「――そォら!」
ガツンッ! と強い衝撃が脳天を揺らした。
土と血の味を舐めながら、歯を食いしばる。
「あ、なんだよその眼はよぅ?」
ガスッ、……少女特有の甲高い声と共に、今度は脇腹につま先が食い込んだ。
衝撃を逃がすように転がると、背中がコンクリートの校舎の壁にぶつかった。
「……」
無言でその痛みに耐えていると、こちらに攻撃を加えた連中が近づいてくるのが足音で分かった。
彼女らはこちらを見下して、愉しそうに笑う。
「ひ、ひはっ……情けねぇなぁ、オイ」
「ねぇ、ゆーちゃん。コイツ反応なくてつまんないんだけど」
「そうだなぁ。へっ、今日のところはこれくらいにしといてやるよ。気分も晴れたし、カラオケでも行くか」
「うん。あ、これ捨てといてね」
最後に頭に何かをぶつけられ、そのままこちらを襲っていた少女たちは立ち去っていった。
あとに残されたのは、日陰の冷たい地面に寝そべった俺だけだった。
「……くそっ」
側頭部に蹴りを加えられたせいか、視界がぼんやりとする。
――だが、この程度のことなら慣れたものだ。
いつものように壁を支えにのそりと立ち上がる。
と、なにやら制服が濡れているようだ。
傍に落ちているジュースの空パックから察するに、中に残っていたものが飛び散ったのだろう。
「……帰る前に、洗わないとな」
そこにかかるであろう手間を想像して、ため息を一つ。
――世界はすっかり、俺のような男に厳しいものになってしまった。
数年前に発表されたパワードスーツ、
女性にしか扱えないその超常の兵器は、瞬く間に性別による優位性を作り出した。
女にあらずんば人にあらず。
この言葉を地で行く女性優先政策が乱立され、気づけばあれよあれよという間に男性から人権が奪われてしまった。
日陰者になってしまった俺たち男性は、灰色の現実に諦観することしか許されない。
「……面倒だな」
男性には、耐えることしか許されない。
道具のように扱われようと、獣のように蔑まれようと。
既存の兵器概念を破壊し尽した
勉強をしたところで意味はない。届かぬ将来に夢を見たところで、意味はない。
俺の真っ暗な人生は、この先およそ八十年。人生が終わるまで続くのだろう。
ふと、そんなことを考えながら空を見上げる。
「――遠い、なぁ」
遥か彼方、どこまでも続くはずの未来。
かつて人々は、その先に夢を見た。
だけど人は今、その先――成層圏から先へと飛び出すことが出来ない。
――ああ。
――今日も空は、鉛のように俺の両肩に圧し掛かる。
今の俺には、未来へ手を伸ばすことすら出来なかった。