Sunshine!!&ORB   作:星宇海

35 / 93
近江姉妹はいいぞ~


第35話 光は青空へ

「今のところの移動は、もう少し早く」

 

「善子ちゃんは――――「ヨハネッ!」……フフッ、さらに気持ち急いで!」

 

「承知、空間移動使います」

 

地区予選まであと幾日と迫ってきた。屋上でのAqoursの練習にも断然気合が入っている。

 

ダンス指導の果南も改良点をかなり厳しく突き、皆がそれの答える。それほどまでに、みんなが本気で向き合っているのだ。

 

そして休憩の言葉が聞こえるや否や、まるで崩れ落ちるように座り込む。

 

「水、飲んどけよ」

 

そう言って一眞はペットボトルを渡していく。ステージに上がるのは彼女たちだが、それ以外の自分にできることをやってるのだ。

 

内浦の海を眺める果南とダイヤそして鞠莉の後ろに、黒いローブを着た善子が横たわる。

 

「黒い服は止めた方がいいとあれほど……」

 

「黒は堕天使のアイデンティティ、黒が無くては……生きていけない……」

 

「死にそうですが?」

 

ダイヤの忠告を無視してもなお、ローブを着続けるその姿、その心意気にはさすがのダイヤも若干呆れ気味であった。

 

「だったら水は飲んどけ……!」

 

通り際に一眞は善子の額にペットボトルを置く。

 

「はい……」

 

突然のことにびっくりした善子も、素直に聞き入れてくれたようだ。後ろの3年生は笑っていたが。

 

 

「私、夏好きだな。なんか熱くなれる」

 

「私も!」

 

ペットボトル越しの太陽は水に溶けたように揺らいでいる。それを見た千歌はそんな言葉を発する。続いて曜。心が燃えるような気持になった千歌は、練習を再開しようと声を上げるが、オーバーワークはも禁物だとダイヤ(果南が言っていたのだが)に止められてしまう。

 

「これから一番熱い時間だしな。じゃあ、みんなは涼んでてくれよ。今日は俺が買ってくる」

 

「いいの?」

 

「ああ。毎回善子が負けっぱなしだからな」

 

「ヨハネ! それに毎回じゃないわよ!!」 

 

「ほんとずら~?」

 

一眞は果南の問いに答え、ついでに善子がここのところ連敗記録を更新し続けていることを告げる。それはみんな知っていることなのだが、善子は自分のチョキが見破られてないと思っているらしい。

 

 

 

 

 

「1,158円です」

 

「誰か高いやつ買ってやがる……」

 

 

一番熱い時間帯は、アイスを食べながら図書室で涼んでいた。もちろん、扇風機も回しているのだが……

 

「ずら~」

 

「ピギィ~」

 

「ヨハ~」

 

「全然こっちに風来ないんだけど……」

 

梨子の言うように、扇風機の真ん前に陣取っているためか風が来ない。

 

「教室に冷房でもついてたらな~」

 

「統合の話があるのに、付くわけないでしょ?」

 

曜のぼやきも梨子に一蹴されてしまう。付くことは絶望的だった。

 

「カズはどうなの? 暑いとか寒いとか……」

 

ウルトラマンで宇宙人でもある一眞は、暑さや寒さは大丈夫なのかというのが果南の質問の意味だろう。昔からの付き合いだから暑さ寒さを感じることを知ってはいるが、改めて疑問に思ったのかもしれない。

 

「変わんないよ。暑いのも寒いのも人間と同じ。あ、でも……ウルトラマンになってる時はちょっと違うかも」

 

「へえ~、そんなもんなんだ」

 

「そんなもんだよ~」

 

すると今まで机に突っ伏していた千歌が顔を上げ、鞠莉に尋ねる。それは学校説明会の参加者の数についてだ。すると鞠莉はカウンターを軽々と乗り越えていく。

 

「鞠莉さん! はしたないですわよ!!」

 

ダイヤの注意には耳を貸さず、鞠莉は起動させたパソコンのディスプレイに目を向ける。

 

「今のところ……」

 

鞠莉の言葉に前かがみになっていく千歌。そして……表示されていた数は

 

「……ゼロ~」

 

まだだめかと、千歌は机に伏す。

 

「そんなに魅力ないかな……? 少しくらい来てくれてもいのに……」

 

千歌の消えいってしまいそうなそうな声に、一眞も「そうだな……」と声をかける。

 

すると突然聞こえてきたドアの開閉の音に、全員に視線が向けられる。

 

「あれ……?」

 

そこには私服姿のよしみ、いつき、むつが不思議そうな目でこちらを見ていたのだった。すると千歌の「どうしたの?」という声。

 

「図書室に本返しに……」

 

「もしかして今日も練習?」

 

「もう地区予選だし」

 

「この暑さだよ?」

 

「そうだけど、毎日だから慣れちゃった」

 

暑い夏休みの中、毎日練習をしているという千歌の言葉に、3人は息を呑む。さらにその暑さにも慣れてしまったというのだから、驚かないのも無理はない。スクールアイドルの厳しさ、そして頑張りを改めて感じていたようだった。

 

「そろそろ始めるよー!」

 

果南の声に千歌は「またね」とだけ言い残し、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「あれは……」

 

練習終り、夕日もまぶしくなってきたころだ。一応戸締りの確認をして戻ってきた一眞だったが、プールに入っている果南と善子と鞠莉の姿が見える。それ以外はプールサイドにいるようで、どうやら千歌とむつたちが何やら話をしていた。

 

「こりゃあ、お邪魔かな……」

 

そう言って一眞は校庭の方へと歩いていった。

 

 

 

 

 

そんな時、二足歩行の生命体が一眞の前に姿を現したのだった。青白い体の所々に向こう側の景色が透けて見えるため、これが実態なのではないと容易に想像できた。

 

セミに似た顔、ザリガニを思わせる大きなハサミ状の両手が一眞の直感を刺激した。彼は宇宙人だと。

 

「私はバルタン。この星を求める者だ」

 

幻影は攻撃をする気が無いとアピールするためか、腕を下ろして話し始める。夕日に照らされた校庭に、彼のバリトンボイスが響き渡る。

 

「我々は、地球人の醜さを見た。それは我々のようにいずれ辿るであろう破滅の歴史だ。私はそれを防ぐため、地球人たちからこの星を頂くことにした」

 

地球を貰う。彼のはっきりとしたその宣言に一眞は警戒する。

 

「ハッ、どうして俺にそんなことを……?」

 

「君なのだろう、ウルトラマンオーブ」

 

「……ッ!?」

 

バレている。そんな動揺を悟られまいと一眞は平静を保とうと必死だ。

 

「只のあいさつさ。地球ではこのようにしてあいさつするのだろう?」

 

「これから侵略しますってか? ふざけるなよ……」

 

一眞はバルタンの幻影を睨みつける。それは怒りもあるが、一番は彼が何を考えているのかがわからないという底知れない恐怖があったからだ。

 

「フフフフッ……こうしている間にも私は地球侵略の準備を整えつつある。君は指をくわえながら待っているといい」

 

それだけを言い残したバルタンの幻影は即座に消えていった。

 

止めなければ、しかしどこへ向かえばいい……そんな焦燥感と無力感が一眞を襲う。それに……

 

(どこを探せば……)

 

無暗には行くことはできない。地球、あるいは宇宙かもしれない。しかしそんなことをすれば、守りが無くなり、攻め込まれることも考えられる。

 

(なら、攻め込まれるまで待ってろと言うのか……)

 

自然と拳に力が入っていく中、背後から声がした。

 

「――――月だ」

 

「なに?」

 

「月にいるんだよ。そこで怪獣を呼び出している。惑星侵略連合が持ち込んだ怪獣をね」

 

その黒いスーツ。背筋を撫でるような不快感と、安心感の混ざった妙な感覚。それはリゲル……ここでの名はアオボシ。その人だった。

 

「お前、何しに来たんだ?」

 

「いや別に。ただ、君にちょっとヒントをやろうかと思って」

 

「……お前がか?」

 

一眞は自ら歩み寄ってきたアオボシに疑問の目を向ける。昔はどうあれ、今の彼と自分の道は違えてしまったのだ。それに、彼も大魔王獣を復活させていた張本人。疑わない方がおかしい。

 

「僕だってアイツが気に入らない。それに僕はあくまでアルファルド様に仕えてる身だ。協力関係とは言えど、邪魔なやつは消えてもらった方が都合がいい」

 

それにと、アオボシは一眞の周りをグルグルと歩き回りながら続ける。

 

「彼は生命の概念を知らなければ、感情もないんだ。そんな奴らに侵略されるのは実に気分が悪い。だからこうやってお前にヒントをやるんだ。……安心してくれ、地球を離れている間に攻撃なんてする気はないからね。僕は……」

 

そこまで言うと、彼は一眞の方へと詰め寄って顔を近づける。

 

「お前と全力で戦いたいだけだから」

 

あまりの不快感に、アオボシを突き飛ばす一眞。だが、ここまで言って嘘を教えるような彼でもないだろう。それに今は目前に迫る侵略を止めるのが先決だ。

 

「月のどこだ?」

 

「う~ん、それはわからないな。アイツ、今は侵略連合の宇宙船にはいないからね」

 

申し訳なさ0で語るアオボシに一眞はため息を吐く。

 

「じゃあ、攻め込むときはいつだとか聞いてるか?」

 

その問いに「ああ、それなら!」と明かげにリアクションを取った彼は、一眞へと耳打ちをする。

 

「お前……それって……!?」

 

彼の言った日……それは……

 

「そっか、その日って君たちの――――――」

 

 

 

 

 

「……」

 

帰りのバスの中では、一眞は黙り込んでいた。バルタン星人が地球への侵攻を開始する日……それはラブライブ地区予選その日だったのだ。よりにもよって大事な日に不幸なことだ。しかし宇宙人もこっちの都合を聞いちゃくれないことくらいは、十分承知している。

 

「なに考えてるの?」

 

「……っ曜ッ!?」

 

すると自身の視界に曜が映りこむ。彼女がのぞき込んできた、と言った方がいいかもしれない。だが一眞はなんていえばいいか言葉を詰まらせる。

 

当日は宇宙人からみんなを守るためにライブは見れない……なんて正直に言ってしまえば、彼女たちに心配をかけてしまう。地区予選という中で、ただでさえ気が張り詰めているというのに。

 

「……んんっ!?」

 

すると突然、曜は一眞の口角を指であげる。そんな状況に曜は笑顔で、対する一眞は目をぱちくりさせている。

 

「なんかわかっちゃった。カズくんが隠してること」

 

「……」

 

「また戦いに行くんでしょ。みんなを守るために……って。私は……ううん、私たちは止めないよ。だから、約束。絶対に勝って、帰ってくるって!」

 

彼女の言葉、そして笑顔に、緊張のような凍った感覚が徐々に溶かされていく。

 

仲間と共に進むと、決めたばかりではないか。みんなが背中を押してくれるのならば、いつものように打ち倒して、みんなのもとに帰る。ただそれだけのこと。

 

「ああ、約束……だ」

 

一眞の約束に曜はもう一度笑顔を見せてくれた。

 

 

 

 

 

 

~~

 

「これが来るべき、聖戦の地」

 

「名古――――「それ以上は言わないで!」

 

一眞の指摘を遮る善子に彼は苦笑いを浮かべながら、周りを見渡す。ラブライブ地区予選の会場はこの名古屋駅の近くだ。

 

(今のところ異常はない……か)

 

同時に、一眞はバルタンの侵攻に目を光らせる。彼女たちの輝きを守るためにも、気は抜けない。

 

「待ち合わせ場所はっと……」

 

「今来たのがこっちだったよね?」

 

「そう。で、え~と……」

 

はじめての場所であるため、携帯のナビを見ながら待ち合わせ場所を探す。一眞も探そうとしているが、彼も苦戦している。

 

 

「むっちゃんた達来てないね」

 

「多分ここであってるはずなんだけど……」

 

何とか着くことはできたものの、むつ達の姿が見えない。待ち合わせ場所だと指定されたところに確かにいると、千歌と曜が話していると

 

「千歌ーー!!」

 

友人を呼ぶ声と共に、むつ達も合流する。どうやら道中で迷ってしまったらしい。加えて「他の皆は?」と曜が訪ねると、3人は表情を曇らせてしまう。応援にとは言っても夏休みだし、個々に予定があるだろう。確かに寂しいことに変わりはないが。

 

しかし、彼女たちが表情が一変。明るくなるとゾロゾロと足音が聞こえてきた。それも大勢の。

 

「みんなー、準備はいいー!!」

 

 

『イエーイ!!』

 

 

「「「全員で参加するって!」」」

 

なんと、浦の星全員で応援に来てくれたのだ。みんなの手には、青く光るサイリウムが握られている。

 

「びっくりした?」

 

「うん! この全員でステージで歌ったら、絶対キラキラする! 学校の魅力も伝わるよ!」

 

「ごめんなさい!」

 

喜びの声が聞こえてくる中、申し訳ないと梨子が頭を下げる。

 

「調べたら、歌えるの事前にエントリーしたメンバーに限るって決まりがあるの」

 

梨子が申し訳ないと思いながら発したそれは、ライブ上のルールであった。さらにはステージに近付くのも禁止とのことだ。マネージャーである自分が把握しきれていなかったことに責任を感じる。

 

「ごめんね、むっちゃん」

 

千歌も良く調べもせずに了承してしまった事への責任か、むつに謝罪する。しかし、それでも浦の星たちの生徒の想いは変わることは無かった。

 

「じゃあ私たちは、客席から宇宙一の応援して見せるから!」

 

「浦の星魂、見せてあげるよ!」

 

「だから宇宙一の歌、聴かせてよね!」

 

浦の星とAqours、その想いは1つとなっていたのだ。

 

 

 

 

 

「不思議だな……。内浦に引っ越してきたときは、こんな未来が来るなんて、思ってもみなかった」

 

本番を間近に控え今、学年別に分かれて準備を行っている。それぞれで語りたいこと、共有したいことがあるはずだ。

 

それはアリーナ入り口前に集まる、千歌や曜、梨子……そして一眞も例外ではなかった。

 

「千歌ちゃんがいたからだね」

 

「それだけじゃないよ。ラブライブがあったから、μ'sがいたから、スクールアイドルがいたから……曜ちゃんや梨子ちゃん、カズくんがいたから」

 

これからも色々なことがあると、千歌は言った。

 

それは嬉しいことばかりではない。辛くて、大変なこともあると。

 

「でも私、それを楽しみたい! 全部を楽しんで、みんなと進んでいきたい!! それがきっと、”輝く”ってことだと思う」

 

自分の憧れたもの、それを生んだもの。そして、彼女がなったもの。その全ての輝きが、このような未来を、今を作ってくれた。そして、1人ではできない……仲間と一緒にいるということが、彼女の輝くということ。

 

この先起きるであろう困難も、喜びも……その全てを受け入れ進んでいくことが輝きなのだと。

 

 

「そうね」

 

千歌の背後から、よく聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

果南、ダイヤ、鞠莉、花丸、ルビィ、善子。ここにAqours9人が揃う。

 

「俺も……こんな未来が来るなんて予想してなかった」

 

一眞は全員の顔を見て、その口を開く。

 

「ようやく、輝くってことの意味を知れたんだと思う。それに、こんな俺を受け入れてくれたみんなに、本当に感謝してる」

 

一眞自身も、彼女たちと同じように成長した。でもそれは、みんなの存在があったからこそだと頭を下げ、彼女たちに背を向ける。

 

「みんなの想いは、努力は必ず届く。俺はそう信じてる。みんなの輝き……それをぶつけてこい」

 

「行くの?」

 

曜の問いに一眞は頷く。

 

「これは俺のやるべき……ううん、俺のやりたいことなんだ。輝いて、輝きを守りたいっていう……俺のやりたいことなんだ」

 

 

 

「……行くよっ!」

 

 

Aqoursと一眞。輝くために、輝きを守るために……それぞれの一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

「イチ!」

 

「ニ!」

 

「サン!」

 

「ヨン!」

 

「ゴ!」

 

「ロク!」

 

「ナナ!」

 

「ハチ!」

 

「キュウ!」

 

 

Aqours……そして浦の星の生徒全員の声が聞こえた気がした一眞も、ふと口にする。

 

「……ジュウ」

 

 

 

「今、全力で輝こう! ゼロからイチへ! Aqoursーー!!」

 

 

 

それぞれの今へと向かうため、Aqourはイチの形にした手を、一眞は光り輝く聖剣を空へと掲げた。

 

 

 

『サンシャイーーーン!!!』

 

 

 

「オーーーブ!!」

 

 




という訳で、次回は戦闘がメインになるかと思います。
そして、アオボシについてなんですが彼は過去篇で発狂したじゃないですか。その時に性格も狂ってしまいました。だから、たまに紳士的、たまに変なやつをを行き来しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。