Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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今回は善子回の中編的な立ち位置です。
Dazzling White Town買いに行きたい。早く聴きたいよ~。


第12話 堕天使勧誘

「どうして止めてくれなかったのよーー!!」

 

部室内でこれでもかという程の声量で善子は叫んでいた。恥ずかしさと後悔のあまり、机の下で丸まっている。

 

 

花丸が言うには、昨日まで学校に来ていなかった(正確には自己紹介でやらかして来れなかった)善子。彼女の昔の癖……という中二病がうっかり出てしまわないかを花丸に監視してほしいという頼み付きで学校に来た。

 

しかし、事がそう上手くいかないのが現実。趣味の占いを見せて欲しいと同級生の頼みを聞いた彼女は、なんと黒い魔法陣が描かれたシートに、黒いローブを着始め、しまいには蝋燭を取り出したのだそうだ。

 

 

「えっと、大変だな……」

 

自分にはまったくわからない悩みを抱えている善子に一眞は困りながらも声をかけたのだった。

 

彼女は中学時代、自分を堕天使だと思い込んでいたらしく、屋上に立って「堕天使ましょう?」と言っていたことがあるとルビィは説明してくれた。

 

だが善子自身もわかっている。本当はそんな天使や悪魔などがいないということも。

 

「だったらなんで”あんなもの(占いセット)”持ってきたの?」

 

「それは、まあ、ヨハネのアイデンティティみたいなもので……あれがなかったら私が私でいられないって言うか……はあっ!?」

 

梨子の問いかけに善子は無意識にポーズをとって話してしまう。やめたいと思っているが、長年身体に刻み込んだ言動はそう簡単には消えてくれない……。

 

なかなか複雑な状況に置かれているようだ。

 

「実際今でもネットで占いの配信やっているみたいだし」

 

ルビィはパソコンを操作し、動画を出す。これは生配信ではなく、ファンによって切り取られた動画になっている。

 

 

『またヨハネと堕天使ましょう?』

 

 

抜け切れてないじゃないかというメンバーの苦い顔。そこにまた新たなものを見たという一眞の目の輝きは対照的だった。

 

「私は”普通”の高校生になりたいの! なんとかして!?」

 

善子のそれは精一杯のお願いに聞こえた。とは言ってもどうしたらいいいのかと、花丸やルビィは目線を下にさげる。すると千歌が一言

 

 

「可愛い」

 

 

と呟いた。確かに美人である。

 

「これだ! これだよ!!」

 

先ほどの善子の動画を見せてきた千歌。彼女は何か思いついたのかもしれないが、詳しいことがわからず、頭上にはてなマークを浮かべる一同。

 

そんなことはお構いなしと、千歌は善子の手を握る。

 

「津島善子ちゃん。いや、堕天使ヨハネちゃん!」

 

 

 

「スクールアイドル、やりませんか?」

 

 

 

唐突に言われた勧誘の言葉に、善子含めて全員がもう一度はてなマークを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「これで踊るの……?」

 

場所は変わって十千万。彼女たちは新たな衣装へと着替えた。しかし、梨子は不安がっている。それもそのはず。今着ているのは所謂ゴスロリに近いドレスなのだ。

 

「いいのかな……本当に」

 

「大丈夫。調べてみたら堕天使アイドルなんていなくて、結構インパクトあると思うんだよね」

 

「こうだったのが……」

 

曜はベッドに置かれたファーストライブのアイドル然とした衣装を見た後に

 

「こうなるんだもんね」

 

目の前にいる、黒めのドレスを着たAqoursへと視線を上げる。

 

「恥ずかしい……」

 

「落ち着かないずら」

 

ルビィは花丸は衣装を着るのはこれが初と言っていい。しかしいきなりゴスロリチックなのはハードルが高かったのかもしれない。

 

「ホントにこれでいいの?」

 

「かわいいね~」

 

梨子は不安をぬぐい切れないようだが、千歌は気にしていないようだ。ぬぐい切れていないのは善子も同じようで、堕天使の恰好でステージには上がりたくないと言った。

 

確かに、普通になりたいと言っているのに今は正反対の堕天使の恰好をしている彼女の心境はいかに……とは言ったものの、ステージ上で堕天使の魅力を振りまくという千歌の想像を聞いてまんざらでもなさそうであった。

 

「一眞くんからも何か言ってよ」

 

「俺に振る!? そうだな……いいと思うぞ。可愛いし」

 

一眞は、座ってアイスを食べながら答えた。その反応に梨子は「ええ……」と困り気味であった。止めてくれる最後の切り札として頼ったのかもしれなが、その祈りは届かなかったようだ。

 

「え、ちょっとカズくんそれ……」

 

彼の食べているアイスへと視線が映った千歌は彼の手からそのカップを取って見つめた。

 

「ああーーー!! これ私のアイスじゃん!? なんで食べてるの!?」

 

「え、これ、お前の? 嘘、ごめん!」

 

千歌が買ったやつを食べてしまった一眞。もちろんそのことに千歌は怒り心頭であった。

 

「ごめんで済んだら警察はいらないの!!!」

 

「いやごめん、ホント、すんませんした!! ああ!」

 

「カズくん避けないで! 避けたら私にあたるから」

 

一眞へと枕などが投げられる。避けるなと言われたが、反射的に避けてしまい曜から反撃を食らってしまう。

 

「これは先輩が悪いずら」

 

「ええ……」

 

彼を庇護する人間はここにはいない。

 

「そりゃあ勝手に食べたら怒られますよ……」

 

「ルビィさん!? なんでそんな知ってるような口を……危なっ!!」

 

一瞬目の死んだルビィを見た気がしたが、千歌と曜の追撃が二度見を許してくれなかった。

 

 

 

狭い部屋の中で暴れていることに梨子はため息を吐いて部屋を出る。

 

「あ、いらっしゃい」

 

そこには美渡さんと、彼女と触れ合っている犬のしいたけがいた。

 

「……」

 

しいたけも梨子へと視線を向ける。ハァハァと熱を放出しているのだろうか。はたまたは……

 

「………」

 

彼女から視線を外さないしいたけ。そして梨子は

 

「…………っ!?」

 

部屋の中で土下座をしている一眞とその前に立つ千歌。すると外の廊下からドタドタと走る音と悲鳴が聞こえた。梨子がしいたけから逃げている。しいたけは遊びたいのだろうが、梨子にはそんなことは通用せずほぼパニック状態で逃げているのだった。

 

すると音は隣の部屋へと移る。

 

「大丈夫、しいたけはおとなs――――」

 

「梨子――――ヴっ!?」

 

悠長に開けてる余裕すらない梨子のおかげで、ふすまの下敷きになる千歌と、顔面を蹴られる一眞。

 

パニック状態のまま逃げる梨子は、衝動的に千歌の部屋の窓から隣接している自分の部屋のベランダへと――――

 

 

 

飛んだ。

 

 

 

飛んだのである。

 

 

 

おまけに見事な宙返りを披露してくれた彼女。しかし、梨子はしいいたけから逃げることはできたも、後から来る着地の痛みや母親に見られた恥ずかしさからは逃げられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

この堕天使路線で行くことが決まったAqoursは早速動画を作成。サイトにアップした。

 

『はあい、伊豆のビーチから登場した待望のニューカマーヨハネよ! みんなで一緒に……堕天しない?』

 

「「「「「しない?」」」

 

内容は善子をセンターとし、堕天使衣装に身を包んだみんながポーズをとっている……というものであった。

 

そのインパクトの大きさからか、スクールアイドルのランキングでは953位まであがっているという結果になった。恐らく、動画配信者である善子も順位の変動に貢献しているのだろう。

 

しかし動画内ではルビィへの圧倒的人気でコメントがあふれていた。恐らく紹介映像がハートに刺さったのだ。それを見たのは当然Aqoursだけでなく、生徒会長なども見ているわけであり……全校放送で呼び出しを食らうのであった。

 

 

 

 

 

一方その頃

 

「うぉっ、ヨハネがスクールアイドルだと……」

 

この前までは動画を配信していた堕天使ヨハネが、いきなりスクールアイドルになったことへ驚きを隠せないバット星人。

 

「だが……上手くいけばアイツの餌を大量に確保もできる」

 

アオボシに言われた”ヨハネを使ってオーブを誘き出す”という作戦の他、あらたな計画を思いついたのだ。

 

そうと決めたバット星人は、即座に人間社会へと溶け込むことのできる服を取り出していく。

 

一眞や彼女たちが知らないところで、新たな計画が動き出しているのだった。

 

 

 

 

 

~~

 

「こういうのは破廉恥というのですわ!!」

 

案の定、ダイヤに怒られる羽目になってしまった。確かに彼女が怒る理由もわからなくはないが……。

 

「そういう衣装というか……」

 

「キャラというか……」

 

千歌と曜の、語尾になるにつれ小さくなっていく声。そんな彼女へと梨子は忠告しいたと訴える。

 

「だから良いの? って聞いたのに……」

 

「梨子、やった時点でお前も共犯だから……」

 

「なら一眞くんもだけど……?」

 

「そうだよ。俺も共犯ですけど!?」

 

「そこ、開き直らない!!」

 

2人はダイヤの喝に口を閉じる。

 

「私がスクールアイドル活動をルビィに許可したのは、節度をも――――「ごめんなさい、お姉ちゃん」

 

ルビィからの謝罪で押し黙るダイヤ。

 

「と、とにかく、キャラが立ってないとか、個性がないから人気が出ないとか、そういった狙いでこんな事をするのはいただけませんわ」

 

狙いがバレバレなことに心臓が大きく脈打つ。なぜそこまで見抜けるのか不思議に感じていると、曜が

 

「でも、一応順位は上がったし……」

 

しかしそれすらも見越していたかのようにダイヤは言い放った。

 

「そんなもの、一時的なものでしかありませんわ。なんなら、自分たちの目で確かめてみたらどうです」

 

ダイヤは机に置かれていたパソコンをスライドさせ、千歌たちに渡す。すかさず、ランキングを確認する。すると

 

「ああ!?」

 

「下がってるな……」

 

3桁だったのが4桁台まで来てしまっていた。現に確認中にも数字が下がってしまうところを目にしてしまう一同。

 

「本気で目指すにはどうしたらいいか……もう一度考えることですね!!」

 

 

 

 

 

「失敗したな~」

 

海岸で座り込み、各々反省点を考えていく。ダイヤの言葉が正しいからこそ、胸に刺さってしまうものがあった。

 

「いけなかったのは、堕天使」

 

善子は自分のことでこのような事態に陥ってしまったと思っている。

 

「高校生にもなって通じないよ」

 

「それは違うよ。それは――――「いいんです。先輩」

 

善子は一眞の言葉を遮った後、立ち上がって言った。今度こそ普通の高校生になれると。でも、やはり彼女の声は――――

 

「スクールアイドルは?」

 

「う~ん、やめとく」

 

善子はみんなへ振り返ると、感謝のような謝罪のような、両方が入り混じった感情で

 

「少しの間だけど、堕天使に付き合ってくれてありがとね」

 

そのような言葉を口にし、みんなの前から去っていく。

 

やはりそうだ。彼女の声には――――寂しさが残っているのだ。普通になれると言いながら、堕天使を捨て去りたくない……と。

 

 

 

「どうして堕天使だったんだろう……」

 

梨子がそう疑問を口にする。

 

「マル、わかる気がします」

 

花丸は少し悲しそうな顔をして話を続けた。

 

「ずっと、()()だったと思うんです」

 

 

自分より何かが秀でてる子、賢い子、才能がある子を前にすると、自分にも何かあるはずだと……。するとある時ふと、これが本当の自分なのか? と考えてしまう。元々はこんなはずではない。天使のようにキラキラしている。それが本来の自分だと。自分も特別な存在なのだと……。

 

 

「いつか羽が生えて、天に帰るんだって……幼稚園の頃言ってたんです」

 

 

「なあ、みんな――――」

 

一眞はある考えをみんなへと伝えた。それは堕天使が、堕天使でいるための内容であり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内容を伝え、解散となった後。一眞は1人海岸で座っていた。

 

「本当の自分……か」

 

さっきとは打って変わった消え入りそうな声で一眞は呟く。

 

「カズくん?」

 

彼にとって、その言葉はとても苦しかった。ずっと心の中でへばりついている感覚。あまりそのことで卑屈にもなりたくはないが、でもやはり……気にしてしまうのであった。

 

(どこまで言っても俺は空っぽなのかもな……)

 

以前に聞いたアオボシの言葉を思い出す。

 

 

――――他のウルトラマンの力を借りいなきゃ変身できないなんて……笑っちゃうよなぁ――――

 

 

ウルトラマンの力を借りなくては満足に戦えないのは、そんな空っぽな自分を現していることではないのだろうか……?

 

そんな疑念が確信へと変わっ――――

 

「私ね……」

 

「千歌?」

 

「カズくんの悩みを解決できるなんて言えないけど……それでも、一緒に悩むことはできると思う」

 

目線を上げると、立ち去っていったはずの千歌が隣に座っていた。

 

「どうせカズくんのことだから、俺は空っぽだ~とか思ってるんでしょ?」

 

図星を突かれて声は出ないし、目を泳がせることしかできない。

 

「だったら、みんなで作っていけばいいんじゃない? 曜ちゃんや梨子ちゃんや……みんなで!」

 

一緒に悩んでくれるからこそ、千歌たちとの思い出が一眞自身を作り上げてくれる。1人では無理でも、誰かの力を借りることによって可能にする……。彼女はそう言いたいのだろう。

 

「普通星人にそんなこと言われるなんてな……」

 

「え、なんでそんなこと言うのー!!」

 

隣で可愛らしく怒っている千歌。しかし一眞も彼女の言葉で、心がすこしだけ軽くなった気がしていたのもまた事実であった。

 

「でも……ありがとう」

 

一眞は純粋に、彼女への感謝の言葉を口にした。

 

 

 

 

 

~~

 

翌朝、堕天使ヨハネとしての道具を箱に詰める善子。彼女は普通になるために、道具を処分するつもりなのだ。

 

「いたいた。堕天使ヨハネだ……」

 

「……」

 

その箱を名残惜しそうに見つめたあと、彼女は立ち去ろうとする。

 

「よぉ」

 

「へ、な、何ですか!?」

 

いきなり声を掛けられたことに驚く善子。

 

「へへへ、ヨハネ様ちょっと眠ってくれ」

 

そう言って男は睡眠スプレーのようなものを吹きかけた。

 

「な……私は……善……子」

 

彼女が完全に目を閉じる前に見えたのは、甲冑に身を包んだようなこの星の者とは思えないものであった。

 

 

 

 

 

千歌たちが善子の家付近に到着したのは、それから数分後であった。

 

「……これは」

 

一眞はゴミ捨て場近くに置かれていた紙を拾い上げる。

 

 

使を助けたく指定した場所にこい

 

 

ご丁寧に場所を地図に書いてくれたものまで置いてあった。見るからに罠だ。しかし、善子が何らかの事件に巻き込まれた可能性があるのなら、放っては置けない。

 

「善子が攫われた」

 

彼の唐突で現実的ではない言葉に、息を呑むような「え?」しか出てこないみんな。

 

「どういうことですか?」

 

花丸とルビィは一眞の近くへと寄る。「これだ」と言って誘拐犯が置いていったと思われる紙を見せる。その事実に声を震わす2人。

 

「俺が助けてくる」

 

一眞はやけに落ち着いた口調で伝える。

 

「ちょと待って、これって警察に届けた方が……」

 

「そうだよ。いくらカズくんでも……」

 

梨子と曜に引き留められるがそれでも、と彼は言う。

 

「みんなは警察に届けてくれ!」

 

またもや千歌たちの声を無視して駆け出していく一眞。

 

「はあ……一眞くんって止めても行くわよね」

 

ため息とともに梨子は呆れた口調で呟く。

 

「梨子ちゃんもカズくんのことわかってきたね」

 

変わって曜は笑い気味であった。彼のことがわかってきた梨子の姿が面白いのだろう。

 

「待って、この格好で警察に行くの?」

 

「今は緊急事態だからそんなこと気にしてちゃダメだよ!!」

 

善子を助けるため、一眞とAqoursは行動を開始した。

 

 

 

彼女をさらった目的は、そして正体は………今の彼らにはわからないものであった。




正体も目的もバレバレだけど、一眞たちは知らないから。
てか善子回だけやたら長くやってるな……。
次回、決着。そして光を越えて……
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