翌日、身体の所々に絆創膏を貼った千歌とともに登校する一眞や曜、梨子の4人。
「千歌ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だって、カズくんの手伝いもあって上達してるから!」
絆創膏の張った千歌はニカッと笑って見せた。とは言っても、心配なことに変わりはないのだが……。
果南のの言う通り、センターを務める千歌に求められているものの難易度はこれまで以上だった。千歌は上達していると言ったが実際、成功にはまだ程遠いというのが現状だ。
「でも、あまり無理はしちゃダメよ?」
「もう! 梨子ちゃんまで~。……でも、無理はしないようにがんばるから」
真剣な目つきで言われてしまえば、こちらも黙って見守るしかない。そう感じた梨子は「わかったわ」とだけ返す。
「張り切るのはいいけど、怪我だけはやめてくれよな」
「わかってるって」
自分も手伝っているとはいえ、そこだけは気を付けて欲しいと千歌に頼み込む。彼女は突っ走ると止まらなくなるのというのは、曜や果南たちと付き合いの長さが違うとしてもわかる。実際、今年はそれをよく目にしている。
「あと、授業中は寝るなよ? 学生の本分は勉強だって、ダイヤさんも言ってたしな」
「え!? あ、うん……ダイジョブ」
千歌の微妙な反応に、一眞をはじめとした2人はジト目で彼女の方を向いていた。彼女の反応を見てしまうと、成績云々で説教をするダイヤの声が聞こえてきそうだ。
3人の声を聞きながらも、胸の中で妙に疼く不安。それを消し去ろうとするように一眞はふと、浦の星の校舎を眺める。
「……っ!?」
そこで、一眞の脚が止まる。その異変に千歌たちも不思議がり、彼の名前を呼んで振り向けば息を呑んでしまう。そこには、校舎をジッと睨みつける一眞の姿があったのだから。
「どうしたの?」
「何かあった?」
「……大丈夫? 顔凄く怖いけど」
「……悪い、先教室行っててくれ」
深くは語らず、一眞はそれだけを言い残し学校へと走っていった。後ろで聞こえる声を無視して。
~~
屋上まで一気に駆け上がった一眞は、そのまま通路と屋上を隔てるドアを壊すような勢いで開けた。
「お前、どういうつもりだ」
「おはよう。……いいね、ここの景色は。おまけに太陽の光も気持ちいし、練習場所にはもってこいだ」
「聞いてんのはこっちだぞ」
屋上で腕を載せて景色を眺めていたのは、一眞のよく知る人物。リゲル、またの名をアオボシだった。「ごめんごめん、あまりにいい場所だったから」と、悪びれる様子もなく言い放つ彼に、一眞は一歩踏み出した。
「もう一度聞く、どういうつもりだ……!?」
「何が? こんな朝早くから怪獣騒ぎはやめろって? まあ確かに、こんな気持ちいい朝に怪獣の煩い咆哮は聞きたくないよね」
一眞が聞きたいのは、”何故浦の星の屋上にいるのか”だ。しかし彼は答える様子はなかった。さらにフッと笑い、「冗談はこれくらいにして、本題に入ろう」と言ってくる。完全に彼のペースと言っていいだろう。
「シリウス……僕と勝負しよう」
「なに?」
先の飄々とした雰囲気から一転、彼はそう持ち掛けてきた。
「……はっ、あんだけ言っといて、結局怪獣を呼び出すんじゃないか」
「僕は怪獣を呼び出すなんて一言も言ってないぞ?」
不敵な笑みを浮かべて向き直るアオボシに、険しい顔で見つめ続ける一眞。確かに、怪獣を呼び出すとは言っていなかった。しかし、彼が戦う手段は限られている。このまま肉弾戦をするか、怪獣を召喚するか、はたまたは合体獣で戦うかだ。
するとアオボシは懐からあるものを取り出した。
まるでオーブリングを小型化したかのような上部に、鍔と柄のようなものが合体しているような外見だ。見方を変えてみれば、刀身の無いオーブカリバー……といってもいいだろう。
「なんだよ……それ……」
低い声で彼に問う。すると、取り出したソレを大事そうに撫でながら、アオボシは話しはじめた。
「実に長かったよ……。シリウスがオリジンに覚醒し、グランド、ウォーター、ウインド、そしてフレイム……。4つのエレメントを発動させた後、僕が少しだけ頂いたのさ。それを僕自身の光と闇、加えてダークリングの力でブーストさせてやればあら不思議、コイツの完成さ」
目の前で語る男の姿に一眞は、己の目が見開いていくのを感じた。それが怒りなのか恐怖なのかはよくわからない。でも、それを聞いて心地よいとは思えなかったのは確かだ。
「これ……なんて名付けようか。君たちへの感謝も込めて、”オーブリングNEO”なんてのはどうだ? うん、それがいい」
「そいつで何をするつもりだ……?」
手に持ったやつの名前などどうでもいいと言わんばかりに、彼の目的を探ろうと一眞は疑問を投げかける。投げられた本人は、少し不服そうに表情を歪めた後、先とはまた異なった表情のゆがみを見せた。
「いたってシンプル。君と戦うだけさ! ただ純粋に、君を負かしたい! それだけだよ。以前から何一つ変わってないんだよ僕は! そして何もかも奪ってやるのさ! 君のもう1つの姿としての……
口角を大きく上げたその姿……彼にはそれが悪魔に見えた。1人の男への執念だけでここまで歪むのかと、一眞は身を震わす。
────そして同時に、申し訳なく思ってしまった。
「ここに宣言してやる。今からは僕こそが……ウルトラマンだ」
上部のリングが紫色に光るそのアイテムを、彼は頭上に掲げると同時に……言い放つ。
「君たちの絆、使わせてもらうよ」
一眞とAqoursの紡いできたものを嘲笑うかのようなその言葉が発せられた数秒後、閃光の後に地面が震えた。
己の目が得た情報を脳が理解するまでに、数秒ほどの時間を要した。屋上から離れ、近くの森に着地した彼の新たな姿を前に、一眞の震えた声が自然と漏れる。
「……その姿……お前……」
その姿はオーブオリジンそのものだった。さらに視線を移せば、同じ聖剣が右肩に担がれているではないか。
しかし、それでも決定的に違うもの……それは禍々しく彼の心を現すような体の色だ。体色はほぼ黒に包まれているし、額のランプや両目、そして胸に光るカラータイマーは常に赤く輝いている。それはまるで、オーブと対をなすような存在……。
「僕は……そうだな”オーブシャドウ”とでも名乗っておこうか。なに、すぐにでもオーブの名は頂くさ」
すると黒いオーブは右手に持った漆黒の聖剣……否、魔剣ともいうべき剣を振るう。それはオリジンでも使った技の1つ”オーブグランドカリバー”に酷似していた。地面を這い進む2つの光が爆発を起こし、地面を揺らし、岩石の雨を降らす。
こちらに近付く岩石に構える一眞だったが、それは空中で弾け、粉々となってしまった。飛んでくる岩石は脅しだったのだ。一眞にも当てることができただろうが、彼はしなかった。それが何よりの証拠だ。
「さあ、どうする? 君が迷っているのなら、あの学校をぶっ壊して強制的にやる気を出さすってのをやってもいいんだけど?」
切っ先を学校へと向けたオーブシャドウ。
そう。自分はいつでも撃てるぞと、一眞に理解させるために放ったのが先の攻撃だ。自分と戦うためなら、彼は学校もそして彼女らを手にかけることも厭わないだろう。只戦うためだけという彼のエゴでしかない。しかしそのエゴで奪われるものが増えていくと思うと────
「……ふざけてんじゃねぇぞ! てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
瞬時に放たれた青い閃光。そして、空から落ちてくる光の巨人。彼はその急降下の勢いを利用して、力を込めた聖剣を振り下ろした。
「ふざけてなんて……いないさッ!!」
─────地と空の狭間で刃と刃がぶつかり合った。その刃のぶつかり合った音が、まるで戦闘の開始を告げるゴングのよう……。
─────地面が揺れ、暴風が内浦を襲った。
その衝撃は人が立っていられないのではないかと思わせるほど……。実際、その戦いを前にした浦の星の生徒たちも、周りの柵や手すりにしがみつきどうにか耐えているくらいだ。
「成程、彼が……」
ふと、男が呟いた。その男は巨人同士の戦い、主にオーブの方に注目していた。オーブの剣を持つ姿勢、そして心を乱されたその戦い方をただ見ていた。
────彼が敗北してしまうような事態になれば、その時は……と、男は左手に持った
「そうだ……それでいい……」
「う……るせえっ!!」
鍔迫り合いの続いた後、力が互いに伝わり後方へと吹き飛んでいく。しかし、すぐさま前方へと加速する力に変換。周囲を顧みないほどの勢いで突進。─────そして激突。
一閃と一閃……互いに似通った太刀筋で体に迫る。だからなのか、簡単に防がれ、こちらも防ぐことに成功するのは……。
けど、けど何故だか腕を伝って体に響く衝撃は、アイツの方が重い気がする。そんな一瞬のノイズが、こちらにスキを生む。
(っ……!?)
咄嗟に身体をひねらせ、刃からは逃れる。しかし、すぐさま迫ってきた足への対応が遅れた。
「ウ、ウウオ……!」
痛みでふらつくも、右足を踏み込んで堪えながら左拳を突き出した。
食らってはいるが、こちらよりは効いていないのだと手ごたえが伝える。どうしてだ……? なんて思わなかった。自分でも薄々気付いているからだ。でも気付かないフリをしている。大丈夫だと虚勢を張っている……。
「おいおい、どうした? あんなに張り切って登場してきたってのに覇気がないぞ?」
腹部へと水平に迫ってくるヤツの刃を受け流す。
刃を打ち付けていくたびに、拳を足を使って対抗していくたびに……謎の不快感が己を襲う。それは鏡に向かって殴っているようなものなのだからか……。それとも彼と戦いたくないと、心の底で思っているからなのだろうか……。
「く、……このぉ!」
心中に渦巻く感情を、己の喉の震えで消し去る。彼との間合いを突き放し、ホイールを回転させた。もうそれは隙を見つけてとかではない、やけくそ気味に繰り出した技だ。
赤く燃え上がった輪と輪が中心でぶつかり合う。そして踏み込んだ両者の薙ぎ払いも、またもや同じタイミングで衝突していく。
「オーブフレイムカリバー……!」
「シャドウフレイムカリバー!」
「グ……ウアァァァァ!?」
目を覆いたくなるほどの閃光。そして紅蓮の衝撃がオーブを吹き飛ばした。
「……っ!」
ジリジリと身体が焼けてくる感覚。その痛みに顔を顰めながら、迫る来る刃を避けて空高く飛翔。しかし己より高速で肉薄されれば、剣で応戦。しかし、その僅かな隙に拳を腹部や頭部に打ち込まれる。
「ほらよぉ!!」
トドメと言わんばかりの強力な踵落としがオーブを地面へと叩きつけた。
赤銀の身体が地面に墜落し、土煙が立ち昇る。そのすぐ近くに黒いオーブが優雅に着地する。
「素晴らしい……これがウルトラマンの力か。この力を君は
自分の纏っている力の大きさに感心するとともに、目の前で膝をつく存在を嗤う。彼はどうしてそこまで愚かなのだろうかと。
「とは言っても君は
そして頭上に振り上げた魔剣を─────
「本気を出して僕から守ってみせろよォォ!!」
両断するように脳天に振り下ろした。力の使い方を、ただ守るためにと言い張る目の前の道化に。
「……ッ!!」
防ぐために持ち上げた聖剣が揺れる。ジリジリと、その剣が下がっていくのがわかる。目の前の赤い瞳が嘲笑っている。
「クッ……!」
咄嗟に出した蹴りで間合いを離す。
「甘いッ!」
しかし剣を地面に突き立てて、棒高跳びのように黒い体を射出させれば、ミサイルのような左足がオーブの腹部に食い込む。
「ガ……アッ……」
衝撃が体を押し、二転三転と地面を転がってしまう。数秒遅れて、腹部からの鈍痛が全身に広がっていく。
「ハ、ハァ……ハァ……ハァ……」
オーブは片方の膝をつき、オーブカリバーを杖にして体重を支える。
目の前では黒いオーブが彼を見下ろしていた。あまりにも余裕なそのいで立ち……。
「オイオイ……こんなものか? 君の力は!」
「ぐうああッ!?」
さらに頭を蹴られたオーブは地面へと伏してしまう。カラータイマーが己の限界を示していたが、ここで退くわけにもいかなかった。
「く……クソォ!」
再度オーブカリバーを待ちあげ、飛び出していく。だが、オーブシャドウの前では無力にも等しかった。あれだけ戦ってきたのにまだ届かない、まだ勝てない相手がいるのかと、一眞は奥歯を噛みしめる。しかもそれが、ちょっとやそっとじゃ片付けられないほど因縁深い相手。共に肩を並べて、ともに歩んだこともある相手なのだと思うと、柄を持つ手が震えた。
「ああ、いい。ようやく……ようやく君と対等に戦える。君に敗北を突き付けられる」
「なんだと……まだ俺が負けるとか、決まってねえだろ……」
鍔迫り合いで互いに目を見ながら話す両者。しかしジリジリと、オーブカリバーが傾いていく。
「いいや、君は負ける。僕の……いや、君自身の力でね」
「くっ………」
────そうか……。彼は俺を負かしたい。でもそれ以上に、”ある意味での自滅”で俺の心を折りたいんだ。
一眞はふと、彼の心情を覗き見てしまう。すると刃がグッと押される。
「わかるかい? これは証明だ。ウルトラマンとやらも所詮は力を振るうだけの野蛮な種族。僕は君に教えてくれたね? 人には光も闇もあるって。それはウルトラマンも同じだ。その力で多くの種族を、文明を滅ぼす災厄にだってなれる」
「……っ! うるせええええええええ!!」
「その返し、少なからず君もそう思ってたってことだ。いや、一度はその力を大事な友人に向けたんだっけ?」
剣を担ぐようにして鍔迫り合いを脱したオーブ。その口を黙らせる為、激情に駆られたまま頭上からいっきに振り下ろした。
「────甘いね」
だが、オーブシャドウはその重量ある一撃を受けるどころか、難なく弾き返したのだ。一眞は自覚できていなかったようだが、焦りの中出鱈目に振るったせいで、力がうまく入っていなかった。
いとも簡単に……柄を持った両腕が数刻間と同じように頭上に上がっていた。いや、もっと後ろに持っていかれている。
刹那────オーブシャドウの比類なき一閃が、オーブの胸部を水平に走った。
「が、─────ガハッ!?」
青白い粒子がまるで血飛沫のように胸元から噴き出しながらも、力を振り絞りオーブは彼を蹴り飛ばした。
「まだ頑張るか……。まあ、ということだから僕がウルトラマンを名乗って、人を傷つけても変わらないだろ?」
「ふ、ざけんな……そんなことさせねえ……絶対に……」
胴斬りのダメージでカラータイマーの点滅が激しくなっているが、そんなことの構っている暇も余裕もなかった。オーブはカリバーのホイールを回転させ、緑の暴風を発動。幾ばくかの隙に、素早く態勢を整える。
「成程、ここで決着ってわけね。望むところだよ!!」
両者の切っ先は空を向く。そして幾つもの円が刀身に収束。剣先から圧倒的な破壊力を込めた虹色の光線と、闇に染まった黒と紫の混じった光線が、ほぼ同時に発射された。
「オーブスプリームカリバー!!」
「シャドウスプリームカリバァァァァァァァァ!!!!」
放たれた光線が中心で激突。凄まじい衝撃が周囲へ拡散する。暴風がすべてを押し倒し、地面が揺れ、爆音が場を支配する。
「ク……ウウ、オオオオオオオオオオ……!」
「フ、ヘヘへへ……アハハハハッ!!」
虹色の光線は着実に闇に呑まれていく。力を込めても、もう押し返すことはできなかった。
「……ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?!?」
ドーム状の爆発と、衝撃波が周囲に広がった。
『きゃああああああああああ!?!!?』
その衝撃に浦の星にいた生徒や職員たちも悲鳴を上げてしまう。
眩い閃光が辺りを照らした。その白い世界が、徐々に色を取り戻していく。千歌たちが目を開ければ、周囲の木々は燃え、灰や炭と化した焼野原が広がっていた。そこにオーブの姿はなく、立っているのは似ていてもまるで異なる黒い姿のオーブ。奴の視線が妙に下を向いているのは、倒れた変身者を見下しているからだろう。
「これで……これで僕が勝った! 僕がウルトラマンオーブだ!! ハハ、アハハハハハハッ!!!」
勝ち誇ったかのように笑うオーブシャドウだったが、胸の違和感に気が付くと、彼もまたカラータイマーが点滅していた。細部までコピーしてしまった故の弊害だ。
「これはまた面倒だな……。さっきので随分消費したってことかな。まあいいさ。この続きは後でじっくりと楽しませてもらうさ……」
最後にオーブシャドウは、倒れたオーブの下へと向かっていたAqoursの方向を一時的に向いた。それは彼女たちにも勝利宣言をしていたのかもしれない。「君たちの信じるウルトラマンは倒れたぞ」と。
視線を送ったオーブシャドウは、わざと彼の行動を真似て空へ飛び去っていくのだった。
「くそ……てめえ……わざと外しやがって……ゴホッ……待ちやがれ……」
体力が完全になくなった一眞は膝をついてしまう。視線の先にある、空へと飛び立っていった黒点に手を伸ばした。届くはずもないのに……。そして、消えていく彼の姿を歯を食いしばり、いつまでも睨み続けていた。そして影も、光も見え無くなれば、一眞は力尽き倒れるのだった。
~~
「……う、ここは……?」
薄ぼけた視界の中、一眞は目を覚ました。所々が痛む体を押して、何とか上半身を起こす。するとそこは森の中だった。だが不思議なことに、ただ倒れていたわけではない。誰かに運ばれ、寝かされていたようだ。事実、自分の頭があった場所には服を畳んで置いただけの簡易的な枕があった。
なぜこうなっているのか……そう考え始めると割り込むようにして、先ほどの光景を思い出してしまう。
「俺は……負けたのか……」
一眞はオーブシャドウに負けた……という変えようもない事実だ。自分の力の一端で編まれた力を振るわれ、見事に敗れた。それは言い換えてみれば、自分に負けたと言ってもいい。
つまるところアオボシは、宣言通りのことをやってのけたのだ。しかし、ここで彼の行動が終わることは無いだろう。オーブと似たその姿で……ウルトラマン、そしてオーブの名を名乗って人々へ襲い掛るだろう。彼の言っていた”ウルトラマンも力の使い方次第で災厄に変わる”という事を知らしめるために。後は、個人的な嫌がらせのために。
────勿論止めなくてはいけない。けど、止められるだろうか。鏡写しのような彼に。
「どうやら、目が覚めたようだな」
自分の世界で自問自答を続けていた一眞へと投げかけられた言葉によって、彼は我に返る。そして同時に、困惑しながら声の方向へ振り向いた。
「ええ……はい」
フッと声なく笑う。その男は前をキッチリと閉めた黒いジャケット、そして同種のズボン。はっきり言って黒ずくめだった。
「貴方が俺をここに?」
「ああ、そうだ」
「そうですか……ありがとうございます」
とは言っても、何故ここに? そんな疑問を浮かべてしまう。わざわざこんな森で寝かせるだけと言うのはおかしい。
「その回復速度、流石はウルトラマンだ。いや、”オーブ”と言ったほうが良いか」
その言葉で一眞は反射的に構えてしまう。その素性を知っているのはAqours、そしてアオボシ含めた敵対するの者たちだけだ。この男は自分をどうするつもりなのだろうか。一眞の中で緊張が走る。
「そう構えるな。オレは君の敵ではない。寧ろ敵であれば、既に君の命はない。そうだろう?」
彼の問いに「そう……ですね」とだけしか返せなくなる一眞。そんな一眞を一瞬だけ見た男は立ち上がり、歩き出した。
「ウルトラマンオーブ……いや、暁一眞くん、ついてくるんだ」
「は、はい……」
戸惑いながらも、その男性の後をついて行くことにした。自分の名前まで知っているとは、この男は何者なのだろうか。それだけが彼の心を支配していく。今見てわかるのは、只者ではない異様ないで立ち。前方で歩いているその背中に、例え今襲い掛っても返り討ちにされると思わせてくれる。だからこそ、このままなのはあまりにも怖いので、恐る恐る尋ねてみた。
「なんで俺の名を……?」
「ああ、それは先程君たちの友人と話したときにね」
「千歌たちとですか!? じゃあ……」
「問題はない。君の友人にも、事情は説明してある。……
突拍子もなく言われたそれに、一眞は間の抜けた声を上げる。まだ出会って5分も経ってないような見ず知らず男性に、「今彼鍛える」と言われても何が何だかサッパリだった。
「どういうことですか!? いきなり鍛えるって言われてもそんな……」
「すまない。本来であれば、オレもこのような強引なやり方は好ましくない。しかし黒いオーブに敗れた今、早急に君を鍛えなければならない。……この星を守るのは君達なのだから」
その言い方で、一眞は感じ取ってしまう。”もしかして
(俺は、心のどこかで自惚れていたんだ……)
自分のバカな思い上がりを、心の中で反省する。これまで、どうにかして勝つことができていたからと今回も……と、どこかで思っていたのだ。
「……俺は、この星を守りたい! ですから……俺からもお願いします!! 俺を鍛えてください!!」
一眞は頭を深く下げた。こちらの方からお願いすると。強くなり、みんなを守るために。
「……ああ、勿論だ」
「よろしくお願いします! えっと……」
一眞は男の名を呼ぼうとしたが、当たり前だが知らないために呼べない。
「そう言えば、まだ名乗っていなかったな。すまない」
名前を知らず困り気味な彼の姿を見て頭を下げた。そして男は、どこか懐かしむようにして己の名を口にした。
「オレの名は………セリザワ。……今はそう名乗っておこう」
ようやく出せましたオーブ対オーブの構図。何気に最初から書こうと決めていた話でしたから。
それで最初はオーブダークのままで出そうかなとも思ったんですけど、ややこしくなるからやめました。容姿なんですが、オーブダークの頭部にオーブダークネスの身体という見た目を想像していただければ……。
そして一眞を助け、鍛えると言ってくれた男は何者なのでしょうか……。