Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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メリークリスマス。ケーキを食べましょう。


第44話 波風メロディー

「曲作りはできそうにない……か」

 

「はい。趣味が違い過ぎて……」

 

黒澤家の家に呼ばれた一眞たち。彼らはダイヤやルビィ、珠冬から状況を聞いたのだった。そして出された結論というのが、曲作りどころではないということ。1年、3年の趣味趣向がかけ離れ過ぎていると。

 

「そっか……」

 

千歌と曜は良いアイディアだと思ったが故、一層残念だと表情が訴えている。さらに梨子はもう少し話し合ってみるのはどうかと投げかける。

 

「散々話し合いましたわ」

 

「思ったより好みがバラバラみたいなんです」

 

話し合ったからこそ好みの違いが浮き彫りになり、こじれてしまった。話し合いが逆効果になってしまったようだ。

 

「バラバラねえ……」

 

「そう言われてみれば1年生と3年生って全然タイプが違うもんね」

 

「でもそれを言い訳にしてたらいつまで経ってもまとまらないわ」

 

「……その通りですわね。私たちは決定的にコミュニケーションが不足しているのかもしれません」

 

そう言われてみればと、曜が言ったのは1年と3年があまり話していないという欠点だった。2年生が比較的2学年と接しているためか、その両学年を繋げる役割になっていたのかもしれない。それがいなくなった今、向き合わなければいけなくなったということだろう。

 

「私に至っては新参者ですし……」

 

珠冬も苦笑いで目線を逸らしている。

 

「となれば……」

 

するとダイヤは何かを思いついたらしく、ルビィと珠冬を連れて中へと戻っていった。

 

「大丈夫かな……」

 

「まあ、どうにかなるだろ」

 

雲行きの怪しくてたまらない感じだが、ここは当事者である彼女たちに任せるべきだろう。話を聞く限り、いずれぶち当たる問題でもある。そのようなことを一眞が3人に伝え、帰って歌詞の作りを再開するのだった。

 

 

 

『仲良くなる……?』

 

「そうですわ。まずはそこからです」

 

「曲作りは信頼関係が大事だし」

 

1年と3年の中を深めることから始めよう。それがダイヤの提案だった。確かにより深くお互いを知れば、何が好きであるかぐらいはわかるようになるだろう。だが具体的には何をすればいいのか。そんな疑問を花丸は挙げる。

 

「任せて!」

 

果南が立ち上がる。どんな案がと善子が聞けば――――

 

 

「一緒に遊ぶこと!!」

 

学校のグラウンドに移動して始めたのはドッチボールだった。意気揚々と投げた果南のボールは花丸と善子の間をすり抜けていく。あまりの速さに髪が靡くほどの風が生じたのは、気のせいだと思いたい。

 

「なにこれ……?」

 

「ずら……」

 

「ちょ、ちょっと2人とも来るよ」

 

内野にいるのは先の2人と珠冬を入れた3人だ。当初、珠冬は遠慮したのだが「2人も3人も一緒」と果南。

 

「行くよ! 鞠莉シャイニング……トルネード!」

 

大きく振りかぶる鞠莉。これは渾身の一投が繰り出されるに違いない。その姿を前にどうすればいいかわからない花丸の前へ善子が飛び出すと、彼女は詠唱を始めた。風を切り飛んでくるボールに対し、善子は技名と共に腕を広げる。だが光の巨人のように障壁が展開されるわけでもなく、ボールは顔面に衝突。

 

跳ね上がったボールは面白いことに花丸、珠冬、ルビィの順で頭へと当たっていく。パワーに押された1年生は、あっけなくやられてしまったのだった。

 

 

 

「やっぱりここが一番落ち着くずら」

 

場所を移動し、今度は図書室だ。読書家でもある花丸の提案だ。

 

「光で穢された心が……闇に浄化されていきます!」

 

善子も花丸の意見に同意のようだ。しかし彼女の顔に刻まれたボールの跡に、3人は思わず笑ってしまう。

 

「何よ、聖痕よ! スティグマよ!! 珠冬、笑ってないで助けなさいよ! 闇の力的なものがあるんじゃないの!?」

 

恥ずかしさゆえに、珠冬へと話を振る善子。

 

「ごめん、今の私には無いみたい。ってか私の場合本当に闇の力よね……」

 

「いいじゃない。かっこいい」

 

「そんなものじゃないわよ、アレは……もれなく変な紳士が付いてくるし……」

 

「それはこのヨハネも遠慮するわ」

 

賑やかに話を展開する席の後ろでは、3年生も本を広げているが……あまり楽しくなさそうだ。

 

「退屈~」

 

「そうだよ~海行こうよ、海~」

 

さっきのドッチボールでもそうだったが、鞠莉や果南は体を動かしていく方を好むのは容易に想像できる。

 

そんな鞠莉と果南のために読書の楽しみ方を花丸は教えていたのだが、2人は長話が苦手なようで気がつけば瞼を閉じて夢の中だ。2人を良く知っているダイヤですらも、これにはため息を吐くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

また場所は変わりバスの中。先ほどから見えてきた両学年の違いを、ダイヤは推測しだした。

 

「なんとなく見えてきましたわ」

 

視線を左にやれば”絶好のダイビング日和だね””また一緒にtogetherしましょ!”と青と金の髪が揺れながら窓の外を見ている……

 

「アウトドア派な3年生と……」

 

さらに右に視線をやれば、”新たなリトルデーモンをここに召喚せしめん”と独り言のようなことを言いながら、隣では本に目をやる……

 

「インドアな1年生にわかれている……というわけですね」

 

全くの正反対ともいえる両者を後ろから見るダイヤに、ルビィは不安げに尋ねる。これでは仲を深めることもできそうにない。

 

「他に手があればいいんですけど……」

 

珠冬も同じ気持ちのようだ。すると、聞かれた彼女は「こうなれば仕方ありません。互いの姿を、さらけ出すしかありませんわ!」と言い放った。次に一行が向かった場所というのは――――

 

「まさかの銭湯ですか……」

 

温泉に浸かった珠冬の声が良く響く。裸の付き合い……というやつなのだろう。湧き出る音が鼓膜を震わす。

 

「その通りですわ、珠冬さん」

 

「え、まさか裸の付き合い……ですか?」

 

首を縦に振るダイヤに、まさかの心を読まれたような気がして珠冬はドキッっとする。

 

「安直ずら」

 

「お黙りなさい。古来から日本には共にお風呂に入り、コミュニケーションを図って物事を円滑に進める文化があったのですわ」

 

とは言うものの、この時間からお風呂とはいかがなものかと果南は不満げだった。さらに善子も未だ脱衣室からこちらに来ていない。彼女曰く、「堕天使が人前で肌を晒すわけにはいかない」ということなのだそうだ。それではここに来た意味がないではないかと珠冬。

 

「暗黒ミルク風呂というのがあるずら」

 

隣にある白の一面の風呂にむかって「白黒どっちやねん!」とツッコまざるにはいられなかった一同。

 

しかし、鞠莉と果南は我慢の限界のようだ。結局、ただ体を温めただけ……。すると空から水が一滴、一滴……と落ちてきたのだ。外へ出てみれば、さっきの青い空から一変。暗い灰色へ変わり雨が降りだしていた。

 

予想外の天気と同じように、どうも晴れやかな気分にはなれなかった。なぜもなにも、曲づくりどころか、仲が深まったという印象もないのだから。

 

「あちらを立てればこちらが立たず……」

 

「より違いがはっきりしただけかもね」

 

ダイヤと果南は残念そうに呟く。空を見てみれば、雨がより強くなっているみたいだった。しかし誰も傘を持ってきてはいなかった。

 

「困りまったね」

 

「どうするのよ……さっきのところ戻る?」

 

「それもちょっとな……」

 

「どうしよ、結局何も進んでない……」

 

銭湯に戻るわけにもいかず、さらに何も進んでいないという焦り。7人は途方に暮れてしまう。すると、花丸がぼそりと

 

「近くに知り合いのお寺があるにはあるずらが……」

 

あまり勧めたくはなさそうな感じだったが、背は腹にかえられないという奴だ。とりあえず雨宿りができる場所でということで案内してもらうことになったが……

 

 

 

「入っていいずら」

 

「えええ!?」

 

「いいの?」

 

門を開ける音がやけに古かったように聞こえた。それも相まって少し不安そうな人がチラホラ見受けられる。

 

「知り合いに電話したら、自由に使っていいって」

 

「自由にね……」

 

珠冬は背伸びをするようにして、寺の敷地内を視線に収める。一言で言えば、正直ちょっと怖い。

 

「お寺の方は、どちらにいらっしゃるんですの?」

 

「ここに住んでいるわけじゃないから……」

 

ダイヤの問いに、花丸はどこからともなく取り出した懐中電灯を顔の下から照らす。

 

「いないずら」

 

「「ヒィッ!?」」

 

今この寺には、ここにいる7人だけしかしいないということだ。そのことにビビったか、背に隠れる赤と青い髪が揺れる。

 

「となればここで雨宿りしていくしかありませんわね」

 

「雨もまだ止みそうにないもんね」

 

そうしてお寺の中に入ったわけなのだが

 

「電気は?」

 

「ないずら」

 

「Really?」

 

「ほんとに古いお寺なんだね~」

 

電気という文明の利器がないため中は真っ暗だった。蝋燭に火が灯され、少しだけ見えるようになった内部で、珠冬は歩き回っている。

 

対する果南は強がっているように見えながらも、藻の音が聞こえれば柱やダイヤに抱き着いたり……。結構怖がりみたいだ。

 

「曲作りでもする?」

 

「でも、また喧嘩になっちゃわない?」

 

「歌詞は出来ているんですの?」

 

尋ねてくるダイヤに、花丸は善子が歌詞を書いていたと伝える。賞賛の声が聞こえてくる中、照れ隠しをする彼女の後ろでは全員が善子の書いたノートに目を通していた。

 

「えっと……裏離聖騎士団?」

 

裏離聖騎士団(りゅうせいきしだん)!」

 

「ではこの黒く塗りつぶされているところは?」

 

「ブラックブランク!」

 

「ええ……」

 

しかし、当て字が多すぎて読めない。善子だけにしか理解できないのでは、歌詞として機能するのか微妙なトコロである。

 

そしてノートに虫がついていたり、火が消えたりして大騒ぎになるのはここから数秒後のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

お寺の中で大騒ぎしている頃……。

 

「雨降るなんて言ってなかったんだけどな~」

 

休憩がてら、外を眺めていた曜が呟いた。こちらでもこの大雨には思うところがあるみたいだ。

 

「天気がはずれるなんてよくあることだしな……ん?」

 

一眞は携帯に目を通しながら口を開くと、あるページで指が止まる。それは太平洋上に台風が突如発生したという記事だった。最近よく目にしていたものだったが、あまりに発生が不自然かつ突発的過ぎた。さらに9月ごろの台風というのは、南海上から放物線を描くように日本付近を通るらしい。しかし今発生しているのは一直線に日本(こちら)に向かってきている。加えて勢力も並外れたものだという報告も上がっていらしい。

 

「風も強くなってきたわね」

 

梨子も不安そうに曜の隣で空を見上げる。どうも記事を目にしてしまったことからか、胸に生じた不安が消えない。それもかつて、禍々しい翼を持った存在がいたせいだろう。かといって、ただの自然だった場合にはこちらが介入するわけにもいかない。

 

「……はあ」

 

胸に響く不安が杞憂であればいいと感じながら、一眞は立ち上がる。そうすれば「どうしたの?」と声が聞こえてくるが、曲作りに集中してもらってる身だ。今回は黙っていようと誤魔化す。

 

「う~ん……ちょっとな」

 

そう言って一眞は裏口の方から出ていくと、打ち付けてくる雨に向かってオーブリングを突きあげた。

 

 

 

 

 

 

身体に当たってくる雨や風に苦しみながら、オーブは薄暗い空を飛翔する。まだ日本は雨が降っているレベルだが、迫っている台風が上陸すれば甚大な被害になることだって考えられる。もしそれが自然ではなく、より恐ろしい存在なのであればここで食い止めなければいけない。

 

(あれか……)

 

すると、空中で制止したオーブへ台風から一閃の光が迫りくるではないか。すぐさま身体を反らせて回避する。どうも嫌な予感は当たったらしい。

 

(マジもんかよ……)

 

オーブのとある技の名が、雷の音と同時に発せられた。

 

「シャットダウンプロテクト……!」

 

そして前方に右手を翳しながらオーブは念じる。

 

このまま台風に突っ込んでもいたずらに体力を消耗するだけ。であれば中に居る”何か”を捉え、台風から切り離せばいいのだ。ウルトラ念力を併用しながら、シャボン玉のような球体を作り出すイメージで怪獣を隔離する。そして台風の中から……

 

(引きずり出す!)

 

遠すぎて怪獣の姿はまでは捉えられないが、出てきた球体と台風が弱まっているのは確認できた。

 

しかし隔離のための膜は作りが脆かったらしい。すぐさま壊され、破壊光線がオーブに迫りくる。

 

(なっ……!? こんのぉぉぉぉぉぉ!!)

 

迫りくる一筋の光を躱し、高速で飛翔。撃ってきたヤツへと体当たりを仕掛ける。両者共に無人島へと落下。数秒後、巻き上がった土や泥の中から紫と赤の体表が出てくるのが見えた。

 

(くそ、なんなんだ……台風の正体は……)

 

あまりに突然のことで無我夢中だったため、怪獣の正体を見ていなかったのだ。すると地面を震わせ、対立する方向にできたクレーターから遅れて起き上がる。頭部の傘が目を引く姿はまるでクラゲのようだ。加えて両手には触手、そして見る者を威嚇するような巨大な2つの目が赤く輝いている。

 

台風怪獣バリケーン、それが怪獣の名だ。

 

 

姿を視認すればすぐさま仕掛けるオーブ。迫りくる腕の触手の攻撃を避け、殴打を一発撃ちこむ。側面に蹴りを入れれば痛みで隙ができ、懐へと踏み込んでさらに腕を引き絞る。

 

「ハアッ!」

 

下から打ち上げるような拳がバリケーンへと決まる。

 

(こっちも時間が無いんだ。すぐに終わらせる)

 

触手を腕で防ぎつつ、拳や手刀の連打で攻め込んでいく。トドメと言わんばかりのドロップキックがバリケーンを後退させた。

 

バリケーンも怒りに腕を振り上げながら頭部から破壊光線を乱射する。

 

(んおっ……!)

 

側転などで素早く回避するがそれでも間に合わない。そう判断したオーブは素早くシールドを展開、光線を防いでいく。

 

しかし

 

(……っ!)

 

自身の直感が何かやばいと頭の後ろをゾワリと立つような感覚……。すぐさまその場所から離れれば、一瞬の閃光の後に地面が爆発する。

 

(ちっ……手強い奴だ……)

 

キュルキュルと不快な鳴き声を響かせながら迫ってくるバリケーンに向かって、オーブはスペリオン光線を放つ。だがそれを自分の口で吸収したのだ。

 

(なっ……!)

 

吸収されるのであれば光線は使えない。撃つだけ無駄に体力を消費し、そしてヤツの力へと変換されるだけだからだ。

 

(許容量を超えらればいいが……最悪俺の方が先に倒れる可能性もある……!)

 

ヤツの吸収できる量以上の光線を与えるという方法もある。しかしそれは不確定過ぎて危険だ。許容量を超える前に、先にこちらがエネルギーを使い果たしてしまう可能性もあるのだから。

 

だが敵は待ってくれない。突進してきたバリケーンは口からガス攻撃で目を眩ませると、脚を体に絡ませてきたのだ。身動きが取れないオーブに向かって脚部から電流を流しこんでくる。痺れと痛みに襲われ地面へと倒れこむ。さすれば待っているのはバリケーンの猛攻、それだけだ。

 

(ううっ……ああ……があっ……!?)

 

鞭のような打撃が全身を襲い苦痛で地に伏せる。さらにはその長い触手で首を絞められてしまい絶体絶命のピンチに陥ってしまう。

 

(……両手も縛っとくべきだったな!)

 

しかし、オーブは寸でのところでスペリオン光輪を生成し触手を切断。見事抜け出すことに成功したのだ。

 

(やってくれたな……ならこっちも(ハリケーン)でぶっ飛ばす!)

 

首に巻き付いている触手を取り払うと、カラータイマーから光が溢れだした。

 

 

《ウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュ》

 

 

赤と青の戦士へとフュージョンアップしたオーブ。

 

斬られたことへの怒りなのか、頭の傘を回転させ暴風を巻き起こすバリケーンに対抗し、自身の体を回転させ相殺するオーブ。間髪入れず迫りくる破壊光線の乱舞。しかし、呼び出したオーブスラッガーショットを巧みに扱い撃ち落とす。

 

(喰ゥらえッ!)

 

そして体を大きくよじりながら投擲された威力を増した光の刃が、バリケーンを切り裂き火花を散らした。

 

すると勝てないと判断したのか、足からジェット気流を噴射して飛行を始めたのだ。

 

(逃がすかよ!)

 

追いかけるように空へと飛翔するオーブ。逃げるまでの時間稼ぎか、さっきよりも傘の回転を速くし風を起こすバリケーン。さらに破壊光線も同時に放ってきたのだ。

 

迫りくる暴風と光線の混じり合った奔流。だがオーブもここで逃がすわけにはいかない。光刃を回転させ、バリケーンのような傘みたく頭上に展開。強引に推し進めていく。

 

(ぐっ……うおお……)

 

風、光線の威力を上げられ前へと進まなくなっていくのを感じたオーブは、オーブスラッガーランスを生成しまるでドリルのように体ごと回転させる。青と赤の光に包まれた錐は嵐を穿ち突き進んでいく。

 

(ヤツに飛び込み……コイツを――――

 

迫りくるソレに怯えるバリケーンはさらに威力を上げるが、彼の勢いは止まらない。

 

 

人間は自然の猛威と戦うことはできない。台風が来れば人々は通り過ぎることを待つしかないのだ。しかしウルトラマンになっているときは台風とも戦えるし――――

 

――――ブチ込む……!!)

 

――――勝つこともできる。

 

 

ビックバンスラストを発動させながら突き進んだオーブは、遂にバリケーンの体を突き破ったのだ。

 

 

爆発とともに暴風雨もかき消される。すると辺り一帯には、さっきまで激戦が嘘だったかのような静寂さだけが残っていた。日本はまだ雨が降っているかもしれないが、時機に止むことだろう。静かになった海を見つめたオーブもすぐさま戻っていく。

 

自然の猛威だと思われていた”突如現れすぐさま消える巨大台風”は、この日を最後に観測されることはなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「いったい私たちどうなるの……」

 

善子の呟きはもっともだ。結局、それぞれの違いがより明確になっただけ。このままでは曲などできるはずもない。

 

「そんなに違うのかな……ルビィたち……」

 

「違うことがいけない……そんなことないと思うんだけどな」

 

ルビィよりも小さな声で呟いたはずの珠冬の声。しかし、静かすぎて逆に響いてしまったようだ。

 

「珠冬ちゃん、それってどういう……」

 

「ああ、いや、ただ別に私は……」

 

「良いよ、言ってみなって」

 

果南に促されるまま、珠冬は口を開く。

 

「それぞれが輝ける場所……Aqoursを見た時に思ったのがそれなんです。みんな違うけど、それが逆に輝いてるって言うか。……Aqoursって”違うからなんだ”って感じがするんですよね。第一、宇宙人がマネージャーやって――――ヒャッ!?」

 

珠冬の悲鳴。それは天井から水の粒が垂れてきたからだった。それはダイヤとルビィに当たり、冷たさに声を上げてしまう。

 

「雨漏りずら」

 

「どうするの?」

 

「どうするって……」

 

「こっちにお皿あった」

 

果南が持ってきてくれたお皿を敷くことで一件落着……とはいかず、至る所から雨漏りしてきたのだ。お茶碗やお皿、桶、湯飲み……さまざまなものを置いていく。

 

そしてしばらく様子を見る7人。外で打ち付ける水の音よりも、器の底に水滴が当たる音がその場に残響し、耳に残る。高い音、低い音、さらにもっと低い音……器を置いた分だけ、数多の音が鳴り響く。それは一見バラバラで、かみ合っていないように感じる。でも……だからこそ、それが調和となり旋律を形作っているように聞こえた。それは、今も視線がバラバラの彼女たちのようではないか。

 

「テンポも音色も大きさも」

 

「全部違ってバラバラだけど」

 

「一つ一つが重なって」

 

「一つ一つが調和して」

 

「ひとつの曲になっていく」

 

「マルたちもずら」

 

言葉を紡ぎ合わせた彼女たちは、ともに肩を組み合う。「ほら、珠冬も」と善子に強引に引き入れられが、逆にそれが嬉しかった。全員で顔を見合わせると、自然と笑みが零れ落ちる。あとは、奏でられた音の中で見えたものを曲にするだけだ。

 

「よーし、今夜はここで合宿ずらー!」

 

『えええーー!?』

 

鞠莉が提案したことへの叫びが、どこか楽しそうに聞こえたのも気のせいではないだろう。外では雨が止み、月明かりが辺りを照らしていた。

 

 

 

 

 

翌朝、紫色の空を太陽が照らし始める。その光景を千歌は家の屋根に座り眺めていた。

 

「千歌ぁーー!」

 

すると、果南の声が背後から聞こえてきた。振り向けばそこには7人の姿。

 

「曲は出来たー?」

 

曜が尋ねれば、誇らしげにノートを見せる彼女たち。それを見てまたやる気が漲ってくる。2曲分もあるのだから、なんて言っているがそれは嬉しさ故の言葉だったのかもしれない。

 

 

やる気に満ち溢れたみんなの声が内浦の空に響く。

 

 

着信とともに迫りくる、新たな課題とともに……




別に怪獣出す必要なかったかもしんねえ……とは思いながらもノリノリで戦闘シーンを書きました。あと、ある地の文は狩人が怪獣をぶん殴る某映画から拝借したものです。
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