Sunshine!!&ORB   作:星宇海

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今回は早めに出せました。


第52話 越えるべき壁

 スクールアイドル部部室に集まっている2年生と1年生。彼女達が覗いているのは例もよってパソコンの画面。

 

「きました……」

 

 画面の表示と共に聞こえてくるルビィの声に、誰もが画面に注目した。それもその筈。画面に表示されているのは今回の地区大会、その開催場所だ。そこに表示されていたのは、前回と同じ場所。同じステージ。皆が悔しい思いを抱えている場所で、再度臨むことができるというのは粋な計らいなのか、運命のイタズラか……。

 

 

 千歌たちは真剣な眼差しで画面を見つめる。別に前回が重大ではなかったという訳ではないが、今回ここで落選すれば、廃校を免れることは不可能と言える。だからこそ、今回は絶対に負けられないのだと。

 

 

 

 

 

 別日、浦の星の一室で鞠莉やダイヤ、果南の3人が話し合っていた。しかしその場所は、ステージ発表の時とはまた異なった、張り詰めた空気で支配されていた。

 

「57人?」

 

「そう。今日現在、入学希望者は57人」

 

「そんな。この1ヶ月で10人も増えていないというのですか?」

 

 鞠莉の報告に、ダイヤは思わず立ち上がってしまう。廃校を決定するまでの期間で希望者100人を集めなくてはいけない。しかし1ヶ月経ってそれだけというのは、なかなかに厳しいものだった。それも、説明会やAqoursの活躍もあったというのに、だ。

 

「鞠莉のお父さんに言われた期限まで、あと1ヶ月もないよね」

 

「ラブライブ地区予選大会が行われる夜。そこまでに100人を集めなければ、後はnothingです」

 

「つまり、次の地区予選が……」

 

「Yes.……Last chance」

 

「そこにかけるしかないという訳ですわね……」

 

 この状況を打開し、廃校を阻止できるのか。それとも、成し遂げることはできないのか……。最後の判定は、ラブライブ地区予選へと運ばれることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「One,two,three,four,one,two,three,four……Changeして~! Up! Up!」

 

 沼津の室内練習所で反響する鞠莉の手拍子と声は、前回の練習の時よりもより速いカウントを刻んでいた。鞠莉の声に合わせ、全員は最後の決めポーズに入った。

 

「Oh,good! ここの腕の角度を合わせたいね~花丸はもうちょい上げて」

 

 鞠莉のアドバイスに、花丸は曲げた右腕を上げる。すると、筋肉が限界に近付いているのか、身体が小刻みに震えていた。

 

「この角度を忘れないで!」

 

 鞠莉のアドバイスの後、全体の合わせは終わりを迎えた。インターバル後には各個人での練習、と言う形となる。練習のスイッチを切った彼女たちの緊張が切れた証として、肺から息を吐きだす声が聞こえる。

 

「お疲れ! ほら!」

 

「花丸、お疲れ!」

 

 一眞と珠冬は、彼女たちにドリンクを渡していく。2人の目からでも彼女たちが練習に精を出し、着実にスキルアップしていっているのは明らかだった。それもこれも、あの結果がでたおかげだろう。

 

「全国大会進出が、有力視されてるグループだって」

 

 声をかけた曜の周りに、花丸や千歌が集まってくる。善子も別のところで反応したようで、視線だけを向けていた。

 

「そんなのがあるの?」

 

「ラブライブは人気があるから、そいういうの予想する人もいるみたい」

 

「どんなのがいるの?」

 

「あ、それは俺も気になる」

 

 梨子や一眞も興味を引かれたのか、彼女の下へと集まった。それらに応え、曜が画面をフリックして確認していく。見たところ、前年度の大会に出たグループは勿論入っているらしい。さらに下へやっていくと、自分たちとも関わり合いの持つグループの名が書かれたいた。

 

「前回は地区大会トップで通過し、全国大会では8位入賞したSaint Snow。姉、聖良は今年3年生。ラストチャンスに優勝を目指す」

 

「2人とも気合入ってるだろうな」

 

「確かに、むこうもこのチャンスには万全で仕上げてきたいだろうしな」

 

 千歌と一眞は、Saint Snowの画像を見ながら言った。彼女たちが狙うのは入賞ではなく優勝。しかも今回がラストチャンスとなれば、気合が入らないわけがない。今この瞬間も、ストイックに練習を続けているに違いない。

 

「あとは……あ、Aqours!」

 

「ホント!?」

 

「ホントだよ。ほら!」

 

「え、マジのガチじゃん!?」

 

「マルたちずら!」

 

 いざ自分たちが入っているとなると、驚きを隠せなくなり本当かどうかを疑ってしまう。しかし、曜のスマホの画面には、はっきりと”Aqours”の文字が書かれていた。それは、離れて水を飲んでいた鞠莉やダイヤにも聞こえたようで、「ねえ、なんて書いてあるの?」と鞠莉が尋ねてくる。

 

「前回は地区大会で涙をのんだAqoursだが、今大会予備予選の内容は全国大会出場者にも引けを取らない見事なパフォーマンスだった。今後の成長に期待したい」

 

「目の付け所があるよ、この記事を書いた人は」

 

「なんでカズくんが誇らしげにしてるの?」

 

 腕を組んでそう呟く一眞に、曜は苦笑いで答えた。とは言っても、このように評価され、期待されているというのは素直にうれしいものである。

 

「フッ……このヨハネの堕天の力を持ってすればこの程度、造作もないことなのです!」

 

「造作もないことです!」

 

 すると善子が立ち上がって堕天のポーズをとったのだが、今回は彼女と加えてもう1人でやっている。つまりは2人でだ。その珍しい光景に、誰もがポカンとした顔で見上げていた。

 

「……ハッ!?」

 

「さっすが、我と契約を結んだだけのことはあるぞ! リトルデーモン、リリーよ!」

 

「無礼な! 我はそのような契約、結んでおらぬわ!」

 

 ノリノリで梨子が善子へと返しているかのように見えるこのやり取り。前回の件が、2人の仲を深めたのだろう。そんな2人の賑やかなやり取りを見ていると、悲しみは徐々に癒えているように思える。

 

「どうしたの?」

 

「リリー?」

 

「これは堕天ずら」

 

「うゆ」

 

 しかし事情を知らない人たちから見れば、梨子の変化に戸惑うのだろう。その中で唯一知っている一眞だけは、顔を背ける。聞かれても「知らない」の一言で逃げる気なのだろう。

 

「違う~! これは違くて~!?」

 

「ウェルカムトゥヘルゾーン!」

 

「待て~い!」

 

 でも明らかにノリノリだろ、と突っ込まざるを得ない梨子と善子のやりとり。それを見た千歌も「でも楽しそうで良かった」と笑った。純粋にそう思っているのかもしれないが、梨子は止めほしそうに千歌の名前を呼ぶ。

 

「善子も良かったね、契約を結んでくれる人がいて」

 

「何を言っているの? あなたも既に契約を結んでいるではないか。リトルデーモン、スピカよ!」

 

「ちょっと! その名前出すのはナシ!! ってか契約なんて結んだ覚えないんだけど!?」

 

「スピカ?」

 

「ああああ!? ホントにやめて!!」

 

 楽しそうに会話を続ける中で、ルビィは再度スマホに目を通す。そこには、地区予選の投票システムについて書かれてあったのだ。

 

「今回の地区大会は、会場とネットの投票で決勝進出者を決めるって」

 

「よかったじゃん、結果出るより何日も待つより」

 

「ですが、そんな簡単な話ではありませんわ」

 

 ダイヤは千歌にそう指摘してくる。続けて鞠莉が、地区大会の投票システムによる、こちらの問題を提示した。

 

「会場には、出場グループの学校の生徒が応援に来ているのよ?」

 

 鞠莉の言葉に「そういう事ですか」と一眞は呟く。続けてルビィも気付いたようだった。

 

「ネット投票があるとはいえ、生徒数が多い方が有利……」

 

 

 この投票システムは、どうやら簡単なものではないらしい。いや寧ろ……生徒数の少ないこちらだからこそ、一番不利になってしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「……そうなんです」

 

「出場グループの中では、こちらの生徒数が一番少ない……」

 

 その問題が明るみになった以上、どうすべきなのか。同じスクールアイドルの聖良に、千歌と一眞は相談しているのだった。千歌の携帯のスピーカーを通して、聖良の意見が聞こえてくる。

 

『確かに不利ですね。圧倒的なパフォーマンスを見せて、生徒数のハンデを逆転するしかない』

 

「圧倒的……ですか」

 

 結局、そこに行きつくだろう。だがそれがどれだけ難しいものなのか、ここにいる誰もが理解している。

 

『ですが、それは上手さだけではないと思います。むしろ今の出演者の多くは、先輩たちに引けを取らない歌とダンスのレベルにある。ですが、肩を並べたとは誰も思ってはいません』

 

 スクールアイドルの人口が増えたことで、技術が格段に発展していっていった。それは先人たちと並ぶくらい。

 

「でも、肩を並べたとは誰も思っていない……」

 

『はい。ラブライブが始まって、その人気を形作った先駆者たちの輝き。手の届かない光」

 

 しかしその歌とダンスを磨き上げて見せることだけが、その”圧倒的なパフォーマンス”ではないと聖良は語る。

 

 

 圧倒的なパフォーマンス……それは、人気を確固たる不動のものにした先駆者たちの輝きが光るパフォーマンスなのだと。しかしそれは届かない。掴むことはできない。もう千歌たちは知っている事だった。すれば自ずと道は見えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?Aqoursらしさ?」

 

「うん。私達だけの道を歩くってどういう事なんだろう。私達の輝きって何だろう」

 

 翌日、屋上にて千歌はそんなことを問いかけてきた。昨晩の聖良との通話によって導き出された答えに、必要となるものだった。

 

 練習前のストレッチをしていた彼女たちは動きを止めて、千歌の言葉に耳を傾けた。

 

「それを見つけることが大切なんだってラブライブに出てわかったのに……それが何なのか、まだ言葉にできない。まだ形になってない。だから形にしたい。形に……」

 

 未だに言葉にできないもの。表現できていないもの。追い求めるAqoursの輝き……それをどう現すべきなのか……。しかしそんな曖昧なものを言い表すこともできず、誰もが口を噤んでしまう。

 

「このタイミングでこんな話が千歌さんから出るなんて、運命ですわ!」

 

 その空気を破ったのは、ダイヤのひと声だった。

 

「あれ、話しますわね」

 

「でもあれは……!」

 

 加えて隣にいる果南に断るが、当の本人は狼狽えている。彼女は乗り気ではないように感じる。

 

「なに、それ何の話?」

 

 反面、千歌は興味を持ったように振り返る。ここまできてしまえば、隠すのは逆効果になるだけだろう。

 

「2年前、わたくし達がラブライブ決勝に進むために作ったフォーメンションがありますわ」

 

「2年前って言えば、ダイヤさんたち3人のAqoursってことですよね?」

 

 一眞の問いにダイヤは首を縦に振った。それとは別に、後ろでは何やら言葉遊びめいたことをしているが千歌は気にせず、果南に詰め寄る。

 

「そんなのがあったんだ……すごい! 教えて!!」

 

 だが果南の表情は険しい。先の反応もあり、これにはなにか訳がありそうだ。

 

「でも、それをやろうとして鞠莉は足を痛めた。それに、皆の負担が大きいの今、そこまでしてやる意味があるの?」

 

 それが足を痛め、東京で歌わなかったことに繋がる。どうやら果南は、以前のようになる事を恐れているのかもしれない。

 

「なんで? 果南ちゃん、今そこまでしなくていつするの? 最初に約束したよね! 精一杯足掻こうよ!ラブライブはすぐそこなんだよ!? 今こそ足掻いて、やれる事は全部やりたいんだよ!!」

 

 果南に力説する千歌。確かに、やれることは全部やろうと、精一杯足掻こうと決めた。だからこそ千歌は果南に頼んでいる。

 

「でも、これはセンターを務める人の負担が大きいの……あの時は私だったけど、千歌にそれが出来るの?」

 

 

「大丈夫。やるよ、私!」

 

 

 果南問われても、彼女は折れない。負担が多いとしても千歌は戸惑わない。今彼女にあるのは”やる”……それのみだった。

 

「決まりですわね。ノートを渡しましょ、果南さん」

 

「今のAqoursをBreak throughするためには、必ず超えなくちゃいけないWallがありマース」

 

「今がその時かもしれませんわね」

 

 現在のAqoursという壁を越え、求める輝きを見つけるためには進化させなければならない。ダイヤと鞠莉が語るには、今がその時だと。

 

「言っとくけど、危ないと判断したら私はラブライブを棄権してでも千歌を止めるからね」

 

 渋々了承し、果南はノートを千歌へと渡す。しかし果南も意志が強く、もしまた傷つくようなことがあればと、千歌の目を見てそう言い残した。

 

 

 

 

 

「ノートを見せてもらったけど、確かにあれは負担がデカいな。なんてものを隠し持ってたんだ……」

 

 その夜、自室で一眞は呟いた。果南の言っていた通り、今回のフォーメンションは今までやってきた中で一番と言えるほどの難度と負担がかかるものだと言える。一歩間違えれば大怪我だってしかねない。果南も渋るわけだ。

 

「おわっ!? なんだよ今の……爆発でもしたのか……?」

 

 すると隣の方から衝撃音、さらに数秒後に美渡の怒鳴り声と千歌の声が聞こえてきた。

 

「まさか部屋の中でやったのか……とりあえず、見てきますかね」

 

 一眞は自室の襖をあけ、声のする下へと降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「よっ………っとたたたああ!?」

 

 室内はまずいからと、千歌は十千万前の浜辺で練習することにした。しかしその難度は高く、転んでは起き上がりを繰り返すだけだった。

 

「そうだな……まあ、最初からビビらずに飛んでは来れてる……てかまず回る前には一度跳ねろ、それで勢いをつけるんだ」

 

「わかった!」

 

 一眞もアドバイスをしながら、彼女の練習を支えていた。

 

「心配?」

 

「やっぱりこうなっちゃうのかなって」

 

 千歌が練習に励む砂浜を、遠くから見守っていたのは果南と鞠莉だった。

 

「でも、一眞だって手伝っているじゃない?」

 

「いつでもいる訳じゃやない。怪獣が現れれば、カズはそっちに行かなくちゃいけなくなる。それで怪我を負う事だって……」

 

 一眞はいつでもいる訳ではない。それに怪獣と戦う事のリスクもあるのだと。

 

「あれ、やりたかったね。私達で……」

 

 ふと、以前のことを懐かしむように鞠莉が呟いた。

 

「それなら何で千歌達にやらせるの? まるで押し付けるみたいに……」

 

「千歌っちなら出来るって信じてるから。今のAqoursなら必ず成功する。果南だって信じてるんでしょ?」

 

 鞠莉は信じているのだ。今の千歌、今のAqoursなら必ず成功させられると。しかし、鞠莉に問われた果南は何も言わず、練習を繰り返す2人を見つめることしかしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────次回予告────

 

「実に長かったよ……」

 

「……その姿……お前……」

 

 一眞とAqoursの紡いできたものを嘲笑うかのようなその言葉が発せられた数秒後、閃光の後に地面が震えた。

 

 

 

「ここに宣言してやる。今からは僕こそが……ウルトラマンだ」

 

 

 

「ああ、いい。ようやく……ようやく君と対等に戦える。君に敗北を突き付けられる」

 

「なんだと……まだ俺が負けるとか、決まってねえだろ……」

 

 

 

 

 次回『漆黒の聖剣』

 




今回から始まったミラウェ回。アニメを見ていた時は「ライブでこれやるのか……!?」と震えた覚えがあります。

そして次回は、本筋からちょっと外れた話になります。予告の時点で察したかもしれませんがアレです。ちょっと弄っての登場にはなりますが……。
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