Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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後編になります。


第17話 わたしの決める明日

沼津を歩く一眞の左手は、包帯を巻いて吊っている。これはセグメゲルの毒炎を浴びてしまった結果だ。幸い、左腕に軽い痛みと痺れを残す程度でとどまっているが。これはオーブの力と関係あるのだろうかと頭を悩ます。さらに千歌たちにも心配されたが、やんわりと誤魔化した。

 

気分転換にと思って街を歩いているが、今それどころではない。

 

なんと花丸が……ギャルっぽい格好で歩いていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

それは一眞が目撃する数分前に遡る。

 

昨日と同じように、花丸と楓は服を見ていた。すると突然楓が腕を引っ張り、とあるお店に連れて行ったのだ。

 

「花丸ならコイツも似合うんじゃないか!」

 

「なにするか教えて欲しいずらー!?」

 

それから数分。花丸はいつもとは全く違う格好になっていたのだった。大胆にシャツの胸元を開いた、涼しさを感じさせる青の夏服。それに似た色のスカート……。いつもの彼女を知る者が見たら即倒れかねないほどの変わりようだ。

 

「なんか……落ち着かないずら」

 

花丸自身も恥ずかしそうにしていた。

 

「なんでだよ。結構似合ってんぜ?」

 

その姿を見てひとり納得している楓は、それは気持ちよく笑っていた。

 

その姿で靴屋やアクセサリーショップを見て回っているとき、偶然歩いていた一眞が目撃してしまったというわけだ。

 

「これ以上ついて行くとストーカーになりそうだな……。帰るか」

 

花丸の様子が気になってしまい付いて行く一眞だったが、自分のしている事の”危なさ”を感じて踵を返していくのだった。

 

 

 

そんな青年に気付かず、花丸は昨日の話に対する自分の考えを楓に言おうと声をかけた。

 

「あの、楓さん」

 

「ん?」

 

素っ気ないように感じる応答も、すでに慣れていた。いや、彼女の人辺りを知っているから怖いとも感じないのだろう。

 

「昨日の……仕事の話ずら……」

 

それを聞いた楓の目は鋭くなる。確かにそうだ。気分転換の時に嫌な話をされるのだから。だが、言わなければいけない。そう決めたのだから。

 

「オラなりにちょっと考えたずら。それで、その……」

 

息を吸い、口を開く。

 

「役割があるのかもしれない、やめるなんて言える状況じゃないのかもしれない。でも……でもその仕事に、楓さんの未来も、明日も決める権利はないと思うずら。だから、別の生き方もあると思うんです」

 

黙って聞いている楓。しかしその眼を見て伝える花丸。それは以前、親友の背中を押したときのように。

 

「楓さん自身の自由な生き方も!」

 

花丸は、笑顔を作る。

 

「それに幸運は、笑うことから始まっていくと思うずら」

 

「アハ……アハハハハハハッ!!」

 

すると突然、楓は笑い出した。それは彼女の言葉を嘲笑うかのように。

 

「お前それ本気で言ってんの?」

 

突如として変貌した楓の態度に、花丸は固まる。

 

「こっちはね、お前が思うほど軽いものじゃねえんだよ。星の……種族の使命なんだよ。それを軽々しく捨てろってか? 下等な生物が、冗談も大概にしとけよ」

 

「楓さん……?」

 

言ってることのわけが、意図が掴めない。星? 種族? いったい何のことだ。もしかして地球の人ではないのだろうか……。花丸は目の前の少女を見ることしかできなかった。

 

「はあ……、なんか覚悟決まったわ」

 

懐から出した水晶を、うつろ気な目で空へと掲げた。

 

「セグメアクバル・エスタダーハ!!」

 

数秒の後、空に出現した黒い雲の渦。その中心から怪獣が街へと投下された。

 

「これで地球も我らセゲル星のものになる……」

 

「はっ!? 楓さん、待って。こんなことやめてください!」

 

「うるさい!!」

 

セグメゲルの下へ行こうとする楓を引き留めようと、花丸は彼女の腕を掴む。しかし手に持っている水晶からの衝撃波で、簡単に引き剥がされてしまう。だが花丸は諦めず、彼女にこれ以上街を壊させまいと説得を試みるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

突如として出現し、街に火を吹き蹂躙していくセグメゲル。その獰猛さに、沼津の街はたちまち崩壊。さらに逃げ惑う人々……まさしくパニック状態だ。その人混みの中を逆走し、怪獣に向かっていく一眞。吊っていた布を捨て去り、左腕に視線を移す。

 

「まあ、マシか……」

 

激痛や痺れが治りきったわけではないが、なんとか左腕を動かせるとを確認した一眞は、目の前で街を破壊している怪獣にオーブリングを掲げた。

 

《ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン》

 

上空から地上へと降り立ったオーブ。彼の着地の衝撃で、地面がまるで木屑のように舞い上がる。毒攻撃を撃ってくる以上、素早く避けなければいけない。だからといって力も侮ってはいけないことから、このバランス型のスペシウムゼペリオンを選んだのだ。

 

 

 

「来やがったな……」

 

楓はその巨人を睨みつける。自分の使命に立ち塞がる強敵……失敗ができない任務を邪魔しようとする者へと向けるには当たり前の感情であった。

 

「なんで街を破壊しようとするんですか!? 昨日も、さっきもあんなに楽しそうだったのに」

 

「アレはただの見せかけだ。お前との関わりもな!」

 

息も絶え絶えになりつつ、花丸は説得を続けていた。しかし、何度やっても彼女に弾き飛ばされてしまう。

 

オーブはセグメゲルに構えると、即座にスペリオンスラッシュで牽制。火花を散らしながらも、怪獣は口から炎を吐き出した。だがギリギリでそれを躱し、流れるように腹部へ蹴りを食らわせる。

 

反撃と言わんばかりに、爬虫類のように固く、それでいてしなやかな尻尾が左腕を捉えた。

 

(グアアアッ!?)

 

一瞬で何倍もの痛みに膨れ上がったことに声を上げる一眞。そのまま頭突きを受けて、ビルへと倒れてしまう。瞬時にして瓦礫となり飛び散る残骸。

 

 

「これが……楓さんのやりたいことなの?」

 

「……?」

 

幾たびの転倒で汚れた花丸の問いに、楓は視線をこちらに向ける。

 

「だって、一緒にショッピングしてくれている楓さんの顔……すごく楽しそうだったずら。けど……けど今はそんな悲しそうな顔だから……」

 

「黙れ、黙れよ! これが私のやりたいこと、私がやるべきことなんだよ! セゲル様に選ばれた私の……!」

 

 

 

立ち上がったオーブの頭上に、鞭のようにしなった尻尾が襲い掛ってくる。それを右腕で受け止めるものの、その重さに膝をつく。左腕で支えるが、上手く力が伝わらない。

 

「ウッ……ウウァァァ……」

 

その痛みと重みに声を漏らす。この状況を脱するために、オーブはバーンマイトへと姿を変えた。防いでいた尻尾を掴み、遠くへ投げ飛ばす。

 

(毒には気を付けないと……)

 

一眞攻撃に警戒しながら、セグメゲルへと迫っていく。顔を殴り飛ばし、腹部に数発撃ち込む。痛みに声を上げながら、またもや尻尾を振るってきた。オーブは尻尾を避けることなく掴み、右手に込めたエネルギーで切断した。

 

途端、切断面から勢いよく噴出した紫色の液体。セグメゲルの体液を全身に浴びたオーブは苦しみだしたのだった。

 

(ううっ……ああああ!? く……ああああああああああ!?)

 

なんと体液にさえも毒があったのだ。身体中へと侵食していく毒に悶えるオーブ。そのままセグメゲルの攻撃を食らってしまい、地面へと倒れ伏してしまう。

 

マウントポジションで何度も、何度も一方的に攻撃を食らう。さらには追い打ちの毒炎。カラータイマーの点滅と共に、苦しみの声が響く。そして毒とダメージにより、オーブは殴られるだけの案山子のように動かなくなってしまった。

 

 

 

「じゃあ、じゃあなんで泣いているんですか?」

 

「はあ……?」

 

「だから……本当にやりたいことならなんで楓さんは泣いているんですか!?」

 

花丸に言われて初めて気が付いた。楓の顔には、たくさんの涙が頬を伝っていたのだ。手でふき取り、自分でも信じられないと涙のついた手を見つめる。

 

「こんなこと……本当はやりたくないんですよね?」

 

尋ねた花丸の目にも涙が溜まっていることがわかった。脚に見える擦り傷やほつれが見られる服。それほどボロボロになっても……彼女は自分を信じてくれたと気付いた楓。

 

「わ、私も……」

 

涙で前が見えないが、花丸のいる方向をしっかりと見つめて自分の気持ちを打ち明けた。

 

「私も、こんなことやりたくない……! お洒落して、地球人のようにいきたい! 笑って明日を迎えたいい!」

 

楓の本心を聞いた花丸は、表情を柔らかくし「やっと聞けました」とうれし涙を零すのだった。しかし、セグメゲルが暴れてしまっているせいで地響きが続いている。このままでは花丸たちがいる場所も崩れてまう。

 

「早く逃げましょう!」

 

楓の手を引っ張り、その場から離れていく。

 

「楓さん、あの怪獣を止めることはできないんですか?」

 

オーブへと攻撃を続けるセグメゲルを見上げて花丸は聞くが、楓は顔を伏せてしまう。

 

「召喚したら最後、破壊し尽くすまで止まることはない……」

 

「そんなぁ……」

 

オーブも押され、なす術はないのかと落胆するが「でも……」と楓は一つだけ方法を提示した。

 

「私たちの体にはあの毒の抗体を持ってる。だから……それをウルトラマンに託す」

 

水晶を翳し、怪獣を召喚した時と同じ呪文を唱える。すると、身体が青白く発光を始めた。その光は水晶へと集まり、輝きを増していく。

 

花丸はその光景、姿を見て察してしまう。抗体を授けるということ……つまりそれは、彼女自身の消滅を意味しているのだと。

 

「そんな!? ダメです! 他にも何か方法が……!」

 

「これしかないんだ……。悪いな。せっかく仲良くなれたのに……まあでも、これは報いなのかもな」

 

花丸は止めようとするが、楓の周りを覆う障壁に阻まれてしまう。

 

「花丸の言ったように、これは私が明日を決める一歩だからさ……許してくれ」

 

「嫌です! まだ行ってないお店も、たくさんのお話も、それにスクールアイドルだって……」

 

まだ見せていない……と言いかけたところで、「花丸!!」と呼びかけられ、花丸は顔を上げる。

 

「泣くなって。幸運は、まず笑うとこから始まるんだろ?」

 

自分の体が消えていっているというのに、楓には未練や、悲しみといった表情が何一つ見られないほどの、屈託のない笑顔で語りかけていた。

 

そして遂に……楓は水晶と共に光の粒子となって、オーブのカラータイマーへと飛んでいく。

 

そこに彼女が決めたことは言え、友人が消えていったことへの花丸の悲痛な叫びがこだまする。それはセグメゲルの咆哮よりもはっきりと、そしてオーブへの猛攻よりも痛々しかった。

 

 

 

光の粒子……毒の抗体がオーブのカラータイマーに入り込む。すると全身にその光は広がっていくのだった。

 

(なんだ……体が)

 

先ほどまでの体を動かせないほどの激痛と痺れが薄れていく。すると遠くから、よく聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「オーブ! その怪獣を……倒してぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

喉が張り裂けんばかりの声量。そして悲しみによる震えたままの声での、精一杯の頼み。彼女……たちの平和を、そして明日を望む必死の叫びであった。

 

それを聞いたオーブは自身の体にかすかに残った力を腕へと結集させ、砕けんばかりの勢いで拳を振るった。

 

勝ちを確信してからの不意打ち。そしてバラバラに砕けるほどの痛みを顎に当てられ、苦しみの声を上げるセグメゲル。

 

巨体を後退させ、大地に再び立ち上がった二本角の紅の戦士は「あの怪獣を絶対に倒す」と自分を鼓舞するために構えを取る。

 

(はあああああああああああっ!!)

 

地面を抉る程の勢いで加速し、燃える腕を使ったラリアット。その一撃は、怪獣の首を折らんとするほどの威力を発揮した。フラフラと体制を崩したその体へ、先ほどの仕返しと言わんばかりに何発もの殴打を食らわせる。

 

加えて腹部に穴があけられるほどの威力と、花丸の想いの炎を宿したドロップキックに横転する。すかさずその巨体を頭の高さまで持ち上げ、遠くへと投げ飛ばした。

 

(これで……終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

 

真っ赤な火球を生成し、こちらも張り裂けんばかりの声量で技名を叫んだ。

 

「ストビューム………バーストォォォォォォォ!!!!!」

 

負けじと口から青白い火炎の激流を放射するが、火球はそれをものともせずにセグメゲルへ着弾。同時に強大な爆発を発生させ、塵一つ残すことなく肉体を消滅させた。

 

 

 

すぐさま訪れる静寂にオーブは花丸へと向き直る。両者ともに語らうことはしなかったが、オーブは深く頷いた。花丸はオーブと、異星の友人が消えていった空を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

翌日、怪獣騒ぎの休日が終わりを告げた放課後。いつものようにAqoursは部室に集まっている。その中には花丸も。

 

「カズくん、もう傷治るの早くない?」

 

「軽傷だったんだろ……」

 

「そんなことないよ。絶対痛いやつだったもん」

 

一眞の左腕の回復にあれこれ言う千歌。それに乗っかる曜や梨子の傍ら、1年生は昨日、一昨日の怪獣について話していた。

 

「天から召喚され、地に落ちる魔物……まさしく堕天!!」

 

「じゃあ、あれは善子ちゃんが召喚したの?」

 

「そんな訳ないでしょ。私は街の破壊のために召喚なんかしないわよ」

 

善子はそっぽ向きながら話し、その答えに笑顔になるルビィ。

 

「花丸ちゃん、何読んでるの?」

 

隣で本を読む花丸。しかしいつもの文庫本ではなく、ファッショ誌であった。

 

「ズラ丸がファッション誌だなんて珍しいわね。何か載ってるの?」

 

「見覚えのある人が載ってただけずら……。それに、オラもこういうの気になるな~って思っただけずらよ」

 

雑誌を置き、善子へと話す花丸を見たルビィは「今度、3人で買い物に行こうよ!」と誘う。花丸は言わずもがな。善子も素直ではなかったが、その実誘いに乗り気であった。

 

「そろそろ練習始めるわよ」

 

梨子の声が聞こえ、屋上へと向かう花丸たちであった。




前回、今回の花丸の服装はちゃんとモチーフというか、イラストや劇中に登場したものとなっております。その中でも今回のはマジで出したかった。一時期話題になったやつです。

あと最後をどう捉えるかは、皆さん個人個人に任せます。
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