Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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今回が善子回ラストです。


第13話 堕天使誘拐

「ん、んん……」

 

おぼろげな意識の中、目を覚ます善子。

 

「………っ!?」

 

だが腕にひんやりと伝わる鉄の感触。そして鳴り響く鎖の音によって意識を完全に覚醒させる。自分が何者かにスプレーを浴びせられたことを思い出す。

 

「外れないっ……」

 

どうやら自分は柱に縛り付けられているようだ。誰が、何のために……。しかし今そんなことはどうでもいい。大事なのは、逃げることだ。善子は必死に拘束された腕を外そうとするが、上手く取れそうもない。そのことで段々と焦りの感情が積もり始めていた。

 

「お目覚めかな」

 

くぐもった声に反応し、聞こえる方を見つめる。

 

頭部の3本角、そしてロボットのように機械的ながらスマートかつスタイリッシュなボディをもった人型の生物がこちらに近付いてきた。コスプレ……とも思ったが、被り物と言われれば妙に生物的である。

 

「あ、あんたは何者なのよ……」

 

振るえる声を必死に隠し、善子は問う。

 

「オレはバット星人って呼ばれてるんだ。この星での偽名ってんなら、小森だ」

 

茶化して言っているわけではなさそうだ。その人間とは全く別の見た目、この地球では見たことのないものである。

 

彼が宇宙人であることを、この時善子は薄々感づいていたのだ。

 

 

 

ネットの情報をよく見ていた善子は、とあるサイトで密かに囁かれていた噂を思い出した。

 

この星には宇宙人はすでに潜んでいるという話だ。そのサイトには様々な目撃譚なども書かれていたが、どうも作り話のようだと感じていた。

 

しかし多発する怪獣被害や、ウルトラマンの存在などでもしかしたら……と思っていたが、まさか自分が宇宙人に捕まるとは夢にも思わなかった。

 

 

 

意気揚々と話すバット星人に向けて、善子は拘束を解くよう鎖を鳴らす。

 

「残念だがそれはできねえな。ヨハネさんはあのハイパーゼットンデスサイスの餌になってもらうんだ」

 

彼の視線の先には、牛のような2本の角を持ち、体全体が真っ黒なとげとげしい芋虫のような姿をした生物が佇んでいた。顔に走る直線の発光体。そして電子音のような無機質な鳴き声が、目の前にいるのが本当に生物なのかを考えさせられる。

 

「その恐怖に震える表情……いいねぇ~」

 

「な、なんで私なんかを……」

 

もっともな疑問だ。自分がどうして狙われたのか。こうして餌にされそうになっているのか。

 

「そうすれば、オーブが助けに来るだろう……ってな」

 

「オーブが……?」

 

「ああ。オレの目的はオーブを倒し、この星の侵略すること。だからアイツを釣りだすため、そして栄養になってもらうためだ」

 

さらに彼が語るには、ゼットンの育成に必要なのは恐怖と絶望のエネルギーなのだそうだ。善子を助けに来るであろうAqoursに、餌となった彼女の一部を見せつけることで、さらなるマイナスエネルギーをも吸収しようというのだ。

 

「な、なんであなた……Aqoursのことを」

 

不意に出たその単語で背筋が凍る。なぜ彼女たちの名前が出たのかもそうだが、彼女たちにおこるであろうことが残酷でたまらなかったのだ。

 

「地球の文化とやらを調べているうちにアンタを知り、そしてあのグループを知ったのさ」

 

まさか自分の放送を見ていた視聴者だったとは……なんとも複雑な思いである。

 

 

ピポポポポポ

 

 

電子音にも似た声を発する巨大な塊は、腕と一体化した鎌を振り回し始めた。

 

 

「もう話してる時間はなさそうだ」

 

自分が食われると本能で察し、逃げようと身体を動かすが拘束がそう簡単に外れる訳がない。

 

 

 

そして迫ってくる巨大な塊にも見えるハイパーゼットンデスサイスに善子は悲鳴を上げた。

 

「善子ぉ!!」

 

その間に響き渡った男性の声。それは彼女に聞き覚えのあるものであった。

 

「先輩っ!?」

 

ここまで走ってきた勢いを殺すことなく跳躍。バット星人の頭へと一眞の右足が激突する。

 

「あああああ!?」

 

「大丈夫か? ナンダコレ……」

 

一眞は善子を縛っていた拘束を解く。拘束される側にだけは外せない構造のようだ。

 

「なんでここがわかったんですか?」

 

「ご丁寧に地図を置いといてくれたからさ」

 

いきさつを語る一眞に、バット星人は不敵に笑った。

 

「これは嬉しい誤算だ。オーブがくる前にエサがもう1人来るとは」

 

「あの宇宙人、私を使ってオーブやズラ丸たちをおびき寄せようとしているの」

 

「なんで……」

 

どうして善子をさらうことでオーブが助けに来るとわかっていたのだろうか。

 

「お前、どうしてそんn――――」

 

大きく建物全体が揺れ始める。恐らく一眞の目線の奥にいるゼットンがその原因だ。このままだと下敷きになると判断した彼は、善子と共に外へと続く扉に手を掛ける。

 

「待て! このままお前たちを逃がすと思うか!!」

 

「……っ、これでも喰らっときなさい!」

 

善子は足元に落ちていた手錠をおもいっきり投げると見事に頭に命中。フラフラとなったバット星人を後目に、2人は外へと出ていった。

 

 

 

外へ出てみるとそこは近所にある廃工場であった。随分と近場に運ばれたのだと考えていると、その工場の屋根を突き破り、人型の形をとったハイパーゼットンデスサイスが姿を現した。

 

『こうなったらこっちからオーブを誘い出してやるぅ!!』

 

その巨体からバット星人の声が聞こえてくる。それと同時にあの電子音に似た鳴き声も。

 

顔の発光体から火の玉を街へ放出。爆発と共に崩れ去っていく建造物や、炎を上げる道路。さらに腕の鎌で邪魔なビルをなぎ倒していく。

 

「善子、この道をまっすぐにって知ってるか。とりあえず――――危ないっ!」

 

彼女を押し飛ばしたところに大量の瓦礫が落下してきたのだ。

 

「先輩!?」

 

「俺は大丈夫だ。善子ははやく逃げろ!!」

 

「先輩も、無事でいて!」

 

一眞の無事を祈り、善子は走っていった。

 

「それじゃあ、お望みのオーブの出番だ!」

 

ハイパーゼットンデスサイスを見据えオーブリングを掲げる。

 

 

 

 

 

「善子ちゃん!?」

 

逃げている善子は対向から走ってきた千歌たちと合流する。その服装が昨日見たものなのがちょっと不思議であるが。

 

「一眞さんを見なかった?」

 

「先輩は、瓦礫で道塞がれたから回り道してこっちに来ると思うわ」

 

バツが悪そうに言う善子。

 

「善子ちゃん、安心して。カズくんはきっと大丈夫だから」

 

彼女のことを察し、元気づける曜。

 

 

『ゼッ……トン』

 

 

すると宇宙恐竜はこちらに狙いを定めて歩み始める。

 

「は、はやく逃げなきゃ! あの宇宙人、私たちを狙っているのよ!!」

 

「ええええええええええ!?!?!?!?」

 

狙いが自分たちだとわかわかり、一目散に逃げていく。

 

 

『ピポポポポポポポポポポ』

 

 

ハイパーゼットンの火球がAqoursに向かって放たれた瞬間――――

 

 

光子エネルギーをリング状にし、切断力へと変換させた光輪がその攻撃を防ぐ。

 

放たれた方向へ頭を回す。先の光輪は、光の巨人ウルトラマンオーブが放ったモノだったのだ。

 

「「オーブ(ずら)」」

 

構えを取るオーブへと視線を送る一同。

 

無機質な電子音のような声を上げる怪獣。オーブはすかさず拳を打ち込むために右腕を引き絞り、距離を詰めていく。ジャンプと共に拳の勢いを解放する。

 

 

――――しかし

 

 

 

目の前から姿を消したのだ。勢いを殺しきれずつんのめるオーブ。

 

(どこだ……)

 

周りをしきりに確認するが、数秒後背後に出現。すぐに蹴り技を繰り出すが空を切る。そして遠距離から放った火球が背中に直撃した。

 

激痛に声を上げながらもオーブは地面から立ち上がり前転。宇宙恐竜との距離を詰めすかさずにスペリオン光輪を投げるが、当たる寸前で姿を消す。

 

(瞬間移動ってやつか)

 

怪獣の能力の1つが、途中の移動経路を飛ばし別の場所へと瞬時に移動する能力だと見破る。だが見破ったところで状況は変わらない。

 

『ゼッ……トン』

 

重々しい声と共に目の前に迫りくる鎌が、オーブの胸部を抉り火花を散らせた。

 

(こ、この……捕まえ……たぁ!!)

 

二撃目の鎌を腕で防ぐ。渾身の力をスカイタイプの力を使い、速さを上げた一撃でも当てることは叶わない。そればかりかカウンターの切り上げをくらい、宙へ投げ出され地面へと叩きつけられる。

 

(くっ……う、ううっ……)

 

するとまた別の場所に姿を現すハイパーゼットンデスサイス。

 

『どうだ。このハイパーゼットンデスサイスは? この強大な力……それにお前の行動パターンも予測済み。この状況でどう戦う? ウルトラマンオーブ!!』

 

バット星人は自分(オーブ)がどう動くかを予測していると同時に、強大な火力と鋭い鎌……そして特殊な瞬間移動でこちらを倒しに来ている。おそらくバーンマイトでも対処できないだろう。

 

既に自分の勝ちを確信しているバット星人は高らかに笑い声をあげる。

 

『俺の力は予習済みってことか……』

 

そこで新たに手に入れたカードのことを思い出した。

 

 

『だったら新しい姿を見せてやる!!』

 

 

立て続けに放った火球を躱して跳躍したオーブのカラータイマーから光があふれ出す。

 

 

 

ウルトラマンの力を借りなければ戦えない……確かにそうなのかもしれない。いや、だからこそ力を借りるのだ。それは”頼りきりになる”とは違う。託してくれた力で、戦えない人の代わりに……補い合い、助け合いながら戦ていくための力なのだと――――。

 

 

力を……お借りさせてもらいます。

 

 

ウルトラマンジャック

ウルトラマンゼロ

 

フュージョンアップ

 

 

ウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュ

 

 

巨大な質量が降り立った音が街に響く。しかし地面には宇宙恐竜の姿しか見当たらない。

 

「見て、ビルの上!」

 

梨子の言葉で全員が指を指したビルの方へと視線を持っていく。

 

「いろんな姿があるのね……」

 

「相手に合わせて使い分けてる……のかなぁ」

 

青や赤の体に、肩から腕にかけてのプロテクター。その姿は身軽な戦士を思わせ、他2つの形態とは異なる頭上の装飾物の反射が、鋭く輝いていた。

 

『いくぞ、コイツの動きも予測してみな!!』

 

ビルから飛び降りると同時に放たれた輝くキックが頭の触覚のような部位に衝突する。その輝きはさながら流星のごとく。

 

地面に着地し、流れるような勢いで足蹴りを組み合わせる。リング状のエネルギーをも発生させ、ハイパーゼットンデスサイスの体表面を切り裂いていく。留まることのない攻撃。それはまるで荒れ狂う台風のようだった。

 

(んだこれ……動きがはやくて意識ついて行かねぇ)

 

まるで拳法の使い手に体を乗っ取られているようであり、変身している一眞すらもその力に振り回される一歩手前である。

 

負けじと鎌を振り回していくがその身軽な動きで翻弄し、カウンターを叩きこんでいく。

 

瞬間移動で惑わされるが、頭部から光のブーメラン『オーブスラッガー』を投擲する。今まで通り避けられるが、オーブの念力に反応し追撃を始める。

 

『な、なんだこれは……動きが、読めない』

 

瞬間移動で消えてしまう宇宙恐竜。

 

だが先ほどのような見えない不安で満たされるよりも、心の中で研ぎ澄まされた感覚が水の波紋のように広がっていく。

 

(――――ッ! そこだっ!!)

 

振り向きざまに放ったオーブスラッガーショットと火球が中心で衝突し、巨大な爆発が起こる。

 

その隙にオーブスラッガーを体の前で高速回転させ、ハリケーンスラッシュ専用の武器を作成する。

 

『オーブスラッガーランス!!』

 

槍型の武器を振り回し、火球を切り落としていく。すでにカラータイマーの点滅も始まっているため、彼はここで勝負をつけようというのだ。

 

中距離からの攻撃を振るい、自身に迫ってくる鎌を受け止める。今までとは腕に来る衝撃が幾ばくかマシになっていることに気付く。オーブは鎌を上段に払い、その隙に腕の関節部を切り払う。さらに足をかけて体制を崩し、スラッガーランスを胸元を突き刺した。

 

(う……っらあああああああああああ!!!!!!)

 

槍を突き刺したことによる重みを感じながら、空へと向ける。さらにオーブスラッガーランスのレバーを2回引いた。

 

ランス全体から矛先向かってエネルギーが流れていく。

 

『このぉおぉぉ、このままでは……』

 

ゼロ距離から火球を飛ばそうとチャージするが、オーブの方が一手早かった。

 

 

『ビックバンスラストッ!!!』

 

 

強大なエネルギーを内部へと放出。体はその膨大な力に耐えることができすに胸を貫通した。

 

『ゼッ……ト……n――――!?!?!?!?』

 

肉体は瞬時に崩れていくと同時に、街を揺らすほどの轟音と共に爆散したのだった。

 

 

 

 

おそらくバット星人とやらも、あの爆発で消し飛んだ。

 

そうしてようやく戻った街の静けさをオーブは感じ、空高く飛翔していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「改めて、堕天使ヨハネちゃん」

 

闘いの後、千歌たちは本来の目的である善子へ改めて言った。

 

「「「「スクールアイドルに入りませんか?」」」」

 

しかし、善子は再度、断るために首を振る。

 

「昨日、言ったじゃない。ヨハネはもう……」

 

お終いにする……と言いかけたところで千歌の声が遮る。

 

「良いんだよ。堕天使で自分が好きならそれでいいんだよ!」

 

とは言っても、昨日のこともあり彼女は否定しようと声を発した。先ほどよりも大きく。

 

「生徒会長にも怒られたでしょ!?」

 

「それは私たちがいけなかった。でも善子ちゃんはいいの。そのまま堕天使でいれば」

 

どういう事だと、意味が分からないと彼女の表情が伝える。千歌は一歩前へ踏み出し、自分の憧れであるグループが、如何にして伝説を作れたのかを語った。

 

「私ね、考えたの。どうしてμ'sがそこまでして伝説を作れたのか、スクールアイドルが繋がってきたのか……」

 

息を吸い込み、彼女は続けた。その理由を口にした。

 

「ステージの上で、自分の”好き”を迷わず見せることなんだよ。どう思われるとか、人気がどうとか関係ない。自分が好きなものを、輝いている姿を見せることなんだよ!!」

 

自分が好きである限り、誰に何と言われようとその姿を捨てないこと。それが輝くことだと。千歌の考え抜いた答えなのだと。だから――――

 

 

「いいの? 変なこと言うかも」

 

「いいよ」

 

曜が頷く。

 

 

「時々、儀式とするかもよ?」

 

「そのくらい我慢するわ」

 

梨子も受け入れると。

 

 

「リトルデーモンになれって言うかも……」

 

「それは……」

 

苦笑する千歌。だがすぐに表情を変え

 

「でも、嫌だったら嫌だって言う!」

 

いつもの明るい表情で言った。

 

拒絶するわけではない。彼女を彼女として受け入れるということの証明なのだ。

 

 

「いいんじゃないか?」

 

そこに一眞も入る。どうやら本当に無事だったようで、善子もメンバー全員も安堵する。

 

「善子を善子として受け入れるってことだよ。な?」

 

千歌は黒い羽を善子に差し出した。それは昨日彼女が捨てたもの。それでも心残りだったもの。

 

 

そして善子は――――

 

 

 

羽を手に取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「鞠莉さん!!」

 

理事長室に駆けこんだダイヤ。その声と行動から、何か信じがたいようなものを目の当たりにしたような感じである。

 

「あのメールはなんですの!?」

 

「何って、書いてある通りデース」

 

「そ、そんな……」

 

鞠莉の肯定を聞いてしまったダイヤの声は酷く、現実を受け止めきれないという想いを感じさせるものであった。

 

それは鞠莉も同じようで、目を伏せている。その顔は彼女の悔しさをこれでもかと現していた。

 

 

生徒会長と理事長……学校のトップ2人が直面したものとは一体……?




2人のトップがなにやら悩み事のようですね。一体何があったんだか……。
ハリケーンスラッシュの描写で、力に振り回される……みたいなことを書きました。ウルトラカードって力が込められているだけで意識はないとは思うんですが、力の元となったウルトラマンの経験とかテクニックぐらいは入っている気がしたので入れさせてもらいました。ほら、次に手に入るフュージョンアップだって……ね。
ではまた次回に!
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