってことだ」

「そう。比企谷くんの言う通り。FWはFWの、MFはMFの、DFはDFの役割しか果たしていないのよ。完全な分量制の結果、DFにはMFに必要なキープ力や突破力が不足している」

 

 そこを崩すために、MFとDFを混ぜるって寸法だ。一見めちゃくちゃなフォーメーションだが、理に適っている。

 

「でも俺、シュートなんか打てないっスよ」

「心配するな。シュートを打つだけが技じゃない」

 

 中々いいことを言うじゃないですか。この発言も、まるで円堂を思わせてくれる。流石は血の繋がったサイヤ人……じゃなかった、祖父と孫。

 

 ハーフタイムを終え、俺達は大介さんの指示に従って、ポジションチェンジを行なった。

 

「血迷ったか円堂大介……。ヘンクタッカー!遠慮はいらぬ!円堂大介のサッカーを叩きつぶせ!!」

 

 チームガルシルドからのボールで後半戦が開始。スコーピオが、クロウに繋げる。

 

「コヨーテ!」

 

 クロウからコヨーテへとロングパス。しかし、それはディフェンスに回っていた不動がカット。

 

「通すか!」

 

 コヨーテがボールを奪い返そうとするが、不動のキープ力がコヨーテを圧倒している。

 

「豪炎寺!」

 

 不動から豪炎寺にパス。豪炎寺の前からは、オウルが向かってくる。

 

「行かせるか!」

 

 しかし、豪炎寺はトップスピードでオウルを抜き去った。

 

「比企谷!」

 

 今度は俺の番。豪炎寺からボールを受けた俺は攻め上がっていく。前から、ヘッジホッグがスライディング。

 

「鬼道!」

 

 ヘッジホッグのスライディングを躱し、鬼道へと繋いだ。

 

 凄ぇわ、あの爺さん。たったポジションチェンジをしただけで、ここまで試合展開が変わっていくなんて。

 流石は雷門のレジェンドプレーヤーってところか。

 

「行かせません!ジャッカル!」

 

 鬼道に向かって、ヘンクタッカーとジャッカルのダブルディフェンス。

 

「今っス!ザ・マウンテンッ!!」

 

 壁山のザ・マウンテンが、ヘンクタッカーからボールを奪い返した。

 

「虎丸くん!」

 

 壁山から宇都宮にパス。そして、宇都宮と豪炎寺は共にゴールへと突き進んでいく。

 

「タイガー……!!」

「ストォォーーム!!」

 

 宇都宮と豪炎寺の連携シュートが、フォクスに向かって襲う。

 

「ビッグスパイダー!」

 

 フォクスは再び、ビッグスパイダーで挑む。しかし、先程とは違い、徐々に押されていく。

 

「ぐッ…!ぐああァァッ!」

 

 蜘蛛の脚を蹴散らして、タイガーストームを見事に決めた。ようやく1点を取り返し、1-2となった。

 俺達はその勢いのまま、チームガルシルドに向けて反撃を開始した。

 

 試合開始後、すぐにボールを奪って、吹雪にボールを繋げる。

 

「風丸くん!」

「あぁ!」

 

 吹雪がクロウとオウルをスピードで抜き去る。そして、アメリカ戦で見せたあの連携技の体勢に入った。

 

「吹き荒れろ!」

「ザ・ハリケーン!!」

 

 ザ・ハリケーンが炸裂。フォクスはビッグスパイダーを出す間も無く、ゴールを許してしまった。

 

 2-2の同点となる。イナズマジャパンの反撃は、未だに終わらない。試合再開後、すぐにチームガルシルドはDFのバファロにボールを下げる。

 

「こっちだ!」

 

 同じDFのディンゴが走っていく。バファロがディンゴにパスを出すが。

 

「させるかッ!真空魔ッ!!V2!!」

 

 飛鷹の真空魔でボールをカット。そのまま豪炎寺へとボールを繋げた。そして、宇都宮と基山が共に上がっていく。

 

「グランド…ファイアアァッ!!!」

 

 グランドファイアが地面を抉りながら、DFのヘンクタッカーを吹き飛ばし、ゴールに向かっていく。

 

「ビッグスパイダー!」

 

 フォクスはビッグスパイダーでグランドファイアに挑むが、結果は火を見るより明らかだ。蜘蛛の脚を焼き尽くし、フォクスごとゴールに押し込んだ。

 

 3-2で、イナズマジャパンの逆転となる。そしてここで、試合終了のホイッスル。チームガルシルドとの激闘の末、逆転勝利で試合を終えた。

 

「ば、バカな……私の究極の強化人間が……!…ヘンクタッカー!この敗北は貴様らのせいだ!」

「なっ…」

「私はお前達に、最強の力を与えてやった!なのにそれを使いこなせなかった、貴様らのなァ!」

 

 チームガルシルドのやつらは唖然としている。

 今までガルシルドのために尽くしてきたのに、たった一つの敗北で捨てられてしまったからだ。

 

 とことんゲス野郎もいいところだ。

 

 そんな様子を俺達が見ていると、コトアールエリアに爆音と振動が響き渡る。上を見ると、ガルシルドがウミガメスタジアムにやってきた時に使った飛行船が現れた。

 

 ガルシルドは、逃亡を始めようとしている。そんなガルシルドを、ヘンクタッカー共々追いかける。

 

「我々を見捨てるのですか!?これだけ尽くしてきた私達を!」

「貴様らの代わりなどいくらでもいる」

「ガルシルド様ッ…!」

 

 ガルシルドがそう言い捨て、飛行船に乗り込もうとした。すると、黒のスーツを着た男性達が、飛行船の入り口を遮り、ガルシルドの目の前に現れた。

 

「なんだ貴様らは?」

「国際警察だ。ガルシルド・ベイハン。お前を逮捕する」

「国際警察ッ?」

「…少々お遊びが過ぎた様だな、ガルシルド」

「とっととライオコット島からおさらばしていれば良かったのにね」

 

 すると、そこには鬼瓦刑事と、松葉杖を突いた陽乃さんまでが現れた。

 

「本当に私を逮捕するつもりかッ?」

 

 国際警察は、手錠をガルシルドに見せる。ガルシルドは珍しく、焦りの様子を見せ始めた。

 

「…何故分からぬのだ!世界は刻一刻と病んでいる!サッカーなどという球遊びに浮かれている今この時にも、世界の残された資源を有効に使うためには!私による支配が必要不可欠なのだ!世界を救うのはこの私だ!!私だ……私なのだぞ!!」

「……お前達も連行する!」

 

 ガルシルド、そしてチームガルシルドは、飛行船と共に、鬼瓦刑事と国際警察に連行されていった。

 

「結局、あいつらもガルシルドに利用されたってことか……」

「考えてみると、可哀想な人達ですよね…」

 

 これでガルシルドの手による悲劇は、もう起こることはなくなった。40年間の物語が、今決着したのだ。

 

「ありがとう、マモル。大介のサッカーを守ってくれて。それに、正直びっくりしたよ。君達の強さには。あの強化人間に勝ったんだから」

「いや。それは大介さん達のアドバイスがあったからこそだ」

「君達の実力さ。指示通りに動ける君達のね」

「ロココ…」

「でも、決勝では負けないから。君達に勝って、FFIで優勝するのは、僕達リトルギガントだから」

「俺達だって、負けないぜ!」

 

 ロココと円堂は、互いの拳を合わせた。

 

「……青春してるねー」

 

 陽乃さんがそう茶化す様に言う。

 

「陽乃さんは行かないんですか?」

 

 鬼瓦刑事と共に、ガルシルドの連行に付いて行くと思ったのだが。

 

「もうガルシルドは終わりだしね。ここから先は、私には関係ないことだもん」

「…相変わらず、破天荒な人ですね」

 

 魔王の身勝手さには、警察もおっかなびっくりだろうね。

 すると、陽乃さんは思い出した様に、話を変え始める。

 

「あ、そういえば」

「?どうしたんですか?」

「あの時の約束のことで話があるから。今日のこの後、空けといてよー」

 

 約束……。そういえば、なんか陽乃さんと無理矢理約束されたんだっけ。確か、ヤバい内容だったやつだ。

 

「私がイナズマジャパンの助けになったなら、君は私のモノになるって約束。もしかして忘れちゃったの?酷いなぁ」

 

 ヤバい内容でした。

 

「…ちゃんと覚えてますよ」

「おぉ、偉い偉い。それじゃ、また電話かけるからね」

 

 陽乃さんはそう言って、俺の目の前から、おぼつかない足取りで去っていった。

 

「…おい、八幡。さっきの約束とやらはなんだ」

 

 俺と陽乃さんの話を聞いていたのか、すぐさま八神が詰め寄ってくる。対して、俺ははぐらかす。

 

「…まぁ、色々あってな」

「まさか、お前はあんな胡散臭い雌に付いていくわけではあるまいな?私を置いて、あの雌を選ぶのか?」

 

 八神は俺の首に両手を添えて、こちらを睨む。いつも通り目が据わっており、暗く濁り切った青い瞳が俺を捉えている。

 

「…そういうのじゃねぇよ」

 

 その時、俺は嘘を吐いてしまった。

 

 もしあの約束が果たされるのであれば、捉えようによっては陽乃さんを選ぶことになる。この場を収めるために、俺は八神に嘘を吐いてしまった。

 

「…ならいい」

 

 八神は、ゆっくりと両手を離していく。そして、俺に向けて忠告する。

 

「…覚えておけ。お前と永遠に共にするのは、私だけでいいんだ。他の雌を選ぶなど許さんからな」

 

 久しぶりにこんな八神を見た気がする。イタリア戦以降、なんだか忙しくて、八神としっかり話す機会がなかった。

 

 すると、

 

「病院から連絡だわ!」

 

 木野が急いで電話に出て、病院の者と話している。一通り話し終えると、木野がケータイを耳からゆっくり離して、電源を切る。

 

「秋?」

「……響木監督。意識が戻ったそうよ!」

 

 木野が涙ぐみながら、みんなにそう伝える。ようやく意識が戻ったか……。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 俺達はライオコット病院に急いで戻った。看護師曰く、奇跡だそうだ。響木監督だからこそ、復活したと言えるのだろう。

 

 円堂と円堂のお爺さんは響木監督と話すことがあり、病室に残った。他のみんなは疲れてしまい、病院のエントランスで寝ている。

 試合で疲れた身体を休めるために、俺も眠りに着こうと思ったそんな中、俺のケータイに着信が入る。

 

 着信先は勿論、陽乃さんである。

 

「もしもし」

「今すぐにセントラルパークに来れる?っていうか来なさい。さっきの話の続きだよ」

「……分かりました」

 

 短く、そう伝えて電話を切る。

 

「…行くか」

 

 俺は一人、病院から出て行った。そして陽乃さんが待つ、セントラルパークへと、足を運んだ。

 

 

 

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