Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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暁一眞→シリウス
アオボシ→リゲル

これが本名です。それを踏まえて読んでください。



Episode26 こしかた~過去~

「大丈夫かっ!!」

 

煙の臭いが鼻をくすぐることになんとも思わないようになったのは、いつからだっただろうか。

 

倒れている人を抱え上げた数秒後に聞こえてくる爆発音と、人々の悲鳴。それに覆いかぶさるようにして鼓膜を振動する銃声の音と、勇ましい声。

 

極めつけは焼けた草花や人の臭い……。そんなのは日常茶飯事だ。俺は頭を振動させるような”怪獣”の音を背後に感じながら、避難所へと続く道の中で懸命に足を動かす。俺が逃げる為ではなく、抱えている人を預けに行くだけだ。

 

その後にはまたこの地獄に戻ってくる。

 

 

 

 

少しでも多くの人を助けるために。

 

 

 

 

 

「ったく、ミサイルばっか撃ちやがって……。ホントに怪獣かよ」

 

避難所に預けた後、再度怪獣と戦っている地へと戻ったが状況は劣勢であった。

 

目の前で猛威を振るう怪獣の全身に見られる突起物と口内からは、ミサイルやロケット弾を発射している。さらに口内のミサイルとは別に、火炎を吐いて辺り一面を炎の海へと変貌させているのだ。

 

特徴的なのは頭部に()()のような角を生やしている点だ。

 

 

応戦する軍隊の銃弾が、ヤツの体をどうにか撃ちぬこうとしているがそれも叶わない。

 

 

悔しいが、救助隊である俺には戦う力はない。体術などはとある奴から習ってはいるけれど、目の前で火を吹き、全身からミサイルを飛ばすようなヤツには効かないだろう。

 

 

”誰も傷つかない”のが俺の理想だ。しかしこの現実を見ていくほど、それが遠くなっている気がする。

 

「……っ!?」

 

すると、どこからともなく悲鳴が聞こえた…………ような気がした。

 

悲鳴は単なる音ではなく、心から心への救難信号だと考えている俺はその勘を頼りにして、救助者を探す。

 

自身の勘と、視力を使って命いっぱい探すと、みかん色の髪の毛の少女が蹲っているのを発見した。

 

彼女を捉えた俺は、ミサイルが飛び交う中を縫うようにして走り、その少女の元へと向かう。

 

「おい、大丈夫か? 立てるか?」

 

「お、お姉ちゃんが……」

 

涙を流している少女が指を指している方向には、多くの人々が地面に倒れていた。そのどれかが姉なのだろう。

 

しかし、もう生きているとは思えなかった。その倒れている人々のすべてが、黒く焼け焦げてしまっていたのだから。

 

「ごめん、君のお姉さんは……」

 

言いかけたところで、頭上から瓦礫が落ちてくるのが目に入った。俺は咄嗟に少女を庇うようにして抱きかかえる。

 

しかし、覚悟していたような衝撃が俺のもとに来ることは無かった。顔を上げると、そこには黒い服の裾をはためかせた俺と同じ、11、2歳くらいの少年が刀を振りかざした後だった。横に目を向けると、俺たちを押しつぶそうとした瓦礫が綺麗に斬られていた。その少年の名を呼ぶとともに礼を言った。

 

「リゲル、助かった」

 

剣を携えた男……少年は納刀すると、こちらに振り返り俺に説教を始めた。

 

「気を抜くな。お前ここが何処かわかっているのか?」

 

「俺たちの星だろ。十分に分かってる。行くぞ!」

 

「おい、そういう事じゃない!!」

 

少女を抱えて、俺とリゲルはミサイルの中を走っていく。

 

助けられなかった姉への想いに涙を流す少女の声が、爆発の音よりも大きく聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

それから数分後、ミサイル超獣ベロクロンは倒された。いや、とある融合にベロクロン自身の体が耐えきることができなかったのだろう。動きを止めたベロクロンの口に、交戦していた軍の放たれたロケット弾が決め手となりその体を地面に伏せたのだった。

 

「…………やはり私の力に耐えきることはできなかったか」

 

()()()の軍隊が去ってから数分後であった。

 

ベロクロンの体から、1人の男が姿を現した。数秒後、ベロクロンの体は細かい粒子状の光となり、その巨体を消滅させた。彼の左手には、赤く光る輪のようなアイテムが握られている。

 

これが示すのはただ一つ。怪獣はこの男が呼び出した……ということ。

 

「アルファルド様!!」

 

すると背後から男の名を呼ぶ者たちが走ってきた。

 

「本日もダメでしたか……」

 

「そのようだ。このダークリングで召喚した怪獣でも、やはり一体化すると活動時間が大幅に減るようだ」

 

「アルファルド様の能力がそれ程までに強力……ということなのでしょう」

 

部下の問いに鼻を鳴らすだけのアルファルド。この羨望の眼差しを向けられることに酔っているのだ。

 

ブロンドの髪をオールバックにし、サファイアブルーの瞳は、どこか生物としての生気を感じさせな程冷ややかなものであった。しかし、彼の口元には無意識のうちに薄ら笑いを浮かべている。

 

180を易々と超える身長を包むのは皮で作られたシャツやズボン。そしてその上には、豪華な装飾がなされた毛皮のガウンを纏っている。だが一番目を引くのは、額に飾られたいぶし銀の宝冠だろう。これは彼がとある惑星で高貴な身分であったことを示していた。

 

 

 

アルファルド・レグルス

 

 

 

レグリオス星と呼ばれるここから数百光年離れた惑星に住む異星人である。そんな彼がなぜこの惑星――――アルデバの大地に立っているのか。それは彼が”命が散る瞬間”というものにしか快楽を感じていない人物……というものが根底にあった。

 

 

 

 

彼はレグリオスという星の皇子として生を受けた。両親には惜しみない愛情を受けて育ったし、周りの環境にも不満はなかった。しかし、しかしそれでも彼の心が満たされることは無かった。

 

 

 

アルファルドが自身の喜び……快楽を感じたのは、外のとある光景を見た時だった。

 

簡単なものだった。生き物が生き物を食らう姿、襲い、傷つけ、命を散らす姿。それを見た時、アルファルドの中には大きな感情が生まれたのだった。

 

生物は死というものが自然の摂理で近づいたときに、または理不尽のもとに近付いてきたときに、どういった行動をとるのだろう……どういった感情を見せるのだろう……そのすべてが見たくなった。

 

手始めに自分の星の昆虫ではじめ、次には小動物……と段階を上げていった。

 

 

ここで、レグリオス星人特有の能力について触れなければいけない。彼らの種族は所謂怪獣という存在と一体化することができる。

 

一体化すれば力は底上げされるため、通常のスペックの倍の力を引き出すことができるが、大体一体化した怪獣の体がもたず、命を落としてしまう事がほとんどなので、基本的にレグリオスの種族はこの力を使うことは無かった。

 

しかし、アルファルドはこの力を使い続けた。例えそれが怪獣の命を奪うことになったとしても、その行為すらも命を散らすという瞬間に立ち会えるからだ。

 

 

 

一体化した怪獣……”レグリオス融合獣”と呼ばれる姿になり、その星に住まう害を加えない怪獣すらも手にかけるようになった彼。その後、彼は星全体へ……やがて宇宙の星々へと心を満たす行為は広がっていった。その頃の彼について行くような同胞もできた。そのほとんどが自分の考えとは一致しないような連中だったが、それでも心を満たせればそれでよかった。

 

そんな時だった。あの禍々しい光(ダークリング)と出会ったのは。

 

宇宙で最も邪悪な心を持つ者のもとを巡り、持ち主の能力を増幅させる……といういわれを持つアイテムを手に取ったアルファルドは、それで宇宙規模の侵略……虐殺を開始したのだった。現地調達で時間がかかった自身の快楽のための方法も一段と楽になり、彼は一層心を闇に染めていったのだ。

 

 

 

「今回はここで撤退だ。あまり早く進行しすぎても面白くないだろう」

 

「もうですか……? 随分と余裕ですね」

 

「余裕を持たなければ、いかなることも成し得ることはできない」

 

感情の起伏が感じれれない。まるで文字の羅列を口に出しているかのようにして、アルファルドは自身の宇宙船へと戻っていく。彼はまた無意識のうちに口角が上がっていたが、誰一人それに気づくことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

アルデバの避難所についた俺たちは、束の間の平和に息を吐いた。

 

「シリウス」

 

すると俺の隣にリゲルが腰を下ろす。

 

「いつまでそうやって人を助ける? この星は時期に終わる。なにをやっても無駄なんだよ」

 

「だとしても、俺は助けが必要な人たちには手を伸ばし続ける。そう決めてるんだ」

 

俺は先ほど助けたみかん色の髪の少女が、灰色の癖ッ毛の子、赤紫色の子とともに遊んでいる姿を目尻にリゲルへ伝えた。例え無駄だとしても、最期の時まで想いは変わらず”誰も傷つかない世界”という理想のためにやっていくと。

 

 

 

この惑星アルデバは、何年もの間侵略者からの攻撃を受け続けてきた。俺やリゲルの両親も、その時の侵略によって命を落としてしまったらしい。俺たち2人はそんな両親の顔も覚えていないくらいだから、相当早かったんだろう。

 

リゲルは星の軍隊へ、俺は救助隊へ入り何とか生きてきた。けど、脅威はそれだけでは終わらない。突如として現れたレグリオス星人と名乗るやつらによって侵略者は倒され、今は奴らがアルデバの地上を蹂躙している。

 

「誰も傷つかないなんて不可能だ」

 

現実を見て受け止めているリゲルは厳しく言い放つ。俺の考えは甘いのだと、そしてその理想には限界があり、想いでどうこうできるものではないのだと。……リゲルの言っていることはきっと正しい。俺はつくづくそう感じる。だけど……

 

「理想を追いかけたらダメか?」

 

「ダメじゃない。けど……愚かだ」

 

愚か……彼から見れば俺はそう見えているのだろう。

 

「そっか。じゃあ俺はいつまでたってもお利口にはなれそうもないな」

 

「………」

 

彼にそう言い残し、少女の元へ向かう。家族を失うなんてこの星だと珍しくはないが、それでも年齢が一桁の子どもには精神的ショックがデカすぎる。

 

「大丈夫?」

 

彼女の顔色は少しながら回復していた。目の前にいる同年代の2人の存在が大きいのだろう。すると、癖ッ毛の子がおもむろに口を開き始めた。それは、彼女の親から伝わった噂話らしい。

 

「あのね、あのね、パパから聞いた話なんだけど……宇宙には怪獣や宇宙人をやっつけてくれるような光の……う~んと……”ひかりの……きょじん”っていうのがいるらしいんだ! わたしたちのところにも助けに来てくれるかな?」

 

 

「……あ、ああ。きっとな。助けてくれる。俺たちが本当に来てほしいと願った時にな」

 

目をキラキラさせて語るその様には、この地獄のような惨状を覆してくれる希望のような存在だと思えた。俺はそのような話を聞いたことない。どうせならもっと早く知りたかったという微妙な感想も出てくるが、彼女の表情に顔をほころばせるだけで口には出さなかった。

 

「そんな夢みたいな話はやめろ」

 

横からリゲルの冷えた声が飛んできたため、俺は慌ててやめさせる。

 

「おい、そんなこと言うなよ。可哀想だろ」

 

「なにが可哀想だ。こういった希望的観測は、後々に悪い結果を招く。今のうちから諦めさせといて何が悪い?」

 

「バカ、相手は子どもだぞ」

 

「関係ない。それに僕たちも子どもだ」

 

「いちいち突っかかるな。細かいことは良いだろホント……」

 

――――だから同年代にも嫌われるんだ。

 

無意識に口が動き、その音を出してしまう。

 

「なんだと?」

 

やってしまった。俺は背に刺さる目線の気配を感じてため息を吐いてしまう。

 

「ちょっとこい」

 

「なんだよ。何も言ってないぞ?」

 

「黙ってついてこい」

 

俺は彼が何をしようとしているのか薄々察していた。なんせ、彼の両手には二振りの勘が握られていたのだから。

 

 

 

 

 

 

鋭い刃が宙を斬っていき俺へと接近する。だがそれをギリギリで躱すも、胸に衝撃を感じた瞬間に体が宙へと浮いた。

 

数秒後、背中に広がっていく痛みで肺の中の空気を出し切ってしまう。そこでようやく吹き飛ばされたのだと脳が理解する。

 

休む間もなく、彼の剣は俺の顔を捉えようと容赦なく振り下ろされる。剣の腹で防ぎ、その後も振るわれ続ける攻撃をどうにかして躱す。

 

刹那、目に捉えることのできない速度で首へと突き付けられた。

 

「知ってるか、争いは感情から始まる。憎い、守りたい……そういったやつだ。でも、戦いの真っただ中じゃ邪魔になるだけ……これは何回も言ってるよな?」

 

リゲルは再度構える。実戦だったらここで死んでいるぞ。そう言っているのだ。剣の腕では……いや全般的な力で俺はリゲルに対抗できない。しかし無理だと諦める気もない。俺は学びたいんだ。リゲルから、”戦う”ということを。そしてその意味を。

 

「そう割り切りたいよ……俺もっ!!」

 

リゲルより先に動いたはずなのに、すでに目の前には頭を蹴ろうとする彼の右足。剣だけでなく、全てを使う。悔しいが、今の俺にはできない芸当だ。

 

鍔迫り合いを起こし、中心で火花が散る。

 

「もう何年もやってるのに、お前に追いついた気がしない」

 

「僕も成長してるからね。お前に追いつかれる時なんて、僕は終わりだ」

 

「煽ってんのかよ!」

 

力を入れた俺だったが、逆にリゲルは力に逆らわず後ろに下がった。その為前のめりになった俺の腹に、何発目かの足蹴りが食い込む。その力によって後方の岩場まで蹴飛ばされてしまった。

 

「はあ……はあ……強ぇよやっぱ……」

 

「だろ?」

 

 

 

いつかは追いつき、追い越したい。去っていくリゲルの背中を見送りながら俺はそう思っていた。同時に、癖ッ毛の少女の話も思い出す。

 

光の巨人。もしそんなやつがいたとしたら、おそらくリゲルのような奴だ。現実を見極め、感情に支配されることのないような戦士。俺とは正反対なんだろうな……と、素直に嫉妬してしまう。

 

力のない笑いが、俺の口から洩れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

この星の安息なんてものは長く続かない。外から轟音が響けば、それは怪獣たちが蹂躙しているという合図になる。僕は避難所を守る(自分の仕事)のために、刀を持って外へと飛び出した。

 

正直、この星に守るべき価値など僕には見出せてない。いくら抵抗しようが、その内滅びるのがわかっていいる。だったら、侵略者の長について行った方がマシだ。それについてどういわれようと、正直どうでもいい。逆に興味があるくらいだ……。侵略とはどういうものか。

 

しかしその点では、理想を追い求めるシリウスが羨ましい。どんな状況でも希望を捨てない彼の在り方。それが愚かで歪でもね。

 

だが同時にアイツは現実を知らなすぎる。彼の発言に何度顔しかめたことか。……思い出すと顔に出そうだ。

 

 

 

 

 

どうせ今日も「誰かを助けるとか言って」飛び出すのだろう。

 

 

 

 

 

目の前にはⅤ時のような頭に光る赤いバイザー。きつね色のような鋼鉄の体。両腕をドリル、またはガンポッドを装備したロボット兵団が迫っていた。

 

先頭で兵団を率いているのも同じようなロボット。しかし、頭には王冠のようなフレームが装飾されている。恐らく統率者だ。

 

さらに人サイズの兵士も迫ってきた。白と黒の体に赤く光るモノアイが、意思を持たない機械だということを表している。

 

リゲル以外の軍人は光線銃や実弾銃で交戦しているが、どうにも状況は悪くなる一方だ。一方的に蹂躙され、ガンポッドで撃ちぬかれ黒焦げになっていく。兵士の剣に貫かれ、地面に倒れている人々もいる。

 

「嫌な臭いだよ、まったく……」

 

腕で顔を覆い、リゲルは呟く。

 

「――――ッ!!」

 

背後から襲い掛ってきた兵士”バリスレイダー”の気配を察知していたリゲルは素早く腰に吊り下げていた刀を振りぬく。一体倒しただけでは当然終わらない。アルデバに住む人々をただ抹殺するために集まってきたバリスレイダーを見据えたリゲルは、その腰を深く落とした。

 

 

 

 

 

 

 

――――完全に不覚を取られた。

 

地面に膝をついたリゲルは、その状況を未だ受け入れることができなかった。バリスレイダーはそこまで戦闘力が高くないと、戦う中で気付き始めていた。しかし、何事にも例外……イレギュラーは存在する。頭部に王冠のような装飾が施されたバリスレイダーの存在に、リゲルは劣勢を強いられているのだった。

 

自身が負けるという……思ってもみなかった結果に、リゲルのそのプライドは大きく傷ついたのだ。

 

「くっ……こ、こんなやつに……」

 

悔しさから歯を食いしばることしかできない彼へと、無慈悲にも刃が振り下ろされようとしていた。

 

 

「やめろーーー!!!!」

 

間一髪。シリウスの蹴りがアンドロイドの顔面へと入れられた。

 

「―――――ッ!?!?!?」

 

ごく僅かな間に与えらえた攻撃を理解することなく、白と黒の体は地面へと吹き飛んだ。

 

「無事か!?」

 

血相を変えたシリウスはリゲルの安全を確認すると、未だ起き上がろうとするバリスレイダーを見据えた。

 

「これ、借りるぞ!」

 

「お、おい……無茶だ。やめろ!!」

 

痛みが残響する体で精一杯の声を出し、シリウスを止める。ここにきて友人の死体など見たくなかったからだ。

 

「無茶だとしても無理じゃないはずだ……!」

 

迫りくるアンドロイドに向かい、シリウスは友人の剣を持って構えた。慣れない実戦に剣先が震えているが、”もうやめた”なんてことは通用しない。ここからは『やるか』、『やられるか』しかない。

 

「■■■ーー!」

 

靴底の熱を感じながら、シリウスはアンドロイドへと突進。刀を上段から振りかぶる。

 

しかしその単調ともいえる攻撃をあっさりと躱され、代わりにカウンターを受けてしまった。

 

「――――ガハッ……ッ!」

 

肺にある空気がすべて排出される。衝撃と激痛以外の感覚がすべてシャットアウトされる。しかし歯を食いしばり、兵士を睨んだシリウス。倒れそうになる体を必死にこらえ、渾身の力で剣を水平に動かす。

 

だがこれすらも剣で受け止められ、耳を傷めるような衝撃音が鳴り響いた。小さく舞ったっ火花が、両者の顔を照らす。

 

一歩も力を抜けない鍔迫り合いの中、シリウスは隙を作ろうと頭をフル回転。

 

(どうする……)

 

「くっ……うう……」

 

「――――!!」

 

例えここで斬り押そうとしても、自分の力ではどうしようもないとシリウスは考えていた。もう一度カウンターを食らい、今度こそ本当に死ぬだろうと。死神……とでもいうべきなのだろうか。彼の背から冷や汗が伝っていく。

 

刹那、背後でにいるリゲルの動きを思い出した彼は、相手の力に逆らわず、わざと地面に倒れこむ。さらに相手の股下を潜り抜け、背中を蹴飛ばして大きく距離を取った。

 

「――――!?!?!!」

 

理解できなかったのか、逆上したように迫ってくる攻撃をシリウスは紙一重で躱す。

 

「……なんだ……その動き……」

 

急に体の動きが良くなったシリウスに、リゲルは驚愕の表情を浮かべた。先ほどまでは初心者のように単調だった。なのに、鍔迫り合いの時から格段に素早さも威力も増し始めている。自分よりまだまだ下だと感じていたシリウスに、追いつかれ、追い越されそうな感覚……。

 

急激なまでの成長速度。

 

「そうか……お前は……」

 

リゲルは確信した。彼の秘められた力を……。シリウスは追い詰められれば追いつめられるほど強くなっていく。生き死にを決めるような、命のやり取りをしているようなこの状況であれば……尚更。

 

「……ッ!」

 

兵士の剣に毛先が斬り落とされる。だがそれを恐れることなく突っ込んでいく。目の前の敵よりもはるか先を睨むんでいるよな瞳にバリスレイダーの姿が反射する。

 

がら空きとなった腹に蹴りを一発。迫る剣先を受け流してサマーソルトキックが機械の顎を捉える。開いた距離を即座に縮めるとともに、突き技を放とうと右腕を引き絞る。

 

「■■■■■ーーーーー!!!」

 

同じようにカウンター狙いで腕を引き絞ったアンドロイド。

 

「――――――ッ!!!」

 

両者の剣は、ほぼ同時と言えるタイミングで突き出された。

 

 

しかし、頭を刺し穿ったのはリゲルの刀……。対するアンドロイドの剣は空気を貫き、静止している。

 

 

「…………」

 

緊張の糸が切れたのか、剣を引き抜くと同時にシリウスは座り込む。

 

するとバタンッとその重たそうな体が地面に倒れた。そこでようやく、バリスレイダーゼノが機能を停止したという事を理解できた。

 

「はあ……はあ……はあ……はあ……大丈夫か、リゲル?」

 

息を切らしながらリゲルへ手を差し伸べる。しかし、彼は手を取ることなく立ち上がった。

 

 

リゲルが遠方を見ると、どうやら機械兵の進行も止んでいるようだった。彼は何も言わず、避難所の方へと足早に行ってしまう。

 

その真意にシリウスは気付くことは無かった。

 

 

 

バリスレイダーに負けたこと。そして負けた相手をあのシリウスが倒したこと。それはリゲルにとって、耐えがたい屈辱だったのだ。

 

 

 

 

 

これが、彼を闇へと誘う一因となったことを、この時は誰も知らなかった。




レグリオス融合獣
レグリオス星人が怪獣(ロボットやアンドロイドにも可)などに一体化することで生まれる融合怪獣。体の主導権はレグリオス星人。特徴として頭部に王冠を模した骨格が形成されたり、装飾が施されたりする。(名前は変わらない)

これも個人的な才能によって左右されるため、才能がないと……。でも力は倍になるから侮れない。

欠点として一体化している怪獣などの肉体が持たず、長時間の運用は出来ない。
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