Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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ゼットとアニガサキが放送されたのが昨日だなんて……なんか実感がわかないと言いますか何と言いますか……


第43話 波風の序曲

某日、A国領域内のとある島に台風が発生した。

 

台風が起こることなど、自然界では断じて不思議なことではない。しかし妙なのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……ということだった。さらにその台風の力は強大で巨大な船が巻き上げられ、気付けば山の中に落ちていた……なんてこともあるのだから。

 

その出来事は既に世界中でも起きていた。謎の台風の被害が報道されるたびに、人知を超えた自然の猛威の前には、人々は無力であると言われているように感じられた。

 

 

 

突如突如発生した自然の猛威の中で、赤い目のような器官が鈍く輝いていることには誰も気が付いてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不安げな表情のまま、理事長室の前で待つスクールアイドル部の10人。中では鞠莉が父親に、廃校をどうにかして防ぐことはできないのかと交渉しているのだ。千歌が「きっとなんとかなるよね」と言っていたが、それは不安な自分にも言い聞かせているようにも感じらられる。

 

「今は……鞠莉を信じるしかない」

 

その張り詰めた空気では、一眞もその一言で精一杯だった。後は、その異常なまでに静かな廊下の中で彼女が出てくるまで待つしかないのだ。最悪な想像はせず、かといって過度な期待もしないように……。

 

たった数分のことなのに、もう何時間も経っているようにも感じられる。

 

「鞠莉さん……」

 

「どうだった?」

 

ようやく鞠莉が出てくれば、すぐさまダイヤと果南が近づく。それほど心配なのだ。それはここにいるみんなも同じ。

 

「残念だけど、反対意見があっても生徒がいないんじゃって……」

 

やっぱりか……と、考えてしまった最悪のシナリオ。いくら言っても、生徒がこの学校にいないという現状が物語っている。だから鞠莉は問いかけた。希望者が増えれば考え直すかどうかを。何人、何人集めれば学校を続けてくれるのかを。

 

「それで?」

 

「……100人」

 

曜の問いに、鞠莉は真剣な面持ちで答える。今年の終わりまでに、少なくとも100人の入学希望者が集まれば統廃合の話を取りやめると。

 

「100人って、今はまだ10人しかいないのですよ?」

 

「それを年末までに100人……」

 

ダイヤも梨子も、その難題に声を震わす。今は10人、それを年末までに100人。もう半年もない状況でそれはほぼ不可能だと言っているようなものだ。

 

「でも、可能性は繋がった」

 

その中で、日陰に太陽が差し込むかのような声が響く。

 

千歌は明るく、可能性というAqoursの進む道が繋がったと言ったのだ。

 

「終りじゃない。可能か不可能か、今はどうでも良い。だってやるしかないんだから!」

 

「まあ、それもそうか」

 

「足掻くって決めたもんな……みんなで」

 

今あるソレは、暗闇で示された1本の綱のようなごく僅かな可能性でしかない。でも進める。まだ断たれた訳じゃない。渡って行ける。今のAqoursには、その力があるのだから。

 

「可能性がある限り、信じよう! 学校説明会も、ラブライブも頑張って集めよう100人!!」

 

「ゼロからイチへ!」

 

「イチからジュウへ!!」

 

「ジュウから……ヒャクへ!!!」

 

 

ラブライブを勝ち進み、100人の入学希望者を集めて廃校を阻止するためのAqoursの活動が……今始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「とは言ったものの……」

 

「いきなり……?」

 

「言い走り出しだったのによ……」

 

練集合間の休憩中、千歌のつぶやきに呆れそうな曜と一眞。それもなぜかと言えば予備予選の開催日に関係があるみたいだ。

 

「だって予備予選がこんなに早くあると思ってなかったんだもん……」

 

「出場グループが多いですからね」

 

「この地区の予選は来月初め。場所は特設ステージ」

 

「有象の魑魅魍魎が集う宴!」

 

出場グループの多さ故に、早い段階から予備予選を始めるラブライブ。しかし、何故千歌がそのことをぼやくのかが謎で珠冬は尋ねる。

 

「でも千歌さん、早いとなにか不都合なことがあるんですか?」

 

「マルも気になるずら」

 

「歌詞を作らなきゃいけないからでしょ?」

 

言い淀む千歌の様子に、訳を察した梨子が代わりに答えてくれた。ラブライブへ出場には未発表の曲のみという規定上、作詞している千歌は早く作らなければいけない。さらに学校説明会もあるためもう1曲分、つまり2曲分の歌詞が必要なのだ。

 

「わたしばっかりズルい! 梨子ちゃんだって二曲作るのは大変だって……!」

 

「それを言ったら曜ちゃんもでしょ……?」

 

「9人分だからね」

 

今回は互いに負担が増えてしまう。それもまた運命のイタズラ……というやつなのだろうか。

 

「厳しいよ、ラブライブ……」

 

「それを乗り越えたものが、頂からの景色を見ることができるのですわ」

 

「……やっぱりレベルの高い戦いだよな、ラブライブ」

 

作詞や作曲、そして衣装……加えてダンスのステップやフォーメーションまで自分たちで作り鍛え上げていく。そうしたいくつもの難関を突破したものが覇を競い合う。ラブライブ、そしてスクールアイドルというものの厳しさに一眞は舌を巻く。彼女たちの取り組んでいることは、自分がやっている事より何倍も高度なことに思えたからだ。

 

「で、歌詞は進んでいるの?」

 

横を見れば梨子が尋ねていた。いつもの穏やかな様子ではなく声が低い。当然進んでいるのでしょうね? という圧を感じる。

 

「いや~そりゃ~急がなきゃ? だから……」

 

その反応で一眞はなんとなく察してしまうが、あえて口に出すことはしなかった。

 

「ここに歌詞ノートがあるずら」

 

しかし書いてあったのは歌詞ではなく、梨子の絵だ。ページをめくるたびに表情豊かな彼女が描かれている。

 

「そっくり」

 

「こんな表情するの……?」

 

「実はするんだよ珠冬ちゃん。実は昨日、夜の2時までかかって……」

 

ページをめくっていきノートを閉じれば、そこには描かれた絵そっくりの梨子の顔があった。早く歌詞を書いてくれ。梨子は己の態度だけで千歌へと伝える。それも千歌はわかっているのだが……

 

 

 

 

 

己の持ったシャープペンは、ノートを滑らず止まっているのだった。いいフレーズが頭に浮かんでこず机に伏せる千歌。唸っている声を耳にしながら果南はパソコンを操作しながら言った。

 

「でも、このまま全部千歌たちに任せっきりってのもね」

 

「じゃあ果南、久しぶりに作詞やってみる?」

 

「い、いいや私は……今はちょっと……」

 

「前は作ってたじゃない」

 

「それ言えば、鞠莉だって曲作りしてたでしょ?」

 

果南と鞠莉の話はおそらくも何も、先代Aqoursの頃の話だろう。そのやり取りを聞いたことで、もう1つの疑問が湧いて出てくる。衣装は誰が作っていたのか? というやつだ。

 

「まあ私と……」

 

ダイヤの視線は向かい合って座る赤髪の少女に向けられた。

 

それにつられて梨子たちも視線をむけ、納得する曜。それも彼女が裁縫を得意としていることを知っていたからだ。それを裏付けるかのように花丸が取り出したのはハンドバック。動物や植物の可愛らしい刺繍もほどこされていることから、彼女の技量の高さが伺える。

 

「じゃあ、2手にわかれてやってみない?」

 

鞠莉の提案はこう。2年生組が学校説明会用の曲を作り、他の7人がラブライブ用の曲を作るというものだ。これであれば負担が集中してしまう事もないため、1曲に時間がとれる。

 

「でも、いきなりラブライブ用の曲なんて……」

 

「だからみんなで協力してやるの」

 

いきなりラブライブ用という大事なモノを任せられたとなれば、ルビィでなくとも不安になる。しかし不安ならばこそ、みんなで作り上げようと鞠莉は提案したのだ。

 

「一度ステージに立っているんだし、千歌っち達よりいい曲ができるかもよ?」

 

「”かも”ではなく作るのですわ。スクールアイドルの先輩として」

 

「おお、言うね~!」

 

その呼びかけにダイヤや果南の心にも火がついたみたいだ。その様子をみた千歌も、今までになかったその試みに心を躍らしている。

 

「面白そうだ。やってみようぜ!」

 

掌に拳をうちつける一眞も相当乗り気なようだ。勝手に話が進んで決定までしたことに、梨子と曜は顔を見合わすが誰も気付いていなかった。

 

 

 

 

 

2年生組は千歌の家で作業をするとのことで別れた。ともあれば、こちらもどこで作業をするかなのだが……。

 

「やっぱり部室かな?」

 

「それだと代わり映えしないんじゃない?」

 

「どうしよっか……お店はやめといたほうが良いと思うし」

 

「それもそうですわね。では千歌さんたちと同じように、誰かの家にするとか?」

 

珠冬やダイヤが意見を出していく。すると果南が出したのは鞠莉の家だった。ここから近いし何より広いという話だ。大人数で行っても問題ないのであればこちらも助かる。

 

しかし1年生、特に花丸や善子は鞠莉のお金持ちという面に目を付けているようだ。予想すらできない鞠莉の家という存在に息を呑む。

 

「私はNoproblemだけど、4人は大丈夫なの?」

 

鞠莉の問いに素早く手を上げる4人。目がいつも以上に輝いていたのは気のせいだろう。

 

「賛成ずら!」

 

「右に同じ」

 

「私もです」

 

「ヨハネの名に懸けて」

 

そうして鞠莉の家に行くことに決定したわけだが。

 

 

「でっかい……」

 

珠冬は知らなかった世界を目にして驚きを通り越した何かになっているし、善子は闇が晴れていくと言うしでその場所に興奮しているみたいだ。その姿を見て3年生組も在りし日のことを思い出していた。

 

 

 

――――曲作りをしに来たはずなのに、今や1年生はお菓子やお茶に夢中になっている。その有様を見て、唯一の良心? 珠冬が3人に注意する。

 

「ちょっと2人とも、ここには曲作りをしに――――「珠冬ちゃんも食べるずら」

 

しかし言い終わる前に彼女の口に放り込まれたマカロンの前には、珠冬も敗北を喫するのだった。

 

「私たち、何しに来たんでしたっけ……」

 

なんてダイヤが言う頃には、まるで遊びに来たかのようにくつろいでしまい本来の目的がすっかり頭から抜け落ちていた。

 

 

「やっぱり、鞠莉さんの家では全く作業にはなりませんわ!」

 

「あっちがいいずら」

 

「もっとポップコーン食べたかったのに!」

 

作業すらしなかったため、ダイヤとルビィの家に移動してきたわけだがここでは花丸と善子が拗ねてしまっていた。気持ちもわからなくはないがと珠冬もフォローする。

 

「でもほら、やっぱり曲作らなきゃいけないし――――「珠冬だって気に入ってたじゃない」そうだけど……!」

 

正直、もう少し食べたかったというのはあるため珠冬も強く出られない。しかしダイヤのひと声が、花丸と善子をなんとか作業に戻す。そしてここからはダイヤの進行で事が進み始める。

 

「では、まず詞のコンセプトから」

 

ラブライブ予備予選を突破するための曲……まず”詞”はどういったテーマでやっていけばいいかをダイヤが募る。すると花丸がすぐさま手を挙げた。

 

「ずばり”無”ずら!」

 

意味を読み解けず、首を傾げる一同。果南もわからずそっくりそのまま返してしまう。

 

「そうずら。すなわち”無”というのは全てが無いのではなく、”無”という状態があるという事ずら」

 

「は?」

 

「What's?」

 

ダイヤも鞠莉もそのような概念に疑問符を並べる。しかし善子だけは違った。

 

「なにそれ……かっこいい!」

 

「善子さん、その”無”があるということこそ、私たちが到達できる究極の境地ずら」

 

「”無”つまり漆黒の闇、そこから出づる力……」

 

「……”無”が闇?」

 

そう言って腕を交差する2人。理解しあっているように見えて微妙にできていない。加えて珠冬はもっとわかり難くなったのか、目を細めて首を傾げている。

 

「それでラブライブに勝てるんですの?」

 

「テーマが難しすぎるよ」

 

そんな2人に対し、ダイヤや果南は批判的だ。

 

ライブでは5分あるかないかの短時間で相手へと届けなければならない。だから難解なものでは相手に理解する時間もないし、理解されなければ響くこともない。まず概念的すぎて歌詞にもし辛いだろう。

 

理解できない彼女らを不幸だと嘆く2人の後ろで、鞠莉がアイディアがあると自身のスマートフォンを取り出し、スピーカーにセットした。端末の中には、自分の作った曲が入っているのだそうだ。自作の曲を聞いてもらうという2年ぶりの感覚に心をはずませながら鞠莉は再生ボタンをタップする。

 

スピーカーを震わせ流れてくるのは、ヘヴィメタルと呼ばれる音楽形態の1つ酷似したものだ。ギターやドラムのメロディはが体にズシンと来るようでいて、留まるだけではなく開放的にさせてくれる。端的に言えば体を動かしたくなる。

 

「なんかいいね、身体を動かしたくなるっていうか」

 

「まあ、今までやってこなかったジャンルではありますわね」

 

果南やダイヤは賛同的だった。これもまたAqoursに吹く新たな風になるのではないかと。しかしこの曲は途中で止められてしまう。目をやれば、1年生4人が床に倒れているではないか。おそらくこの手の音楽は聞いたことが無く、驚いたのだろう。

 

「ルビィ……こういうの苦手」

 

「耳がキーンしてる」

 

「私も……キーンって……」

 

「単なる騒音ずら」

 

パタリと倒れ込んだ4人の姿に、鞠莉たちは唖然とするのだった。

 

 

 

 

 

その頃、千歌たちも作詞をしてるのだがどうも浮かびそうになく、頭を悩ます千歌の姿があるだけでこちらも順調に進んでいるとは言い辛かった。

 

「うーん、”輝き”ってことがキーワードだとは思うんだけどね……」

 

「”輝き”ね……」

 

「思いつかねぇ……」

 

追い求める”輝き”それこそをテーマに歌詞を作りたいとは言っているものの、良いフレーズが浮かばない。千歌と同じく、梨子や一眞も悪戦苦闘している。

 

「はやくしないと果南ちゃんたちに先越されちゃうよね……」

 

競争しているわけではないが、どうしても向こうが気になってしまうのだ。

 

「焦っても仕方ないしな……ん?」

 

そう言って後頭部を掻く一眞。すると、メールの受信音に全員の意識が向く。ルビィから千歌の携帯に送られてきたもののようだ。

 

「『すぐに来て』って」

 

「それだけ?」

 

「うん、書いてあるのはそれだけみたい」

 

一言だけ書かれた内容。もしかしたら本当に完成してしまったのではないかと、千歌たちは場所を電話で聞いて急ぐのだった。

 

「みなさん、ちょっと大変なんです!」

 

「大変って……どうしたの?」

 

「これは見てもらった方が早いです! 曜さん、はやく!」

 

「あああ、珠冬ちゃん引っ張らなくても大丈夫……」

 

すぐさま駆け付ければ、珠冬が慌てた様子で待っていた。なにか緊急事態なのだろうか。手を引っ張られながらも階段を上がり、そして目に入ったのは……

 

「それではラブライブは突破できません!」

 

「その曲なら突破できるというの!?」

 

「花丸の作詞よりはマシデース!」

 

1年と3年の対立であった。Aqoursにはあの曲はあわないとルビィは反対する。だが鞠莉は新たなチャレンジが必要だと力説する。

 

「さらにそこにお琴を!」

 

「そして無の境地ずら!」

 

意見の渋滞、ぶつかり合いでもう何もかも無茶苦茶になりそうだ。その状況を見た千歌たちには介入の余地がないように見えて、とりあえず苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「こりゃ大変だ……」

 

一眞の呟きは、意見のぶつかり合うこの場所では響くことなく消えてしまう。




1年と3年の間にトラブルがあるようで……曲はできるのか不安になりますね。そして謎の台風も気になります。
ではまた次回で!
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