「次の計画は、僕が」
侵略連合の宇宙船で、アオボシが名乗りを上げた。
「僕が……いえ、あのお方は地球に眠るある魔王獣を覚まさせるのが目的だ。頃合い的にも丁度よくてね」
”あのお方”の名を借りて発言してくるアオボシにいら立ちを隠せない宇宙人たち。
「そのためにもまずは……黒き王のカードを」
遂にしびれを切らし、彼との距離を詰め胸で圧をかけるテンペラー星人。その態度や……何から何まで気に食わなかったのだろう。
「貴様、ふざけているのか?」
「いえいえ、そんなことは」
テンペラー星人は強圧的な声を響かせるが、アオボシは気に留めずバルタンへと頭を下げる。
「これはあの方の命令の1つでもある。それに逆らうことは……出来ませんよね?」
「……」
セミのような構造をした口が不気味に動く。
「わかった。お前にこのカードを託す。必ずや成功させろ」
「承知しました」
道化師のような形式ばった礼をした彼は、宇宙人たちの間を抜けていった。
彼が去っていくときの刺さるその眼には、明らかに殺意も混じっていた。
~~
「この前のPVが5万再生?」
団扇を片手に外を眺めていた千歌が振り返る。もちろんPVというのは、前回撮影したものだ。
「ランタン綺麗だって評判になったみたい」
善子の言うように、楽曲と共に空を舞うランタンには幻想的な美しさがあった。それが多くの人の心を鷲掴みにしたのだろう。人気急上昇率ではなんと1位。そしてランキングでは……
「99位!?」
遂に5000組以上いるスクールアイドルの中で、100位以内に入ったのだ。信じられないような状況に誰もが言葉を失う。一眞も例外ではなかった。
「キタキタ……! それって全国でってことでしょ? 5000組いる中で100位以内ってことでしょ?」
「一時的な盛り上がりってこともあるかもしれないけど、それでもすごいわね」
梨子は前置きした上での発言だったが、声色からは喜びが見えている。
「なんかさ、このままいったらラブライブ優勝できちゃうかも……」
「そんな簡単な訳ないでしょ」
千歌の思い上がりに、梨子はブレーキを掛けようとしているが彼女は「可能性はゼロではない」と感じていたのだった。一眞も話を聞きながら考えていた。梨子の言うように、ラブライブ優勝が狭き門であることを理解していながらも、どこかで期待している自分がいるということを。
(本当に狙えたりしてな……)
すると、パソコンのメールボックスに新着が入る。そのメール内容をルビィが読み上げ始める。そこには、今の自分たちには信じられないようなお知らせが載っていたのだった。
「Aqoursのみなさん。東京スクールアイドル運営委員会……」
「東京……?」
「東京って東にある都……」
「まんまの意味だぞ、それ」
日本の首都からのお知らせに、一瞬理解が追い付かないような事態に陥る。ここでは、それほどまでに大都会の存在が巨大で不鮮明なものなのだ。
困惑から歓喜の声に変わり始める部室の中……。
それは東京で行われる、スクールアイドルイベントへの招待だったのだ。
自分たちの未熟さを、この時の一眞も、Aqoursも知ることは無かった。そして大きな困難が待ち受けていることも……。
「なんでこんなことになってるのよ……」
「……」
梨子の指摘に言葉を返せず、無言になってしまう一眞。
移動費やらなにやらは、部活として支援が出るとのことで行くことを決めたAqours。そして今日は出発の日。内浦に住む人たちの集合場所として十千万で待っているのだが、千歌の服装を見て唖然としているのだ。
妙に派手派手な服に身を包んだ姿に。「ハイカラですね」なんて冗談でも言いたくない。
後ろで笑う美渡さんをみて(あ、あなたですか、原因は……)と静かに察する一眞のもとに、遅れてルビィや花丸たちも到着する。
「「ええ……」」
梨子と一眞が声をそろえてしまうほどには、こちらも服装が壊滅的だったのだ。
「どうでしょう……ちゃんとしてますか?」
ピンクが強調された服と装飾物が多く、こちらも壊滅的であった。なぜ姉の生徒会長は止めなかったのだろうとかも考えてしまったが、ここにいない人を責める気にはなれなかった。
「これで渋谷の険しい谷も大丈夫ずら」
花丸も花丸で、洞窟探検にでも赴くのだろうかと言わずにはいられない衣装であった。
「なにその仰々しい格好」
「渋谷には険しい谷は無いぞ。てか、そのピッケルは危ないから置いといてくれな……?」
2人の常識人枠(?)の指摘に驚愕している。
「2人とも地方感丸出しだよ」
「あなたもよ」
「え゛え゛ええええ!?」
”笑っていた自分も同じだった”という事実を冷たく指摘された千歌もショックを受けていた。
「はぁ……とりあえず、いつもの私服に着替えてこい」
志満さんに送迎されている車の中、一眞はとある悩みに襲われていた。それは自分の力のなさであった。最近は辛うじて勝てる……なんてことも多くなってきていたのだ。そのせいもあって、心ない言葉が飛び交っているテレビなどを見てしまい……なんてことも多くなってきた。
気にするな……とはわかってしながらも、その悩みは大きくなっていく一方なのであった。
「俺が……やらなくちゃいけないんだ……俺が……」
「なに、どうしたの?」
「あっ、いや、なんでも!?」
消え入りそうなレベルで呟いたおかげが、千歌の耳に入ることは無かった。
「そんなことより東京だよ! カズくんも楽しみでしょ!?」
「はいはい。楽しみだよ。……ったく、目輝かせ過ぎだ!」
不安な気持ちに蓋をするように、彼は千歌との他愛もない話に思考を預けていくのだった。
「遅いよ」
「悪い……色々あってな」
曜のジト目で見つめられながらも謝罪する一眞。出だしから不安が残るが、横にできた人だかりにも注目する一眞には驚きとかよりは、やっぱりか……という感情の方が勝っていた。
善子も例にもれず、顔を白塗りのメイクに赤く長い爪を付け、羽を付けたゴスロリチックな服に身を包んでいた。
「善子ちゃん」
「やってしまいましたね」
「善子ちゃんもすっかり堕天使ずら」
さっきまで同じような服装をしていた人たちが善子を笑う……なんて言う酷い場面に出くわしたが、もう何も言う気力がない一眞であった。
「善子じゃなくて………ヨハネッ!!」
ガバッと腕を大きく開いたせいで、彼女を見ていた人だかりは一瞬で散っていった。
「溜まりにたまった堕天使キャラを解放するの!」
なにやら善子が横で言っているが、一眞は去っていった人々の方向をずっと見ていた。
「イベント頑張って来てね」
「クラスの皆から。これ食べて浦の星のすごいところみんなに見せてあげて」
出発前に、同級生たちが見送りに来てくれたのだ。「頑張ってくる」とメンバーの面々は彼女たちに伝え、東京へと旅立っていくのだった。
~~
東京についた面々は、その情報量の多さに興奮してしまう。
「あまり騒ぐと、地方から来たと思われちゃうよ」
曜の注意によって冷静さを取り戻すも、千歌だけは秋葉の街で原宿のことを話してしまっているため、道行く人たちからは、可愛いものだと笑われてしまっていた。
さらには、それぞれがそれぞれの好きなものに夢中になてしまい、観光状態になってしまった。
「いました!!」
「すいませ~ん」
花丸とルビィがはぐれてしまったために電話で誘導ている中、曜は制服専門店に。善子は黒魔術が……どうたらの専門店に行ってしまった。
「仕方ない。数時間後にここに集まろう。それまでは自由行動ってことで」
一眞はそう伝えると、千歌が連絡を曜や善子に流してくれた。それを聞くや否や、梨子がどこかに走り去っていった。自由行動だから別にいいのだが。
自由行動中、一眞は1人で秋葉原の道を歩いていた。千歌たちにも一緒に回ろうと誘われたが、今はそんな気分になれなかったのだ。
「なにやってんだか……」
せっかく
ドスンッ
誰かの肩とぶつかり、一眞は咄嗟に謝罪する。しかし下げていた頭を上げると、そこには見覚えのある顔があったのだ。それも悪い意味での。
「やあ、久しぶりだね」
「……アオボシ」
アオボシと再会した一眞は黙って彼の後について行く。何が目的かわからないが、一眞には不安のような、安心のような複雑な気持ちが蠢いているのは確かであった。すると、ここまで無言だった彼が口を開いた。
「随分とお悩みのようだね」
「何のことだ」
彼と話すときの一眞は、無意識に声が重々しくなってしまう。しかしアオボシはそれに慣れているといった様子で、言い当ててみせた。
「何って、自分の力不足ってやつにだよ」
「……っ!?」
図星だからなのか、声だけでなく目つきも鋭くなっていく。「おいおい、そんな怖い顔するなって」とアオボシは顔に笑みを浮かべながら話を続けている。
「悩んでいるのは自分の欲しいものに蓋をしているから」
「欲しいものなんかない……!」
「いいや、あるね!」と高圧的な態度で否定し、そのまま話を続ける。
「今の君は純粋な力を望んでいる。脅威を虐げ、圧倒する力をね」
自分が力を……そんなことはないと否定しようとする。だが、ほんとうにそうか? と問いかけてくる自分もいた。迫ってくるような思いを否定するために、一眞は口を開く。
「俺は……ただみんなをま――――」
「いい子ぶるな!!」
アオボシの激昂にかき消される。そのひと声で、今までの空気とは明らかに異なるものへと変わったことを一眞は感じ取る。
「お前も所詮他の奴らと同じだ……。いつかそんな力に支配されるんだ」
見透かしているようなアオボシへ、一眞は無意識のうちに言葉を発する。自分でもなぜこの言葉が出たのかはわからない。しかしそれは、一眞自身が望んでいることであった。
「そうはならない……。俺は……誰も傷つかないためにこの力を使っているんだ」
途端、笑い出すアオボシ。だがすぐに笑いをやめる。
「歪だな」
「なに……?」
聞き返す一眞に、振り返りながら彼は答える。
「理想だけを並べているお前は酷く愚かってことだよ」
途端、彼もトーンを下げる。いや、こちらが本来の話し方なのだろう。彼は一眞の耳元へと近づく。
「誰も傷つかないなんて夢を見るな。現実はもっと悲惨だぞ。………まあ、すぐにわかるさ」
それだけを言い残し去っていくアオボシ。一眞が振り返るころには、その姿も見えなくなっていた。
「ん、ここどこだ……」
煮え切らない気持ちを抱えながら、一眞は元の場所に戻るために携帯を取り出した。
そんな2人の話が合った裏で、ルビィと花丸もとある出会いを経験していた。
「ルビィちゃん、ずっと悩んでるずら」
「ごめんね。なかなか決まらなくって」
「いいよ。そんなに焦らなくいても」
スクールアイドルのショップにいる2人は、何を買おうか頭を悩ましているのだった。とは言っても、主にルビィが、だが。
「これにしようかな……」
ルビィが手を伸ばすと、もう一方から手が伸び、どちらも同じ商品に手を重ねた。
「「あ、ごめんなさい」」
互いが互いに顔を見る。ルビィは、申し訳なさそうにしていたが、もう一方は驚いた顔になっていた。
「あなた……黒澤ルビィ?」
「ええ、ルビィ知ってるの?」
見ず知らずの人物から自分の名前が飛び出したことに驚愕する。スクールアイドルで名が知れ渡ったとはいえ、未だに慣れないことであったのだ。
「ええ。知っているわ。そっちは国木田花丸」
「ずらっ!?」
驚きのあまり、注意していた方言が出てきてしまう。
「じゃあAqoursこと、知ってくれてるんだね」
「ファンずら」
その言葉に戸惑いを見せながらも「そ、そういうことにしておくわ」と答える。
さらに、ルビィは彼女の髪に注目した。
「うわ~、ピンクの綺麗な髪だね」
「そ、そんな……。あなたの方が綺麗よ」
照れたのか、顔を逸らしながら逆に賞賛する少女。その姿に親しみやすさを感じたのか、ルビィや花丸は改めて自己紹介を始めた。
「あなたは?」
「私は……」
少し考え込むようにして、彼女は今の自分の名前を口に出した。
「スピカ」
「すぴか……ちゃん? 可愛い名前だね!」
「そんな……可愛いものじゃない」
「でも、スピカって真珠星の和名だった気がするずら。だから、スピカちゃんにピッタリな名前だと思うずら」
彼女は無言のままだったが、それでも雰囲気が和らいでいるようだ。すると、ルビィは壁にかかっていた時計に目をやる。そろそろ集合する時間になるようだ。
「ルビィたち、もう行くね!」
「待って、これは?」
買おうとした商品。それを買わなくていいのかと聞いているのだ。
「ううん、それはスピカちゃんに譲るよ」
自分たちを応援してくれている存在に会えたことが嬉しかったのだろう。ルビィは笑顔で答え、その場を後にした。
「何やってるんだろ……私」
スクールアイドル……。彼女が内浦で出会い、使命がありながらも、心奪われた存在。
自分でも無駄なものだとわかっている。自分が選んだことにも、やらなくてはいけないことにも。だが、彼女たちの歌い、踊る姿をもっと見たいと思う自分もいる。その商品を見つめながら、先の話を思い出す。
「髪褒めてくれたの……兄さんと、あの人以来……なのかな」
昔の思い出に浸る。ピンクに輝く髪を褒めたのは自分の兄と、短い間に知り合ったとある少年。この前まで死んでいると思った……
~~
「もう、時間無くなっちゃたよ~」
千歌がぼやきながらも一同は歩みを続けていた。ぼやきに反応した梨子は、買ってきたであろう袋をなぜか背後に隠している。
「なんで隠すんだ?」
「なんでもないから。なんでも……!」
明らかに動揺していたが、本人が何でもないというのならそうなのだろう。
「これはライブのための道具なの!?」
善子は両手に袋を下げていた。どんだけ買ったのだろうか。
「そんな格好して……」
声を震わす千歌の隣で歩く曜は、巫女の恰好をしていた。制服店で買ったのだろう。それぞれが満喫している光景に羨ましくなる一眞。目的もなく歩いたのがいけなかったのだが。
「だって神社に行くって言ってたから。似合いますでしょうか!」
「敬礼は違うと思う」と千歌の冷淡な指摘が聞こえながらも、一同はとある神社の前に到着した。
神田明神。μ’sがいつも練習をしていたと言われる場所だ。解散し、時がたった今でもたくさんのファンがここに訪れているそうだ。
だが今回は幸い、一眞たちが来た頃には誰もいないようである。
「上ってみない?」
「そうね」
そうと決まると、千歌は一番乗りで階段を駆け上がっていく。段差があり、急だったが、千歌には些細なことだった。自分が憧れているスクールアイドルと同じ場所で、同じ景色を、同じ目標を見ているのだから。
膝に手を突き、肺へと空気を送り込んでいる千歌。すると、とてもきれいな歌声が耳に入ってきたのだ。聞こえてくる方向へ視線を向けると、夕日で美しく照らされた神社の前に、2人少女の姿があった。見たところ、同じ制服着ている。
彼女たちは、千歌たちの存在に気付き、振り返る。するとAqoursのことを知っているようだった。
「PV見ました。すばらしかったです」
丁寧な言葉での賞賛に、千歌は緊張した容子で感謝の言葉を口にする。
「もしかして、明日のイベントでいらしたんですか?」
彼女たちの周りに、緊張した空気が張られたのを感じる。だが、「楽しみにしている」という言葉を残し、後は何も言わずに去っていく。加えてツインテールにした少女は、1年生の頭上を宙返りで飛び越した。
その姿に唖然としてしまうのは言うまでもなかった。
その日の夜は旅館に泊まることになり、部屋のなかでまたバタバタと騒いでいたのだが、それでも一眞の心には魚の骨が刺さったかのような違和感がぬぐい切れていなかったのだった。
みんなが寝静まった夜、別室では一眞が眠りへと落ちることができないようで、何度も寝返りを繰り返していた。
「明日がってときに……」
暑くなってきた体を涼めようと、一眞は外へと出ていく。まだ辛うじて涼しさを残した風に当たっていると、
「起きてたんだ」
後ろから声を掛けられる。それはよく聞き慣れた声であった。
「お前もか、千歌?」
「違うよ、こんな時間に外出てるカズくんを見つけたから」
浴衣姿の千歌はゆっくりと隣に近付く。
「最近、何かあった?」
「なんだよいきなり……」
「別に……いい意味でも悪い意味でもカズくん変わったなって」
オーブの力を手に入れたこと、スクールアイドルのマネージャーを始めたこと。こんな短い期間で、様々なことが自分を変えたのかもしれない。
「そりゃあな。普通星人がスクールアイドルはじめて、人が増えてって、東京までくることになって――――」
「そうじゃなくて」と、千歌に言葉を遮られる。それが突然であったから、しばしの戸惑いの後、彼は聞き返した。
「なんか……あった? 今日の車の中でも、神社に行く途中でも、というか最近はずっと……かな」
心臓が強く脈打つ。オーブの、ウルトラマンのことを言っているのだろうか。真剣に聞く彼女の瞳をしっかりと見据えることが、彼には出来なかった。
(俺は……)
筋肉を引き攣らせ、彼は笑顔で返した。
「なんでもないって、どうやったらもっと輝けるかなって考えてるだけだよ」
「そっか……」
その意味をどう捉えたらよかったのか、今の一眞には無理な相談であった。
「さあ、寝るか! 明日は万全な状態でやらなきゃいけないんだし!!」
話を終わらせ、中へと入っていく。
正直に言えば、これ以上聞かれたくなかったから……なのだが。
翌日、千歌たちはランニングでUTXのモニター前まで来ていた。別に、ここに来ようと目指していたわけではない。自然と、脚がここに赴いたのだ。初めてスクールアイドルを見て、輝きを知ったこの場所へ。
直後、モニターがついたと思ったら、音楽と共に映像が流れ始めた。それは彼女たちに最も関係のあるもの。その視線が一点に集中する。
「ラブ……ライブ」
デカデカと書かれた文字に目を輝かせる。
「今年のラブライブが発表になりました!!」
「ついにきたね」
「どうする?」
曜、梨子ともに尋ねるが、千歌は迷いなく言ってのける。
「もちろん出るよ。μ'sがそうだったように、学校を救ったように!」
みんなの意志も同じだと、千歌に視線が集まる。すでに思いは1つだ。
「今を全力で輝こう!」
円を組み、手を重ねる。改めて、全員で鼓舞するために。すると曜が外で見守る彼に視線と声を
送る。
「カズくんもだよ!」
「え、俺もかよ……」
集まる視線に耐え切れなくなった彼は、輪に加わり手を重ねた。
『Aqoursー! サンシャインーー!!』
「ランキング?」
「そうなの。出場するスクールアイドルのランキングを、お客さんの投票で決めることになているの!」
この東京のイベントの概要を、スタッフ兼司会の女性から説明を受けた。ネットの動画にもよく映っている人物であることから、長年この業界に携わってきていることが感じ取れた。
「上位に入れば一気に有名になるチャンスってことですよね?」
「まあ、そうなるかなー」
ここからは完全な実力勝負。入賞グループの力にねじ伏せられることも、あるいは番狂わせが起きることもあり得る。
「出番は2番目。元気にはっちゃけてねー!!」
「2番目……」
「前座ってことね」
周りの多くが、ラブライブ決勝に進んだグループなのだ。実績が圧倒的に足りていないAqoursがこの位置にいるのも仕方がないことであった。
改めて、スクールアイドルというものの大きさを突き付けられる。しかし、千歌は闘志を燃やすのだった。否、だからこそ……だ。
「大丈夫だよな……」
客席の方で見守る一眞は、不意に呟いた。ここまでのビッグイベントに出るのは初めてのAqours。そこで彼女たちがないを思い、何が起こるのか。未知数の可能性に不安を抱いているのだった。
(なんで俺がビビってるんだよ! マネージャーだろ。しっかりしろよ暁一眞……!)
緊張は、ステージに上がる彼女たちの方が何倍も上回っている。だからこそ彼は気持ちを強く保とうとした。
すると、ステージの証明が暗くなり、歓声が上がる。それがライブ開始の合図だ。そしてトップバッターとしてステージにいたのは……
「あの2人……!?」
昨日、神田明神で出会った2人組でだったのだ。
熱狂に包まれる歓声と共に、グループ名が読み上げられる。その名は……
「Saint Snow……」
アオボシと一眞。スピカとルビィ、花丸。彼らがなぜここにいるのかは……もう察していると思いますので言いません。
ちなみに一眞は客席の方にいるからと言って、投票はしませんからご心配なく。
ではまた次回で!