Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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ラブトマンが書きたくて仕方がないから書いた。今は後悔してない。

ストーリーはサンシャイン基準ですが、省くシーンもあります。それにこっちは更新が遅くなるかもしれなれません。


STAGE1 取り戻せ光
第1話 オーブの光


「「はあ、はあ、はあ……!」」

 

 

 

 

 

 

息遣い、そしてアスファルトを蹴る音が2つ。しかし、そんな小さな音はすぐにかき消されてしまう。鳴り響くサイレンや車、爆発、そして人々の悲鳴によって。

 

(ここを嗅ぎつけられた……?でも何で……!?)

 

少年は走りながらも消えない疑問と格闘していた。しかし、手を引いた少女が転んだことでその疑問はプツリと消えてしまう。

 

「大丈夫?さあ、行くよ!!」

 

少女を起こしてケガの確認をするが目立った外傷はない。それを確認した少年は再び走り出した。彼らは只走っているわけではない。

 

 

 

逃げているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――顔の中央部と胸に2つの光が怪しく輝く、角を持った怪物がこちらに迫ってきているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐ近くで聞こえる爆発音と、地面を揺らす足音。

 

 

そして昼間まで美しかった景色も、今は全てオレンジと黒に塗り潰されてしまった。いくつもの建物が崩壊し、炎があふれ出している。地獄の具現化……そう言ってもいいのかもしれない。

 

(これじゃあ、まるで……)

 

すると、怪物の火球がすぐ後ろで爆発した。その衝撃に飛ばされる2人。ここまで繁栄を築いてきた彼らも、あの巨大な怪物には無力だったのだ。戦闘機もなす術なく簡単に落とされていく。

 

「はあ……はあ……この……!!」

 

少年は少女を庇うよにうして抱き込む。自分の無力さをここでも悔いる。

 

 

 

 

すると、空から光を放った巨人が舞い降りたのだ。巨人は少年を護るかのように立ち上がり、後ろを確認する。

 

そして少年らの安全を確認すると前方の怪物へと走り出した。2体がぶつかり合い、地面が揺れ、空気が揺れた。その最中に少年が耳にしたのは、一定間隔で鳴り続ける音。しかしそれが決して良いものでないことは、こちらにも明らかだった。

 

「な、なんだ……」

 

こちらの体力も限界だ。その証拠に声がうまく出せないし、目の前がクラクラする。しかし、少年が抱えている少女はまだ生きている。彼女だけでも助けなければ、自分がここまで来た意味がない。

 

「が、がん……ばれ……」

 

少女に声を発し、再び立ち上がるでけでも息が上がる。おまけに巨人と怪物のぶつかり合いのせいで上手く歩けない。それでも……と少年は歩く。もう誰も失いたくないと言ったのはいつだっただろうか。それを夢物語だ理想だと言われたのは……。

 

直後、巨人と対決する怪物は顔の付近にエネルギーを集中させ火の玉を放った。それが通っていくたびに周りの建物が飴細工のように溶けていく。巨人は右手に持った巨大な剣でその攻撃を防ぐが、その防いだことによって起きた爆発が彼らを襲った。

 

「くそっ……抜けない……」

 

爆風が収まり、塵が舞う。先ほどの爆発のせいで建設物が崩れ、少年は倒れてきた鉄骨の一部に足を挟まれたのだ。幸い、少女の方は無事であり少年の前方で伏せているだけであった。すると、彼女は起き上がり少年を助けようとする。

 

しかし

 

「い、行け……」

 

彼は逃げるようにと喉を震わせた。自分を助ける時間があるのなら、その時間を使って逃げた方が助かる確率も高くなる。

 

「で、でも……」

 

「はやくっ!!」

 

彼の剣幕に少女は言われた通り走り出した。目の前の小さい背中が、より小さくなっていく。それを見て笑う少年。いつか、勇気と無謀は違うと誰かに言われたことをまた思い出した。

 

「そうだなぁ……お前の言う通りかもな……ははっ」

 

彼の目がゆっくりと閉じられると同時に、巨人は決着をつけるべく空に大きく円を描く。それが何重にも重なり、束となり、剣へと集約する。巨人は光り輝く剣を怪物に向けると、虹色の熱線が一直線に怪物へと発射された。膨大な熱量が怪物に直撃。撃ち終わると一瞬の閃光……。そして次の瞬間、はじけるように大爆発と轟音がこの場を支配した。

 

 

 

 

 

怪物の姿がないことを確認した巨人は剣にもたれかかるようにして膝をつく。数少ない活動エネルギーが底を尽きようとしているのだ。光となり、この星で活動する姿に変わろうとした瞬間……巨人の目に入ったのは意識を失った少年の姿だった。彼を見た巨人は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「うわああっ!?」

 

天井から大きな物音が朝の室内に響いた。それは下の一室にいる明るいブラウン系の短い髪を持った高海家の次女、高海美渡にも聞こえていた。

 

「なに?」

 

「多分千歌ちゃんだと思うけど……」

 

それに答えるのは前髪が控えめな黒髪ロングでおっとりした雰囲気の長女である高海志満だ。

 

「まだやってんの。お客さんに迷惑だよ」

 

「言ったんだけどね」

 

彼女の口から”お客さん”と言う言葉が出てくるのは、家が十千万という旅館を経営しているからだ。

 

「美渡さん、何かあったんですか?」

 

そう言って部屋に入ってくる16歳くらいの男子。

 

「カズ、ちょっくら上のバカ千歌に言ってやってよ。こんな田舎じゃ無理だって」

 

カズ……と呼ばれた男は何かを察し、苦笑しながらわかりましたとだけ伝えて二階へとのぼっていく。

 

 

 

「大丈夫?」

 

「へーき、へーきもう一度。どう?」

 

おもいっきり尻もちをついたオレンジ髪の子が高海千歌。対してベッドに座って彼女のポーズとμ’sとを比較しているのは灰色で癖毛の子が渡辺曜である。

 

「おい、おい千歌ー?」

 

すると外から先ほどの男子の声が聞こえた。

 

「カズくんどうしたの?」

 

「どうしたって……下まで聞こえてたぞ?志満さんや美渡さんに迷惑かけんなよ」

 

カズため息を吐きながらも、千歌に忠告した。

 

「カズくんおはヨーソロー!」

 

「曜もおはよう。で……」

 

曜にはにこやかに返す。そして改めて注意をしようとする前に、千歌が先を越していってしまう。

 

「カズくん見て、私部活立ち上げるの!」

 

と白いパネルを見せてきて笑う千歌。部活とはスクールアイドル部のことだろう。なんでも、春休み中に東京の秋葉原に行ってスクールアイドル『μ's』とやらを見て引き込まれたらしい。その時から彼女はスクールアイドルのとりこになったようだ。

 

「部員は?」

 

「今のトコだれも。曜ちゃんが水泳部じゃなかったら誘ってたのになぁ……」

 

カズの問いに千歌は落ち込み調子で言った。すると曜はかねてからの疑問を千歌へと投げる。

 

「でも、今までどんな部活にも興味ないって言ってたのに、どうしてスクールアイドルを?」

 

しかし、彼女は笑うだけで特に何かを言うことはなかった。すると千歌と曜は重要なことを思い出し、壁に掛けてある時計に目を向けた。時刻は7時45分を少し回ったところだ。つまり、もうすぐバスが来る。カズはすでにいない。先に行ったのだ。

 

「「もうこんなじかーーん!?」」

 

2人は慌てながらも玄関へと急ぐ。表玄関は使うなと言われるが謝罪してその場は切り抜けた。外に出るとちょうどバスが目の前を通り過ぎる。

 

「ちょっと待って!?」

 

「の、乗りま~す!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして新学期、そして彼と彼女たちの物語は慌ただしく始まっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、間に合った~ってなんで言ってくれないのさ!」

 

「なんか話しづらかった……から?」

 

「嘘っ!」

 

「まあ間に合ったわけだし、カズくんも悪気があったわけじゃ……いやあるか」

 

「おい!」

 

と、乗客の少ないバスの後ろの席を確保する3人。こうやってからかい合うのも、もう3年くらい経つのだろうか。そんなことをボーっと考えるカズの後ろで千歌はチラシを取り出した。その内容は勿論スクールアイドル部の勧誘へのものだ。

 

「そんなものまで作ってたんだ」

 

千歌の楽しみという感情の反面、曜は何かを危惧している。しかし

 

「よっしゃ、今日は千歌ちゃんのために一肌脱ぎますか!」

 

と言って千歌の勧誘に協力するようだ。

 

「頑張れよ~」

 

変わってカズは協力する気は微塵もない様子。

 

「え~、カズくんも手伝ってよ~!」

 

「カズくんもお願い!どうせ、教室だとやることないでしょ?」

 

「な、曜お前な……わかったよ。チラシ配りだけな」

 

「やったー!」

 

痛い事実を突かれたため、了承する。そして手伝いの初仕事として

 

「あとスクールアイドル部、字間違ってんぞ」

 

とだけ伝える。後ろから千歌の「ええ!?」と言う声と、曜の笑い声が聞こえるが、カズはそんなことお構いなしに窓の外から見える淡島や富士山、そしてきれいな海を眺めた。

 

 

 

俺、暁一眞(あかつきかずま)には記憶がない。今から3年前に病院で目覚めた時にはもう、何も覚えてはいなかった。この暁一眞と言う名前は、その時着ていた服に付けてあったネームプレートからだ。それからもいろいろあって、千歌の家に拾われる形になったのだ。

 

 

(にしても……3年もあれば傷跡なんか残らないものなんだな)

 

 

流れていく景色の中、俺はそんなことをふと考えた。

 

俺が記憶を失ったと思われる3年前。人類は未知の脅威と対峙した。全人類の技術でも倒すことのできない脅威……それは怪獣と呼ばれた。多くの被害をだした怪獣はその後現れることはなかったが、この出来事を機に防衛隊の設立も検討された……とかなんとか。

 

 

3年前に現れた怪獣の名称は、太平風土記に書かれていたものと特徴が一致することから”マガゼットン”と呼ばれた。そう言われれば太平風土記はその後の話を聞かないが、一体どこに行ったのだろうか。

 

これも忘れてはいけないが、時を同じくして怪獣と共に現れた光の巨人。それを超人的な力で倒したことからウルトラマンと呼称されている。しかし彼も3年前を最後に姿を現していない。まあ、現さない方が平和でいいのだが。

 

何はともあれ、記憶を失った3年前とその事件には何らかの関係はあるとみているが、俺の記憶が戻るそぶりは見えないし、俺の両親や知り合いも見つからないんだ。それに……

 

 

 

「……くん、……ズくん」

 

「カズくん? 学校、もう着くよ?」

 

「あ、ああ悪い」

 

そんなこんなで浦の星学院近くのバス停に到着する。ここは以前女子高であったが、生徒数の減少で共学となったのだ。バスを降りると、あたたかな太陽の光に身を照らされ、潮の匂いが鼻孔をくすぐる。そして咲き誇る桜の存在が、新学期の始まりであることを意識させてくれた。

 

 

 

桜咲き誇る中始まった部活への勧誘はどこも熱心に行っていた。1人でも多くの人数を獲得したいがために、どこの部活も勧誘に熱が入っているのだ。それはスクールアイドル部(仮)の千歌、そして曜も同じだ。一眞だって笑顔でチラシを配ろうとしている。しかし、熱心な姿勢と新入生の興味は別であることから、誰も見てくれないし、チラシももらってくれない。

 

その後も……

 

「でもマルは……」

 

栗色の長髪に黄色いカーディガンを着た子にスカウトしたり……

 

「ピギャアアァァァァァァァァァァァッ!!!!???」

 

彼女の後ろにいた、興味ありげな赤い髪をツインテールにした子にもスカウトするが、彼女はなんと究極の人見知りらかったり……

 

「この体はあくまで仮の姿……」

 

さらにさらに自身を堕天使ヨハネと名乗る人物も出てきて……

 

今年は随分と個性的な生徒が入学してきて楽しそうだと感じる一眞。もちろん、2年生の2人も個性的だが。

 

そしてしまいには生徒会長黒澤ダイヤと千歌が生徒会室でぶつかり合う始末……。

 

「私が生徒会長である限り、スクールアイドル活動は認めないからです!!」

 

ダイヤはその黒い長髪を風に吹かれながら宣言する。なんとこれは……新学期早々疲れる始まり方だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

放課後、一眞たちは連絡船に乗って淡島へと向かう。淡島に住んでいる友人に贈り物を届けるためだ。連絡船の中では、先ほどのダイヤの言葉に元気をなくしている千歌が不思議そうにあることを呟いたのだった。

 

「でもどうしてスクールアイドルはダメ……なんて言うんだろう」

 

「あれはどう見ても「……嫌い、みたい」

 

一眞の推測よりも曜の事実が先を越して放たれた。以前クラスの人物が創設したいと言った時もダイヤは断ったらしい。

 

「でもほんと、なんでダメなんだろうな……」

 

一眞は空を見上げて言った。しかし考えても彼女の真意は見えないままである。

 

そうこうしているうちに淡島へ着くと、一行はダイビングショップに向かった。

 

「遅かったね。今日は入学式だけでしょ?あ、今日はカズも来たんだ。珍しいね」

 

青いポニーテールを揺らした子は振り向きながら言う。

 

「それがいろいろあって……」

 

「お久しぶりです。果南さん。ダイビングショップ、お疲れ様です」

 

曜や一眞はあいさつする。

 

「カズ固いよ。敬語はナシって言ったじゃん」

 

「いや、やっぱそんなわけにはいかないですよ。先輩ですし……」

 

「ハグ、するよ?」

 

「うっ!?」

 

一眞は基本年上にたいしては敬語で接している。しかし、果南はどうやらそれが嫌なようでタメで話せと要求してくる。断るとハグされるのだが、千歌や曜にニヤニヤされる(以前された)のは嫌なので一眞は敬語を辞めるしかない。

 

「わ、わかったよ。これでいいだろ? で本題は、千歌」

 

「はい、回覧板とお母さんから」

 

ここに来たのは回覧板と大量のミカンを果南に届けに来たのだ。

 

「新学期から学校これそう?」

 

曜は果南に問う。なんでも彼女の家はダイビングショップを経営しているわけなのだが、果南の父親がケガをしてしまい、彼女が手伝わなければいけないという状況だ。そのため今は学校を休学している。

 

「果南ちゃんも誘いたかったな~」

 

千歌が残念そうに言うが、果南は何の話か分からず聞き返す。

 

「千歌はスクールアイドルを始めるから、その部員にってこと」

 

一眞の言葉に果南の手が一瞬止まる。が、何事もなかったかのように彼女はスクールアイドルへの加入は拒むのだった。

 

すると、遠くからプロペラ音と小さな点が段々と近づいてくる。そして一眞たちの頭上を何事もなく通り過ぎていく。

 

「こんなところに何の用だ……?」

 

「なんだろうね……」

 

「小原家でしょ」

 

と果南は言った。

 

 

 

 

その後一眞は千歌よりもはやく十千万へと戻り、自分の部屋であるものを見つめていた。

 

目覚めた時、記憶のない俺が唯一持っていたものだ。それは謎の銀の全体、中央部に青い円の形がデザインされたホルダーらしきものだ。しかも中身にはカードが入っていた。そのうちの何枚かは白紙同然に何も描かれてはいない。しかし、とある2枚だけは描かれていた。

 

赤と銀色の体を持った者と、紫や赤、そして金のプロテクターのようなものをつけた者がまるで何かを包むようなポーズをしているというデザインだ。その2つに共通しているのは瞼や瞳が見られないが、まばゆい光を輝かせている目と胸で光る青い光である。何やら文字が書かれているが明らかに地球の文字ではない。

 

これが俺の記憶に関係があるのだろうが、何をもってこれを持ち歩いていたのだろう。

 

「なんなんだこれは……」

 

すると、どこからともなく巨大な地響きと共に何かが空から降ってきた。

 

「な、なんだ……!?」

 

一眞は窓から顔を出して外を見る。するとそこには、まるで虫のような触覚と鋭い角をはやし、腕には鋭利なかぎ爪をもった巨大な生物。その雰囲気はどこか3年前と似ている。

 

「……怪獣、だよな」

 

一眞は急いで外へと飛び出した。そして砂浜まで駆け出すと、そこには制服のままずぶ濡れになった千歌とバスタオルを被ったピンク髪の少女がいた。彼女らも突然現れた怪獣に恐怖と困惑を抱いている。

 

「おおい、千歌!」

 

「カズくん!?」

 

「ケガはないみたいだな……と、そこの人も」

 

「あ、はい。私も大丈夫です」

 

2人が無事であることを確認した一眞は千歌にその少女を連れて志満さんたちにも伝えて逃げろと言い、一目散に怪獣がいる方向へと駆け出して行った。

 

「ちょっと、カズくんは!?」

 

「俺は逃げ遅れた人がいないか見てくる!」

 

その後の千歌の言葉は聞かずに、走り出していってしまった。

 

 

 

 

一方、別の場所からは蹂躙する怪獣を見ながら呟く少女の姿があった。

 

「いるんでしょ? ウルトラマン。早く出てきなさい」

 

彼女の手には、禍々しい色で輝くリングの下部に持ち手が付けられた謎のアイテムが握られていた。

 

 

 

 

一眞は逃げ遅れた人を確認するため……と言ったが半分は嘘である。その半分というのは、無意識にあの怪獣のもとに行って止めなければという自分でもわからない感情に動かされていることだ。その近くまで行くと怪獣の行動見た一眞は足を止める。

 

「なんだ、あの怪獣……尻尾を地面に刺してんのか……?」

 

一眞は、怪獣の取っている行動に疑念を抱いていた。破壊するわけでもなく、地面に尻尾を刺しているだけだ。一体何の目的があって行動しているのだろうか。すると、尻尾を地面から抜いた怪獣は口から火球を吐いて街の方に放った。このままでは、多くの被害が出てしまう。

 

「行動が謎なんだよぉぉぉ!!」

 

怪獣に愚痴りつつ、再度駆けだした。

 

「おお、おばあちゃん、大丈夫ですか?」

 

たくさんの逃げていく人々。その中で転びそうなおばあさん助け、近くの若い人に預ける一眞。その時、ここまで持ち歩いていたホルダーを腰の右側へとつける。

 

「これ付けられんのかよ……」

 

さらに走っていくと怪獣は、こちらに顔を向けた。

 

「あ、やば……」

 

その怪獣はどんどん近づいてくる。そして終いにはまたもや火球を吐いてくるのだった。爆発し、建物の一部が崩壊する。一眞は下敷きになることこそなかったものの、崩壊したコンクリートなどに囲まれ出られなくなってしまった。

 

「ぐ……んんんん……ダメか……どうすれば……」

 

あの怪獣を止めたいのに、自分には何にも力がないことを痛感する。そう考えるだけで、拳に自然と力が入る。すると、左手に違和感を感じ、視線を移すとそこには青いリングの左右に羽のようなパーツ、そして下部には持ち手がついたアイテムが握られていた。

 

「え、なんだこれ……」

 

自分は以前にもこれを握ったことがあるように手に馴染むそれを見つめていると、ホルダーが光り始めた。不思議に思ってあの2枚のカードを取り出す。するとその2枚が光り輝き、宙に浮いた。

 

「……なんだ」

 

すると2枚は一眞の周りをグルグルと周りはじめ、リングの中心へと通っていく。

 

 

《ウルトラマン》

 

 

「ええ!?」

 

なぞの声が響き驚愕する一眞。しかしそれは止まることなく次のカードも通っていく。

 

 

《ウルトラマンティガ》

 

 

青、黄色の順に発光し、半分が青、半分は黄色へとリングが発光する。そして一眞の左腕を無理やり動かすようにして天高くへと掲げた。すると左右の翼のようなパーツが開き、青い輪っか状の光が一眞の胸へと入り込んだ。一瞬、ノイズがかった光景が頭の中へ広がる。数多の怪獣を前にして戦う戦士の後ろ姿。そして左右に立つカードに描かれていたのと似たような戦士たちの姿。

 

自分の体の変化を覚えた一眞。ここで死ぬわけにもいかない。そして千歌や曜たちが暮らすこの街をこれ以上破壊されないため、彼は覚悟を決めた。

 

「うぅ……うおおおおおおおお!!!」

 

彼は光に包まれ巨大化していくのだった。

 

 

《ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン》

 

 

怪獣の目の前に光の柱が突き出てくる。そのまばゆい光は怪獣はおろか、逃げ惑う人々にさえもまぶしいものであった。光がやむとそこには、赤と銀の身体に紫のラインがはしり、胸に金のプロテクターを付けた戦士が立っていたのだ。その姿は3年前に怪獣と共に現れた光の巨人、ウルトラマンと酷似している。

 

現れたその巨人の姿に、非難していた人々や千歌たちも見上げていた。

 

「こ、これが俺……」

 

自身が変わったことに驚きを隠せない一眞は、腕や脚、目の前に映るものを見ている。背が伸びたとか冗談が言えないくらい大きくなっているし、何より地面が柔らかいのだ。まるで砂の上を歩いているかのように。

 

「■■■■■ッーーー!!」

 

すると怪獣は、使い古されたキャスターのような、ドリルで削り取られるような不快な咆哮を轟かせ、こちらに向かってきたのだった。

 




1話はここまでで。最初の怪獣はマガバッサーだろとも思いましたが、素人が大災害を引き起こせる奴相手にしたらお陀仏するな……と思いあの怪獣になりました。

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