Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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最初に言っときます。主人公出てこないです。


第16話 あなたが決める明日

午前中の沼津。普段では何気ない日常を送れるはずだった。

 

しかし

 

今ここでは巨大怪獣とウルトラマンの激しい戦いが繰り広げられていた。

 

(はああっ!!)

 

オーブスラッガーランスを巧みに扱い、怪獣の身体を切り裂いていく青い体。

 

薄黒い緑の体にまるで両生類を思わせる怪獣『セグメゲル』も、負けじとその腕で攻撃を繰り出してきた。オーブは槍でガードするが、側面から自身の手足のように操った尻尾が脇腹へと直撃する。

 

痛みで力が弱まった瞬間、その強靭な脚から繰り出された蹴りで吹っ飛ばされてしまった。

 

地面に伏したオーブへと、腕を貫通してしまいそうな牙をギラつかせて噛みついてくるセグメゲル。だが槍を噛ませることによって接近を防ぐことに成功する。

 

(なんて力だ……!)

 

かといって、バーンマイトに変わる時間などない。このままで倒さなくては。

 

両脚の力で引き剥がし、素早く跳躍し距離を取った。

 

「■■ッーー!」

 

口から放たれた青白く渦巻く火炎の奔流を難なく躱し、ヒット&アウェイの要領で体を斬りつけていく。

 

流れる風のように攻撃を往なし、レバーへと手を掛けた。

 

だが、セグメゲルから放たれた紫色の火炎放射は左腕へと命中する。

 

『ウ、ウアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?!』

 

瞬間、今までに感じたことのないとてつもない激痛と、ジワリと蝕んでいく痺れ。

 

(く、毒か……アアアア……ク、ウウウウ……)

 

毒による激痛に悶えながらランスを右手に持ち替え、左の肘でレバーを一回引きエネルギーを矛先へとチャージ。突き出すと同時に解放させる。

 

『オ……オーブランサーシュート……!』

 

「■■■■■■■ーーーーー!!!!」

 

オーブスラッガーランスから凄まじい勢いで放たれた光線は、セグメゲルの体を貫通させ、炎の柱を上げるほどの大爆発を起こすのだった。

 

巨大な肉体が焼失したことを確認したオーブは、まるで糸の切れた人形のように倒れ、光の粒子となて消え去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「怪獣多いよね最近……」

 

「だね。なんだか不安になっちゃうよ~」

 

「こうして毎日がおくれてるのにも感謝しなくちゃ……なんてね」

 

沼津の街ではそんな不安の声も聴くようになった。3年前の一回きりで終わったのとは異なり、いつまた出てくるかわからないという不安が人々の中にあるからだ。しかし、慣れていくのが人間というもの。ウルトラマンがいるという安心もともなって、そこまで不安視しないという人が一定数いるというのもまた事実ではあるのだが。

 

そんな人々の声を聞き流しながら歩いているのが1人。彼女は国木田花丸。浦の星の1年にしてAqoursのメンバーでもある。

 

いつもはルビィや善子といった多人数で沼津を訪れることが多いのだが、今日はあいにく予定があるそうで1人で来たのだ。彼女も書店に立ち寄るだけなので、そこまで悲観的に捉えることは無い。

 

「今日はどんな本を買おうかな」

 

読書家である花丸。彼女は今日、書店で一体どんな本に出会えるか胸を高鳴らせていた。

 

だが、彼女も女の子である。ショーウインドに飾られた可愛く、きれいな服に目を奪われてしまう。スクールアイドルを始めたことがきっかけなのだろうか。お洒落をしてみたいと感じるようになったのは……。

 

「……」

 

「………」

 

すると、花丸の隣にも同じように陳列窓に飾れらた服を見つめている少女がいた。

 

「あ、あなたもこの服気になってるず……なってるの?」

 

「なに? あなたもなの?」

 

やや気の強そうな返しにたじろいだ花丸だったが「別にマルは……」と遠慮してしまう。似合わないと言われてしまうのが怖かったのかもしれない。

 

「もしかして似合わない~とか思て遠慮したとか?」

 

彼女の言い当てに動揺し、強がってしまう。

 

「ほんとに? 怪しいなぁ~」

 

グイグイと詰め寄ってくる彼女は視線を上下させて花丸の姿を観察し、口角を上げた。

 

「あんた案外イケそう」

 

「え……?」

 

発せられた言葉の意味が分からず聞き返すものの、何かを決心した少女は花丸の手を引いて店へと引っ張っていくのだった。

 

「だったら私が似合う服見繕ってやるよ!」

 

「え、ちょっと、待ってください~!?」

 

その少女に連れられた花丸は、まるで彼女の着せ替え人形のように様々な服を着せられた。といっても花丸も自身も楽しんでいた。自分はこれほどまでに綺麗になれるのかと。

 

例えば、白いシースルーのパフスリーブと赤のフレアスカートの組み合わせ。

 

例えば、茶色のワンピースにブルゾン。さらに帽子をかぶせてみたもの。

 

彼女の言われるがままになっているが、どれも魅力的な姿へと変えてくれた。その姿に見惚れてしまう。

 

「メガネかけちゃうのもアリだ」

 

「眼鏡はもってるずら……いや、持ってます」

 

隠すようなことは少なくなってきた花丸の方言だが、しかし初対面の相手となるとどうしても隠してしまう。しかしそれを見た少女は

 

「別に言葉遣いなんて気にしてないし? あんたの言いたいようにすればいいんじゃない?」

 

棘があるようで底から感じられる親切さを感じとった花丸の顔には、自然と笑みがこぼれてしまう。同時に少女の顔にも笑みが浮かぶ。それは心の底から笑っているのだと感じることができた。

 

 

 

 

 

「自己紹介がまだでした。オラは国木田花丸です」

 

「私は……楓。よろしく」

 

先ほど試着した服を購入した花丸は、自己紹介を済ませた。

 

楓……といった少女は、金色の髪をなびかせており所謂”ギャル”と呼ばれる容姿をしていた。しかし自分の想像していた人物よりも優しさあふれる人物であることは、この短時間に知ることができた。

 

「へえ~スクールアイドル? すげえコトしてるんだな」

 

そのまま2人は、自身の身の回りの話へと変わっていった。

 

「はい。最初はマルにもできるか不安だったけど、ルビ……マルの友達や先輩のおかげでやれてるんです」

 

花丸の楽しそうに話す様を見ていた楓も釣られて嬉しそうに微笑む。

 

「楓さんは今何やってるんですか?」

 

楓は少し悩んだ後に口を開けた。

 

「なんていうか……仕事手伝いって感じかな。新しい立地の調査して……」

 

「なんか大変そうな仕事を手伝ってるんですね……」

 

「言われてみれば確かにそうかもな」

 

だが楓が語っている姿に、どこか違和感……何かつっかえる想いを感じ取った花丸。

 

「なにか、悩みとか……あるんですか?」

 

「え、あ、いやまあ……。そうだな。実のところ色々あってな」

 

目を泳がせながらも、隠せないとわかった楓は自身の内にあるものを音にした。

 

「私が手伝っている会社は、なにがなんでも成果を出すことが大事なんだって言われてる。それ以外はいらないってな。失敗した奴がどうなるかだって見てきた……」

 

楓の語る姿から、彼女が手伝っている仕事の辛さというものが嫌でも伝わってきた。成果だけしか求められず、当然失敗は許されない。そんな極限状態では体も、心ももたない。それを彼女はどれくらいのほどやってきたのだろうか……花丸には想像できない。

 

「けどわたしにも”責任”ってのがあるから下手なことは言えない。私にはこれしかないのかもしれないしな……」

 

仕方ないと自分では呑み込んではいる。しかし楓は「けど……」と内にある思いを吐露した。

 

「”明日すらくるのが怖い”なんて思うことだってある」

 

空を見上げる楓に、花丸は言葉をかけることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「……」

 

花丸はその日の夜、自室で楓の言っていたことを思い出していた。

 

別に、自分がすべての悩みを解決できるなんて豪語するつもりはない。だが……だが、彼女の姿を目にしてしまったら、どうにかしたいと思ってしまう……けど何も言えない無力な自分……。ルビィの背中を押したようになんて、今回は出来ない。そんな現実に、自然と涙が出そうになる。

 

 

 

 

花丸は気分を変えようと、洗面所に向かい顔を洗う。明日も楓と会う約束をしたのだ。元気のない顔のままでは、さすがに彼女にも笑われてしまう。

 

鏡を見ると、そこには変わりなく国木田花丸の顔が映っていた。最近はスクールアイドルを始めた関係もあってか、よく鏡を見る。笑顔を上手く作れているかを確認するためだ。

 

今の泣き疲れたような顔を見たらルビィや善子、それに先輩たちはなんて言うのだろうか……。今まで考えもしなかったことにフフッと無意識のうちに笑みが零れた。

 

「はっ……」

 

今鏡に映っている花丸の表情は、なんとも微妙な笑顔だった。これでお客さんの前に立ったら怒られてしまうほどには……。しかし、ほんの少しだけだが心が軽くなった気がしたと同時に、内から湧き上がってくるものも感じ取っていた。その理由はおそらく……

 

笑顔だ。笑顔を作ったことで花丸の心は軽くなり、勇気……とでもいうのだろうか。明日、楓に自分の思いを伝えようと決心することができた。

 

理屈を言われてもいい。拒否されてもいい。だが、その仕事に楓の明日も、未来も決める権利はないと。それ以外の生き方もあるはずだと。

 

 

 

花丸は楓に会う楽しみと、それを伝える決意をもって床について行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

一方その頃。沼津の方で楓はとある人物と対面していた。

 

「一体どうなっているの?」

 

「巨人の横槍が入っただけだ。次は上手くやる」

 

花丸と会った時とは違う、”侵略者”としての面を見せている楓。それに詰め寄るのはスピカ。侵略連合に命令された”セゲル星人”の見張りである。

 

セゲル星人とは、自分たちが生存出来そうな惑星を調査、そしてそこに文明があれば召喚士を送り込み”セゲル様”と崇められているセグメゲルを使ってその文明を滅ぼす……。そうやって自分たちの領土を拡大するという行為を繰り返す侵略宇宙人なのである。

 

「あなたはセゲル様に選ばれた……そう言っていたわよね?」

 

楓はセゲル星の上層部によって選ばれ、この星に送り込まれた侵略者なのだ。

 

「ああ……」

 

「なら、あなたの務めを果たすのね」

 

耳を塞ぎたくなる文字の羅列を、淡々と躊躇いもなく口に出されていくことに耐えられなくなり、楓はスピカの胸ぐらをつかむ。

 

「んなことわかってんだよ! 余計な口出してんじゃねえぞ……」

 

「長く待って明日が期限よ。あの方も侵略連合もそれ以上は待てないわ」

 

しかしピンク髪の少女は顔の色ひとつ変えることなく、その瞳は楓を見つめていた。

 

 

 

「わかってんだよ。私が侵略(これ)でしか生きていけないくらい……」

 

 

 

彼女の悲痛な声は、夜の空に溶けていくだけ。スピカは勿論のこと、誰にも聞かれることは無かった。




今回はタイガの「きみの決める未来」からセゲル星人と、セグメゲルを出しました。話もこれを下敷きにはしているんですが……。さらに花丸ととある楽曲をモチーフに書きました。

次回は一眞くん出せるかもしれないです。
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