やはり俺がサッカーをするのは間違っている。 作:セブンアップ
「……眠い」
結局寝たのは4時くらいだったからな。中々寝付けなかったこともあるが、なんだかんだ偽小町のことを考えていたからな。
「ふぁ……あ……」
「エイト、やっと起きた」
俺が大きく欠伸をしていると、クララが部屋に入ってきた。
「早く来て。みんなもう集まってるよ」
「…了解」
俺はとっとと準備して、みんなが集まるミーティングルームに向かった。
「遅れてすんません…」
そう謝りながら入ると、この場にいる筈のない人間が二人ほど、モニターの前に立っていた。
「……オルフェウス……」
なんと、オルフェウスのGKブラージ、そして白い流星と呼ばれるストライカー、フィディオがジャージ姿で立っていた。
「……何しにきたの?イナズマジャパン志望しに来たの?」
「違うよ。なんでも、リトルギガント戦のことを伝えにきてくれたんだって」
そういえば、準決勝でリトルギガントと当たったのはオルフェウスだったな。とはいえ、敵であった俺達にそんなことするのは、いいものなのか?
俺はとりあえず、空いてる席に着いて、彼らの話を聞く態勢になる。そして、まず最初にブラージが口を開き始める。同時に、モニターにはオルフェウスとリトルギガントの試合が映し出される。
「…リトルギガントのスペックは恐ろしいものだった。鋭い動きに恐るべきスピード、そして破壊力……。まるで、人数が倍になった様だったぜ」
「どこにパスを出しても奪われ、どんなに守っても突破されたよ。…カテナチオカウンターでさえもね」
「やつらに勝つためには、あのスピードやパワーを封じることが必要だ!」
「俺達は全力で、リトルギガントの戦い方を伝える。今日は決勝戦本番のつもりでぶつかってきてくれ!」
リトルギガントの戦いを直で感じたオルフェウスとの練習試合か。ついこの間戦ったっていうのに、なんだか久しく感じるな。
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グラウンドに集まり、俺達はそれぞれポジションに付いた。どうやら、この一戦は15分ハーフとのこと。フィディオ曰く、それが限界らしい。
FWは豪炎寺、染岡、基山。MFは風丸、不動、佐久間。DFは木暮、飛鷹、壁山、俺。GKは円堂。
対するオルフェウスのフォーメーションは……。
「…なんだあれ」
オルフェウスのフォーメーションが変である。FW、MF、DFの全員が前線に立っていた。
「これがリトルギガントの恐ろしさだ」
オルフェウスからのボールで試合が開始した。ボールはすぐアンジェロに渡る。アンジェロに向かって、風丸と基山が詰めていくが、アンジェロはアレサンドロにパス。
アレサンドロに向かって、次に豪炎寺が走っていくが、すぐさまジュゼッペにパス。
「速い!」
オルフェウスは素早いパスワークで、俺達を翻弄していく。パスだけではなく、スピードも速い。一つ一つの動きに、全力を注いでいるかの様な、激しいプレーを繰り広げている。
ボールはラファエレに渡り、フィディオがゴールに向かって走っていく。
「行かせるかよッ!」
不動がチャージを仕掛けるが、ラファエレはその前にフィディオにパス。木暮がフィディオに向かって走っていくが、フィディオはひとりワンツーで素早く躱す。
「行くぞ!マモル!」
「来い!フィディオ!」
フィディオは必殺技の構えに。円堂も、それに応じて警戒する。
「オーディン…ソォォード!改ッ!!」
進化したオーディンソードが円堂に襲いかかる。
「ガン!シャン!ドワァーン!!」
円堂はチームガルシルド戦で見せた新たな必殺技を繰り出すが、失敗に終わり、オーディンソードが決められてしまう。
0-1で、オルフェウスが先制する。フィディオは変わらず、険しい表情で言い放つ。
「リトルギガントの攻撃は、もっと厳しいぞ!」
次に、俺達ボールで試合を再開しようとするが。
「何ッ!?」
さっきまでの全員攻撃型布陣が逆転し、全員防御型布陣となっていた。FWのフィディオでさえ、ディフェンスのポジションに付いている。
試合が再開し、俺達は反撃を試みる。風丸がボールを持って上がるが、目の前にラファエレとアンジェロが立ち塞がる。
「クッ…!比企谷!」
風丸からのバックパスを受けた俺は、前線に向かって攻め上がっていく。しかし、今度はオットリーノ、ジュゼッペ、ダンテ、アレサンドロの四人が一斉に囲い込んでくる。
「一人に対してそれずるくね?」
四人それぞれがボールを奪いに襲い掛かってくる。激しいプレーに、俺は精一杯ボールを保持し続けるが。
「甘いぞッ!」
「しまった!」
オットリーノのチャージでボールを奪われてしまう。
全くパスが通らない。これではジリ貧じゃねぇか。
「フィディオ!」
ボールは再びフィディオに渡る。フィディオはゴール前まで駆け上がっていき、オーディンソードの体勢に入った。
「オーディン…ソォードッ!!改ッ!!」
フィディオのオーディンソードが円堂に向かって遠慮なく飛んでいく。
「ガン!シャン!ドワァーン!!」
再び円堂は新技の構えに入り、オーディンソードに挑む。しかし、再び円堂の新技は突破されてしまい、追加点を許してしまう。
「クソッ…!なんで出来ないんだ…?!どうして上手くいかないんだ…?!こんなことじゃ、リトルギガントには勝てない!」
「円堂……」
試合が迫っているに加えて、リトルギガントの強さを疑似体験してしまった今、何がなんでも新技を会得しなければやつらには勝てない。
そんな思いが、円堂を焦らせている。
ここで、前半終了のホイッスルが鳴り響き、ハーフタイムに入った。俺達は後半に向けて話し合う。
「攻撃も守備も、向こうのほうが人数が多い…」
「これがリトルギガントの強さなのか…」
「実際に倍の人数と戦っているような、圧倒的運動量を持ったチームということだろう」
あっちには円堂の爺さんがいる。オルフェウスより強いチームに仕立て上げるなんて、わけないからな。
「そんな相手にどう戦えば…」
「イタリアから8点も取った上に無失点なんて、完全無欠っス!」
「…完全なチームなんていないわ」
「夏未?」
「大介さんは言ってた。どんなチームにも必ず、自分達には見えない穴が生まれる、と」
円堂の爺さんが言っていることは正しい。
人間完璧な奴はいない。おそらく、あの陽乃さんにだって欠点がある。その欠点が見つからないから、完璧超人なわけだけど。
とにかく、弱点がある。それを見つけない限り、オルフェウスに、リトルギガントに勝てはしない。
「後半の指示を伝える。宇都宮、土方、吹雪、そして鬼道。後半は、お前達で行く」
「「はい!」」
飛鷹、木暮、風丸、染岡に代わって、吹雪、土方、鬼道、宇都宮が入る。鬼道や不動がいれば、オルフェウスの守りを崩すことが出来るだろう。
だが、他力本願じゃいつまで経っても力が付かない。俺も俺なりに、やつらを突破する術を見つけなければならない。
後半戦、イナズマジャパンからのボールで試合が開始した。ボールはすぐに鬼道に渡る。鬼道と共に、佐久間や不動が攻め上がる。
「行くぞ!」
鬼道が佐久間へとパスを出そうとするが、交代したアントンが素早くディフェンスに入る。鬼道はそのまま、佐久間とは別の方向に向けて蹴ってしまった。
オルフェウスは反応出来なかったが、ボールが飛んだ先には誰もおらず、タッチラインを割った。
「あれは…」
オルフェウスが反応出来なかったことに対して、俺は一つの策を思いついた。
「鬼道、不動。ちょっと来てくれ」
「?どうした、比企谷」
「策がある」
俺は思いついた作戦を、鬼道と不動に話す。
「そォいうことかよ」
「…確かに、その方法ならあのディフェンスを突破出来る。やってみよう」
今の俺には強烈な技を持ち合わせていない。出来ることといえば、策を練って伝えることくらいだ。
まぁ、鬼道や不動ならすぐ気づいただろうけど。
試合は始まり、ボールは不動が持つ。共に、鬼道と佐久間が上がるが、フィディオを含めた6人が不動達にディフェンスに付いた。鬼道と不動が顔を合わせる。
それを見兼ねて、フィディオとラファエレは鬼道を注意する。フィディオとラファエレは、一気に鬼道に詰め寄る。その隙に、フィディオとラファエレがいなくなったスペースに不動がボールを転がす。
その瞬間に、二人は一瞬だけ動きを止める。その隙に鬼道が二人を躱して、不動からのボールを受け取る。
「何ッ!?」
どれだけ人数がいようが、予想外の事態には対応が遅れるのが人間だ。相手がリトルギガントなら、空いたスペースはオルフェウスよりも広い。
そこに突破口がある。
3人は一気にゴールに向かって走り、連携技の体勢に入った。
「皇帝ペンギン……3号ォォッ!!!」
進化した皇帝ペンギン3号が放たれる。それに合わせて、豪炎寺が走っていく。
しかし、そうはさせまいと、オットリーノが自身の巨体を使って、皇帝ペンギン3号に挑む。だが皇帝ペンギン3号は、構わずオットリーノを吹き飛ばしてゴールに向かって飛んでいく。
「真!爆熱……スクリュゥゥゥーッ!!」
「コロッセオ…ガァード!改!!」
豪炎寺の爆熱スクリューに対して、ブラージは進化したコロッセオガードに挑む。だが、コロッセオの壁にヒビが入り始める。そして。
「ぐああァァッ!!」
そのまま豪炎寺のシュートはコロッセオガードを打ち砕いて、ゴールに突き刺した。
1-2。ついにオルフェウスから1点を返した。
やつらの攻略は分かった。だが、やつらを防ぐ方法は依然見当たらない。正直、この試合は普通に負ける。
点を取られたとはいえ、勢いはオルフェウスにある。最後には必ずフィディオに渡り、オーディンソードで決められる。
円堂も諦めずに、新技を繰り出してはいるが、完成の様子はまだ無さそうだ。
気づけば1-5。円堂は何度も新技を繰り出すが、何も変わらずにいる。そのことに対して、悔しそうな表情を浮かべている。
「これだけやっても完成しないのかよ…!なんで……どうしてなんだッ…!」
「…マモル。君はどんな絶望的なピンチだって、自分の力で乗り越えてきたんだろ。どんな必殺技だって必ず、身につけてきたんだろ」
今まで円堂が習得してきた必殺技は、ピンチの時にこそ完成させてきていた。あるいは、進化させてきた。努力の甲斐があったってのもあるんだろうが、あいつの諦めない心が技を生み出し、進化させてきた。
「その新しい必殺技のヒントだって、ただの掛け声から自分で見つけ出したものじゃないか。…君には出来る。君なら必ず出来る!」
試合は再び始まり、またフィディオにボールが渡った。
「行かせねぇッ!」
フィディオの動きは前より鋭くなっている。頭をフル回転し、視野を広げて身を動かし、フィディオの先々の行動を予測する。
「いい動きだねッ!だが、甘いッ!」
フィディオは即座にボールを後ろにして、ヒールリフトを繰り出した。
「しまっ…!」
宙に緩やかに浮かぶボールに反応出来ず、俺はフィディオに突破されてしまう。
「行くぞォッ!!」
フィディオは再び、オーディンソードの体勢に入った。
「真!オーディィン……ソォォードォッ!!」
フィディオもオーディンソードを進化させる。凄まじい威力を放つシュートが、円堂に向かって飛んでいく。
「うおおおおォォォォッ!!」
円堂は新技の構えに。すると、先程より衝撃が強くなり、少しだけだが新技の完成形が現れた。神々しい化身が、円堂と共にオーディンソードに挑む。
だが、まだ完成には至っておらず、オーディンソードはそのまま円堂ごとゴールに叩き込む。
円堂はボールを抱いたまま、その場で蹲る。
「マモル!大丈夫か!?」
みんなが蹲る円堂に駆け寄る。しかし、円堂はすぐさま立ち上がる。
「見えた……やっと見えたぞ!新しい必殺技の姿が!」
まだ完成ではない。だが、完成形は見えた。この調子でいけば、こいつはまた試合の中で完成させる。そんな予感がする。
試合はオルフェウスの大量得点差で幕を下ろした。
「あのフォーメーションのおかげで、決勝の戦い方が見えてきた。ありがとう」
「あぁ!」
「お前達なら必ず世界一になれる!頑張れよ!」
「よーし!この必殺技、必ず完成させてみせるぞ!!」
円堂がそう意気込むと、目金がちゃっかりと現れる。
「あれはゴッドハンドを超えた、ゴッドキャッチです!」
毎度毎度すかさず必殺技を名付ける目金くんは一体なんなんだろうか。半分以上の必殺技の名付け親が目金とか、なんか嫌だ。
「ゴッドキャッチか…!よーし、やるぞ!ゴッドキャッチだ!!」
……俺も、早いとこ必殺技を身につけないとな。