Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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一日に話投稿できるとは思わなかった……今年最後の投稿です。短めですがどうぞ!


第46話 舞い踊る者、輝きの問い掛け

「二つに分ける?」

 

「うん、5人と4人にわかれてラブライブと説明会両方で歌う。それしかないんじゃないかな?」

 

不思議なほど静かなその部室で、千歌の出した唯一ともいえる提案。どちらも選べないなら二手に分かれて歌えばいいじゃないか……ということ。しかしその案を伝える千歌にも自信が無さげだったのは、気のせいではない。

 

周りの反応も、あまり好意的なものではなかった。

 

「それでAqoursと言えるの?」

 

「5人で予選を突破できるのかわからないデース」

 

善子や鞠莉が言うことももっともだ。今は9人が揃ってAqoursとなっている。しかし、同じ目的のために奔走する存在が4人や5人になったら、それはAqoursという存在になり切れないのではないかということだ。さらに、少人数で突破できるほどラブライブが甘くないというのも、彼女たちが一番よくわかっている。

 

「嫌なのはわかるけど、他に何か方法はあるの?」

 

誰もが嫌なはずだ。問いかけた梨子だってそうだ。しかし、今の状況で最善の策……というのはこれしかない。それが嫌でもわかってしまうからこそ、彼女の問いに口を開くものは誰もいなかったのだ。

 

 

 

 

 

「これでよかったのかな……」

 

「良いのか悪いのか……で聞かれれば良い、だと思う」

 

「うん、これが最善の策だもの。私たちにキセキは起こせない……。この前の予選の時も、学校の統廃合の時も」

 

夕日が後ろから差してくる中、柵に腰掛けた2年生の4人は呟く。どちらも取りたいから選んだ最善の策であることはわかっている。それに、簡単にキセキを起こせるものではない。できたら、それはキセキとは呼べない。

 

「ほんとは……」

 

一眞の言葉に視線を向ける曜と梨子だったが、不思議と彼の目が見えないように感じていた。

 

「俺は力を使いたい。だけど……()()()()んだよ」

 

オーブカリバーを引き抜けない……ということだ。柄を握っても、頭上に掲げることができないのだ。まるで拒否されているかのように。それは中にいる彼からの警告なのかもしれない。私利私欲のために力を行使するなと。あくまでこれは、迫りくる脅威を退けるための力というふうに。

 

「あまりに自分勝手だから、俺怒られちゃったのかもな……」

 

「……だからこそよ」

 

この場にいる全員を励ますように、或いは自分に言い聞かせるようにして、背を向けていた夕日に向き直り梨子は言う。

 

「その中で一番良いと思える方法で頑張る。それが私たちじゃないかな?」

 

「そう……だね」

 

「今を受け入れて、その中で足掻くってことか」

 

「うん」

 

背後の柵を飛び越えた梨子に向き直る。ここまで言葉を発しなかった千歌も、彼女の言葉にようやく口を開いた。

 

Aqoursというのはいつもそうだ。降りかかる現実を受け止め、それを知った上で前へと進む。ゼロからイチへ踏み出してきた。互いに異なる個性の中で、それを受け入れてどうしたいかを模索してきた。キセキを起こせない中と知りながらも、その中で最善の策を講じた。それがAqoursなのだ。

 

「そうだよ、みかんだよ!」

 

突然、千歌は興奮気味にみかんを指した。誰も訳が分からずに首を傾げる。一眞も「みかん? みかんがなんだよ!? おい、ちょっと千歌さん!?」と声をかけるが、視界や心が晴れた千歌には届いていなかったようだ。

 

だが、彼女には見えていたのかもしれない。進むべき道……というものが。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

当日。浦の星では多くの生徒が学校説明会に精を出していた。ということであれば、ラブライブの予選へは応援に行くことができないということになってしまうのだが。

 

「……」

 

「一眞くんが心配してどうするのよ~」

 

「それはわかってるんですけど……」

 

客席で見守る一眞は、そう志満へと告げながら力の無い笑みを浮かべる。こちらでは2年生3人とルビィ、ダイヤの5人が予選に出ることになっている。他の4人と珠冬は学校説明会だ。

 

それに加えてここには浦の星の生徒もいない。その孤立したような空気でパフォーマンスできるのか、そんな不安も感じてしまうのだ。

 

「辛気臭いな! マネージャーだったらもっと堂々としてろって!」

 

「痛い、痛いっす美渡さん! ギブ! ギブ~!!」

 

美渡にヘッドロックをかまされた一眞がそう言って彼女の腕を叩く、という光景を志満は微笑ましそうに見つめていた。

 

すると会場が暗くなり、アナウンスが入る。即ち、Aqoursのステージだ。ステージに明かりが灯ると、そこには位置についたAqoursの姿。そして嫌な程静かな間と、まばらな拍手が会場に溶けて消えていく。

 

5人のステージはここまで広く寂しいものだったかと思わせるくらいもので、それはステージにいる彼女たちが一番感じているだろう。

 

「千歌……」

 

呟くような一眞の声など当然聞こえない。

 

 

すると

 

 

「勘違いしないよーに!」

 

「やっぱり私たちは1つじゃなきゃね!」

 

そこに現れた学校説明会に行ったはずの4人の姿が。そして

 

「ここにいたんだ、一眞」

 

「珠冬、なんで……」

 

「サプライズってやつ。やっぱり、Aqoursは9人じゃなきゃ!」

 

そう言って珠冬も悪戯っぽく笑う。

 

ステージに集まる9つの光……否、焔。小さなものでも、それが1つに集まればすべてを凌駕するほどの瞬きを見せる。

 

 

 

――――MY舞☆TONIGHT――――

 

 

1年生と3年生が雨の中、作り上げたその楽曲。和やロック、そして無といった一見バラバラなように見える要素でも、それが1つにまとまり美しい旋律を組み上げている。足元が見ないような不安な状況だったとしても、諦めていなければ道を示してくれる。だからこそ恐れず踏み込んでいけるのだと伝えている。

 

9つの色に舞う炎が1つになったとき、観客席から送られたのは先ほどのまばらな拍手など比べものにならない程の、会場を揺らす大きな声援や拍手だった。

 

 

「さあ行くよ!」

 

「ここからが勝負よ!」

 

パフォーマンスが終わるなり、千歌に続き梨子、そして曜と駆け出していく。

 

「ほら、珠冬も衣装持っていくぞ! 志満さん、美渡さんここは頼みます!!」

 

即座に衣装を持った一眞と珠冬。外へ出ると、ダイヤや善子たちの声が聞こえてきた。

 

「もしかして」

 

「説明会に間に合わせるつもり!?」

 

説明会ではなく、ラブライブをとったAqours。しかし諦めるなんてできないのだから、説明会も間に合わせる。それが千歌たちのとった策だ。

 

会場の近くにあるみかん畑を突っ切ることができれば学校まで最短距離だ。さらに嬉しいことに、クラスメイトのよしみがみかん畑の所有者というのだから既に許可はとってある。

 

「やっぱり、9人なら……」

 

「ああ、そういうことだ」

 

珠冬の言いたいことをすでに見抜いていた一眞は笑って見せる。

 

1人ではなくみんながいる。だからこそキセキが生まれるのだ。疲れた花丸の背中を押すのはルビィや善子、そして珠冬というように、互いを助け合う姿も見られた。

 

「これが……Aqours……Aqoursなんだ」

 

一眞は口からそう零れてしまった。

 

 

そしてみかん畑に着き、そこで待っていたのは

 

「お嬢ちゃんたち、乗ってくかーい?」

 

同じ2年生である茶髪で、デコ出しと白いカチューシャが特徴のむつと、右の髪をくくった茶髪の短サイドテールのよしみであった。彼女らが待っていた理由は、近くにあるみかん運搬用のモノレールだ。以前4人で話していた時に千歌が思いついたのは、これを使って一気に駆け抜けるということだったのだ。

 

「みんな乗った~?」

 

「全速前進、ヨーソロー!」

 

9人と珠冬を乗せたモノレールが動き出す。動き出したが……

 

「冗談は善子さんずら」

 

「……ヨハネ」

 

安全設計だからとても遅い。逆に間に合わないじゃないか……という程に。だからなのか、落ち着きのない果南はスピードを出そうとレバーを引き続けた。限界のその先まで引き続けたレバーがどうなるのかと聞かれれば当然……

 

「え、ちょっとさっき嫌な音しましたよ……」

 

「言わないでよ、聞こえないふりしてたのに!?」

 

珠冬と善子の声が聞こえた後、果南が振り向く。左手に折れたレバーを持ってだ。

 

「……取れっちゃった」

 

ブレーキが壊れたモノレールは、坂をジェットコースター並みのスピードで駆け抜けていく。その姿が豆粒のように小さくなっても10人の悲鳴はこちらまで届いてきた。

 

「さて……俺も」

 

「一眞くんは乗らなくてよかったの?」

 

「大丈夫だって、マネージャーの底力舐めんなよ?」

 

むつにそう返した一眞は道を通って浦の星に向かう。もちろん、超人的な脚力を行使して。

 

 

 

 

 

「時間は……ギリギリだな……」

 

疾走しながら腕時計に目を通す一眞。説明会の衣装は学校にあるし、一眞がいなくても珠冬が、そして学校の皆が何とかしてくれるだろう。そして千歌たちはモノレールからまた走らなくてはいけない。でも、彼女たちならと一眞は信じている。

 

 

キセキを起こそうと、ずっと向きあい続けてきた少女たちの姿をずっと見てきたのだから。

 

「けど……」

 

先に浦の星へと到着した一眞は天を仰ぐ。そこには眩しいほどに綺麗な虹がかかっていた。それは、今を変えたいと全力で駆け抜ける彼女たちの道筋のよう……。

 

それを見てしまえば、彼も思わずにはいられない。

 

 

 

 

 

―――――君のこころは輝いているかい?―――――

 

 

 

未来を変えていきたいと、がむしゃらに走り始めていけば、その中で数多の人々と出会っていくことが自分自身を、そして周囲に変化を及ぼしてくれる……。

 

だから既に、未来が変わり始めているのだと叫べるのだと伝えてくれるような気がした。

 

 

まだ始まったばかりの道なのかもしれない。しかし彼女たちは同じ方向を見て突き進んでいくことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「っ、なんだ……?」

 

太陽を見上げる9人の姿に共鳴しているかのように、オーブリングが一瞬だけ輝く。

 

しかし、その輝きの理由が判明するのはまだまだ先の話だ。




今年も終わりなので改めて……

この作品に目を通してくださり本当にありがとうございます。しかしSTAGE2はまだ始まったばかりの序盤です。
また来年もこの作品にお付き合いくだされば幸いです。
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