「えっと、織斑先生。天宮君はいったい何をしようと……?」
「……少し待て」
手元の機器を操作して、織斑千冬は天宮スバルの駆るISのデータを全員に見えるように映し出す。
「やはり、そういうことか」
「どういうことなんだよ千冬ねぇ」
「織斑先生と呼べ、馬鹿者……見ろ、織斑」
彼女が指さしたのは、打鉄の
「ごめん、俺にはさっぱりだ」
「私にもです、先生。天宮の奴がどうしたのですか?」
生徒の二人、織斑一夏と篠ノ之箒は首を振る。
IS学園に入学して日の浅い彼らには、そこに浮かんだ文字列の意味を正確に読み取ることが出来なかった。
「……山田先生、教えてやれ」
「は、はい。織斑くん、篠ノ之さん。これらはですね、全部防御用の装備なんです」
「……はい?」
「……む?」
二人はその説明を聞いても、すぐには何が問題なのかが分からなかった。
だが、少し時間を置いてようやく意味するところを呑み込めたのか、一夏が自身の見解を述べる。
「つまり、天宮は自分から攻撃する手段を持たない……ってことですか?」
「そう言うことになるな。無論、盾を持って体当たりでもすれば十分脅威には値するが、遠隔攻撃特化のオルコットに対しては難しい立ち回りだろう。奴がそういった手合いであることくらいは知っていたようだが……」
「そうですね。彼が使っている盾は『
「へ、へえ。そうなのか……」
「なんだ織斑。お前たちは調べて……いなかったようだな」
「うぐっ」
結果として自分が戦うより先にセシリアの戦闘方法を見ることが出来ている以上、初見で戦うよりはまだなんとかなるだろう。
「なら良く見ておくことだな。オルコットの戦い方と、天宮がどう対抗するつもりなのかをな」
「……先生には分かるのですか、天宮が何を考えているのか」
「いくらなんでも武器を一つも持たずに戦いの場に出るような奴のことなど分かるか」
「試合を一度中止させますか?」
「馬鹿なことを言うな、山田先生。……アイツも分かっていてやっていることだ」
――それに、私たちがいくら忠告したところで天宮が戦い方を変えることはないだろう。
そんな言葉を、千冬は心の中で抱いた。
スバルは最初から、よくわからない生徒だったというのが彼女の感想だった。
性格としては素直なものの、一人でいることを好むものであると考えていた。
しかし彼女自身の弟へと注意やオルコットとのやり取りを見ていて千冬が気付いたのが――彼は一見して素直にこちらの指示を聞くものの、その瞳の裏には絶えず暗い炎が満ちているということだった。
確かに、現在の世界は男性に対して厳しいものだ。
それでもあの若さで、目に見てとれるほどの闇を抱えることになる者は早々いない。
加えて、その苦労と憎悪を抱えてなお平然としていられる人間など、常人には理解しがたい化け物だ。
――その漆黒の情熱が燃える先に、天宮はなにを見ているのだろうか。
「……私たちでは、アイツがなにをしたいのか分からない。それに、自分から話すこともないだろう」
「千冬ねぇ?」
ガラスの向こう側でオルコットを相手にひたすら耐え忍ぼうとする天宮を、千冬はじっと見つめる。
「だからこそ私たちは、アイツの在り方を見て想像するしかない。織斑、それに篠ノ之も良く見ておけ。天宮スバルという人間と、仲良くしたいのならな」
そして自分たちも、教師として生徒を教え導くために。
天宮スバルという生徒のことをしっかりと分析しなければならないと、千冬と山田真耶の二人も意識を目の前の戦いに集中させた。