Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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虹アニメ最高かよ。

そして一昨日、昨日とSaint Snowの札幌公演。行きたかった……。

今更嘆いてもしょうがないということで、今回はアニメ12話の話です。


第33話 再来の地

「一体何をやっておるのだ!」

 

船内に響く怒号。しかしバルタン星人は無言でテンペラ―星人の動きを見ている。

 

「魔王獣を復活させるのに黒き王の力がいると出ていったきり、進展も何も聞かされていないぞ! 加えてオーブも着々と力をつけていってる……!!」

 

テンペラー星人の不満もごもっともだ。ベリアルのカードを手にしたアオボシはあの後から連絡を絶った。場を引っ掻くだけ引っ掻き、その後はどうなろうと知らない。そんな男である彼に不満の1つや2つも吐きたくなる。加えて地球を守っているオーブ。彼もサンダーブレスター、そしてオリジンと力をつけていっている。

 

このままでは、倒すのが面倒になるだけだ。

 

 

そんな船内をせわしなく歩き不満を垂れ流す姿を見ても尚、バルタンの黄色く輝く目からは生物的な感情は見られずにただ怪しく輝いているだけだった。

 

「そうか……ならばお前が地球に向かえ」

 

ようやく発せられたその一言を聞いたテンペラー星人は己の脚を止めた。

 

「……良いのですか?」

 

「構わん。あの男に任せていても何も報告がない。地球の状態も至って正常……ということは魔王獣は倒されたとみていいだろう。ここで待っていても時間の無駄だ」

 

「ならば私がオーブを倒し、この地球を侵略してやる……!」

 

「……期待しているぞ」

 

バルタンの無機質な声は、テンペラーの声の後に聞くにはひどく落ち着いているように聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

蝉の声が嫌という程鳴り響く中、携帯の画面をまじまじと見つめ続けるのは曜とダイヤ果南の3人。他のAqoursメンバーたちも落ち着いてられず、携帯を見たり無暗に動いてみたり……。それもそのはず。何を隠そう、今日が予備予選の結果発表当日なのだから。

 

ここで落ちれば、廃校を防ぐ手立ても、0を1にすることもできない。それだけの大きな意味が、この予備予選の結果に詰まっているのだ。

 

「ちょっと走ってくる!」

 

果南は結果はが発表されないもどかしさに耐えられず、身体を動かしてくると道路に駆けだそうとする。

 

「結果が出したら知らせるね~!」

 

「いいよ!」

 

「じゃあ知らなくてもいいのか?」

 

しかし一眞の問いに足を止め、結局戻ってきてしまう。

 

花丸は落ち着かないとずっと食べているし、善子は簡易的な魔法陣を作り魔力を集めている。……道を通ったトラックの風でろうそくの火を消されてしまうが。

 

それは一眞も例外ではなく

 

「………」

 

ずっと同じ道を行ったり来たりを繰り返していた。

 

「あ、来た!」

 

そして曜のひと声で全員が画面を凝視し、息を呑む。

 

「Aqoursのアですわよ、ア!」

 

しかし、最初に綴られていたグループの名は……

 

「イーズーエクスプレス……」

 

嫌な風が頬を撫でる。

 

「嘘っ!?」

 

「落ちた……」

 

しかしすぐにエントリー番号順だったことに気が付き、事なきを得る。

 

そして……

 

「Oh my God……Oh my God……Oh my God!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

「さあ、今朝捕れたばかりの魚だよ!」

 

部室には、刺身の船盛りがドドンと置かれていた。

 

結果、Aqoursはラブライブ予備予選を見事に突破。そのお祝いとして果南が持ってきてくれたようだ。

 

「なんでお祝いにお刺身?」

 

「干物じゃお祝いにならないかなって」

 

それ以外にもあるのでは? と千歌は言うが横にいる一眞も苦笑いで果南を見ているため、同じことを思っているようだ。

 

「夏みかんとか!」

 

「パンとか!」

 

千歌と花丸は相変わらずである。それはひとまず最初の関門を突破できたことに、みんなが安堵している証拠だ。すると、ルビィがパソコンを持って慌てて部室に入ってくると同時に「見てください!」と動画を全員に見せた。

 

予備予選(あの時)のライブ映像か」

 

一眞が言うように、それは『想いよひとつになれ』のライブ映像であった。問題はそこではなくPVの再生回数。それも158,372という数字を記録していた。

 

「私たちのPVが!」

 

「凄い再生数!」

 

千歌と曜はその再生数の多さに嬉しさを爆発させている。しかし、それだけではないとルビィ。

 

「コメントもたくさんついていて」

 

 

――――かわいい

 

――――全国出てくるかもね

 

――――これはダークホース

 

読み上げたもの以外にも、Aqoursを称賛するコメントがたくさんついていたのだ。

 

「暗黒面……」

 

「それはダークフォース……」

 

善子の本気か冗談かわからないものに一眞は一応ツッコミを入れる。

 

「やっぱおいしいもの食べると、それをまた最初から――――「花丸、それ以上は言うな」

 

四次元空間を操る存在に怯える一眞が花丸を黙らせている横で曜は笑顔で一言。

 

「よかった、今度は0じゃなくて」

 

確かにと一眞。0にならなかった。それは確かに予選突破したからというのもある。しかし、彼女たちが諦めずに輝こうとしたからこの結果になったのではないだろうか……部室にいるみんなを見回しながら思いにふける。

 

すると、千歌の携帯の着信音が鳴り響く。その相手は……それもなんとなくわかる気がした。

 

『予選突破、おめでとう』

 

「ピアノの方は?」

 

『ちゃんと弾けたよ。探してた曲が……弾けた気がする』

 

スピーカー越しでも、梨子の想いが伝わってきた。別々の場所でそれぞれが向き合い、そして想いが繋がったこと。そのことに一眞も含めた誰もが喜んでいる。

 

「じゃあ次は9人で歌おうよ! 全員で、ラブライブに!!」

 

今度は9人で、と曜。千歌の”輝く”ということはみんなで輝くということ。だからこそ曜は言っているのだ。

 

『ええ、9人で』

 

それは梨子も同じ想いだったみたいだ。いや、ここにいる全員が同じ想いだ。その証拠に互いが笑い合っている。

 

「そして、ラブライブで有名になって浦の星を存続させるのですわ!」

 

「頑張ルビィ!」

 

廃校の阻止……そうだ、まだ大きな問題が残っている。だけど、この9人なら……と希望を抱ける。今のAqoursにはそれほどの力を感じるのだ。

 

「これは学校説明会も期待できそうだね?」

 

「学校説明会?」

 

果南口からでた言葉に、千歌はクエスチョンマークを浮かべる。しかし、そこで理事長である鞠莉が説明をしてくれた。

 

「うん、Septemberに行うことにしたの」

 

「きっと今回の予備予選で、学校名も知れ渡ったはず」

 

「そうね」

 

ダイヤも期待できると感じているようで、鞠莉はスマホを使って確認を始める。

 

「PVの閲覧数からすると、説明会参加希望の数も……」

 

しかしそこまでで鞠莉は言葉を失い、口を開けたまま固まる。

 

「Zero……」

 

「え?」

 

耳を疑うような数字。しかし変わりないと鞠莉は伝える。

 

「Zero……だね」

 

「そんな……」

 

「嘘……嘘でしょっ!?」

 

鞠莉の告げた現在の結果に、ルビィやダイヤも動揺を隠せなかった。

 

「1人もいないってこと……?」

 

曜の言葉に、何度目かの厳しい現実を直視するしかないと一眞は壁にもたれ掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 

「はあ……」

 

場所は変わり果南のダイビングショップ。かき氷を突きながら、先ほどの結果を思い返す。

 

「また0かぁ……」

 

「入学希望となると、別なのかな……」

 

「でもあれだけPVは再生されてるんだよ? それに帰りだって……」

 

千歌と曜、そして一眞は予備予選の帰りを思い出す。果南がサインを求められ、曜が写真を一緒に撮り、ルビィも写真を求められた。ダイヤさんがなぜかどちら様扱いだったのが気になるが……それでもAqoursは大勢に知れ渡っていると確認するには十分な出来事だった。

 

「でもμ'sはこの時期には廃校を阻止してたんだよね」

 

曜が言っている通り、当時の音ノ木坂は、夏休み前にはほぼ廃校を回避していたと言っても過言ではなかった。

 

「PVが見られたとしても――――「カズくん、行儀悪いよ」

 

スプーンストローを口に咥えたままの一眞を曜が叱ると、彼は咥えたスプーンストローを取る。

 

「……ここでやっていくのは難しいのかもな」

 

「私もカズと同意見かな」

 

すると、海から上がってきた果南がテラスに加わると同時に、ダイビングスーツを脱いだ。別に知れた仲だから遠慮は無いという事だろが、一眞は顔を背ける。果南のこともあるが、隣にいる曜が睨んでいるからというのもある。というかそっちの方が怖い。

 

「東京みたいにほっといても人が集まるとこじゃないんだよ、ここは」

 

「でも、それを言い訳にしちゃダメだと思う」

 

人が集まらないからとか、東京とは違うからとか、それで諦める理由にはならないと千歌は言う。

 

するとかき氷をいっき食いし、もう少し1人で考えると言って千歌は駆け出した。その後どうなったかは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「スクールアイドルの違いって……なんだろうな」

 

一眞は部屋でベッドに横になり考えていた。

 

普通の人々が集まって、大きな輝きを生む。わかってはいるが、これまでのスクールアイドル……特にμ'sやA-RISEはどうしてそこまで大きくなったのだろうか、何が違うのか……よくわからなかった。しかし、それが技術面のことではないと……ぼんやりとはわかるが。

 

「カズくん、東京に行くよ!!」

 

「うわぁ!? ……いてて、東京?」

 

「うん!」

 

勢いよく開けられた襖と千歌の大声にびっくりした一眞はベッドから転げ落ちるが、それよりも後に発せられた言葉の方が一眞に大きなインパクトを残した。

 

μ'sとAqoursの違い、どうして音ノ木坂を救えたのか、何が凄かったのか……この目で確かめ、考えたいと千歌はみんなにも伝えたそうだ。

 

「そういうことね。俺も行きたい。行って知りたい」

 

 

東京。あの時……スクールアイドルという現実に、マガオロチに、己の力の無さ、そして闇に負けた地。覚悟として、けじめとして一眞も行きたいと千歌の提案に了承したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「みなさん、心をしっかり! 負けてはなりませんわ! 東京に呑まれないよう――――「ダイヤさん大丈夫だよ、襲ってきたりしないから」

 

ダイヤの警戒心に千歌は声をかけて落ち着かせようとする。しかし

 

「あなたはわかっていないのですわ!」

 

また何やら捲し立てている。いったい、彼女に何があったというのか。

 

「お姉ちゃん、小さいころ東京で迷子になったらしくて……」

 

「慣れてないとそういう事もあるよな……だけど負けるってなんだよ?」

 

一眞もルビィの話に頷き、疑問も抱きながらながら答える。

 

「トラウシだね」

 

「トラウマね」

 

恐ろしくはやい善子訂正。それはさておき、曜は梨子を探しているがその姿が見当たらないという。待ち合わせ場所はあっていると千歌は不思議がっている。するとコインロッカーに紙袋を押し込めている梨子の姿を発見した千歌が声をかけるが、どうも梨子はバツの悪い顔をしている。

 

「なに入れてるの?」

 

「えええ~と、お土産とか、お土産とか、お土産とか……」

 

最後の方はもろ声が震えていて怪しかったが、千歌はお土産の言葉を聞いた瞬間構わず駆け寄っていく。すると梨子は袋を落としてしまった。

 

いつもの梨子からは想像がつかないようなトンデモ悲鳴を上げる。

 

「なに……わぁ、見えないよ!?」

 

「どうした梨子……ん、カベ――――「なんでもないから!!」

 

屈んで調べようとした千歌の目を塞ぎ、近づいた一眞を止める梨子。

 

「あ、はい……」

 

何かを察した一眞は大人しく下がるのだった。

 

 

「とは言っても、まずどこに行く?」

 

ロッカーにしまえたようで全員の準備が整ったところで、次はどこに行くのかという話題に移る。μ’sの関わった地とはいえ、具体的な事は挙がっていなかった。

 

「Tower、Tree、Hills?」

 

「遊びに来たんじゃありませんわ」

 

確かにダイヤの言う通りだが、迷うのが……なんていえば絞められるだろうと一眞は口に出すのを堪えた。

 

「まずは神社。実はね、ある人に話聞きたくてすっごく調べたんだ」

 

どうやら千歌は考えありのようで、神田明神に行くと提案した。

 

「ある人、誰ずら?」

 

「それは会ってのお楽しみ~。でも話を聞くにはうってつけの人だよ」

 

梨子の手の跡が残る千歌が妙に怖い。花丸と共に一眞はも若干体を引いてしまう。そんな中、ダイヤとルビィは何かを期待をしているようで、誰よりも急ぎ足で神社へと向かった。

 

 

 

「お久しぶりです」

 

階段を上った先、そこにはSaint Snowの2人が立っていた。

 

同じスクールアイドルとしては、うってつけの人物かもしれない。

 

「「な~んだ~」」

 

しかしダイヤとルビィは期待していた人とは違ったみたいで2人揃ってへたり込んでしまう。

 

「誰だと思ってたの?」

 

鞠莉の疑問に一眞も苦笑いを浮かべるしかない一眞だったが、急に空が気になった。

 

「ん、どうしたの?」

 

「いや別に……ただの勘違いならいいだけど」

 

曜の心配に、一眞は首を横に振りながらも空を見上げる。何か来るような、そんな気がしたのだった。

 

 

 

 

 

「なんかすごいところですね……」

 

千歌が言うのも無理はない。移動した先はUTX学院。あのμ'sとともにスクールアイドルの人気の火付け役となったA-RISEが所属していた学校であり、そのカフェスペースなのだから。しかし現在は一般開放もされているといった話を聞いた気がする。

 

「予備予選突破おめでとうございます」

 

「Coolなパフォーマンスだったね」

 

梨子と鞠莉の賞賛よりも、AqoursのPVの方が勝っていると聖良は言う。

 

「でも、決勝では勝ちますけどね」

 

聖良の宣言は、とても強いものであると感じた。生半可な実力、努力では言えない程の……。

 

「私と理亞は、A-RISEを見てスクールアイドルを始めようと思いました。ですから私たちも考えたことはあります。A-RISEとμ'sの何が違うのか、何が凄いのか」

 

答えは出たかという千歌の問いに、聖良はいいえと首を振る。だから、ただ勝つしかない。勝って追いついて同じ景色を見るしかない……それが彼女たちが出した答えなのだと。

 

「……勝ちたいですか?」

 

千歌はその答えに納得できなかったのだろうか。ただ純粋に、勝ちたいかと問う。それには問われた2人も、加えて一眞さえも目を見張る。

 

「姉様、この子バカ?」

 

理亞の問いには答えず、聖良はさらに問い返す。勝ちたくなければ何故ラブライブに出るのかと。

 

「それは……」

 

「A-RISEやμ'sは何故ラブライブに出場したのです?」

 

しかし、千歌は答えることはできなかった。

 

 

 

――――廃校を阻止するため?

 

――――――もう阻止していた筈だ。それにA-RISEは関係ない。

 

――――勝ちたいから?

 

―――――――強さだけなのだろうか。それもきっと違うと思う。

 

 

―――――――――じゃあ、何故?―――――――――

 

 

 

「そろそろ、今年の決勝大会が発表になります」

 

考えても答えが見つからない千歌だったが、聖良のひと声で我に返る。

 

「見に行きませんか? ここで発表するのが恒例になっているの」

 

聖良に誘われ、UTXの街頭モニターへと足を運ぶ。

 

 

そこにはラブライブ決勝、その開催場所の名前が出ていた。

 

”アキバドーム”

 

かつてμ'sがスクールアイドルのすばらしさを伝えたことにより、開催が決定されたステージ。スクールアイドルが大きく羽ばたいていった故の会場。

 

「本当に、あの会場でやるんだ……」

 

果南は未だ信じれらないようだと呟く。だがそれは千歌も同じだった。

 

「ちょっと、想像できないな……」

 

以前の東京でのライブに来たときは興奮を感じていた。しかし今は、それが途方もない夢のような話に思える。それは、先ほどの話が胸に残っているからなのかもしれない。

 

梨子が見回すと千歌だけでなく、一眞を含めた全員が不安のそうな面持ちで見上げていた。

 

「ねえ、音ノ木坂行ってみない?」

 

梨子の突然の提案に是認が疑問符を浮かべる。

 

「いいのか?」

 

一眞は問いかける。以前東京に来た時も千歌が提案したが、梨子は行きたがらなかったからだ。

 

「うん、前は私の我儘で迷惑かけちゃったし」

 

しかしそれは、申し訳なさや罪悪感から渋々行こうと提案したわけではなないということが伝わってくる。

 

「それに……ピアノ、ちゃんと弾けたからかな」

 

それがピアノ、そして過去という壁を乗り越えたから言えるのだと千歌は感じ取ることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

階段を上った先、優しい風が吹きつける音ノ木坂の前にAqoursは立っていた。

 

「ここが、μ'sのいた……」

 

「この学校を……守った……」

 

「ラブライブに出て……」

 

「奇跡を成し遂げた……」

 

憧れた人々が、奇跡を成し遂げた地。その雰囲気は一眞にも伝わる。自分の体に鳥肌が立っていくのが、感動で目が開いていくのがわかる。

 

「あの……」

 

横からの呼びかけ。それに反応し、全員がほぼ同じタイミングで振り向く。傍から見たら、それは少々気味が悪いかもしれない。するとそこには音ノ木坂の制服を着た生徒が1人、立っていた。

 

「なにか?」

 

「……すみません、ちょっと見学してただけで」

 

「迷惑でしたらすぐに――――「もしかして、スクールアイドルの方ですか?」

 

「あ、はい。μ'sのこと知りたくて来てみたんですけど」

 

一眞が謝るより先に言い出したということは、おそらくスクールアイドルの人々が来ているのだろうと推測してみると、女子生徒は微笑みながら「そういう人、多いですよ」と。やはり初めてのことではないようだ。

 

 

「でも残念ですけど、ここには……何も残ってなくて」

 

 

女子生徒が伝えたのはμ'sは音ノ木坂(ここ)に何も残していかなかったということ。自分達のものも、優勝の記念品も、記録も。

 

モノなんかなくても心は繋がっているから。

 

 

「……それでいいだよって」

 

 

すると彼女たちの前を小さな女の子が走っりさっていく。そして元気よくジャンプすると、手すりを伝って滑っていった。

 

その光景を見た千歌は、何かを得たように微笑むと、音ノ木坂の方へと頭を下げる。ここに来て得るものが、そしてヒントをくれたからだろう。

 

最後には、全員で頭を下げ「ありがとうございました」と言葉に出して。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

再び戻ってきた東京駅。音ノ木坂(あそこ)で得たヒントを胸に、みんなはホームへと向かおうとする。

 

しかし数秒後、巨大な地響きが駅構内を支配する。その原因が外であるということがわかったのは、駅へと大勢の人々が入ってくる姿を目撃してからだった。

 

「これは……」

 

「怪獣……?」

 

果南の言葉に、自分の気がかりが的中してしまった事に毒づきながら外へと駆け出す。

 

「フハハハハハッ! さあ出てこい、ウルトラマンオーブ!! 出なければ街を破壊し尽くす!!!」

 

街に立つ青い体の宇宙人。テンペラー星人は腕のハサミから火炎を撃ちだしていき、街を破壊していく。

 

「カズくん!」

 

一眞が振り向くと、後ろには千歌たちが立っていた。言葉にしないが、その眼からは心配と背中を押す力強い意志が伝わってくる。

 

「……行ってくる」

 

 

人気のない場所まで走っていくと、一眞はオーブリングを空へと掲げた。

 

 

《ウルトラマンオーブ バーンマイト》

 

土煙を巻き上げながらオーブは着地する。

 

「来たか、ウルトラマンオーブ……」

 

(これ以上……ここは破壊せない……!)

 

腰を落とした構えを取り、両者は肉薄。力強い両腕のハサミ”クロウハンド”の攻撃をこちらも腕で防ぎながら隙を探す。

 

「……ウオッ……ラアアア!」

 

腕にめり込むほどの力を入れられるが、側面に蹴りを一発。後退していくテンペラーへすかさず地面を蹴ってブースト。勢いをつけた右腕に炎のエネルギーを収束。

 

腕をクロスして防いだテンペラーと、蹴りだした勢いをすべて右腕に集中させるオーブの拮抗。

 

「フンッ……!」

 

が、テンペラーが防ぎ切ったようでその赤い右腕が後ろへと戻されてしまう。彼の顔側面に迫りくる青いハサミ。このまま避けなければ頭をえぐり取っていくだろう。

 

「……グ、アアアアアア!」

 

宙に浮いた足を、地面へと突き刺す勢いで無理やり踏み出す。クロウハンドを避け、側面に右の拳を打ち付けるとともに技名を叫ぶ。

 

 

「ストビューム……カウンタァァァァァァァ!!!」

 

 

燃え尽きるほどの高温と爆発がテンペラー星人を襲い、後方へと吹き飛ばす。

 

「ハア……ハア……ハア……」

 

一時的に大量のエネルギーを消費したため、息を切れ切れにしながら煙を見つめているオーブ。

 

爆炎が収まると、腹部を抑えた青い体は尚立ち上がる。

 

「ほお……なかなかやるではないか」

 

スッと立ち上がったテンペラー星人は自分は無傷だと両腕を広げる。

 

(んだと……?)

 

あの至近距離で強力な技を浴びせたはずなのに、当の本人はダメージを追っているように思えない。

 

「では、こちらから行くぞ!」

 

テンペラー星人の雰囲気が変わり、重苦しい空気で潰されそうになる。となると、さっきのは様子見だったというのか。それを考える時間がないほど頭上にヤツの腕が振り下ろされていた。

 

(グッ!? ウウッ……ア、アアア……)

 

攻撃を避けていくが、すんでのところで躱していくが遂にそのハサミに首を挟まれてしまう。

 

《ウルトラマンオーブ サンダーブレスター》

 

サンダーブレスターの怪力で腕を振りほどくと、腹部に何発も砲弾のような力強い拳を打ち付けていく。

 

「ゼットシウム……光ォォォォォォォ線!!!」

 

距離をあけ、光と闇の光子熱線を発射させるが背中の黄金マントで防がれてしまい、黒煙が両者の姿を見えなくする。

 

すると背中のマントを翼として飛行し、オーブの体に突撃。

 

「ガハッ……!?」

 

テンペラーは低空飛行でオーブをビルに押し付ける。スピードがついた巨大な肉体がぶつかり、貫通していくことで何棟ものビルが瓦礫と化していく。

 

『ハリケーンスラッシュ』

 

速さではサンダーブレスターでは食らいついてはいけないと即座に形態を変え、テンペラーの頭を踏み台に空へと飛びあがる。

 

「頭を踏みつけおって……!!」

 

激昂したテンペラーはクロウハンドから電撃を鞭状に変化させオーブへと放つ。オーブスラッガーランスで弾いていくが、疲労とダメージがあるためか隙が生まれていく。終いにはその電撃が体に直撃。なす術無く痺れた体は地面へと墜落。

 

「ほらどうした! そんな……ものかっ!」

 

「ガアアアッ!? ウアアア……!?」

 

感覚を完全には取り戻せていない故に地面を転がり、何とか鞭状の電撃を避けていくが徐々に避ける回数より当たる回数が増えていく。

 

(まだ……まだだ……)

 

オーブは立ち上がり構えるが、もう力が残っていないのは明白でありカラータイマーの点滅と共にフュージョンアップは解除。オーブオリジンにその姿を変えてしまう。

 

「その体で何ができるというのだ?」

 

勝ち誇ったようにテンペラー星人は笑い声を轟かせ、オーブを見下す。

 

(それでも……俺が、ここを、この輝きを守らないといけないんだ……!)

 

一眞は地面を這いつくばりながらも、テンペラー星人から目を背けることはしなかった。最後まであきらめるつもりはないと、その顔を下げることはしなかった。

 

Aqoursの面々も、傷ついても尚立ち上がろうとしている彼の姿を見つめる。何もできないが、せめてここで見守ることならと。

 

「これで最後だ! ウルトラ兄弟必殺光線!!」

 

両腕のクロウハンドを合わせて強力なオレンジ色の光線を発射した。これはテンペラー星の科学を集結して編み出した、ウルトラ戦士のみに対して絶大なダメージを与えるとされる光線であった。

 

 

――――まずい!!

 

 

痺れた四肢をどうにかして動かそうとするが、先ほどのダメージが体を蝕んでいて言うことを聞かない。

 

 

オーブの体に直撃――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

する直前、空から迫ってきた虹色の光線が相殺したのだ。

 

「なに……!?」

 

それはテンペラー星人はおろか、オーブや東京の人々も驚きに包まれる。

 

急降下で風を切る音、そして何か燃える音が聞こえてくる。それは高速で全身のパワーを右足に集中させ、強烈な飛び蹴りを撃ち込む故の音だ。

 

太陽を逆光にした影が次第に大きくなっていく。燃える右足のほかに特徴的なのは、黄色く輝く双眼と頭に生える2本の角。

 

それはまるでオーブのバーンマイトのような……。

 

「――――シュアッ!!」

 

強大な衝撃がテンペラー星人の頭部を襲い、地面に倒れ伏す。

 

攻撃を与えた影はさらに空中で捻りを加え地面へと着地。

 

 

銀の身体に入る赤いライン。そして方と胸を覆う水色のアーマー。そして右腕には、先端の水晶が輝く黒い手甲。

 

「あ、あなたは……?」

 

「き、貴様は……!?」

 

 

オーブの前に立つ2本角の巨人は、目の前の星人に構えるとともに言い放つ。

 

 

「――――オレはタイガ。ウルトラマンタイガだ!!」

 




12話からいっきにオーブパート、そして唐突に出たタイガ。

実はこの話、もう8月の時点(ニュージェネクライマックス鑑賞後)で思いついてたんですよね。オーブに出したいとずっと思ってました。そして今日ようやくここにたどり着いたという訳です。これは多分、自分の中でまだタイガとお別れしたくないという気持ちがあったのかもしれません。(ギャラファイで見れるとは思ってなかった)

このタイガは原作後でもパラレルでも、どちらでも捉えてもらっても大丈夫なように次の回も展開していきたいです。
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