あの日、神様に会って転生した後から私の第二の人生はぐちゃぐちゃである。
新しく生まれ落ちたのは"魔界"悪魔やらが普通に生きる世界である。
それは私とて例外ではない。黒い羽に尻尾、立派な悪魔である。
……神様は私の不運を取り除けなかったと言った。
もしかしたらそれは今の両親のことを指しているのかもしれない。
「ミア、何しているの。ぼさっとしてないで動きなさい」
「はい、母様」
「それが終わったら早急に自分の部屋に行きなさい。そしてそこから出ないように、いいわね」
「わかっています」
私の家は貴族、というには高すぎるが、一般よりも少しだけ高い位の家系である。
この魔界には魔法が存在し、そして家系能力とやらが存在する。
私の家、ヒーラス家は『なおす』能力である。能力名は『再生』
直す、治す、壊れてしまったものを直したり、怪我を治したりすることができる。
だが私が使える能力は糸を出し、他人を操ることだ。
それを聞いたとき私の頭は真っ白になった。当然母、いや親族も私を気味悪がった。
唯一父だけが私を気味悪がらなかった。
だから父も親族に疎まれたが、父にはなんせ魔力が大量にあった。生まれつき多くの魔力がある体質だったのだ。私もそれを遺伝して子供でありながら親族の中で一二を争う魔力量である。
……そんな、そんな父が死んだ。
どうしてかはわからない。医者は大量の魔力に体が耐えられなくなったんだろうと言っていた。
私もそうなってしまうのかと思った時、頭に声が響いた。
神様の声だった。
――馬鹿だね、君は死なないよ。君の背後には誰がいるとお思いだい?神様だよ、神様……君は何も気にせず生きろ。――
との事だった。
だからと言って私へのあの蔑みの表情が取り消される訳では無い。
唯一私を守ってくれていた父が死んだのだ。
なら、周りはどうするだろうか。答えは簡単、私を排除する勢いで虐め倒すのだ。
本当に頭おかしいんじゃないか?何が名家ヒーラスだ、聞いて呆れる。
だから私は週に一度だけ家を飛び出すのだ。「どこかで勉強でもしてくる」と適当に嘘をついて。
バサッと羽を広げ広い空に飛び立つ。
前世でずっとしたかったことが今は当たり前のようにできる。
人が通らなさそうないい感じの静かな木陰が私の特等席である。
だが、今日はその特等席に誰かがいた。
「……誰?」
「今日は先約がいたか」
その人物はすぐにどこかに行こうとしたが、私はそれを慌てて引き止める。
「待って。お願い、私とお話してください」
「……何故だ?」
「家では誰かとまともに話したり出来ないから」
木陰に座っている悪魔は「ふーん、だからなんだよ」と言いたげな目をしていたがその場を去ろうとはしなかった。
きっと、優しいのだろう。
「あなたのお名前は?私はヒーラス・ミア。どうかミアと呼んでください」
「ナベリウス・カルエゴだ。カルエゴでいい」
「カルエゴさん!っふふ、カルエゴさんはここで何をしていたの?読書?」
「粛に」
そう言われ口をきゅっと閉じる。
久しぶりの普通の会話に浮かれてしまった。
「順番に答えてやるから静かにしろ」
「わ、わかりました」
カルエゴさんと会ったのはそれが初めて。
それからは私は週に一度の羽休めが木陰での読書やお昼寝ではなく、カルエゴさんとの会話に変わった。
親しくなってからゆうに一年は立っただろうか。
私は来年バビルスに通うんですと伝えたらカルエゴさんは小さく笑って自分はそこの教師だと言った。
「知らなかったか?名家ヒーラスなら俺の素性なんて簡単に調べあげられそうなものだがな」
「そんなことしたくないですから……」
「はあ、お前はそういうやつだよな」
カルエゴさんが頭を抱えてしまった。
「私カルエゴさんはさんが担当するクラスになったらいいなぁ」
「俺は公私混同などしないからな、例えお前でも評価は厳しくつけるぞ」
「私を誰だと思ってるんです?家では散々厄介者だと蔑まれていますが、名家ヒーラスの長女ですよ?」
「そりゃあ頼もしいことだな」
それに、カルエゴさんのお話のお陰でさらに知識が増えている。
そこらの奴より利口だぞ、私は。