翌日。熱い日射しが照り付ける中、曜は浦の星へと向かっていた。
昨日の鞠莉との会話で”本音をぶつける”とアドバイスを貰ったものの、それが実際にできるかどうかは本人が一番不安に感じていた。そのせいもあってか、想い石のことは気に留めるどころか、すっかり忘れてしまっていた。
「おはよー!」
不安な表情を見せないように、いつもの調子で部室の扉を開けると曜以外の全員が揃っていた。
「曜ちゃん! 見てみてコレ!」
嬉しさのあまり興奮しているのか、千歌は曜に右腕を見せる。するとそこにはオレンジ色のシュシュを付けていたのだ。”みんなへのお礼”として梨子が送ってきてくれたものだと千歌は説明する。
「梨子ちゃんもこれ付けてコンクール出るって。はい、曜ちゃんのもあるよ!」
そこでまた彼女の不安が疼いてしまう。それと同時に、本音を言おうとしたその決心が揺らぐ。今言ってしまうと、コンディションに悪影響が出るのではないか。千歌との間に今よりも大きく、厚い壁ができてしまうのではないか。……最後には、彼女が離れていってしまうのではないか。
それを思う曜は、何も言えなくなってしまった。
「そろそろ特訓始めますわよー!」
すると体育館の方からダイヤの声が聞こえてくる。それを聞いた全員が元気よく部室を後にしていく。梨子からもらったシュシュでより一層熱が入ったのだろう。
「曜ちゃんも着替え急いでね!」
千歌も部室を出ていこうとするが、曜のひと声で足を止める。
「………がんばろうね」
「うん!」
でも、それだけしか伝えることはできなかった。
「これってリストバンドか……」
練習が終わった後、部室の中で一眞は右腕に付けたリストバンドを見上げる。さすがに男子にシュシュというわけにもいかなかったのかリストバンドを作ってくれたのだ。赤や灰色、黒の色はオーブオリジンを想起させ、さらに真ん中には青い色のリング。おそらくカラータイマーを模したデザインだ。
「梨子もなかなか凝ったもの作るよな~」
呟くものの、贈り物など貰ったことがないに等しい一眞からは嬉しさがにじみ出ていた。
(にしても、曜は心ここにあらずって感じか……)
今日の練習はあまり目立ったミスもなく踊り終えることができた。とはいえ、未だ安心感が無いというのも事実だ。鞠莉とは話したみたいだが、それでも未だに解決には向かっていなさそうだと感じる。
「一眞さん、ちょっと……」
すると部室のドアから顔を出した花丸に呼ばれる。
「どうした、花丸?」
「至急見て欲しいものがあるずら」
真剣……いや恐れているような花丸の表情に一眞も息を呑み、花丸と共に図書室へと向かった。
「一眞さん、これ見てください!」
図書室に向かうと、そこにはルビィや善子がパソコンの前に立っていた。そして一眞が来るや否や、ルビィは彼を引っ張ってパソコンの前まで連れていく。パソコンを覗くと、何やら画面には古文書……太平風土記のデータが映し出されていた。
「これって……」
「昨日の想い石の話、覚えているずらか?」
「ああ、まあな」
昨日、動画で見ていた不思議な石のことだろう。石というよりは石碑に近いが。
「ずら丸、どうやら昨日調べてきたらしいのよ。その石のこと」
落ち着きつつも呆れた様子で善子は話しながら、首を横へと振る。
「あの石……どうやらとんでもないものを封じている石みたいずら」
――――むかしむかし、ある所に硬い友情で結ばれた2人の武士がいた。その2人はいかなる戦でも生き残り、武勲を上げていたそうだ。
しかし、ある時に裏切りにあい2人の友情は引き裂かれることになってしまった。自身が裏切られ、処刑されることになった武士。
命を落とした後、彼は自分と親友のような関係を嫉妬し、友人との関係、人々の縁……人という個では生きられない生物の強みを断つ呪いを振りまく怨霊鬼となってしまったのだ。
だが絶大な力を持つ法師に封印され、その力で人々の願いを叶えるようになったという。
生前は勇猛な紅蓮の鎧をその身に纏った騎馬武将であることから呼ばれたその名は……
「……紅蓮騎」
想い石に秘められた秘密を読み解いた図書室の空気は、夏とは言えない程の異様な温度となり漂っていた。
「で、でも……今はその力を良いことに使ってるんだからいいじゃないっ!」
震えた声をどうにか誤魔化そうと善子は声を上げるが、残念ながらバレバレである。
「ル、ルビィもここまでのものとは知りませんでした……」
「そうだな。でも今は大丈夫にしろ、警戒はしとかないと……」
アオボシ辺りが知ったら、間違いなく利用してくるだろうと一眞は予測していた。
その時、暗雲が青い空を覆い隠した。昼間のはずなのに、まるで夜のように暗い。突然のことにキョロキョロと見回すルビィや善子。しかし花丸だけは違った。
「あ、あれ……見るずら……」
花丸が指を指す方向の窓から顔を出す。すると、赤い甲冑を身に纏い、黒の顔当ての上に光る瞳は青く輝いた巨人のような姿が内浦の地面を歩いていた。否、正しくは歩いてはおらず、彷徨っていると言った方が正しい。実体のない朧気な前身は空気に溶けるよう……それはまさしく亡霊。
「なんだあれ……」
「多分、紅蓮騎ずら」
目の前で不気味な唸り声を上げながら彷徨う武者の亡霊。どこかに視線を送るように振り向くと、その亡霊はすぐさま消えていく。すると気が付けば、空も数分前と同じように眩しい夏の日差しと青い空に戻っていた。
浦の星に残ていたAqoursのメンバー全員がその武者の姿を目撃しており、曜も例外ではなかった。
~~
やばい……そう
(見間違いじゃない……あの亡霊は間違いなく私を見てた……)
曜は先ほどの光景を思い出す。そこには曜に向かって、青い瞳を向ける赤い甲冑姿の亡霊。間違いなく自分を見ていたという確信があった。
だからこそ、アレを確認せずにはいられなかった。
曜はバスに飛び乗って最寄りのバス停まで着くと、想い石の場所まで全力で駆けていく。
(どうか……どうか……)
別の祈りを胸の中で唱えながら走っていくが、その願いが叶うことは無かった。
「そ、そんな……」
想い石……それ自体が無いのだ。駆け寄って、四つん這いになりながら探すが、そこにはあの大きな石は何処にも無い。まるで元から存在しなかったように。
「なんで……そんな……」
「大した子だよ、君は」
震える声を漏らした曜は、その怪しげな声の方向に視線を向けた。
黒いスーツを纏った男が
「あなた……」
アオボシは彼女の驚愕した顔が気に入ったのか、口角を上げる。
「眠っていた怨霊を目覚めさせるとはね……」
「私が……?」
空を見据えながら話すアオボシとは対照的に、曜は自分が呼び出したという事実に動揺を隠せなかった。
「人生って、時には思いもよらないことが起こるんだ。君の心の中にある小さな闇が、あの怨霊を目覚めさせたんだ」
「違う……私はそんなこと――――「望んでたんだろ、心のどこかで悲劇が起きることを。お前も闇を抱えている」
歩み寄ってくるアオボシに、曜はもしかしたらそうかもしれないと……認めそうになってしまう。
「勝手なこと言ってんじゃねえよ」
しかし、それは新たな人物の介入で止められた。一眞だ。
「誰の心にも闇はある……闇があるから光があるんだ。闇を抱えてない人間に、誰かを……みんなを照らすことはできない」
「……フンッ、まあいいさ。君も再び、現実に打ちのめされるだろうさ、シリウス」
それだけを残すと、アオボシは煙のように消えていくのだった。
「カズくん、どうしよう……私……」
やってしまったという後悔、自分の中に闇があったという彼の指摘に声が震える。だが、一眞は気にしている様子はない。
「アイツ……良いこと言うんだな、あのなりで」
「……え?」
突然発せられた一眞の言葉に、曜は素っ頓狂な声で返してしまう。
「人生には思いもよらないこと起こるって。なら、曜が本当に望めば未来は変えられる。そういうことなんだと思う」
それは一眞自身が”彼”から教わったことでもあった。
「それに、曜は2人と話しておかないと」
「2人……?」
曜は分からなかったみたいだが、一眞は悪戯を仕掛けた悪ガキのように笑っていた。
しかし突然、空が暗雲に包まれてしまう。つまり、あの亡霊が再び現れようとしているのだった。
「俺が紅蓮騎をどうにかする。その間に、曜は話し合っとけよ」
都合がいいのか悪いのか、曜の着信音が鳴り響く。すかさず確認すると、そこには梨子からの着信が表示されていた。曜は恐る恐る耳元へと近づける。
『曜ちゃん?』
「梨子ちゃん……どうしたの?」
そこで梨子は一眞から練習のことを聞いたらしく、電話をかけてきたということであった。
~~
沼津の地面を踏んで歩みを進めていく紅蓮騎。その姿はさっきまでとは違い、実態を持っているようだった。その武者はなにやら移動しているある者を狙っているようで、下を見ながら探している。
「■■■■~……!」
男女が混ざったような呻き声をあげ、左腰から刀を抜いた紅蓮鬼は道路に向かって振り下ろそうとした。
――――しかし、それを2対の光のブーメランが牽制。
さらに数秒後、上空から赤い兜を狙った青く輝く右足が迫ってきた。
(やらせるかよっ……!)
ウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュの技”流星スラッシュキック”は赤い兜に見事命中。紅蓮騎を後退させることに成功した。
『お前には……誰も狙わせない。悲劇なんかも起こさせないッ!!』
オーブスラッガーランスを生成し、紅蓮鬼に向かって構える。対する武者も、刀をぎらつかせ上段へと構えた。かつては、そうやって戦の時も戦っていたのだろう。
両者はほぼ同時に地面を蹴り上げて突進。両者互いの刃が交わり、火花が散っていく。
『私のことは気にしないで、2人でやりやすい形にしてね』
「でも、もう……」
『無理に合わせちゃダメよ? 曜ちゃんには曜ちゃんらしい動きがあるんだし』
曜の元気なさげな返しに梨子は何かを感じ取ったのだろう。しかし、曜はそうは思えなかったらしく「そうかな……」と否定的に返してしまう。
『千歌ちゃんも絶対そう思ってる』
「……そんなこと……ないよ」
千歌だと言えなかった本音を曜は梨子へと吐露する。千歌の隣は梨子が合っていると、千歌は梨子といる方が嬉しそうだったし、なにより……梨子のために頑張ると言っていたから、と。
それは千歌ではなく、梨子だからこそ話せるその本音だった。
梨子はただ、『そんなこと思っていたんだ』とだけ返す。その声はとても穏やかであったが、曜にはそう聞こえなかったのかもしれない。曜は涙をぬぐい、携帯を耳から離す。次に来る言葉が、怖かったからだ。
『千歌ちゃん、前言ってたんだよ?』
梨子は、以前千歌が話していた”彼女の本音”を曜へと伝えていくのだった。
「■■■■■■■■■ッッッ!!!」
幾度目かの刃の交差。オーブはランスを振るい、紅蓮鬼は刀を振るう。互いの刃には刃で答える。少しでも体を動かせば、刃が己の体を切り裂くような至近距離から後退。オーブスラッガーシュートを今一度放つ。しかし、紅蓮騎は2対の刃を回避、そして自身の刀で弾き飛ばした。
(この……小細工は効かないってか……!?)
空高くジャンプし、再度オーブスラッガーランスを生成。赤い甲冑の胸元に突き立てる。しかしそれすらも回避した紅蓮の武者。
自分は追撃を受けないように、身体を小さく丸め込ませ地面へと着地。回転の勢いを殺さずに向き直り、すかさずランスを振るった。だがその姿は見当たらない。
そこに放たれた虚を突いた一撃。脇腹に蹴りを入れられたのだ。気を抜いてしまい、底に力強い一撃が加わったことで地面へと倒れこむオーブ。
「■■■■■ッ!」
自身の腹に突き刺そうと逆手持ちした刀を振り上げてくるが、紙一重で躱すことに成功。打撃を加えてその場を脱出した。
(刀より槍は間合いがある……なら!)
ランスの石突の近くを持って、まるでマントを振り回すかのように豪快に扱う。刀の間合いに入らず、それでいてランスでの攻撃を狙ったものだ。
しかし、その攻撃も虚しく紅蓮騎にランスを掴まれてしまい。遠くへと飛ばした。
さらには己の刀の刃を光らせる。明らかに挑発をしてきているのだ。
――――剣を使えと。
(ンの野郎……その挑発、あえて乗ってやるよ!)
《覚醒せよ! オーブオリジン!!》
オーブカリバーを使い、斬りかかっていくオーブオリジン。
飛び掛かってきた紅蓮騎の上段切りをギリギリで回避。オーブカリバーを飛ばされながらも、紅蓮騎の体に打撃を与えて隙を作っていく。
足元を狙った水平切りを宙返りで避けるとともに、オーブカリバーを拾い上げ再度肉薄する。
「ハアアアアアアアアッッ!!!」
「■■■■■■■■ッッ!!!」
鍔迫り合いに持ち込み、両者は互いに睨み合った。
「曜ちゃんっ!」
梨子との通話を終えた曜に声をかけたのは……練習着に身を包んだ千歌であった。
「千歌ちゃん、どうして……?」
あまりのことに理解が追い付かない曜。それもそのはず、ここは沼津。そしてすぐ近くでは紅蓮鬼とオーブが戦っている中、千歌は来たのだから。
「練習しようと思って」
「練習……?」
オウム返しとなった曜に元気よく頷く千歌。さらに彼女は続ける。
「やっぱり、曜ちゃんは自分のステップでダンスしたほうが良い! 合わせるんじゃなくて、1から作り直したほうが良い!」
「――――曜ちゃんと私の2人で!」
梨子との通話で聞かせてくれた、千歌の本心。
曜の誘いをいつも断っていたばかりで、ずっとそれが気になっていたこと。曜と同じように千歌もまた、同じような思いを抱えていたということ。
だからこそ、スクールアイドルだけは絶対に一緒にやると。絶対に曜とやり遂げると……彼女が誓っていたこと。
一緒にできなかった曜。誘いを断ってきてしまった千歌。その2人が共通のものとして出会ったもの。それがスクールアイドルなのだと。
「千歌ちゃん……汗かいてる」
「バス行っちゃった後だったし、美渡ねえも志満ねえも忙しいって言うし……」
そこまでして自分のもとに来てくれたのだ。それはなんで? と聞く前に、千歌が自ら話してくれた。
「曜ちゃんなんか気にしてたっぽいから、居ても立ってもいられなくなって……へへ……」
自分を殴りたくなる。千歌がどのような気持ちでいたのかも知らず、自分は彼女に嫌われているんじゃないかと決めつけていたことに。千歌のことを少しでも疑ってしまった事に……。
「私……バカだ。バカ曜だ……」
「……え?」
そこで曜は、千歌へと今まで抱えていた胸の内を明かした。どう思ってしまっていたのか、これからはどうしたいのか……。
「それに……あの侍の怨霊を呼び覚ましたのは……私なんだ。私の中に小さな不安が、ちっちゃな闇が……あの怨霊を目覚めさせちゃった……怨霊が狙ってるのは多分……千歌ちゃん。私のせいなの……ほんとに……ごめんね……」
涙があふれていても、曜は千歌の目を見て全てを打ち明ける。話すことで小さな、小さな闇があることを自分も認識したかったから。そして千歌には正直に話しておきたかったから。
「私も……曜ちゃんのこと気付いてあげられなかった。だから、私もバカ千歌だね」
千歌は、街で凄まじい剣戟を繰り広げている両者を見つめる。赤と青の光が尾を引いて時にはぶつかり合い、時には空を切る。
千歌は目を瞑り、自分の心に問いかけるようにして言葉を紡いだ。
「それに……もし私が曜ちゃんの立場でも、同じことしちゃってたと思う」
千歌は曜に振り向いて、手を伸ばした。
「だから止めよう? 一緒に」
刃を両手に持って構えた紅蓮騎。すると口から妖気を吹きかけ、刀に纏わせた。
ただ事ではないその動きに警戒するオーブ。
甲冑と同じ紅蓮を纏った剣技”妖気紅蓮返し”を放っていく。オーブカリバーを使って防いでいくが、刀を使いこなしていった武者の方が一段上であったためか、オーブの胸元に1撃、2撃とくらってしまった。
地面に倒れ伏すとともに、強烈な痛みが胸部を走っていく。その苦痛のせいで力のない声が上がってしまう。さらに体にも力が入らないため、オーブは立ちあがることができなかった。
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
全力の叫びと共に、曜と千歌が紅蓮騎の前に立つ。千歌をみつけると、紅蓮の武者は刀を構えて振り下ろそうとする。しかし曜はそんな光景を目の前にしても、臆することなく呼びかける。それはおそらく、隣に親友がいるからだろう。
「私のちっぽけな思いに惑わされないで!」
少しだけ首をかしげる紅蓮騎に、曜は続ける。
「あなたが眠っていた場所に、たくさんのお供え品や手紙があったでしょ? 千歌ちゃんを傷つけようとしているのもあなただけど、誰かの願いを叶えて祝福していたのもあなたなんだよ! どっちの自分が良かったか、幸せだったか考えてみて……!」
その言葉を聞いた紅蓮騎は戸惑う。かつて裏切られて怨霊となった自分を頼り、そしてありがとうと感謝の言葉をくれた人々。それは想い石となって封印されていた時でも、感謝された顔を、幸せそうな顔を忘れることは無かった。
「■■■……ッ!!」
だがそれでも、刀を振り下ろそうとする紅蓮騎に曜は呼びかける。
千歌は何も言わなかった。隣にいる彼女を信じていたから。
「お願い……自分の気持ちに耳を傾けて!」
自身の気持ちの葛藤からなのか、苦しそうに咆哮を上げる。
「あなたならできるよ……できるからーー!!」
曜の声を聞きとった武者は、オーブの方へと向き直る。そして
刀を地面に突き刺した。
そして腕を広げた。――――やってくれと、首を縦に振って。
(あなたは俺のあり得たかもしれない姿だ。だから……だからせめて……安らかに眠ってくれ……!)
オーブカリバーの水のエレメントを解放。紅蓮騎を中心とし水柱が上がり、その体を包み込む。
「……ごめんね」
曜は自分の心の中にある小さな思いで復活させてしまった事を謝罪する。紅蓮騎は曜の方を少しだけ振り向く。何を感じたのか……それはおそらく、曜にしかわからない。
オーブカリバーで一閃するものの、痛みは感じさせない。静かに眠っていくような、洗い流されていくような……そんな優しい一撃。
紅蓮騎の消えていった静かな夕方の空には、虹がかかっていた。
~~
来る予備予選当日。
客席でAqoursの出番を待つ一眞はふと、自身が右腕に付けたリストバンドに触れた。例え離れていても、その心はつながっている、常に一緒だと、そう思わせてくれる。
どうして千歌がスクールアイドルを始めようと思ったのか。今ならわかる気がする。彼女の”輝く”というのは1人だけではダメだったのだ。誰かと共に手を取り合い、みんなともに輝くこと。
曜や梨子や……普通の皆が集まり、1人ではできない大きな輝きを作ること。歌い、そして踊り、学校や観客へと繋がっていき、輝き輪は広がっていく……。それが千歌がスクールアイドルの中で見つけた”輝き”というもの。
披露された曲のダンスが、歌が……遠き地の仲間を想う気持ちが伝わってくる。
――――想いよひとつになれ
――――――――――
「まったく……なんだったんだあれ……」
Aqoursのステージが始まる前、一眞はとある出来事に疑問を抱いていた。それは控室に向かうAqoursメンバーを見送った後のこと。
「そうだ、カズくん。この前のこと」
「いいよ、別に。逆に俺が助けられちゃったしな。こっちこそありがとう」
曜が話すのは紅蓮騎との戦いのことだろう。あの後、想い石も元の場所に戻ったとの話だ。今も彼は、誰かの願いを叶えているに違いない。
「よしこれで話おわり! 早く控室に行って準備しないと……うわっ!?」
一眞は曜の突然の行動に仰天する。
なんと一眞の胸元に曜が飛び込んできたのだ。さらに両腕を一眞の体に回して。
「カズくん……ありがとう! ……エヘヘ」
満面の笑みで言われたその時の情景を思い返すと、急に顔が熱くなる。しかし一眞はどうしてこんなにも顔が熱くなったのか、理由は分からなかった。
「いけない、いけない……他のスクールアイドルもチェックしとかないと」
まもなく始まるというアナウンスに、一眞はステージへと意識を向けた。しかしライブが始まってからも時より、その時のことを思い出しては顔を熱くしていたのだった。
オーブウォーターカリバーは浄化技ってわけでもないみたいですけど、当てる相手によって威力とかその他云々調整できたらいいなって思って書かせてもらいました。
最期のやつは何も言いません。
サンシャイン1期も残すとこあと2話。頑張っていきたいです。