私がVになった一週間のお話   作:シャケ@シャム猫亭

3 / 7
インフルエンザだと面会NGの可能性が高いとのご指摘があったため、桃の入院理由を「インフルエンザ」から「風邪の重症化」に変えて誤魔化しました。(良い理由思い付かなかったです。思い付いた方はそっとご教授下さい)
言われてみればその通りなのですが、気づかないものですね。
お詫びして訂正申し上げます。


因みに文章雰囲気類似作品には、まだ拙作が出てきません。
経過観察とします。





水曜日:気ままに配信した日

「ねえ柚華(ゆうか)、このままVTuberにならない?」

「ならない」

「即答……なんでよぅ、ちょっとくらい考えてくれたってイイじゃん」

 

 ベッドで身を起こした桃華が、口を尖らせて抗議する。

 桃華はVを始めてから、こういう仕草が大げさになった。モーションキャプチャーやフェイストラッキングでアバターにしっかり反映されるようにと、大げさしていたものがクセになったらしい。

 今はいいけど、歳取ってもこれだと痛いかもしれない。今は、イイけど。

 

「配信って時間取られるじゃない。私は私でやりたいことあるの」

「やりたいことって?」

「そうねぇ……例えば……」

 

 例えば………なんだろう?

 漫画読んだり、アニメ見たり、ドラマ見たり?

 やりたいけど……そこまでじゃない。

 勉強? ショッピング? スポーツ?

 違う。そういうことじゃない。

 私のやりたいことって、なんだろう?

 

「……ねえ桃華。桃華はVTuber楽しい?」

「楽しいよ」

「VTuberがやりたいこと?」

「うん。桃の配信を見て『明日もがんばろう』って言ってもらえるのが、すごく嬉しい!」

「それは、VTuberじゃなきゃダメなの?」

「んー、どうなんだろう?」

 

 例えば芸能人。

 例えば歌手。

 同じようなことをやってるものは他にもある。

 

「やってやれないことはないのかもしれないけど……桃はVTuberがいい」

「やりたいことだから?」

「うん。それに桃自身、VTuberが好きだから」

 

 好きなもので好きなことやって、それで生きていけてるのは。

 一体どれだけいるのだろうか。

 

「……桃華、アンタすごいわ」

「そ、そう? えへへ……」

 

 桃華は照れくさそうに両手を頬に当てる。

 そんな桃華を、私は何だか遠く感じた。

 

「話がずれちゃった。それで柚華のやりたいことって何なの?」

「……バイト、とか?」

「それならここに良いバイトがあるよ。一日2時間配信するだけで月収は父さん以上の!」

「それを父さんに言うんじゃないわよ!? アンタが特別なんだからね!!」

 

 ドサッ

 

 そんな音がして振り向いたら、病室の入り口で父さんが膝から崩れ落ちていた。

 

「は……ははっ……俺の三十年って、何だったんだろうな……」

「ほらぁ! 桃華、フォローしなさい!!」

「あああ、ええと……お金より一緒にいる時間の方が大事だよ!」

「ぐふっ!」

「単身赴任中の父さんにトドメ刺すんじゃないわよ!」

 

 父さんはふらふらと立ち上がると、ちょっと外の空気を吸ってくると言って病室から出て行ってしまった。

 手で目元を押さえながら。

 

「……後でフォローしておくわ」

「……お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁーぃ↓、今日も始まるぴょーん↓」

 

コメント:こんばんぴょーん!

コメント:すげえな、ここまでやる気のないぴょーんは初めてだ

コメント:今日も柚子ちゃんか

 

「桃が良いなら一週間後に来いって、何度も言ってるでしょ」

 

コメント:そういう人たちはもう大体来てないよ

コメント:じゃあ俺たちは何なんだ?

コメント:桃ちゃんの暴露期待

コメント:桃柚てぇてぇ期待

コメント:柚子ちゃんV化期待

 

「やらないわよ、あと4回でおしまい。あ、定期報告として言っておくけど、桃は順調に回復してます。以上、解散」

 

コメント:散!

コメント:シュパッ!

コメント:ラーメンの具かよ

コメント:とかいいつつ、終わらないんでしょ?

 

「……まあ、桃との約束だし。今日も2時間、枠は取ってあるわよ」

 

コメント:わこつ

コメント:約束だからってのが、てぇてぇ味を感じる

コメント:で、今日は何をやるんですか?

 

「お絵かき配信します」

 

コメント:おー!

コメント:絵が描けるの?

コメント:桃画伯に比べたら、どんな絵でも月とスッポンじゃない?

 

「私、美術の成績は5だから」

 

コメント:やるやん

コメント:ちな、桃ちゃんは3

コメント:作品が致命的なのを筆記テストで補った結果なんだよなぁ

コメント:何を描くんです?

 

「両親を描きます」

 

コメント:桃ちゃんって、桃から生まれたとかいう設定なかったっけ?

コメント:どんぶらこどんぶらこってか?

コメント:あるけど、そのへん割と有名無実化してる

コメント:クリスタか

コメント:ツールに迷いがないあたり、使い慣れてる?

 

「元々、桃が絵の練習用に買ってきたらしいんだけど、全然使わなくてね。もったいないから私が使ってた」

 

コメント:柚子ちゃん美術部とか漫研だったり?

 

「違うけど?」

 

コメント:違うんかい

コメント:じゃあクリスタ何に使ってるん?

コメント:そりゃあイラスト描くためでしょ

コメント:いや、そうじゃなくて

 

「完全に暇つぶし用。何かその時に思いついたもの適当に描いてる………見る?」

 

コメント:見たいみたい

コメント:一旦保存して……お、でたでた

コメント:風景画かな、山とかあるし。

コメント:次は、水玉いっぱいのパステル絵だな

コメント:次は……なんだこれ? 色んなペンキをぶちまけたみたいなよくわからん

 

「私もわかんない、次」

 

コメント:朱いな

コメント:真っ赤だな

コメント:紅しかない

 

「次、次、次………これで終わりか。意外と枚数あったな」

 

コメント:なんかよくわかんないものばっかだった。

コメント:山の風景画と猫の絵と、あとナメクジの絵はわかった。

コメント:ナメクジが妙にリアルだったのが気になる

 

「家の壁()ってたの捕まえてきたから」

 

コメント:キモくて触れないワイ

コメント:俺も。カタツムリはいけるんだけどなぁ

コメント:マイマイでは?

コメント:デンデンムシやろ。

コメント:ち……チンナン……

コメント:は?

コメント:は?

コメント:は?

コメント:お前ら沖縄に厳しすぎぃ!

 

「へー、沖縄はそう言うんだ。因みに私はカタツムリ派」

 

コメント:カタツムリ派、大・勝・利!

コメント:ナンデや、maimaiの方が可愛いやろ!

コメント:お前が音ゲーマーだと言うことはわかった。

コメント:なんて(あいだ)に下絵は終わって色塗り始めたぞ

コメント:普通に上手いじゃん

 

「そう? 素人に毛が生えたもんじゃない?」

 

コメント:もうちょい頑張れば漫研で一位取れるレベル

コメント:間違いなく桃画伯は超えてる。

コメント:つまり桃ちゃんは毛が生えてない?

コメント:天才かよ

コメント:通報した

 

「流石にセクハラが過ぎるので、今の奴はこの配信中ミュートの刑ね」

 

コメント:お(か)しい人を亡くした……

コメント:みんな覚えたな、柚子ちゃんはあのラインでダメだ。

 

「というか、ギリギリを攻めようとしないでよ……桃もあんまり好きじゃないって愚痴ってたことあるわよ」

 

コメント:ごめんさない

コメント:反省してます

コメント:桃ちゃん、わらって許してたけど?

 

「愛想笑いって分からないなら、貴方は一生独身ね」

 

コメント:ぐふっ!

コメント:かはっ!!

コメント:うっ!

コメント:やめてくれ、それは俺に刺さる……

コメント:死屍累々で草……草ぁ……

コメント:お前も死んでるじゃねえか

 

「……何かもうめんどくさくなってきた。大分時間も使ったし、これで終わりにするわ」

 

コメント:わりと上手い

コメント:両親描くっていうから似顔絵かと思ったらイラストだった

コメント:ほー、父は少し太めなのか

コメント:母の身長高ない?

 

「高いわよ。175センチだもの」

 

コメント:たっか

コメント:母親、超モデル体型やん

コメント:イラスト通りなら、パッパは160くらい?

コメント:ほんわかした父に、キリっとした母か

コメント:何か全体的にマル先生っぽいタッチだな。

 

「誰よ、それ」

 

コメント:忘れられてて草

コメント:ママ

コメント:桃ちゃんのママ

コメント:生みの親を忘れる桃ちゃん。いや、柚子ちゃん。

 

「あ。あ~、『李 桃』の元絵描いた人か」

 

コメント:そうだよ

コメント:そうです

マル ヒトミ:そうなんです

コメント:そうなのよ

コメント:何かいる!?

コメント:まさかの本人降臨!?

マル ヒトミ:いえい(*^^)v

コメント:ノリよくて草ぁ!

 

「は? え、何、どうすればいいの?」

 

コメント:困惑ww

コメント:柚子 は こんらん している!

マル ヒトミ:絵、上手ですね!

 

「プロに言われても……何て返したらいいのよ?」

 

コメント:わらえば、良いと思うよ?

コメント:素直に喜んでおけば?

コメント:まあ文字だけだから、嫌味にも聞こえてしまうのは仕方がない。

コメント:でもマル先生、人が良いから純粋に褒めてそう

 

「あ~……ありがとう、ございます?」

 

マル ヒトミ:はい! 私も良いインスピレーションもらいました!

マル ヒトミ:というわけで、ツイッターのDMにイラスト送ったので見てください!

 

「DM? あ、何か来て───」

 

コメント:何だなんだ?

コメント:おーい、柚子ちゃーん

コメント:困惑の表情で固まってるwww

 

「マルさん……これは、どういうことですか?」

 

マル ヒトミ:頑張りました<(`^´)>エッヘン

マル ヒトミ:さあさあ、どどーんと皆に見せちゃいましょー!

コメント:なんだなんだぁ?

コメント:マジで何なんだ?

 

「………はい」

 

コメント:渋々なの笑うww

コメント:お!?

コメント:これは!!

 

「『李 柚子』の立ち絵……」

 

コメント:キタ━(゚∀゚)━!

コメント:かわいい!

コメント:てぇてぇ

コメント:流石神絵氏!

マル ヒトミ:配信で言ってた通り髪は短めで、桃ちゃんよりスタイリッシュな衣装と、白ウサギの対になるよう黒ウサギにしました!

コメント:仕事早すぎぃ!

コメント:これはV化待ったなし!

 

「あの、つかぬ事をお聞きしますが……もしかしてモデリングも?」

 

マル ヒトミ:進めてます(*^^)v

コメント:マジ!?

コメント:外堀埋められてて草!

 

「やらないって言ってるでしょ!?」

 

コメント:嫌よ嫌よも好きのうち

コメント:俺は見たい

コメント:あそれブーイ、ブーイ!

コメント:VーVー!!

コメント:ぶーい、ぶーい!

 

「~~~っ!! 今日はおしまい!! じゃんけんぽん! 終わりっ!」

 

コメント:逃げた!

マル ヒトミ:喜んで貰えると思ったんだけどなぁ(´・ω・`)

コメント:早すぎて後出しジャンケンになっちまった……

コメント:雑な終わりwww

 

 

 

 

 

 

 

 

 叩き付けるように配信終了のボタンを押して、三日目のボランティアを終了した。

 まさかあんな不意打ちが来るとは思わなかった。

 桃の差金だろうか? ……ありえる。

 だからお見舞いの時にあんな事聞いてきたのだろう。

 

「私がVTuberとか……嫌だって言ってるのに」

 

 今回だって前より視聴者が減った。いや、それでも多いのだけど。

 

「明日、桃華に言って止めさせなきゃ」

 

 桃華もマル先生も、多分運営も。どうして私をVTuberにしようとするんだろう。

 私は、嫌なのに。

 

 

 

 




みんな、今日も来てくれてありがとう!
……え? 勝ったのに幸運が訪れなかった?
それは元々あった不運と打ち消しあった結果だひょん。

それじゃあ最後に、明日の占いじゃんけんだぴょん!
勝った人にはいつも通り、桃から幸運を送っちゃうぞ♪

いくよー、じゃん、けん、ぴょん!! 
(アンケート最多の手。同数の場合は強い方)

バイバーイ!

勝ったら幸運、あげちゃうぴょん♪

  • イシツブテ(グー)
  • ビクトリーム様(チョキ)
  • 円堂守(パー)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。